リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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ようやくここまで来ました。

5月6日 一つ追記しました


最終話『リンの双子の兄は、やっぱりなでしこに振り回される』

ガチャ……というドアの開く音とともにまず降りてきたのは、運転席からフォーマルドレスを身に纏い、髪を結い上げた桜だった。続いて助手席からは紋付袴の修一郎。その後部からは黒振り袖を着た静がゆっくりとその姿を表す。修一郎はと言うと、モーニングコートを着たケンの姿を見付けると、複雑そうな笑顔を浮かべつつゆっくりと頷く。

嬉しいような、それでいて悲しいような寂しいような。

ケンとなでしこの結婚は両手を上げる勢いで喜んでくれていた彼だが、やはり愛娘を嫁がせる、と言うのは父親として思うところがあるようだ。

そして、その義父となる彼が運転席後部の扉を開き、その待ち望んでいた人がゆっくりと降りてくる。

まず飛び込んできたのは純白。

ウェディングドレスというものは『無垢』を表すとおり、未だ何物にも染まっていないことを表す。今回こういった場所での式となるので、ドレスの長い裾にあたるトレーンは短く、かろうじてヒールが見える程度まで短く仕立ててある。

眩しいまでの白に、彼女の……なでしこの桃の髪色がとても映えて見える。化粧もそこまで厚くもなく、薄く塗られた桃色の口紅が統一感すら感じさせる。薄くそれを隠すヴェールですらも引き立てに一役買っていた。

風が一吹きすれば、舞い散る桜の花びらがより一層彼女を引き立ててくれる。

その姿を見た誰もが目を奪われ、総じて『綺麗』であると口々に呟く。

かくいうケンも、思わず見惚れてしまう程に。

 

「待たせたね、ケン君」

 

「はっ!?い、いえ……修一郎さんもお疲れ様です」

 

「なでしこが目隠しが暗い怖いってグズるから、中々出発出来なかったのよ」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

バラされたくなかったらしく、慌てふためくなでしこ。

ゆっくりと、慣れないヒールに苦戦しながら、自身を待っていた夫の元へと歩いていく。

 

「お、お待たせ、ケン君」

 

「い、いや……待ってないよ?」

 

「そ、そっか……そ、その、どう?変じゃ、ない?」

 

「そ、そんなことない!その……正直、きれいで見惚れてました」

 

「うっ、う〜……そうストレートに言われると、何だか恥ずかしいよぅ……」

 

そんな二人のやり取りを見ていた皆が思う。

なんだ?こいつ等……付き合いたてのカップルか?と……。

 

「それはそうとなでしこ。身体の具合はどうだ?その、ダルいとか、しんどいとかないか?」

 

「うんっ、なんか安定期に入ったみたいだから、今はそんなに辛くないよ」

 

「無理、したらダメだからな?辛かったらちゃんと言えよ?」

 

「大丈夫だよぅ。……でも心配してくれてありがとね、パパ?」

 

愛おしそうにお腹を撫でるなでしことケンの会話の意味。

それはなでしこのお腹には新しい命が宿っているということだ。

クリスマスのあの日。二人はお互いの『ハジメテ』を捧げあったのだが、それがものの見事に直撃どストライクで、妊娠がわかったのが2月半ば。なでしこの誕生日に合わせて結婚式をセッティングしていた面々だったが、その報告を受けて大わらわ。安定期に入るであろう4月に延期となったのである。

無論、祝福と共にケンには若干の非難が入ったのは余談だが。

 

「さて、役者も揃った所で式を始める準備をしようぜ!二人の未来の水先案内人たる神父役は、僭越ながらこの大垣千明が引き受けた!」

 

「お前、それでその服装だったのか」

 

「これもアタシらなりの祝福の仕方だぜ〜?ま、色々催しといたから、驚く準備をしとけよな〜?」

 

「うん!楽しみにしてるよ!アキちゃん!」

 

「とりあえずシマケンとなでしこはスタンバイな〜」

 

「は〜い」

 

「じゃ、始めようぜ。野クルメンバーによるとんでもねー結婚式ってやつをよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、なでしこ。ヴェール、下ろすわね」

 

「うん、お願いっ」

 

階段下で待機する主役二人の元に、静が新婦の母親の役目であるヴェールダウンにやってくる。捲られたヴェールを下ろすため、近付く静。その表情は、先の修一郎と同じく、嬉しそうながらも悲しそうで。嫁ぐ娘を愛おしげに、そしてその晴れ姿を目に焼き付けるために、ゆっくりと時間を掛けてヴェールを下ろしていく。

やがてその顔が半透明のヴェールに包まれた時、少し俯いて鼻をすすらせる静。泣くまいとしていたのが、少し決壊したようだ。

少しだけ、ほんの少しだけの沈黙の後、静はいつもの穏やかな笑顔をケンに向ける。

 

「ケン君、娘の事、お願いね」

 

「はいっ」

 

ただ短く、ただ力強い返事と頷きに静は一安心したらしい。

じゃあね、と短い挨拶を終えて来賓席へ戻っていく。

その背中を見送る二人を繋ぐ手は、どちらからともなく握るその手を強くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして司会兼神父の千明の挨拶で始まった結婚式。来賓者は備えられた木製のベンチに腰掛け、式の進捗を見守っていく。

 

「まずは私の自己紹介から。私は大垣千明。新郎新婦が高校時代に所属していた部活……いや、同好会の野外活動サークル、通称『野クル』の部長を務めておりました。今回はその縁あって僭越ながら司会進行を務めさせていただく事となりました。不慣れな身ではありますが、ご容赦の程をよろしくお願いします!」

 

見事な紹介に参列者から温かい拍手が送られる。どんなとんでもない挨拶をされるかと思えば、真面目も真面目、かつ無難なものだ。

 

「それでは!挨拶もそこそこに、本日の主役たる二人に入場していただきましょう!志摩ケンさんと各務原なでしこさんです!」

 

来賓者が待つ管理棟前のサイト。その一段下のサイトの上り階段前で、主役の二人は並び待機していた。

千明にさん付けで呼ばれたこと。それにとてつもないむず痒さを覚えながらも、今一度深呼吸をするケン。

いよいよ始まる。その事実が改めて全身を駆け抜けてきたのだ。

 

「ケン君、緊張してる?」

 

「まぁな。やっぱりいざ始まるとなると、どうしてもさ」

 

「えへへ……実は私も。緊張と、ちょっとだけ不安なんだよぅ、ヘマしないかって」

 

物怖じしないタイプと思っていたが、なでしこも存外緊張するようだ。

 

「でもね」

 

そんな緊張を払拭するかのように。

すこし俯き気味だったなでしこは視線をしっかりとケンの方を見据える。

 

「これから、二人で歩いていく。そう考えたら絶対大丈夫って思えてきちゃうの。不思議だよねぃ」

 

「そう、だな。二人でなら、何があっても乗り越えられる……二人で一緒に生きていく。その為の結婚、なんだからな」

 

「うんっ!もうちょっとしたら、三人で、になるけどねっ」

 

これから沢山の困難があるだろう。

夫婦で生活していく上でのことはもちろん、出産、さらにその先の子育ても。

そのたびに苦労もするし、周りに助けられることも多いと予想できる。

でも乗り越えて、苦しさも幸せも一緒に噛み締めていく。

 

「子供、生まれたら振り回されそうだ」

 

「えへへ……きっと元気な子が生まれるよ」

 

「ま、それでも多少の元気な子ならなんとかなるか!だって

静岡から来た猛獣さんには振り回され慣れてるしな」

 

「あ!自分の奥さんを言うに事欠いて猛獣って!ひどいよケン君!」

 

「はっはっは〜っ」

 

ぷりぷりとしながら頬をふくらませるなでしこ。

そう言えば出会ったときにもこうして頬を思いっ切り膨らませてたなぁ、と既視感に見舞われるケン。

 

「んじゃ、そろそろ行こうか?皆、待ちくたびれてるだろうし」

 

「うんっ!行こっ!ケン君!」

 

差し出したケンの手を取るやいなや、彼がエスコートするつもりがなでしこに引っ張られていく。

やれやれ、さっそく振り回されるな、とこれからの振り回される生活に一縷の不安を覚えながらも、なでしこと共に階段を一歩一歩、共に踏みしめて上がっていく。

二人の人生、ゆっくり二人三脚で。

上で二人を待つ皆の拍手が、

風によって舞う桜が、

門出を華やかに彩っていた。




ここまでご愛読いただきありがとうございました!これで一応は本編完結の最終話となります。
が、これから一応はアンケートの通りに三期執筆します。これに至っては、映画が一つのパラレルワールドとなって、三期で分岐していくこととなります。後輩組も居ますからね〜。更には、結婚式の内容とか、二人の子育て。その他諸々を番外編・アフター等で書いていこうかと考えていますので、長い目でお付き合いいただけたら嬉しく思います。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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