バンドリ短編集   作:匿名スタッフくん

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花園さん好きです


僕と花園さん

 僕は、市ヶ谷さんのことが好きだ。僕にとっての市ヶ谷さんは高嶺の花的存在だからこそ、近付き難くて、遠くて。

 でも、この微妙な距離が心地よくて、今の生活を代償にしてまで市ヶ谷さんに近づくことを僕は望まなかった。ただ、見守るだけでよかった。だけど……

 

「どう? 有咲と接近、できた?」

 

 ある日謎の協力者? ができてしまったことにより、僕の人生は百八十度ぐらい変わった、気がする。

 

 〜

 

 僕の気持ちが謎の協力者……花園たえさんにバレたのは、三ヶ月前くらいか。でも、僕の気持ちを知った花園さんの対応は案外あっさりしていて、少し困惑した。

 こういうのを知った時は相手のことを茶化すのが当たり前だと思っていたけれど、花園さんは茶化すというか、協力? してくれるようで。

 

「キミの恋、応援するよ。私、有咲の好きなものなら知ってるから」

「え、それじゃあ市ヶ谷さんの好きな食べ物とかもわかるんですか!」

「うーんとね、ハンバーグ!」

「そ、それは花園さんの好きなものじゃ……?」

 

 といっても、花園さんが独特な感性を持っているが故に彼女のアドバイスは少し浮世離れしていて。

 でも、花園さんのアドバイスは変わっているだけ。出てくる言葉は少し不思議だけど、僕のことを真剣に応援してくれることがすごく伝わってくるから。僕は、それがすごく嬉しくて、心強かった。

 

 〜

 

「〇〇くんってさ、おたえと付き合ってんの?」

「えっ」

 

 そんなある日、市ヶ谷さんが僕にこんな質問をしてきて。花園さんは大切な友達だけど、恋愛対象ではない。それに、僕が好きなのは……

 

「良かったな〜、おたえと仲良くしてくれる男の子がいて! おたえってちょっと周りに馴染むのが苦手だから、〇〇くんが仲良くしてくれて嬉しいよ。その、ありがとね」

 

 そうだけど、そうじゃない。胸が苦しくなりながらも、僕は口を開く。花園さんが僕にかけてくれた言葉を、思い出しながら。

 

「僕が好きなのは、市ヶ谷さんです。花園さんは、そんな僕のことを応援してくれる素敵な人です」

 

 勇気を振り絞り、僕は市ヶ谷さんにそう告げる。でも、その答えは。

 

「ごめん、私、恋人がいるんだ」

 

 〜

 

「うーん、振られちゃったね」

「振られちゃったね、じゃないですよ! 花園さん、どうして市ヶ谷さんに恋人がいるって教えてくれなかったんですか!」

「……ごめん、私も知らなかったんだ」

 

 まさかの事実に、落ち込む僕。市ヶ谷さん、恋人いたんだ……花園さんもそのことを知らなかったみたいだし、これはまあ、うん、悲しい恋だ。悲しい初恋ってことにしよう。

 

「……ううん、違う、知ってた。知ってたけど、キミのこと応援したい気持ちが上回って、本当のことが言えなかった。ちゃんと言えば良かった、ごめんね」

「花園、さん」

 

 ……ああ、そっか、知ってたんだな。でも、それを伝えなかった理由が花園さんの優しさだったからこそ、彼女を責められない。

 でももう、散った恋を嘆いてもしょうがないし。前を向かないとだよね、僕も。

 

「大丈夫だよ、花園さん。応援してくれて、すごく嬉しかったし!」

「……でも」

「だから、頑張って次の恋見つけるよ! 今はまだすごい辛いから、先のことを考えられるまでもう少し時間がかかりそうだけど……」

 

 それに、花園さんに出会って後悔したことなんてないし! 僕のこんなちっぽけな恋を応援してくれる人なんて、そうそういないだろうから。

 だから溢れそうになる涙を堪えて、僕は帰ろうとする。その時。

 

「ハンバーグ」

「辛い時はハンバーグ、食べたら元気になると思う」

 

 花園さんは、まっすぐ僕の目を見てこう言った。そっか、ハンバーグ。辛い時はハンバーグ、か。

 僕は花園さんに連れられファミレスに向かうと、肉汁いっぱいのハンバーグを頬張る。ハンバーグは少ししょっぱかったけど、それもいつか笑える日が来るはず。

 

「そういえば私の家、うさぎがいっぱいいるんだけどね。キミも見にきていいよ。オッちゃんと一緒に歓迎する!」

「花園さん、パーソナルスペースの詰め方もう少し考えよ!?」

 

 ……うん、それは、きっと、すぐそばに。

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