あ、よくある転生物です。
道満の子
―――――私こと、
何がどうしてそうなったのか記憶にないのだけど、転生した感覚だけはあった。
混乱の最中、私の父らしき存在を目にしたことで一瞬にして混乱は止まった。
「ンンンンンン、我が子というものは、不思議なものですねぇ」
蘆 屋 道 満 。
というわけで、蘆屋道満の子として生まれた私は、現代で暮らしている。
よくわからない?
安心して欲しい、私にも分からない。
何故、蘆屋道満が現代に暮らしているのか。
何故、蘆屋道満がシングルファーザーなどしているのか。
何故、蘆屋道満がFGOの蘆屋道満なのか。
疑問が尽きない。
とはいえそれは些細なことで。
私は今や5歳。
もうすぐ小学校に入学する年齢だ。
「ンンンンンン、今日は胡桃に言いたいことがございます」
「行ってきます」
「まあ聞きなされ」
そんな風に区切り、私は制服に袖を通して玄関へ。
そして、保育園へと向かう直前に呼び止められる。
なんだというのか。
そもそも道満に私をどうこうできる権力があるとでも思ったのか。
「ありますが?」
「そうでしたねマイファーザー」
「というわけでこちらを」
そう言って、取り出したるは謎の紙。
式紙のそれに見えるのだけど、それが何だというのか。
「これが胡桃です」
「……?」
「胡桃、あなたは式紙の失敗作です」
告げられた言葉は、私には理解できないことだった。
式紙の失敗作が、私?
よくわからないし、わかりたくもない。
「実は拙僧、人を育み育てるつもりなど毛頭ありませんでした」
やめて。
聞きたくない。
「しかし、何の因果か人の魂が混じった式が生まれ、拙僧の元に転がり込んできた」
頭を抱える。
こんなの訳が分からない。
よく分からなくなってきた。
「なのでまあ、
……こうなるかなって思ってたから!
こうなるかなって思ってたから頭抱えてるの!
「行き当たりばったりすぎる!」
「ンンンンンしかし、しかしですね胡桃。こういうことはまず興味から始める物ですからして」
「うるさいドーマン!」
「ンンンンンンン!」
リバーブローを叩き込み、そのまま外へと飛び出す。
道満が変なことを言うから遅刻しそうだ。
というか、あの話自体が嘘の可能性すらある。
ええいマイファーザー。
何を考えてこんな話をしたんだ。
意味不明にもほどがある。
「私の反応を楽しみたいとかそんな感じかもしれない……」
いやあ、これがあり得るのがDOMANの駄目なところ。
呟きながら歩く私の前を、双子の兄妹とその母親が横切る。
アクア君とルビーちゃんだ。
なんともキラキラした名前だけど、それくらい普通なのかもしれない。
この辺りは胡桃という名前にしてくれた道満には感謝しなくてはならない。
「いやないわ」
即決。
そのまま思考を切り替えて保育園へと向かう。
独りで保育園へ向かわせるのは危険?
それはそう。
だけど私には道満の式紙がついている。
幻影の道満を見せることは余裕なのだ。
なんだこの式紙。
いつか破り捨ててやるぞ。
そうそう、双子の名前で思い出したのだけど、ここは『推しの子』の世界のようである。
凄いね、道満に育てられながら推しの子の世界に転がり込んだよ。
なにこれ。
いや本当に。
時期はどの辺りなのか、よく分からない。
もしかしたらもうアイは死んでしまっているのかもしれない。
それすら分からないのだ。
なんでテレビを置かない上に新聞も取らないのか。
まあいい。
それよりも今はやるべきことがある。
「アクア君、ルビーちゃん」
「くるみか」
「あ、くーちゃん!」
この、未来のスターに取り入ってサインをもらうんだ。
いやあ、欲しくない?
「ンンンンン……あまり人と関わるのは危ないのですが……」
「ドーマンは存在が危ないからセーフ」
「ンンンン! まあ事実ですが」
「否定して」
それはそれとして、やはり先程の2人に関わる以上その親とも仲良くしたいというのが本音、
というかアイに会いたい。
ギャグではなく。
「それで拙僧に頼み込んで星野アイの家を探し出して、そこに駆け込むと」
「そうよ」
「ンンンンンン」
何か言いたいなら言えばいいのに。
こういう時だけ思わせぶりな顔をするだけである。
しかし、この状況で思いもよらぬ出来事が起こる。
「……ふむ、血の匂いですな」
「え……?」
道満が呟くと、颯爽と駆け出す。
速い。
流石はマッチョ。
今では霊媒師の真似事で稼いでいるらしいが、その筋肉はどこで使うのか。
「はぁ……はぁ……」
道満が止まったところまで走り寄ると、玄関まで流れる血が見えた。
うえ、駄目だ。
むせかえるような血の匂いが私の思考を潰す。
目の前には腹部を刺されて今にも死にそうな女性。
恐らく星野アイ。
近くにアクア。
その背後の扉にも人影が見える。
どうやら最悪のタイミングだったらしい。
「ドーマン! なんとかしろ!」
「はいはい急急如律令急急如律令」
立っている者は親でも使えと言う。
なので使う。
どうせ誰かが何も言わなければ何もしないだろう。
そう言う男だ、道満は。
「え、あ? あれ???」
「え……」
というわけで。
星野アイは死ぬことはなく。
殺そうとした相手は定期的に尿路結石になる呪いをかけられた。
わりとハッピーエンドにダンクした気がしましたまる。
「―――――というわけで、私はあなた達のサインをもらう権利があると思うの」
「……はあ?」
時は流れて10年後。
私は星野アイの子供たちにサインをねだっていた。
ここ数年ずっと。
「あげませーん☆」
「ええっ!?」
が、駄目……!
またもや妹のルビーちゃんに阻まれた!
「いや、どうして駄目なの? ちょっとくらいいいんじゃない? 先っちょだけでも」
「その表現はやめろ」
べしべしと兄の方を叩くと、丸められたノートで反撃される。
痛くはないが、まあそれでしぶしぶ引き下がる。
「でも、やっぱりビッグにならないと駄目なの? サイン?」
「うん! ちゃんとね、サインが価値のあるものになってからプレゼントしてあげたいの!」
「……」
「お兄ちゃんは知らないけどね!」
「あふーん」
なるほど、理解した。
後で貰えるってことだね(確信)。
それじゃあ安心だ。
ちなみに星野アイのサインはもう貰っている。
命の恩人だもんね!
当然だよね!
……まあ直接の持ち主は道満なんだけど。
「とにかく、ビッグになってもらわないと私が困ります!」
「はいはい」
なんだか受け流されているような気がするけれど。
まあいい、いつかは貰えるのだ。
できれば早い方がいいのは確かだけど。
「ところでくーちゃん」
「ん?」
そして、ルビーが何だか不思議そうな顔でこちらを見ている。
何を考えているの。
「くーちゃんはどうして
「? 可愛いからだけど」
他に理由とかいる?