問題児達と最強のオタクが異世界から来るそうですよ?   作:炎龍王アキラ

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本編16話目、2章2話目です!今回のゲストはこの方!


ミズキ 「初めまして。雷霆の庭所属、ミズキ・オルタンシアです。」


という訳で雷霆の庭からミズキさんに来てもらいました。ミズキさんの恩恵って何なんでしょうか?


ミズキ 「そうですね。詳しくは話せませんが、瞬間移動のようなものと思っていただければと」


成程。ちなみに悟君についてはどう思っていますか?


ミズキ 「もう1人の私達の主くらいには思っていますね。悟様の存在はそれだけ我々、雷霆の庭のメンバーには大きいのです」


分かりました。それでは本編どうぞ!


16話 十六夜VS黒ウサギ!(ついでにサラマンドラとの顔合わせ)

 

 

5人が店から出ると、熱い風が頬を撫でた。ジンはちなみに、店の中に置き去りにされている。いつの間にかに移動した支店からは街の一帯が展望できる。しかし眼前の景色はよく知る街ではない。

 

 

飛鳥 「赤壁と炎と……ガラスの街……!?」

 

 

 

飛鳥は大きく息を呑む。胸を躍らせるように感嘆の声を上げる。東と北を区切る、天を衝くほどの壁が境界壁だ。鉱石で彫像されたモニュメント、ゴシック調の尖塔群のアーチ、巨大な凱旋門、色彩鮮やかなカットグラスで飾られた歩廊。

戦後まもない時代から来た飛鳥にとっては初めて見るものばかりでテンションが高くなるのも無理は無いな。

 

 

 

飛鳥 「凄い……!980000Kmも離れてるだけでこんなにも違うなんて、東とはまた違った文化がある、あっあそこに歩くキャンドルがある!」

 

 

 

十六夜 「ふぅん。厳しい環境があってこその発展か。ハハッ、聞くからに東側より面白そうだ」

 

 

 

白夜叉 「……むっ?それは聞き捨てならんぞ小僧。東側だっていいものは沢山ある。おんしらのところ所の外門が寂れているだけだ」

 

 

拗ねるように口を尖らせる白夜叉。東側の階層支配者としては北側には少し対抗心があるらしい。飛鳥は美麗な街並みを指差す。

 

 

 

飛鳥 「今すぐ降りましょう! あの歩廊に行ってみたいわ!」

 

 

 

白夜叉 「そうだの。まぁ、続きは夜に話そう。それまで、遊んでくるとよい」

 

 

 

白夜叉は袖から取り出したゲームのチラシを五人に渡す。俺と朱里以外の三人はそれを覗き込む。

 

 

悟 「なら朱里。俺らは適当に屋台でもまわるか?」

 

 

 

朱里 「ん。美味しいものいっぱい食べる」

 

 

十六夜 「なら、俺らも適当にぶらぶらするか」

 

 

飛鳥 「ええ!色んな所を見てみたいわ!」

 

 

耀 「そうしよう」

 

 

それぞれが行動方針を決めて動こうとすると、背後から大声が聞こえてきた。

 

 

黒ウサギ 「見ィつけた―――――のですよおおおおおおおおおお!」

 

 

 

爆撃のような着地音が辺り一帯に響く。その声と音に跳ね上がる一同。声と音の主は普段の青い髪ではなく、桜色の髪になっている黒ウサギ。……これは間違いなく怒ってますねー。

 

 

黒ウサギ 「ふ、ふふ、フフフフ……!ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児方……!」

 

 

ようやくの所を力強く伸ばしていうあたり怒り度合いはかなり高いなこれ。まあ飛鳥があんな手紙書いてたら分からなくもないが。まあともかく今やるべきことは

 

 

十六夜 「逃げるぞ‼︎」

 

 

飛鳥 「え、ちょっと、」

 

 

悟 「朱里!俺達も散るぞ!」

 

 

朱里 「ん!」

 

 

耀 「待って私も…」

 

 

 

十六夜が飛鳥を抱えて逃走し、悟は朱里と共に高速でその場から離れる。耀も遅れながらも空中に飛んで逃げようとするが黒ウサギに足を掴まれた。

 

 

 

黒ウサギ 「捕まえたのですよ耀さん!アトデタップリトオセッキョウナノデスヨ…!」

 

 

耀 「りょ、了解」

 

 

黒ウサギの迫力に耀は怯えていた。そして黒ウサギは耀を白夜叉にぶん投げた。

 

 

白夜叉 「グハァ⁉︎おい黒ウサギ!おんし最近礼節をかいておらんか⁈これでも私は東側の階層支配者…」

 

 

 

黒ウサギ 「耀さんをお願いします。黒ウサギは他の問題児様方を捕まえなければなりませんので!」

 

 

白夜叉 「そ、そうか…何かは知らんが…頑張れ黒ウサギ」

 

 

黒ウサギは街の方へと猛スピードで消えて行った。

 

 

白夜叉 「しかし、小僧や飛鳥はともかく、果たして主様と朱里をどうやって捕まえるのか。流石に時止めを使うとは思えないが、それでも主様はかなり速いがな」

 

 

白夜叉はそんな事を考えながら、任された耀の相手をするのだった。

 

 

 

 

 

悟 「さて、とりあえず黒ウサギは撒けたらしいし、俺らはゆっくり観光でもするとするか」

 

 

朱里 「ん。でも黒ウサギに次見つかったらどうする?」

 

 

悟 「その時は大人しく捕まっておくとしよう。俺らにも非があるのは間違いないしな。まあ、この件を秘密にしようとしたのは頂けないが」

 

 

朱里 「悟、我アレが食べたい」

 

 

朱里が指差した先には焼き鳥が売っていた。ここからでもタレの香ばしい匂いが漂ってくるの分かる。

 

 

悟 「了解。そんじゃ買いに行くか」

 

 

朱里 「ん!」

 

 

焼き鳥の屋台に近づきメニューを確認する。ねぎま、砂肝、レバー、つくね、かわ……など様々な種類の焼き鳥が売っている。

 

 

店主 「いらっしゃい!何が欲しいんだ?」

 

 

悟 「ねぎまのタレ、砂肝の塩、かわ、つくねのタレ、塩、なんこつの塩をそれぞれ9本ずつ頼む」

 

 

店主 「あいよ!兄ちゃん、若いからか結構食うんだな」

 

 

悟 「いや、それは別行動中のコミュニティのメンバーの分も含まれてるんだ。まあ1人でも全然食えるが」

 

 

店主 「成程な!……ハイよお待ち!」

 

 

悟 「サンキュー。お代はこれで頼む。お釣りは取っときな」

 

 

店主 「あんがとよ兄ちゃん!毎度あり!」

 

 

焼き鳥の屋台から離れ、焼き鳥を食べながら、引き続き街を散策する。俺は砂肝を、朱里はねぎまのタレを食べながら。すると何処からか歓声が上がった。

 

 

悟 「何だ?何か催し物でもやってんのか?」

 

 

朱里 「ん、とりあえず見に行ってみる」

 

 

歓声のした方向に移動する。観客が上の方を見ていたので、それに倣って見てみると、黒ウサギと十六夜が鬼ごっこらしきものをしている。高速で移動しているため、普通の人なら見えない。程のスピードだが、そこは箱庭の住人と言うべきか見えている人の方が多いようだ。十六夜達の鬼ごっこも終盤に入った。舞台は時計塔の場所に移動する。そして黒ウサギが十六夜を追い詰めた。黒ウサギが眼下の歩廊に突撃する。

いかに十六夜といえど、空中で身動きはとることは出来ない。だからと言って、地道に追えばその間に黒ウサギは身を隠してしまう。

そうなってしまえばアウトだ。十六夜は黒ウサギが飛んだ瞬間、同時に跳躍しなければならなかった。

 

 

だが、逆廻 十六夜という超特大の問題児がこの程度で終わるわけは無い。

十六夜は身を翻し、力を溜め込んで、全身を撓らせ、全力で時計塔を蹴り飛ばした。

 

 

黒ウサギ 「・・・・・は?え、ちょ、ちょっと待ちなさいお馬鹿様ああああああああああ!!?」

 

 

 

余裕を見せていた黒ウサギが一転、絶叫した。その絶叫は距離があるここまで聞こえるくらいだった。当然周りの人達も同じ思いであり

 

 

「「「あ、あの人間滅茶苦茶だあああああ!!?」」」

 

 

 

ギャラリーから絶叫が上がる。それもそうだろういくら修羅神仏の集う箱庭と言えど、最下層でここまでの破壊活動をするのは魔王とその配下ぐらいのものだろう。

堪らず足を止め残骸を避ける黒ウサギにその瓦礫の陰から十六夜が接敵する。

 

 

……そろそろ止めないと被害が大きくなりそうだな。もう手遅れかもしれないけどな。

 

 

そう考えているうちにも十六夜と黒ウサギの攻防戦は続く。

十六夜が右手を伸ばし黒ウサギを捕まえようとするが間一髪のところで甲で弾かれる。

同時に伸びる黒ウサギの右手。十六夜も手首で弧を描き流し、また掴みかかる。

瓦礫が落ちるまでの刹那の時間、千手の攻防を繰り返し、互いが互いの攻守に全霊を尽くす中、残骸によって倒壊した建物が二人の頭上を襲う。

二人は、倒壊した建物を吹き飛ばさんと同時に拳を振り上げた。だがその拳は何者かに止められる。勿論止めたのは

 

 

十六夜 「悟!」

 

 

黒ウサギ 「悟さん!?」

 

 

まあ俺なんだけどな。後ろの倒壊した建物と時計塔は先に刻々帝(ザフキエル)を使って直しておいた。

 

 

悟 「取り敢えず、暴れすぎだお前ら。建物の倒壊でギャラリー巻き込んでるぞ。幸いにも怪我人は居ないけどな」

 

 

『勝敗結果:引き分け。”契約書類”は以降、命令権として使用可能です』

 

 

瞬間、 ”契約書類(ギアスロール)”が勝敗を定める声がだけが響いた。結果は引き分けのようでどちらにも命令権1回が獲得されたようだ。恐らく俺が2人の拳を受け止めたため、第三者によりゲームが終了されたため引き分け判定になったのだろう。無効にならなかったのは不思議なところだが。

 

 

十六夜 「悪い、ゲームに夢中になって気づかなかった。まああのままやっててもどうせ俺が勝ってたけどな」

 

 

黒ウサギ 「やや、それは聞き捨てなりません。黒ウサギの勝ちだったのですよ」

 

 

十六夜 「いやいや、俺だろ」

 

 

黒ウサギ 「黒ウサギです!」

 

 

十六夜と黒ウサギがあのまま続けていたら勝っていたのはどっちかという口論を始める。その時

 

 

「そこまでだ貴様ら!」

 

 

厳しい声音が歩廊に響く。三人の周りには炎の龍紋を掲げ、蜥蜴の鱗を肌に持つ集団……”サラマンドラ”のコミュニティが集まっていた。俺らは大人しく”サラマンドラ”の集団に連行されていくのだった。

 

 

 

 

 

 

白夜叉 「それにしても、随分と派手にやったようじゃの、おんしら」

 

 

十六夜 「ああ。ご要望通り祭りを盛り上げてやったぜ」

 

 

黒ウサギ 「胸を張って言わないで下さいこのおバカ様!!」

 

 

スパァーン!と黒ウサギのハリセンが直撃する。あの後、”サラマンドラ”の集団に俺達はこの運営本陣営の謁見の間まで連れてこられた。中にはジンと白夜叉、そして”サラマンドラ”の頭首と側近らしき人物がいた。

 

 

白夜叉は必死に笑いを噛み殺しつつ、なるべく真面目な姿勢を見せる。その隣にいる幼い少女―――今回の誕生祭の主催であるサンドラ嬢らしき人物がそばに控えているためだろう。

彼女の傍にいる側近らしき軍服姿の男が鋭い目つきで前にでて、高圧的に見下してくる。

 

 

「ふん!”ノーネーム”分際で我々のゲームに騒ぎを持ち込むとはな!相応の厳罰は覚悟しているか!?」

 

 

白夜叉 「これマンドラ。それを決めるのはおんしではなくおんしらの頭首、サンドラであろ?」

 

 

 

白夜叉がマンドラと呼ばれた男を窘める。サンドラは上座にある豪奢な玉座から立ち上がり、口を開いた。

 

 

サンドラ 「”箱庭の貴族”とその盟友の方。此度は”火龍誕生祭”に足を運んでいただきありがとうございます。負傷者は奇跡的になく、倒壊した建物もそちらの方によって修繕していただいたようなので、この件に関しては不問とさしてもらいます」

 

 

チッと舌打ちをしたマンドラ。意外そうに十六夜が声を上げた。

 

 

十六夜 「へぇ、いいのか?俺らに処分が何もないのは以外だな」

 

 

白夜叉 「うむ。おんしらは私が直々要請したのだからの。怪我人も居なかった上に、倒壊した建物も修繕されたから問題は無いだろう」

 

 

ほっと胸を撫で下ろす黒ウサギだったが、十六夜は軽く肩をすくませる程度だった。

 

 

 

白夜叉 「ふむ、いい機会だしこの場で昼の続きを話しておこうかの」

 

 

そう言って白夜叉が目配せをしサンドラが側近を下げさせる・・・・・・マンドラは残ってるが。

この場に残ったのは俺と黒ウサギ、ジンと3人だけだ。

人が居なくなるとサンドラはジンに駆け寄り固い表情と口調を崩す。

浮かべる笑みは歳相応の少女らしく可愛らしい。……言っておくが俺はロリコンでは無いからな?……朱里?アイツは俺より年上だから問題無いし、朱里に恋愛感情は抱いてないぞ?どっちかと言うと妹だな。

 

 

サンドラ 「ジン、久しぶり!コミュニティが襲われたと聞いて心配していた!」

 

 

ジン 「ありがとう。サンドラも元気そうでよかった」

 

 

同じく笑顔で接するジン。顔見知りだったのは知っているが、やはり他のメンバーと接する態度が違うな。まあ同年代の知り合いっていうのが大きいか。

 

 

サンドラ 「ふふ、当然。魔王に襲われたと聞いて、本当はすぐに会いに行きたかったんだ。けどお父様の急病や継承式のことでずっと会いに行けなくて」

 

 

ジン 「それは仕方ないよ。だけどあのサンドラがフロアマスターになっていたなんてーーー」

 

 

 

マンドラ 「その様に気安く呼ぶな、名無しの小僧!!!」

 

 

 

マンドラが帯刀していた剣をジンに向かって抜く。剣がジンの首筋に触れる直前、その刃を十六夜が足の裏で受け止めた。

足で止められた事に驚くサンドラを前に十六夜は軽薄な笑みを浮かべる。まあその瞳は笑ってないが。

 

 

十六夜 「………おい、知り合いの挨拶にしちゃ穏やかじゃねぇぜ。止める気無かっただろオマエ」

 

 

マンドラ 「当たり前だ!サンドラはもう北のマスターになったのだぞ!誕生祭も兼ねたこの共同祭典に”名無し”風情を招き入れ、恩情を掛けた挙げ句、馴れ馴れしく接されたのでは”サラマンドラ”の威厳に関わるわ!この”名無し”のクズが!」

 

 

睨み合う十六夜とマンドラ。慌ててサンドラが止めに入る。

 

 

サンドラ 「マ、マンドラ兄様!彼らはかつての”サラマンドラ”の盟友!此方から一方的に盟約を切った挙句にその様な態度を取られては、我らの礼節に反する」

 

 

マンドラ「礼節より誇りだ!その様なことを口にするから周囲から見下されるのだと――」

 

 

白夜叉 「これマンドラ。いい加減に下がれ」

 

 

悟 「十六夜、お前もここは一旦矛をおさめろ」

 

 

十六夜は少し不満気な顔をするが、大人しく引く。しかしマンドラは尚も白夜叉に食ってかかる。

 

 

マンドラ 「”サウザンドアイズ”も余計な事をしてくれたものだ。同じフロアマスターとはいえ、越権行為にもほどがある。『南の幻獣・北の精霊東の落ち目』とはよく言ったもの。此度の噂も、東が北を妬んで仕組んだ事ではないのか?」

 

 

サンドラ「マンドラ兄様ッ!!いい加減に――――――」

 

 

サンドラは言葉を続ける事が出来なかった。それは何故か?

 

 

答えは

 

 

悟 「いい加減にしやがれ

 

 

怒っている様子を隠すこともない程の殺気を纏っている悟が居たからだ。だが、これでも抑えている方であるが。その殺気に十六夜も黒ウサギも冷や汗を流している。ジンとサンドラに至っては震えている。

 

 

 

悟 「箱庭において”名無し”がかなり厳しい扱いを受けるというのも理解している。だが、頭首を差し置いて自分が場を取り仕切り、挙句の果てに、”サウザンドアイズ”幹部の白夜叉が正式に招いた客に切りかかる。そして何より、白夜叉にあらぬ疑いをかけ、罵倒したな?」

 

 

悟 「テメェ、ふざけてんのか?

 

 

普段のマンドラだったら「”名無し”風情が!」と一蹴していた事だろう。だが、悟が纏う殺気がそれを許さない。

 

 

白夜叉 「主様、私のために怒ってくれるのは嬉しいが、サンドラもジンも震えておる。一先ずその殺気を抑えてくれ」

 

 

白夜叉に言われ殺気を無くす。当事者がこう言っている以上、第三者がこれ以上言うのは無粋だな。

 

 

悟 「白夜叉が言うから今回はコレで手打ちにする。だが」

 

 

悟 「二度目はねぇぞ

 

 

そう忠告し、サンドラ嬢に謝罪をする。

 

 

悟 「スマン、怖がらせた」

 

 

サンドラ 「い、いえ。今回はコチラに非がありますので」

 

 

お互いに謝罪をし、この件は終わりとする。

 

 

十六夜 「気になったけどよ、噂ってなんの事だ?俺達に協力して欲しい事と関係があるのか」

 

 

うむ、と白夜叉は全員の顔を一度見まわした後、取り出した封書を十六夜に渡す。

 

 

白夜叉 「この封書におんしらを呼び出した理由が書いてある。・・・・己の目で確かめるがいい」

 

 

怪訝な表情のまま十六夜は手紙を受け取り、内容に眼を通す。

 

 

 

十六夜 「・・・・・・・」

 

 

内容を確認した十六夜の表情からは、普段の軽薄な笑みが完全に消えていた。

それを不思議に思った黒ウサギは、ピョンと跳ねて十六夜の後ろに立つ。

 

 

黒ウサギ 「十六夜さん・・・・?何が書かれているのです?」

 

 

十六夜 「自分で確かめな」

 

 

珍しく抑揚のない声音の十六夜は、背中越しに手紙を渡す。

其処には只一文、こう書かれていた。

 

 

 

『火龍誕生祭にて、"魔王襲来"の兆しあり』

 

 

 

黒ウサギ 「・・・・なっ、」

 

 

 

黒ウサギは絶句した後、呻き声の様な声を漏らす。次に確認したジンも同様だ。

 

 

白夜叉 「謝りはせんぞ。内容を聞かずに引き受けてのはおんしらだからな」

 

 

十六夜 「違いねえ。・・・・それで、俺達に何をさせたいんだ?魔王の首を取れっていうなら喜んでやるぜ?つーかこの封書はなんだ?」

 

 

白夜叉 「うむ。まずそこから説明しようかの」

 

 

白夜叉がサンドラに目配せをする。機密を話す合意が欲しかったのだろう。

サンドラが頷き、白夜叉は神妙な面持ちで語り始めた。

 

 

白夜叉 「まずこの封書だが、これは”サウザンドアイズ”の幹部の一人が未来を予知した代物での」

 

 

十六夜 「未来予知?」

 

 

白夜叉 「うむ。知っての通り、我々”サウザンドアイズ”は特殊な瞳を持つギフト保持者が多い。様々な観測者の中には未来の情報をギフトとして与えておる者もおる。そやつから誕生祭のプレゼントとして送られたのがこの”魔王襲来”という予言だったわけだ」

 

 

十六夜 「なるほど。予言という名の贈り物ってことか。それで、この予言の信憑性は?」

 

 

白夜叉 「上に投げれば下に落ちる、という程度だな」

 

 

白夜叉の例えに、一瞬だけ疑わしそうに顔を歪ませる十六夜。

だが、予言の信憑性としてはこれ以上無いがな。

 

 

十六夜 「・・・・・それは予言なのか?上に投げ上げといたら下に落ちてくるのは当然だろ」

 

 

白夜叉 「予言だとも。何故ならそやつは、”()()()()()”も”()()()()()()()()”も”()()()()()”も分かっている奴での。ならば必然的に”何処におちてくるのか”を推理することができるだろ?これはそういう類の予言書なのだ」

 

 

はい?と十六夜は呆れた声を上げる。黒ウサギ達も周囲の人間もその事実に言葉を失っている。マンドラに至っては顎が外れるほどに愕然としていた。次第にマンドラは顔を真っ赤にし、怒鳴り声を上げた。

 

 

マンドラ 「ふ、ふざけるな!!それだけ分かっていながら魔王の襲来しか教えぬだと!?」

 

 

サンドラ 「に、兄様………!これには事情があるのです………!」

 

 

憤るマンドラをサンドラが必死に宥める。十六夜は頭の中てを情報を整理し、確認するように白夜叉へ問う。

 

 

十六夜 「なるほど。今回の一件で、魔王が火龍誕生祭に現れる為、策を弄した人物が他にいる。その人物は口に出すことが出来ない立場の相手ってことなのか?」

 

 

ハッとジンが声を漏らし、サンドラを見る。

 

 

北側に来る際、白夜叉は言っていた『幼い権力者をよく思わない組織が在る』と。

もしもその人物が『口に出すことも憚られる人物』だというのなら、それは…

 

 

ジン 「まさか・・・・他のフロアマスターが、魔王と結託して”火龍誕生祭”を襲撃すると!?」

 

 

ジンの叫び声が謁見の間に響く。それは想像するのも恐ろしいことだ。秩序の守護者たる”階層支配者”が、その秩序を乱すという。

白夜叉は哀しげに深く嘆息した後、首を左右に振った。

 

 

白夜叉 「まだわからん。この一件はボスから直接の命令でな。内容は預言者の胸の内一つに留めておくように厳命が下っておる。ゆえに私自身はまだ核心には至っていない。・・・しかし、サンドラの誕生祭に北のマスター達が非協力的だった事は認めねばなるまいよ。なにせ共同主催の候補が、東のマスターである私にお鉢が回ってきたほどだ。北のマスターが非協力的さだった理由が”魔王襲来”に深く関与しているのであれば・・・・これは大事件だ」

 

 

唸る白夜叉と、絶句する黒ウサギとジン。

しかし、十六夜は得心がいかないように首を傾げた。そして、十六夜が言った。

 

十六夜 「それ、そんなに珍しいことなのか?」

 

 

黒ウサギ 「へ!?」

 

 

ジン 「お、おかしなことも何も、最悪ですよ!フロアマスターは魔王から下位のコミュニティを守る、秩序の守護者!魔王という天災に対抗できる、数少ない防波堤なんですよ!?」

 

 

十六夜 「けど所詮は脳みそのある何某だろ?妬みもあるし、野心もある。それに秩序を預かる者が謀をしないなんてのは幻想だ」

 

 

 

十六夜は冷めた目で言った。少なくとも十六夜や悟がいた世界ではそんな事珍しくもなかった。

それに白夜叉は静かに目を閉じて首を振る。

 

 

白夜叉 「なるほど、一理ある。しかしなればこそ、我々は秩序の守護者として正しくその何某を裁かねばならん」

 

 

サンドラ 「けど目下の敵は予言の魔王。ジン達には魔王のゲーム攻略に協力して欲しいんだ」

 

 

サンドラの言葉に、合点がいったのいう顔で一同は頷く。

魔王襲来の予言があった以上、これは新生”ノーネーム”の初仕事でもある。

ジンはことの重大さを受け止めるように重々しく承諾した。

 

 

 

ジン 「分かりました。”魔王襲来”に備え、”ノーネーム”は両コミュニティに協力します」

 

 

白夜叉 「うむ、すまんな。協力する側のおんしらにすれば、敵の詳細がわからぬまま戦うことは不本意であろう。・・・だがわかって欲しい。今回の一件は、魔王を退ければよいというだけのものではない。これは箱話の秩序を守るために必要な、一時の秘匿。主犯には何れ相応の制裁を加えると、我らの双女神の紋に誓おう」

 

 

サンドラ 「”サラマンドラ”も同じく。ジン、頑張って。期待してる」

 

 

ジン 「わ、分かったよ」

 

 

 

ジンは緊張しながら頷く。白夜叉は硬い表情を一変させ、哄笑を上げた。

 

 

 

白夜叉「そう緊張せんでも良い良い!おんしらには最強のフロアマスターが付いておるのだ!魔王は我が相手をする故な!おんしらはサンドラと露払いをしてくれればそれで良い。大船に乗った気でおれ!まあ、正直主様が居れば負ける事など無いとは思うがの」

 

 

 

双女神の紋が入った扇を広げ、呵々大笑する白夜叉。

 

 

十六夜 「魔王がどの程度から知るにはいい機会だしな。今回は露払いでいいが――――――――

別に、何処かの誰かが偶然に魔王を倒しても、問題はないよな?」

 

 

白夜叉 「よかろう。隙あらば魔王を首を狙え。私が許す」

 

 

サンドラ 「あ、あの?」

 

 

白夜叉 「どうしたんじゃ、サンドラ?」

 

 

サンドラ 「先程から白夜叉様がそちらの方を主様と呼んでらっしやるのは?」

 

 

そういえばそれについて言っていなかったな。

 

 

白夜叉 「ああ。それか。それは私が主様に隷属しているからだ」

 

 

 

サンドラ 「えっ!?」

 

 

マンドラ 「なっ!?」

 

 

サンドラとマンドラは白夜叉の言葉を理解するのに少々時間を要した。だが無理もない。白夜叉は東側の四桁以下では並ぶ者が居ないほどの実力者だ。その白夜叉を名無しの者が隷属させたということは本来有り得るはずがない事だからだ。

 

 

悟 「まぁ、それはそうだが。どっちかと言うとそれ以外の事に俺は不安を持ってるよ」

 

 

黒ウサギ 「それ以外の事とは?」

 

 

悟 「現在進行形でこの北側にわざわざ降りてきている神友の相手をしなきゃだろうからな」

 

 

「失礼します!」

 

 

俺がそう言うと、謁見の間に兵士が入ってきた。

 

 

マンドラ 「貴様!許可を取らずに謁見の間に入るとはどういうことだ!」

 

 

兵士 「も、申し訳ありません!しかし、緊急事態です!」

 

 

マンドラ 「何だ!」

 

 

兵士 「た、ただいまこの本陣営に来客が起こしになりまして!」

 

 

マンドラ 「今はそれどころでは無い!追い返せ!」

 

 

兵士 「む、無理です!」

 

 

マンドラ 「なんだと!」

 

 

兵士 「ら、来客の方は、二桁最強コミュニティ、雷霆の庭リーダー……ゼウス様です!」

 

 

マンドラ 「なっ!?」

 

 

悟 「ハァーー」

 

 

俺は溜息をつきながら恐らく荒れるであろう今後の展開を考えるのであった。

 

 

 

 




如何だったでしょうか!後次話からアンケートをとるのですが、皆さんは今回みたいに約1万字いくくらいの文章か、4000~5000字くらいの文章量どちらがいいでしょうか?
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