リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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筆が乗りまくってたので書き上げるに至りました!
あとサブタイトルも変更しました。原点回帰って大切


第二十三話『リンの双子の兄は、静岡の猛獣に想いを伝える』

日も傾き、徐々に暗がりがキャンプ場を支配し始めた。

客のキャンパー達も各々夕飯の準備に取り掛かり出し、そのフォローも一手間で終わり。

薪などの提供も一通り終えて、一段落のために休憩を……と言った時だった。

 

「リン、ケン」

 

聞き慣れた低い声に振り返った二人の視界に何かが投げ渡された。慌てて受け取れば、程よく温かいコーヒーとココアの缶だった。

 

「じいちゃん!」「おじいちゃん!」

 

その投げ渡した主は、あの頃から少しだけ雰囲気が老けた祖父の肇だった。

どうやら差し入れ、という事でジュースを投げ渡してきたらしい。

 

「ありがとう、丁度一服しようかって話てたんだ」

 

「そうか。……なら一緒に飲むか?」

 

「うん、せっかくだし」

 

丁度管理棟の前にはサイトを一望できるベンチを拵えていたので、少し手狭だがリンを挟んで三人で腰を下ろすことにした。

プシュッ、という心地よいタブを開ける音が木霊し、湯気がふわりと途中を舞う。中身を一口啜れば、冷えた空気に凍えた身体に染み入ってくる。肇も肇で、買っていたブラックコーヒーを一口。

 

「改めていらっしゃい、おじいちゃん。来てくれたんだ」

 

「あぁ。お前達が完成させたキャンプ場。見てみたくてな」

 

そうつぶやくと、眼下に広がる松ぼっくりキャンプ場を、目を細めて感慨深げに見渡す肇。その口元はしっかりと緩んでいる。

 

「ふっ……良いキャンプ場だ」

 

「……っ、ありがとう」

 

「その言葉だけで、作った甲斐があったかも」

 

外観だけではない。

家族が、

友人が、

子供が、

ペット連れが、

ソロが、

初心者が。

色んな楽しみ方を味わう為に遥々やってきた人々が笑顔を浮かべる場所。

きっと肇の言う『良いキャンプ場』と言うのは、そういう意味なのだろう。

そしてそれは、二人のキャンプのきっかけをくれた祖父に言って貰えたことが何よりも響いた。

 

「まさか二人が友達とキャンプ場作りを始めると知らせた時は驚いたものだが……頑張ったな」

 

「ん、まぁ色々困難にぶつかったりもしたけどね」

 

「それも含めて楽しかったな」

 

千明の無茶振りから始まって、

長い年月をかけて整地して。

途中でキャンプ場作りが頓挫仕掛けたけど何とか持ち直して……

でもその最中は、嘗ての仲間達と夢に向かってひたすらに頑張ったことが何よりの思い出だろう。

 

「でもまさかケンがキャンプを教える立場とは、世の中わからんものだな」

 

「遠巻きに見てたけど、結構しっかり教えてたじゃん?」

 

「そりゃまぁ?キャンプのイロハを教えてくれた先生が優秀でしたからね?」

 

「む…………ふっ、そうか」

 

先生、という言葉に目を見開いた肇だが、すぐにまた口元を緩めてコーヒーを再び啜る。

祖父から教わったキャンプの魅力。それを初めての人にも伝えたくて、自身のキャンプのテーマを定めたのだ。それが叶ったのであるならば本望と言うものだろう。

 

「でもさ」

 

肇に釣られてコーヒーを啜ったケンは、白い息を吐き出しながら言葉を紡いだ。

 

「じいちゃんから教わったもののもう半分。その魅力を伝える仕事がまだ残ってたりするんだよな」

 

「仕事……?」

 

「もしかして、広報のアレか」

 

「そ、バイクの魅力を引き出す記事を作っててさ。きっと皆で作ったキャンプ場ならバイクも写真映えするんじゃないかって思って」

 

自分たちで作ったキャンプ場だからこそ魅力的で、それだけにバイクの魅力を相乗効果で引き立ててくれる。そんな写真で作った記事を皆に……バイクの魅力を未だ知らない人達に届けたい。コレもきっと『楽しいを広げる』ことなのだろう。

 

「そうか。いい記事が書けると良いな」

 

「出来上がったらネット掲載されるみたいだから、更新されたら知らせる」

 

「あぁ、楽しみにしてる」

 

いつの間にか空になった缶を持ちながら、積もる話に花を咲かせる祖父と孫。大人になったからこそ話せる話題もあって、3人水入らずの時間はゆっくりと過ぎていった……

 

 

 

 

 

が、

 

「あぁっ!!あの時のスキレットの爺さん!!」

 

そんな時間をぶち壊したのは、十年来の感動の再開を果たした千明だったとここに記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、楽しそうだね」

 

「うん」

 

「なんか嬉しいわぁ……!」

 

「やって、良かったよな……」

 

皆で管理棟前からサイトを見下ろす。

各々のグループで、

思い思いの夕食を口に運び、

他愛のない話で笑いあって、

キャンプ場作りの集大成が確かにここにある。

 

「ホント、千明の無茶振りからとんでもね〜ことを成し遂げたよな」

 

「だな、千明の無茶振りもたまにはいい方向に働くよな」

 

「たまにはは余計だよ!」

 

「……でも、夢、叶ったね!」

 

『うん!』

 

そして何かをやり遂げたからこそ、次は何をしようか?という思いも芽生えてくるわけで……

 

「ねぇ!年末ここで年越しキャンプしない!?」

 

「いいねぇ!ダイヤモンド富士狙っちゃうか!?」

 

「アキ、今度は時間間違えたらアカンで?」

 

「おまっ!イヌコ、いつの話ししてんだよ!?」

 

「何食べよっか?」

 

「年末だし、年越しそばかな?」

 

などと次のキャンプ計画を立てていく女性たち。

そんな中で、ケンだけは未だ何かを見据えていた。

彼の中だけで『もう一つの夢』はまだ終わっていないのだ。

ポケットの中の『ソレ』を少し握りしめる。

一つ成し遂げたからこそ、もう一つへ進む。

このキャンプ場の完成という『夢』を成したからこそ、次への一歩を踏み出す。

その時は、きっともうすぐだった。

 

「さぁて!腹も減ったし、飯食いに降りようぜ〜!」

 

『さんせ〜い!』

 

腹の虫が泣き出した事で、各々家族のテントへと向かおうとする中……

 

「なでしこ」

 

「およ?」

 

ケンは意を決して彼女を呼び止める。

 

「少し、良いか?」

 

「???うん、いいけど?」

 

なでしこと連れ立って管理棟の軒下へと姿消す二人。それを確認した千明が、どこからか取り出したトランシーバーでどこかに連絡を取り始めた。

 

「ステンバーイ……!ステンバーイ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかした?ケン君」

 

澄んだ空気で星空と月の光でもそれなりの明るさが保たれる軒下で、

ケンはというとなでしこに向き合って黙り込んでいた。

呼び出して連れてきたはいい。だがいざとなって尻込みしてしまっていたのだ。

それはきっと、月の光に照らされたなでしこの顔が、神秘的に写っていたというのもあるのだろう。

だが、ここで足踏みしていては、今までと一緒でなにも変わらない。

変わらなきゃならない。

夢の為には、変わる勇気が必要なのだ。

どんな言葉を繕うか?

どんな話の流れで踏み出すか?

いや違う。

きっと必要なのは、どんな美辞麗句で言葉を飾るのではなく、

 

 

 

 

 

 

『正直な想い』

 

 

 

 

 

 

「なでしこ」

 

「はい」

 

腹をくくれば、言葉は流れるように口から吐き出していた。

そんなケンの言葉に、なでしこはその澄んだ瞳でしっかりと彼を見つめ返す。

 

「ずっと言えなかった。

 ずっと待たせてしまっていた。

 だから、

 まだ待っていてくれたなら、俺は君に言うよ」

 

ポケットからそれを取り出して、そっと片膝をつく。

気障ったらしく見えるかもしれない。

だが今の誠心誠意、そして正直な気持ちを伝えたくて。

下から見上げた彼女の顔はほんのり赤くて、ただただ魅力的だ。

食いしん坊で、

変なとこで甘えん坊で、

底抜けに明るくて、

よく暴走して振り回してくる。

でも、

そんな彼女だからこそ、この言葉を伝えたい。

手に持った黒い箱を開き、中に納めたアクアマリンをあしらえた指輪を見せながら、

言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 

「なでしこ、俺と……結婚してくれないか?」

 

 

 

 

 

「……うんっ!ケン君!私を、ケン君のお嫁さんにしてくださいっ!」

 

彼女の、

目尻に涙を薄っすら溜めながら浮かべたのは、

今までで見た中で一際魅力的で輝いた、満天の星空に負けないほどに美しい笑顔だった。

 

そんな彼女の左手薬指

その華奢で細い指に、取り出した指輪をゆっくりとはめていくケン……

 

 

そして、

そんな2人を祝福するかのように、

高下の夜空に大輪の火の花が、大きな音を立てて咲き誇った。

 

「わぁ……!」

 

「は、花火……?この季節に……?」

 

なでしこが見惚れ、

ケンが呆然とする中。

 

『婚約、おめでとうっ!!』

 

パンパーン!!

と、花火の音に負けないほどの甲高い破裂音と共に、件の2人の頭に細長い何かと、雪のような何かがチラホラと降り注ぐ。

そしてぞろぞろと死角になっていた下のサイトから、利用していた知り合い等を含めたキャンパー達。

そして仲間の4人がぞろぞろと管理棟の段へと登ってきたのだ。しかも発射?し終えたクラッカー片手に拍手喝采しながら。

 

「な、なななな!!」

 

「いや〜!サプライズ成功っと!皆様方!ご協力感謝の極!」

 

「あ、アキちゃん!?これって……!」

 

「ケッケッケッ!サプライズ大成功〜ってな!祝砲代わりの花火だぜ!」

 

「なん……だと……」

 

「いや〜、シマケンのことだから今日あたりに勝負かけると思ってな?色々仕込んでたのよ!」

 

各種根回しをし、周辺住民にはオープン記念の花火と説明した真意は、二人のためのお祝いだったらしい。

そして、今日のお客さんにも説明とともに協力を仰いで、こうして皆でお祝いをした……ということだ。思いの外、皆ノリノリだったとか。

 

「……改めておめでとう二人共」

 

「幸せにならなあかんで?」

 

「なでしこちゃん泣かせたら、チクワをけしかけるからね?」

 

「ったく、いつ結婚するのかってヤキモキさせるなよな?……でもま、とりあえずおめでとう、お兄ちゃん、なでしこ」

 

そして静かに微笑むリンから渡されるのは、淡い紫の花弁が揺れるデンファレの花束だ。

花言葉は『お似合いの2人』

 

「……ありがとう、みんなっ」

 

満面の笑顔でお礼を言うなでしこ。その声はどこか上擦っており、その頬には一筋の涙がツゥ……っと伝う。

 

「あ〜!なでしこちゃん泣いとる!」

 

「なでしこちゃん早速泣いちゃった!行けチクワ!」

 

「ワッフゥ!!」

 

「ちょっ!?恵那!?チクワ!?」

 

 

 

 

 

ガブッ!

 

 

 

「アッーーー!!」

 

 

 

 

 

そして婚約祝いという事で、めでたい2人と花火を肴に、ここにいる全員を巻き込んだ宴が開催された。

意図せずして、皆の親睦が深まったこととともに、これもキャンプ場のテーマたる『楽しいを広げる』ことになったのは余談である。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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