リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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若干急ぎ足気味が否めない……


第二十七話『門出へ』

「よし、このスペースにベンチを置いて……んで、ここに向かって座るようにしたらいいんじゃねぇか?」

 

身延 志摩家 リンの部屋

なでしこの部屋と同じように主だった家具などは名古屋に持ち出しているので、ここには寝泊まりに最低限のものしか無いが、ここに部屋の主たるリンと、腐れ縁の千明、あおい、恵那が集まって何やら話し込んでいた。

 

「おぉ、えぇなぁ。でもちょっとここでするんは流石に型破りやない?」

 

「ふっふっふ〜!それについては抜かり無く!当の二人からも『忘れられないもの』にしてほしいって要望があったからよ〜?とことん驚かせてやろうぜ?ケッケッケ〜!」

 

「おぉ、アキちゃんなんか悪役っぽい!」

 

「……まぁ本人達が良いってんなら構わないけど……限度は弁えろよ?」

 

「応とも!型破りだろ〜がなんだろ〜が、アタシらなりに祝ってやれば良いんだよ。あいつらをさ」

 

「アキ……ほんまえぇやつやな〜」

 

「よせやい!こうしたイベントもあそこの使い方としてアリかもしれんしな〜。最初は本栖高校の野クルの部室でやろうかって考えたんだけどよ〜」

 

「いや、あそこは狭すぎるだろ」

 

「んで、思い出深いとこって言ったらここを考えついたってわけよ」

 

場所の見取り図を机に広げながら、あれやこれやと案を出し合う4人。その様相はさながら、高下のキャンプ場作りの会議をしているようだ。

 

「あ、ちなみに、二人には日程とか時間以外原則極秘だからな?招待客には知らせて根回ししておくとして……」

 

「お前、ホントにサプライズ好きだよな。高下の花火といい……」

 

「でも当日はどうするの?サプライズでも場所がわからないと……」

 

「そのへんは各家で着替えて、目隠しをして車で拉致る」

 

「ぶ、物騒やな……」

 

そんな千明主催のとんでもない計画が立てられていることはつゆ知らず。

サプライズ対象たる二人がどのようなリアクションを取ってくれるのか。

喜んでくれるだろうかと言う期待とともに、四人の陰謀めいたプランは着々と練られていた。

各種根回しは怠ること無く。

主役二人には最低限の準備要請と情報提供で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、

4月上旬

大安で桜が満開となるこの日に、それは実行となった。

 

志摩家 リビング

緊張で胸が早く鼓動を刻みながらも、今日のために準備した白のモーニングコートに身を包んだケン。さてそろそろ出発かと心の準備をしていた所……

 

「あの……父さん母さん?」

 

「なにかな?」

 

「なんで目隠しされてるんですかねぇ?」

 

着終わるや否や、着物を身に纏った咲によって目を布で覆い隠されてしまった。

視界が闇に覆われ、周囲の状況が全く把握出来なくなる。

 

「千明ちゃんからの要請なのよ」

 

「うん、『式場に着くまで決して外してはなりませんよ?』って乙姫様染みたセリフも添えられてね」

 

芝居がかった千明のセリフを、礼服に身を包んだ渉が面白可笑しそうに話す。しかし、目隠しされている本人からしてみれば気が気ではない。

 

余談だが、同時刻

 

「怖いよ〜!暗いよ〜!」

 

と各務原家で目隠しされたなでしこはテンパって居たとか何とか。

 

閑話休題

 

「折角友達が企画してくれたんだ。それに乗ってやるのもまた友達としての役割だと思うぞ」

 

「そりゃまぁ、そうだけど」

 

渉と同じく礼服に身を包んだ肇がケンを軽く窘めつつ、千明の企画した内容を知るだけに今までにないモノへの期待が溢れていた。

 

「ケン、緊張してるのかい?」

 

「しないわけないよ。一生に一度の事なんだからさ」

 

「そう硬くなりすぎても良くないんじゃない?あんたがガチガチになってちゃ、なでしこちゃんにまで伝染するわよ?」

 

「うむ。緊張感を無くすな、とは言わんが、もう少し肩の力を抜くと良い。型式に拘らんのが二人の望みなんだろう?」

 

「……そう、だったな」

 

これから自分は、なでしこをこれまで以上に支えていかなければならない。そんな男が彼女を不安にさせるような状態でこれからを歩んでいけるのか?

今一度気合を入れ直すために頬をパチパチと叩き、気を引き締める。程よい痛みが固まっていた身体をこれまた程よく解してくれた。

 

「じゃ、緊張も解れたところでそろそろ出発しようか。花嫁さんを待たせることがあってはならないからね」

 

「そうだね……行くとしますか」

 

目隠しされている為、咲に手を引かれて渉の運転するフォレスターに乗り込むために玄関へ向かうケン。

目指すは二人には秘められた式場。

そう

今日は、ケンとなでしこ。

二人の門出の日

即ち

結婚式だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、ここが玄関だから気を付けて」

 

「何だか……手を引かれて靴を履かせられて……介護されてるみたいだね」

 

「うむ……」

 

「し、締まらねぇ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家を出てから車に揺らり揺られて四十分

目隠しをされてどこへ向かっているのかわからなかったが、なんとなく曲がり曲がって山道らしいガタガタとした道路を走っている感じがした。式場といえばそういった所が点在する都会へ向かう物だが、どちらかと言えば逆に遠ざかっているような……

 

そして、

 

「着いたよケン。目隠し、外しても大丈夫だよ」

 

砂利道を少し走って車が停車し、渉にそう促されたことで、ゆっくりと目隠しを外すケン。同時に咲がドアを開けて降りやすいようにしてくれた。それに甘えてゆっくりと降車すれば……

 

「ここって……」

 

周囲を見渡せば、桜がそこかしこに咲いた、何とも見慣れた場所の光景が目に飛び込んできた。

少し向こうに見える鳥籠跡も、

子供達が遊べるキッズスペースも、

ペットが走り回れるドッグランも、

縄文時代の遺跡展示スペースも、

土器焼き体験スペースも、

少しだけ古ぼけた管理棟も。

ここは昨年の思い出と言えば真っ先に思い浮かべる、高下の松ぼっくりキャンプ場だった。

ただ違うところと言えば、その管理棟の前には二列にベンチが設けられ、その間にはフラワーゲートとレッドカーペット。

そしてその先の管理棟軒下には主祭壇のような机。

見た感じ、野外の教会での結婚式場と言った風合いだ。

 

「どうよシマケン。アタシらからの式場サプライズはさ?」

 

そして出迎えてくれるのは、冒頭で計画を練っていた四人だ。それぞれが式典らしい服装に身を包んでおり、リンに至っては未婚親族であるため振り袖に身を包んでいた。

しかし千明は牧師服(キャソック)に身を包んでいるのは謎だが。

 

「まさかここを式場に仕立てるとは……恐れ入ったよ」

 

「だろ〜な。呆気取られてる顔、写真に収めたかったぜ」

 

「今日は盛大に祝わせてもらうから、覚悟しといてよ?」

 

「ほな、なでしこちゃん来るまでスタンバイしといてな〜」

 

そう言って恵那、千明、あおいは何が準備があるらしく、それぞれの持場的なところへ戻っていく。

リンはというと、親族である為、ここらでゆっくりしとけ、とのこと。

 

「今日はおめでとう、お兄ちゃん。そのモーニングコート、似合ってんじゃん」

 

「……おう、ありがとな。リン」

 

「……ホント、二人がここまで来るとは最初は思わなかったよ」

 

「そうだな……最初なでしこの事知ったの、リンが本栖湖で助けた時の話だもんな」

 

「そうそう。富士山見に来て眠りこけて、目が覚めたら暗くなってて帰れなくてさ」

 

「……たぶん、リンとなでしこが出会ってなかったら、こうなる事はなかったかもな」

 

「……そうなのかな」

 

「……ん?じゃあ俺となでしこの仲人はリンってことに……」

 

「えっ?いやいや、そんな大層なもんじゃないし」

 

「でも、そんなきっかけが無かったら、俺となでしこもこうして結ばれることもなかったんだ。きっとちょっとしたきっかけのズレとかで全く違う結果になってたかもだし、逆に小さなきっかけでこうなることだってあるんだから」

 

「バタフライ・エフェクトって奴だな」

 

だから、色んなきっかけで生まれたこの現実に感謝して。

この手にした幸せ達を離さないように。

 

「お、とか何とか話してたら花嫁の到着だぞ、花婿さん」

 

駐車場に止まったラシーンに乗っているであろう彼女を幸せにしようと、改めて強く思わされた。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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