リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第二十二話『一波乱』

「おかしいなぁ……誰も来ないよ?」

 

午後一時を回り、管理棟でお客さんを待っていた6人だが、未だ車の一台も現れないことに不安そうな声を挙げるなでしこ。どうやら彼女の中では、オープン時間になるとバーゲンセールのように来場者がどっと押し寄せると想像していたらしい。

まぁとは言えど、グループが十一組とソロが二人なので、どっと雪崩込むように押し寄せる……と言うのは流石に無理があるが。

 

「ん〜……キャンセルの連絡は来てないよ?」

 

「まぁオープン時間ぴったりには来ぉへんのちゃうかな?」

 

「だよな〜」

 

のんびりと来場者が来るまで待とうか?と思い始めたその時、管理棟の固定電話が着信を知らせるコールを鳴らす。すかさず近くにて待機していた恵那が受話器を取り、応対に入りだした。

 

「はい、ふじ川松ぼっくりキャンプ場です。……え?場所がわからない?……、目印ですか?確認してすぐに折り返し電話しますね」

 

どうやら道に迷ったお客さんが、どうやったら辿り着けるのかわからずに一報を入れたらしい。

このあたりは集落特有の入り組んだ道になっているので、案内板がないなら迷う事必至だろう。だがそれには抜かり無い。

 

「案内板て、結構用意したよな?」

 

「一緒に作ったよね?」

 

「うん」

 

「ペンキまみれになりながらな〜」

 

「ねぇねぇ」

 

制作した時のことに思いを馳せ始めたケンを現実に戻すように恵那が倉庫を開けてギョッとして皆を呼ぶ。

何だろう?と皆が疑問符を浮かべる最中、なんとな〜く嫌な予感が脳裏をよぎりはじめた。

 

「案内板……ってこれの事……?」

 

震える声で恵那が指差す先。そこには矢印状に切った木を掘って『松ぼっくりキャンプ場』と文字を記した看板が、足場と共にものの見事に転がっていたのだ。

 

『あぁ〜っ!?』

 

「つけてなきゃ意味ねぇじゃね〜か!!」

 

「もしかしてお客さん、皆迷って来れんのとちゃう!?」

 

最後の最後でツメが甘い六人だった。そんな中、二人のスマホが振動する。それはケンとあおいのものだった。

あおいには『あかり』ケンには『支店長』と発信者の名前が表示されている。

恐らくはこの二人も迷ってしまったことで道を訪ねに来たのだろう。

 

「は、はい!こちら志摩です!」

 

『おぉ!志摩君!海津だが……例のキャンプ場、どこにあるのか分からなくてね。高下まではやってきたのだが……』

 

「今どの辺りでしょうか?!」

 

『いや〜、回り見渡す限りの山と田んぼだ!ハッハッハッ!』

 

『支店長、笑い事では……』

 

「と、とにかくなんとかしますので、しばらくお待ち下さい!」

 

『お、おぉ。頼むよ!』

 

困ったことになった。その分だとお客さん全員が迷って辿り着けない状況になりかねない。オープン初日からこれでは今後に影響する。

 

「お兄ちゃん」

 

「……俺も同じこと考えてた」

 

「「二人で迎えに行ってくる!」」

 

どちらからともなくグローブとヘルメットを装着していく志摩兄妹。確かに二輪ならば小回りも効くし、狭い道でも旋回が容易だ。

 

「なでしこ、斉藤。二人は電話で迷ってる人のところにナビで案内して!スマホのブルートゥースを飛ばしてインカムで受け答えするから!」

 

「出来ればリンがこの周辺。俺が遠目の所が良さげだな。上手く捌いてナビしてくれたら助かる!」

 

「うん!」

 

「了解!」

 

いざ出発という所で、あおいから二人にキャンプ場のパンフレットが手渡される。どうやらこれの地図だと案内もしやすいだろうという配慮だ。確かに口頭だけよりも、地図を見ながらのほうが説明もわかりやすいだろう。

 

「よし……!キャンプ場初日最初の業務はお客様のご案内だ!」

 

「うむ……!」

 

互いの相棒に跨がり、その心臓に火を入れる。股下から伝わる心地よい振動が気持ちを昂ぶらせてくれるのが実感できた。

 

「行くぞ!リン!」

 

「了解!気を付けてね、安全運転で!」

 

「伊達や酔狂で金免許じゃねぇよ!言わずもがなだ!リンこそ久しぶりのビーノだ。ミスんなよ!?」

 

「ご心配なくっ。じゃ……」

 

「「出発!!」」

 

アクセルをひねる。後輪が勢い良く回転し始め、駐車場の砂利を巻き上げながら二人の二輪は勢い良く駆け出していく。

流石に最大速度、法定速度はケンの大型が圧倒的に勝り、リンのビーノを置き去りにしていく。

昔から心配していただろう妹だが、今は彼女に近場を任せるしか無い。ギアを上げて高下の公道を走り抜け、ナビしてくれる二人の案内に従い、迷人を見つけるべくバイクを走らせていった。

迷人の中には、電話のあった海津支店長と白河次長が含まれており、二人共バイクでやってきていた。バリバリのカスタムが施された大型で、重厚なマフラー音を吹かしながらケンの先導でキャンプ場へと案内される光景は中々にシュールだったが。

更には各務原家の三人も迷っていたので案内したのだが、何故か三人揃ってニヨニヨと含み笑顔を向けられたのが何となくケンとしては気になっていた。

ともあれ、

リンと協力し、恵那となでしこの的確なナビゲートにより、スムーズにキャンプ場へと案内されたお客様を、あおいと千明が受付、案内していく。見事な役割分担・チームプレーが刺さり、最初の動揺は何処へやら。あっという間に予約者全員の受付を済ませるに至ったのである。

ちなみに

海津と白河が受付をする際に、どの子がなでしこかを尋ねてきていた。正直に名乗り出た彼女に、頭も満面の笑みも眩しいサムズアップをしていたのは何なのだろうか?

そんなトラブルを乗り越え、松ぼっくりキャンプ場はキャンパー達ですっかりと賑わい始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テントを張り終えたので、次は焚き火の起こし方を説明させていただきます」

 

初心者スペースにて

一組のキャンパーに加えて、ケンの上司二人がテントを貼り終えて次のステップへと進み始める。

何を隠そう、このキャンプ場ではなでしこの勤めているキャンプギアショップと提携して、少し型落ちのものをレンタルとして貸し出す事になっていた。勿論、数量も限りがあるし、インストラクターも常駐ではないので完全予約制となるが。

最初のインストラクターは、言いだしっぺの法則というものの通り、ケンが講師となった。とは言え、キャンプ経験は豊富な方なので、祖父から教わった知識や技術、皆で培ったアイデアを駆使して、初めての人にもわかりやすいように丁寧に教えていく。

 

「薪に火を付けるのに、皆さんホームセンターで売られている着火剤が必要と思うでしょう」

 

「そりゃそうだろう。じゃなきゃ中々火が……」

 

「ところが、意外にも着火剤は現地調達が可能なのです!」

 

首をかしげる一行を促し、近くの山林へと足を踏み入れていくケン。地面に目を向けてキョロキョロとある程度見渡せば、季節柄ソイツはすんなりと見つかった。

 

「コイツが現地調達出来る着火剤です」

 

『松ぼっくり?』

 

\コンニチハ/

 

そう、キャンプ場の名前にもなり、ゆるキャン△のアイドルにして隠しヒロインたる松ぼっくり。

意外な物の出現に、なんの変哲もない松ぼっくりを一行は目を丸くしてマジマジと見つめる。

 

\テレルゼ/

 

「コイツに着火し、火種にして」

 

\アツイ/

\ギャァァァ/

 

「ナタで細くした薪や枝から燃やして、火が着いたら太めの薪を焚べて」

 

などと焚き火台を用いて説明していると、あっという間に立派な焚き火となった。テキパキとこなすその姿に、初心者の面々は『おぉ……!』と感嘆の息を漏らす。

 

「とまぁこんな感じです」

 

「いやぁ志摩君、見事なもんだ!勉強になったよ」

 

「これならバーベキューをするときなどにも応用できるな」

 

「お役に立てたなら光栄です。何かわからないことがあれば、俺だけでなく、他のスタッフにもお声がけください。皆キャンプ経験豊富ですので」

 

説明に満足したキャンパーの様子を見て満足したケンは、他のメンバーの助っ人となるべく初心者サイトを後にする。

そんな彼が立ち去ったを確認して、現れる影が一つ……。

 

「すいません、皆さん少々ご協力していただきたい相談が……」

 

チワワを抱いた女性が、黒い笑みを浮かべて初心者キャンパーに何かを吹き込んでいたのを、ケンは知る由もなかった。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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