リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
そこはまさに大パノラマだった。
山梨市を一望できるように設けられた展望台は、昼であっても壮観そのもの。
プラス感情の物に興奮せざるを得ない一人の少女は、疲れなどという言葉を知らないかのように走り回り、あちらこちらの景色をスマホで撮影し回っている。
「元気な子じゃのぅ……」
「儂等も昔はあぁじゃった……」
「お前ら黄昏るの早すぎるだろ。まだ歩かにゃならんのに……」
流石に一キロ近く、三人分の荷物を運んだだけあって、ケンの顔色には疲れが見え始める。
「せやかてシマケン」
「みんな〜!中のカフェでスイーツが食べれるんだって!」
「「うぉぉぉぉぉっ!!!」」
「お、おいお前ら!荷物ぅっ!」
先程の疲れはどこへやら。猛ダッシュでカフェへと向かっていった千明とあおいを追うように、二人のキャリーを引きながら走るケンだった。
「「「うぅぅぅまぁぁぁっ!!」」」
笛吹公園カフェテリア
各々好きなスイーツを注文し、テーブルを囲んでつつく。
千明がブドウのジェラード、あおいがフルーツパフェ、なでしこがソフトクリーム。ケンはアイスカフェラテ(ガムシロップ数個入り)を注文。甘みに舌鼓を打っていた。
「疲れた身体に甘いもんはうまぁぁぁやな!」
「うんうん!」
「流石に……三人分は……疲れた……!」
「悪ぃシマケン。後はアタシらちゃんと持つから」
「頼むわ……」
チューチューとカフェラテを吸うことで、口の中に甘みが広がり、疲れた体に染み入るのがわかる。
わざわざ疲れて甘いものを堪能する。これもマッチポンプという幸せの形なのだろうか。
なでしこはというと、スマホで皆のスイーツを写真に収めてリンに送信する。
隅っこで場に不釣合の、カフェラテを飲んでいる疲れたサラリーマンのような高校一年男子が写っていたが、地縛霊かなにかだろう、多分。
「ケン君、飲み物だけでいいの?」
「喉乾いてたから、こいつが一番ありがたいかな」
「じゃあはい!せっかくだし、美味しいから味見してみて!」
そう言って自身のソフトクリームをスプーンで掬って差し出すなでしこ。
「え?ちょ……なでしこさん?」
「…………?食べないの?美味しいよ?」
「……おいイヌコ、こいつぁ……」
「無自覚やな」
「あのな、なでしこ。ちょいと耳を貸してみ?」
「なぁに?アキちゃん」
ゴニョゴニョ……ゴニョゴニョ……
「なんか大変やねぇケン君」
「は、はは……」
「私も分けたげよか〜?」
「冗談やめろって……」
「ウソやで〜」
あおいのホラが終わったところで、千明による説明が終わったらしく、なでしこはというと、急に黙り込んでしまった。頬もほんのり赤くなっているようにも見える。
「あ、あの……なでしこさん……?」
「ご、ごめん、ケン君。さ、流石にこれは……駄目だったよねぃ……あはは」
「それは、うん。対応に困るな〜」
「全く……いくらお前らが仲良いからって限度というものがあるんだぞ」
「面目次第もありまひぇん」
危うく間接キスをしかけるという、なんだか甘酸っぱいような、そんな空気に当てられながら、各々のスイーツを平らげ一服。
「さて……キャンプ場までに温泉があるけどどうする?先に温泉入っていくか、それとも……」
先にキャンプ場に行ってから……と言おうとするが、
「「おんせ〜ん」」
「欲望に素直でよろしい」
しかし、目的は決まれど、誰もなかなか動かない。寧ろ段々だらけて……いや、蕩けてきている。
外は寒々とした晩秋の空気。
ここは暖房の効いたまったり空間。
どちらが居心地がいいかは火を見るよりも明らか。
「あか〜ん……お尻に根が張ってもうた〜」
「ちょっと寝てもいいかな〜?」
「あ、それもいいねぃ〜……」
「わからんでもないけどさ〜……」
そんな中、なでしことケンのスマホのヴァイブレーションが振動する。
何だろうと、まったり動作でポケットからそれを取り出すと、
リン『寒い日に食べるボルシチウマー』
そんなラインと写真が送られてきた。
「美味そうだな、ボルシチ……」
「そだねぃ……あ……返信しなきゃ……」
なでしこ『リンちゃんは、今日どこまで行ってるの?』
グゥゥゥゥ……。
「誰の腹の音だ?」
「あ、多分私ぃ」
「さっきソフトクリーム食ったばかりなのに!?」
「えへへ……」
まったりとした時間だが、流石にちゃきちゃき行かねば、ズルズルと時間に余裕がなくなってくるので、なんとか4人は名残惜しそうに、後ろ髪を引かれるようにカフェテリアを後にした。
そして歩くことしばし。
「ほっとけや温泉だって。面白い名前だね」
「バズりそうな名前の温泉だな」
何となく、パシャリと写真に収めておく。
「お〜い、お前ら。休憩所に荷物を置いて温泉に行こうぜ〜」
「なでしこちゃんもケン君もタオルと着替え、持ってきた?」
「もちろん!」
「コノシュンカンヲマッテイタンダー!」
中に入れば、木で出来た暖かな印象を与える床や壁、柔らかな座布団。お誂え向きに温々と部屋を暖めるストーブ。
「こ、この寛ぎスペース……!温泉で温まった客を堕落させる、まさに悪魔の寝床……!ここで一度堕天すれば、二度と戻っては来れないだろう」
「みんな、セーブはしたか?この先は温泉と休憩スペースというボスの連戦だぞ……!」
「あ……セーブ忘れてもうた。」
「よし、いざという時は俺が囮になる!だから……その時は俺をおいてキャンプ場へ先に行け!後で追いつく!」
「それ、お前が一人でマッタリするってことだろ」
「しかも死亡フラグや」
「ケン君!私も残るよ!二人でここを死守しよう!」
「何から守るんだよ」
各々荷物をおろして隅に固めていると、再びなでしこのスマホが振動する。
「リンちゃんからだ」
どうやら先程送った、リンの目的地を尋ねる内容に対しての返信だ。ほんの一言返すだけなのに、えらく時間がかかったとは感じたが、その返信内容が少し変わったものだった。
リン『ここだよ(アドレス)』
「……?アドレス?」
ポチッと添付されたURLをポチれば、どこかしらの映像が流れるサイトに飛んだ。
「霧ヶ峰カメラ……?」
その動画をじっと見ていると、隅っこの方に動くなにか。
目を凝らして見てみれば、それはよく知る少女の姿だった。
「あぁっ!リンちゃん!リンちゃんだ!!!」
「「「????」」」
いきなり大きな声を出すものだから、何のことかと皆がなでしこを見る。
「リンちゃんが!リンちゃんがテレビに写ってるよ!!!」
「さすが我が妹……テレビデビューを果たしたか。」
「いやこれ、ライブカメラでテレビちゃうんやけど」
「しっかし霧ヶ峰か。あそこ今めっちゃ寒いらしいけど、大丈夫なのか?」
「霧ヶ峰って……どこにあるの?」
「長野県の諏訪湖の近くだな」
「凄いなぁ……流石ソロキャン少女や。しかもライブカメラで今の場所伝えるやなんて、おもろいこと考えるねぇ」
「よしなでしこ!俺達もライブカメラを探してリンに逆襲すんぞ!!」
「押忍!!」
「待てやお前ら、温泉はどうすんだ?」
ほっとけや温泉の4人がやいのやいのやっている間、リンはライブカメラの隅でずっと手を振り続けていた。
「返事がないけど……見えてる……よな?」
その後、ケンから
ケン『テレビデビューおめでとう!』
という訳の分からぬ返信が入ったことに首を傾げるリンであった。
結構スラスラと行けたので、7:30にもう一話投稿します。
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
-
未来の子供達のほのぼの生活
-
ケンとなでしこのいちゃいちゃ
-
お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
-
いつメンのキャンプ