♂の子【本編完結】   作:偽馬鹿

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ネタバラシ。
と言っても想像しやすい感じですが。
これにて一応完結です。


駄目な子

「―――――さあ、大詰めですぞお二方」

 

道満さんが言う。

そう、この先に黒幕がいる。

追い込み、追い詰め、突き詰めた。

限界まで研ぎ澄ませた刃を持って向かう。

 

これは殺意だ。

母を殺そうとした、そして幼馴染の命を奪った相手への報復だ。

 

ガシャンと大きな音を立てて建物のドアが閉まる。

絶対に逃がさない。

ここから逃がすわけにはいかないのだ。

これが最後のチャンスなのだから。

 

 

 

 

 

 

……まあ簡単な話、私は蘆屋道満を親だと思ってはいたけれど、信頼はしていなかった。

だってそうでしょう?

あの蘆屋道満だ。

あの胡散臭くてイケメンでマッチョで胡散臭い陰陽師の蘆屋道満である。

信頼できるはずがない。

 

だからこそ、私はあまり道満がアクア君とルビーちゃんと一緒にいることを少なくしたかった。

まあ無理だったけど。

流石に母親の命の恩人相手に離れる、とか無理無理。

私も無理だもの。

仕方がない。

 

 

 

だけどこれはない。

なんてことだろう。

蘆屋道満は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう、あの時ストーカーは尿路結石地獄に叩き込んだ後、黒幕は即座に始末したのだ。

道満にしては直接的だな、と思ったのだ。

あの時問い詰めていればよかった、

まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

考えてもいなかった。

 

目的は何なのか。

いやまあわかる。

あの将来有望な若者達の青春、執念費やす時の顔が。

その時の感情が見たいのだろう。

多分だけど。

 

「ンーーーーーその顔見たかったなー!!! ……じゃなくて」

 

頭をぽかり。

今はそれどころではないのだ。

 

まずはこの頑丈な結界から抜け出さなくてはならない。

食料は豊富にあるし、死にはしないのだけど、その間に大変なことになるのは明白だ。

 

 

 

「くああああああ道満んんんん! 私のアクア君とルビーちゃんに何するつもりだああああああ!!!」

 

 

 

 

 

ザクリ、とナイフが刺さる音がする。

その音は道満の背中からしていた。

そのナイフを握っているのは、ルビーだ。

 

「ンンンンンン。これはこれは……どういうことですかな?」

「どういうことですかな? ……じゃない!」

 

そのままナイフを捻り、確実に仕留めようとするルビー。

しかし、遅い。

道満はナイフを即座に抜き去りこちらへと飛んできた。

それどころか、ナイフは直接刺さっておらず、衣服を斬り裂いただけのようだ。

 

俺も今まで学んできた方法で道満の動きを牽制する。

どういうことか?

そんなの決まっている。

 

「―――――お前が胡桃を殺したんだろう!」

 

ナイフが道満の頬をかすめる。

だがそれだけだ。

道満はそのまま俺の横をすり抜けるように進み、自身が閉じ込められていることを知る。

 

「ンンンンンン。なるほど、ここで拙僧を仕留めるつもりですか」

「当然!」

 

ギリリリリ、と歯を鳴らしながらルビーが近寄っていく。

許せない許せない許せない。

ルビーの怒りは頂点に達している。

 

だが、俺は冷静に話を進める。

そう、焦ってはいけない。

この状況、道満に逃れる術はない。

逃れることのできる状況を作らせない限り、こちらが有利だ。

 

 

 

「……まず、どうして俺達にこのようなことをした?」

「ンンンンン?」

 

冷静に、まずは問いかける。

必要な情報を聞き出すのだ。

そうすれば、自ずと勝利は見えてくる。

 

「見たかったのですよ。才能の歪んて行く姿を、様子を、その様を」

「そのために実の娘を殺したのか!」

「ンンンンン」

 

それは肯定か、それとも……。

それを判断する前に、道満は動いた。

先程入って来た入口に向かうのではなく、建物の最奥へと。

 

「追うぞ!」

 

急いで俺達も建物の奥へと向かう。

だが、この先は行き止まりだ。

それは既に調べてある。

 

そこに向かう理由は?

逃げるならばあの場で粘り、俺達をやり過ごした後で逃げた方が楽だろう。

考えろ。

思考を止めればあいつの思うがままだ。

 

 

 

だからこそ。

この状況に追い込んだ。

そして、そして―――――

 

 

 

「は?」

「え?」

 

 

 

―――――そこには、無傷で寝かされている胡桃がいた。

 

 

 

「ンンンンン」

 

道満が笑う。

煩い、それどころではない。

 

何だこの状況は。

確かに胡桃の死ぬ様を見た。

死んでいる所を見た。

それが、嘘だというのか。

 

ありえない。

いや、そうか。

あり得るのか。

あの奇怪な術を使えば、死者を蘇らせることも可能なのか。

 

「拙僧、言っておりませなんだが。胡桃を殺してはおりませぬ」

 

にこりと笑う。

やめろ。

その顔はただの仮面なのだろう。

だからそんな顔をするな。

 

「その証拠に、ホラこの通り。生きております」

 

これは前提が崩れた。

梯子が外された。

この状況は読んでいなかった。

 

 

 

どうする。

これでは殺人教唆や殺人の罪であの男を捕まえることが出来ない。

何せ被害者が生きているのだ。

被害者がいない殺人事件などありえないのだから。

 

「さてどうしますかな? この状況では、拙僧を見逃すことで胡桃が貴方達の元に戻ってきますぞ?」

「ぐ……」

「どうしますかな?」

 

これは最悪の状況だ。

こんなの、おかしいのに、抗えない。

 

どうすればいい。

そう思いながら、隣にいるルビーに目を向ける。

 

「―――――」

 

ルビーは泣いていた。

感情がオーバーフローしているのだろう。

このままではまずい。

この年齢の少女にこれだけの情報量は文字通り毒だ。

精神に異常が起きてもおかしくない。

 

……仕方ない。

この条件を飲むしかない。

そして、ルビーを早く休ませなくては。

 

 

 

「分か―――――」

 

 

 

道満の条件を飲む。

そう言う直前に。

天井が砕けて。

 

 

 

「――――――っしゃあああああああ!!!!」

 

 

 

真上から胡桃が落ちてきた。

 

 

 

 

 

「え?」

「は?」

「ンンンンンンッ!?」

 

落ちてきたくーちゃんは、その勢いのまま道満さんを踏み潰した。

そしてそのままマッチに火をつけて寝ているくーちゃんに向かって放り投げた。

そして勢いよく燃えるくーちゃん。

 

「??? くーちゃんがくーちゃんを燃やしてる???」

 

あ、駄目だ。

もうわけわかんない。

もうぶっちゃけダウンしたいんだけど、今はもうちょっと我慢。

状況確認しなくちゃ。

 

燃えてるくーちゃんはまるで紙みたいに綺麗に燃えていく。

と思ったら、突然人の形をした紙になって燃え始めた。

え? え?

結局わけわかんないんだけど。

 

「簡単に言えば……私が本物、そっちは偽物」

 

そう言って仁王立ちするくーちゃん。

あ、なんかボロボロだね。

いつも格好には人一倍気を使ってるくーちゃんがボロボロで、なんかおかしくなっちゃった。

 

「ふふっ」

 

ああ、こんな風に笑ったのは久し振りだ。

それまで道満さんを騙すために偽物の笑顔ばかり浮かべていた気がする。

そうだ、その道満さんを警察に突き出さないと。

 

「ンンンンン。あの結界を抜けてきましたか。少々想定外ですなあ」

 

道満さんが変なことを言う。

結界……?

もしかして、あのきっかいなじゅつでくーちゃんを閉じ込めていたのかな。

なるほど、それじゃあ見つからない筈だ。

 

「あんた、私が借りてた式紙で何したと思う?」

「ンンンン?」

 

くーちゃんは楽しそうに笑っていた。

何か凄いことをやってる気がする。

くーちゃん、一体何をしたんだろう。

 

 

 

「―――――()()()()だよ。()()()()()()!!!」

「っ!!」

 

 

 

くーちゃんが何かを喋った瞬間、一瞬だけ黒い影が見えて。

道満さんを赤い槍で突き刺して消えた。

 

「ぐええええっ!?」

「ええっ!? どうしたの!?」

 

そうしたら、くーちゃんが崩れ落ちるように倒れていた。

何が起こっているのかまるで分からない。

どういうことなのか誰か説明して!

 

「魔力が吸いつくされた……! あのクーフーリンのくせにあのクソ燃費どういうことだよ……!」

「???」

「いや、こっちの話」

 

赤い槍に刺されている道満さんは、そのまま壁に縫い付けられていた。

がっつり刺さってて動けそうにない。

 

「ンンンンン。これは失敗! 流石に無理ですなあ!」

 

心臓刺されてるのに喋ってるよこの人。

何しても驚かないと思ってたけど驚いちゃった。

 

「致し方なし。拙僧これで退散いたしましょう! 胡桃は置いていきます故、お世話をお願いします」

 

そう言って、道満さんは爆発した。

文字通り爆散だ。

血とか骨とかない辺り、本当に人間じゃなかったっぽい?

 

「あいつ、本体じゃなかったな……?」

「ん? どういうことだ」

「本物のドーマンは他の場所にいるってこと」

 

それは。

私達のやってきたことが無駄に終わっちゃったわけで。

何だか一気に疲れちゃった。

 

「「はぁー……」」

 

その場に座り込む。

横を見ると、お兄ちゃんも同じみたいだ。

なんだかそれで笑っちゃった。

 

 

 

でも。

くーちゃんが戻ってきてくれた。

それがとっても嬉しいことで。

 

 

 

「……とりあえず」

「ん? んうむ!?」

 

 

 

その後いきなりキスされたことは、まあパンチ一発で許してあげた。

 

 

 

 

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