ダキア大公家三男に転生したので帝国を理解らせに行く話   作:舞葉

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後日談・番外編など
ミューニッヒ戦争 1


1930年九月二十七日、ドイッチュラント連邦首都ベルン。新生国軍内の最大派閥を纏めるゼートゥーア上級大将の信任篤いシュラッヒャー首相率いるSPR(ライヒ社会民主党)DUD(ドイッチュラント民主同盟)による民主ブロック内閣、そしてウラーゲリ上級大将閥に属する旧帝国北部軍出身のライヒ国家人民党所属シュライゼ大統領*1の下で復興へと歩み始めた連邦は、今まさに政情不安という爆弾を抱え、いかに始末をつけたものかと各組織が独自に右往左往する日々を過ごしていた。

 

『プロレタリアによる独裁を!』

『パンとビールを国民に!』

『労働者に自由と権利を!』

『ルール・レーテに栄光あれ!』

 

『一つの民族、一つの国家』

『万人の万人による闘争』

『背後からの一突きへの復讐』

『邪悪なる多民族主義に鉄槌を』

『裏切り者のゼートゥーアに死を』

 

大通りにはスローガンが染め抜かれた赤や黒の旗が舞い踊り、毎日のようにあちこちで極右・極左勢力と政府側の三つ巴の小競り合いが繰り広げられる。少数派である左派には連邦が、極右には旧帝国軍の北部や東部軍所属将兵らとウラーゲリ閥がというように各勢力にそれなりのパトロンが存在し、引き換えに体制側は日々連立勢力の維持でかなりのリソースを削られている。

 

旧対ダキア・イルドア戦線将兵やドイッチュラント連邦南部諸地域の住民からの絶大な支持を誇るゼートゥーア・ルーデルドルフ両上級大将、そして何が何でもドイッチュラントの現体制を維持したいイルドア王国及び大ドナウ合衆国と言う欧州最強のパトロンを備えて尚、体制側は拡大を続ける両勢力の鎮圧に手を焼いていた。

 

 

 

 

 

さて、ニュルンベルクにおいてとある極右政党による党大会が開かれていたある日、()()はフランドル地方に本拠を置くFN社の自動拳銃を懐に、党大会の支持者として参加していた。

 

右を向いても左を向いても人、人、人の波。赤地に黒の鉤十字の旗を掲げ、人々は彼の演説を聞くべく集まっていた。

 

「噂には聞いていましたが、すごい人並みですね。まさかここまで彼の力が強まるとは」

「当然だろう?私は彼を昔から見てきたが、今の帝国をまとめられる者は他に居ないだろう」

 

近くを通る一団からそんな声が耳に入るたびに、彼らの表情は険しくなる。やがてどこから持ち出したのやら10.5cm榴弾砲のものと思しき空砲が鳴り響き、会場が静まり返ると、大出力を誇る大型対空サーチライトの光の列に囲まれた壇上に、カーキ色のコートと制帽を纏った一人の男が現れた。

 

漣のように広がる『万歳(ハイル)』の掛け声。まばらだったそれはやがて秩序を成し、統一された掛け声と化す。数百メートルの距離で見つめる彼らは、懐からオペラグラスに似せて作られた軍用規格の双眼鏡を取り出すと共に、懐に忍ばせた小型無線機のスイッチを押し、こっそりとインカムを取り出した。

 

「フェアリー01より07へ、01より07へ。そちらの状況は?」

『感度良好、位置につきました。そちらの合図でいつでも行けます』

 

技術の及ぶ限界まで小型化されたヘッドホンから流れる聴き慣れた若い女性の声に、彼はひとまず胸を撫で下ろし、左右に立つ男達に小さく頷いて見せた。

 

『後どのくらい?』

「演説が終われば奴は党本部に下がるはず。奴が執務室に行くには、必ずこちら側の廊下を通らねばならない。そこが狙い目だ」

 

返事がわりに耳から流れるのは、世界最高峰の精度を誇るKar98kの改修型の装填音。クリップ装填のガショリとした音が心地よい。精度の高い個体を選び抜き、サーミ白衛軍への援助の見返りとしてSAKO工廠でひそかに改装され、モーゼル社の手で特殊作戦仕様の改造が施され、仕上げに使用者の体格に合わせた小改造と亜音速弾への対応がなされた正真正銘の一点もの。精度も消音機も高倍率照準器も採算度外視で製造された、世界的に見ても珍しい『性能のいい試作品』である。

 

コストゆえに結局は新生国軍の特殊作戦群向けに少数が製造されるにとどまったその銃のスコープをのぞき込み、隣に座り込んだスポッターの指示に従って、彼女は銃を動かす。もちろん外部からの眼に対しては、抜かりなく光学迷彩術式を稼働済みだ。

 

「標的までの距離五百二十メートル、高低差が約十二メートル。風速は西から1.5m毎秒で、天気は晴天。文句なしのベストコンディションだ。目標が所定の位置につくまでのETAはあと三分。術式発動は限界まで絞れとの命令が来てる」

「まったく、ゼートゥーア閣下も無茶を言うわね。ま、やるだけやってみるわ」

 

目標が廊下に差し掛かるのを見計らって、地上班が発煙筒と爆竹に点火。金具の緩められたトランクケースの内部に続く導火線の炎を脇目に、彼らは素早くその場を去る。

 

『あと十二秒だ。フェアリー07、術式起動を許可する」

「了解、02。アウト」

 

爆音とともにトランクケースから濛々と黒煙が噴出し、会場は騒然となる。それに伴って標的も足を止め、ボディーガードに庇われつつも、彼は窓にくぎ付けになった。

 

しかし、その引き金が引かれることはついぞなかった。

 

「標的、停止。コンディションに一切の変化なし。…撃て!」

「りょうか…もがっ!?」

「どうした、ヴィ…うわっ!?」

『…フェアリー07?応答せよ、フェアリー07!どうした、ヴィー…『失礼っ!』ご、はっ…』

 

突然響き渡る悲鳴に思わず周囲を見渡した地上の彼は、周囲をカーキ色の突撃隊員に取り囲まれていたことに面くらい、対応が一拍遅れてしまう。

 

「クソ…が…あぁ?お前ら…は…」

「ふぅ、危なかった…悪く思ってくれるなよ。恨むんなら、うちのボスを恨め」

 

暗転する意識の中、罵詈雑言の一つでもぶつけてやろうと彼が――ヴァイス中佐が睨み付けた顔は、なぜか見覚えのあるものだった。

 

 

 

 

 

「んが、ここは…」

「おい、中佐殿がお目覚めだぞ」

「目隠しと手錠を外してやれ。コーヒーも淹れて来い。安物じゃだめだ。南方大陸ケニャ産の特一等キリマンジャイロだぞ」

 

次に彼らが目を覚ましたのは、赤レンガ剥き出しの壁にコンクリート打ちっぱなしの床、そしてマグネットで莫大な量の書類が留められた黒板と、うずたかく積み上げられた木製クレートが目を引く、倉庫と思しき空間だった。

 

「久しぶりだな、ヴァイス小…中佐。俺の顔に見覚えはあるかい?」

「あなたは…フフッ、私を叩き落とした輩の事を、どうして忘れられましょうか。

 

 

お久しぶりです、アントネスク准将閣下。帝国へようこそ!パスポートと入国許可証はお持ちですか?」

 

一個中隊十二人。ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐からその指揮権を引き継いだヴァイス中佐が直卒する、元帝国軍第203航空魔導大隊、現連邦国軍特殊作戦群第一魔導大隊の第一中隊は、忘れもしないあの真っ暗な新月の夜に、ダキア東部の空で自分たちを叩き落とした、元ダキア軍第一魔導大隊長、現大ドナウ軍第一魔導旅団長のアントネスクと対面した。

 

「パスポートはこっち、入国許可証も同じカートンだ。貴様らの上司であるデグレチャフ大佐には悪いが、こっちはこっちでうちのボスからの命令がある。しばらくすれば、ゼートゥーア元帥から直々に作戦中止命令が大佐に届くはずだ。ひとまず、コーヒーでも飲んでてくれ。事の次第は追い追い説明しよう」

 

ガチャリと音を立てて地面に落ちた手錠の痕をさする彼ら彼女らの目の前にコトリと置かれたのは、南ベスプッチ大陸産特一等豆を贅沢に使った本物のコーヒー。いまだ嗜好品の調達まで首が回らず、官給品の安物しか飲んでいない舌と鼻にとっては、あまりにも暴力的であった。

 

「うめ…うめ…」

「私、生きてて良かった…」

「そ、そんなにか…?まぁいい。そろそろメンツも揃う頃だろう。っと、噂をすれば」

 

唐突にコツコツコツと、一定の周期で金属のドアが叩かれた。モールス符号だと最初に気づいたのはヴィーシャかヴァイスか、ともかく小さい潜戸から姿を表したのは、二人の突撃隊員だった。

 

「っ、突撃隊員!?」

「クソッ、貴官らまで連中に染まったか!かくなる上は…!「待ってください、中佐殿!あの二人、何か妙です」

 

ヴァイスらから見て左側の男は、白髪ひとつない豊かな黒髪にカイゼル髭を生やし、左眼にモノクルを下げた、見るからに文官寄りの男。山岳帽には党の紋章の代わりに帝国陸軍の円形帽章が、赤い腕章の黒い鍵十字には、よくよく見ると何やら黒い糸で刺繍がなされている。

 

もう片方は左側の男よりやや年上であり、彫りの深い顔を彩るのは総白髪と見事な滝髭。帽子につけられているのはドイッチュラント陸軍の柏葉に交差した二本のサーベルをあしらった帽章で、腕章も何故か鉤十字や鉄十字ではなく、末広がりの丸みを帯びた太い黒白のタッツェンクロイツである。帝国軍との連続性を示す為に、鉤十字の代わりに鉄十字の腕章を佩用している突撃隊員は少なくないが、連邦国軍のそれはかなり稀であった。

 

「問題ないな、アントネスク?…ふぅ。いやーしんどいしんどい。あのノリに合わせるのは大変でしたねぇ、義父さん」

「私としてはこの一張羅が心配だったがな。乗馬ズボンなど、ここ十数年足を通したことすらないぞ?」

「あーたは歳相応の貫禄があるでしょうが!私なんてまだピッチピチの三十八ですよ!」

「何をほざく。私とてまだ六十半ばだぞ」

 

何やらどこかで声を聞いた覚えのある、絶妙に気の抜けたやり取り。これは一体どうしたことかと首を捻っていると、なんとアントネスク達は突撃隊の指導者でもないただの隊員相手に一糸乱れぬ敬礼を寄越し、二人も当然かのようにそれに答礼を返すではないか。

 

そして、次のアントネスクの声で彼らはひっくり返った。

 

「オホン。()()()()()()()()()()()、ヴァイス中佐隊以外の特殊作戦群は、どうなっておりますか?」

「デグレチャフ大佐ならあと五時間後に全員が合流する手筈だ。ミハイ、そっちの連中はどうなっている?」

「カランドロ准将とドミトレスク少将ならもうすぐ此処に。第一アルディーティ連隊も第一・第二強襲憲兵連隊も全員連邦入りしています」

「それは重畳。さて、この薄汚い変装をさっさと脱いでしまおうか」

 

突撃隊のカーキ色ジャケットを脱ぎ捨て、変装用の髭を痛そうな音を立てながらむしり取り、モノクルを投げ捨てたその顔は、まごうことなき大ドナウ合衆国軍元帥ミハイ・フォン・ゼートゥーアと、帝国軍上級大将ハンス・フォン・ゼートゥーアだった。

 

「っ!?そ、総員、元帥閣下と上級大将閣下に敬礼!」

「ああ、そういえば貴官らも拉致したんだったな。構わん構わん、楽にしてくれ。堅苦しいのは嫌いなんだ」

「とりあえず、貴官らは制服の襟と裾を正したまえ。これよりしばらくゲストの来入が続く、覚悟しておくんだな」

 

果たしてゼートゥーアの言葉通り、薄汚い倉庫には以降数時間に渡って場違いな来客が相次いだ。

 

真っ先に扉を潜ったのは、いつもより二割り増しの仏頂面でどかどかと踏み込んできたターニャ・フォン・デグレチャフ大佐。髪を後ろで束ねてハンチング帽を被り、労働者風の縞柄ワイシャツとデニム生地の釣りズボンと言った出立ちである。後ろには203大隊の副長となったヴィーシャことセレブリャコーフ少佐の代わりに副官となったタイヤネン中尉以下、特戦群の全将校が、これまた倉庫労働者風の地味な服装で続いている。

 

「おおヴァイス、久しぶりだな。三ヶ月前の会合以来か?」

「そうなりますね。大佐殿もお元気そうで何よりです」

「なに、貴官らが最前線で踏ん張ってくれているおかげだよ。私にも、仕え甲斐のある上司と祖国ができたものでな」

 

朗らかに笑う彼女だが、その言葉の端々には隠し切れない疲労がにじんでいる。特戦群の総司令官として奔走する彼女は、大隊司令官のころとは比較にならないほど多忙になっていた。

 

ターニャの次に現れたのは、イルドアと大ドナウの将校連だ。前者はカランドロ准将以下の第十師団第一増強突撃兵連隊で、後者はドミトレスク少将率いる第六強襲憲兵連隊。何やら見慣れた影があると目を凝らせば、レルゲン少将にウーガ准将まで付いてきているではないか。なにやら怪しい笑顔の国外組とは異なり、それぞれ作戦参謀次長と戦務参謀次長を務める二人は、何が起こっているのやら困惑顔であった。

 

「おや、デグレチャフ大佐にヴァイス中佐か。ゼートゥーア閣下と言いミハイ閣下と言い貴官らと言い、なぜこのような薄汚い倉庫に?」

「私にわかれば苦労していませんよ。ただ、碌な要件ではないことは確かだと思われます。レルゲン閣下もウーガ閣下も、ゼートゥーア閣下、及びミハイ閣下被害者の会筆頭でしょう?」

「飲みの時ならともかく、素面でそれを言うか?貴様……まぁ、否定はせんがな。っと、ルーデルドルフ閣下までいらっしゃったか。今頃、参謀本部は開店休業だな」

 

やがて場が落ち着いてきたのを見計らって、ミハイとゼートゥーアは頷きあうと、カンカンとその辺に転がっていたお玉でフライパンを叩き、皆の注意を巨大ホワイトボードに向けさせる。

 

「はいはい、総員静かに!まずは、はるばるこんな場末のボロ屋まで、わざわざご足労頂いたことに最大限の感謝を。本会議の司会・進行は、小官ミハイとゼートゥーア上級大将殿だ」

「それではこれより、作戦計画『鉤十字』の立案会議を開始する。各員は、ひとまずミハイ元帥閣下による背景事情の説明を聴くように」

 

二度目の大戦を食い止める為の戦いが、始まった。

 

 

 

 

「今回の作戦の最終目標は、NSRAP(国家社会主義ライヒ労働者党)、及び闘争戦線黒白赤に参加している全政党の瓦解と、それら諸党の指導者層の抹殺だ。逮捕でも拘禁でも拘束でもない。抵抗する党員がいれば、それらも排除対象と見做され、殺害が許可される。OREは全兵装使用許可。非正規戦であるが故に、無関係な人間を巻き込みさえしなければ、散弾だろうがガスだろうが拡張弾頭だろうが、いかなる兵器の使用も許可される。合わせて近々決行される予定のミューニッヒにおける一揆は、これを機関銃と装甲部隊でもって制圧し、同時に幹部をとり逃した場合の追撃も行うものとする」

 

会議に参加した人間にはおおよそ二人に一枚ほどの割合で資料が配られた。ガリ版刷りで三十ページほどの分厚い紙束には、各党本部の詳細な図面や目標人物の人相と常日頃の行動パターン、NSRAPに関しては総統特攻隊や突撃隊など、党首たる総統の各種親衛隊が有する武装や人員の規模と平時配置、果てはミューニッヒにおいて一揆が発生した場合の予想される行進ルートなどが事細かく記されており、この作戦にかけるミハイとゼートゥーアの本気度が見て取れる。各員がそれぞれ困惑や疑問を口にする中、この中で唯一背景事情をしているターニャや、彼女の薫陶よろしく国家社会主義政権の結末を理解している203大隊の将校連は作戦成功への覚悟を固め、積極的に発言を開始した。

 

「元帥閣下、上級大将閣下、想定される我が方の戦力はどれほどのものなのでしょうか?」

「おいおいセレヴリャコーフ少佐、まだこれらの諸党がなにをやらかすかもわからないというのに、いささか積極的に過ぎるのではないか?」

「ウーガ准将、それに准将に準ずる疑問を持つものは、報告書の最終ページに目を通しておいてくれ。それで大尉の質問だが、各党本部の襲撃作戦に投入される戦力は、想定で約二個師団半となっている。ドイッチュラント陸軍特殊作戦群が一個連隊規模、大ドナウ軍より強襲憲兵隊が一個師団規模と一個魔導連隊、そしてイルドア軍よりカランドロ少将*2指揮下の第十歩兵師団から、旅団規模の支隊が二個だ。作戦総指揮は私とゼートゥーア上級大将、補佐にレルゲン少将とカランドロ少将、作戦後方統括がウーガ准将となる。デグレチャフ大佐とアントネスク准将、それにドミトレスク少将*3の三名は、各自の支隊を組織して陣頭指揮に当たってもらう」

 

NSRAPのイデオロギー詳細と題された最終ページは、ミハイその人の手によるものだった。

 

そこに記されていたのは、『敗戦』が生み出した狂気の集大成。東欧系やルメリア半島など、およそ大ドナウやルーシーに住むほぼ全ての民族に対する偏執的な差別や、旧帝国系民族以外の徹底的な排除と純血至上主義、そして彼らの政策の究極的な到達点などが事細かに記されていた。

 

「失礼ですが、ミハイ元帥閣下。このような……このような、この世界に存在するいかなる罵倒でも足りぬような蛮行が、本当に人類に、行いえると?」

「ああその通りだ、少将。人間とは、信じ込むだけでいかなる残虐行為にでも手を染めうる。教会の異端審問など、いい例だろう。宗教はアヘンだというジュガジヴィリの言葉には、本人も共産教の教祖故に一言申したいが、この国家社会主義――ナチズムは、本当にアヘンそのものだ。耳触りが良く、一度触れれば止められない。誰かに責任を投げることは、すべてを肩に背負うことなんかよりも、よっぽど簡単なんだよ」

 

口調の崩れた最後の一文が、ミハイの本心を鏡のように映し出す。己より上のものが全てを投げ出した国を死に物狂いで引っ張り続け、地獄の大戦を戦い抜いた男の言葉には、下手な法皇や大統領のそれよりも重みがあった。

 

「突入部隊の編成はどうする?」

「各支隊の魔導部隊が先鋒でいいんじゃないですかね?」

「人員に余裕はあるんだし、完全包囲してもいいかもしれないな」

「隠密性のための消音器も必要だな。手配、頼めるか?」

「キツイですが…まぁなんとか致しましょう。それはそうとメディアの方はどうします?」

「潰すところは潰して、使えそうなところは徹底的に使い倒せ。なんなら、この最終ページの論文を持ち込んでもいいかもな」

「レルゲン少将、ウーガ准将、貴官らには参謀本部内の粛清を頼みたい。特にシュライゼ元中将の派閥は危険だ。最悪、証拠やクーデター計画書なんかを捏造しても構わん。とにかく、過激派や潜在的な敵対勢力を排除してしまえ」

「承りました。ところで、一揆の方は装甲師団でいかに制圧するのでしょうか?機関銃部隊は分かりますが、群衆に対する戦車の効果は今一つだと思うのですが」

「それなら心配ない、うちの連中が心得ている。あとは武器の選定だな。散弾銃を分隊に五丁ぐらいは渡しといた方がいいと思うぞ」

 

欧州各軍の協調の一環として叩き込まれた連合王国語で会話を続けるうちに、段々と各員の距離は縮まっていき、やがていつの間にやらミハイが引っ張り出していた巨大な折り畳みテーブルに各自の資料や大地図の類を広げ、これまたばらまかれた大量の万年筆を思い思いに手に取ると、肩と肩を突き合わせるようにして話し込み始めた。

 

欧州大戦から約三年、あの凄惨な戦いとは比較にならないほど小さく、しかし輪をかけてタチの悪い、陰鬱な戦争が始まろうとしている。

 

後世の歴史家は、それをミューニッヒ戦争と呼んだ。

*1
原作小説二巻にてデグ様に怒鳴り散らしていた帝国北部軍中将

*2
この時点ではまだ少将

*3
元ダキア軍第一強襲憲兵師団長、現大ドナウ軍憲兵総監




という訳で始まりました番外編。第一弾は大戦直後、ちょび髭リンチ編をお送りいたします。

また、この作品とは別にオリジナル小説『海の男の一世紀』を執筆し始めました。
https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=355508
よければ、こちらもご一読ください
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