それから暫く経って。
見事に衣装担当(サブ)の地位に立った私は、その合間に心霊スポットを巡る旅に出るようになった。
比率が6:4位なのはご愛敬。
しかし考えていたほど魔術師は世間様に迷惑をかけていないらしい。
今日まで旅をしてきたが、出会った魔術師はいなかった。
……冬木市を候補に見つけてきた時は即座に却下したけども。
いやあそこはやばい。
魔術師がたくさんいる上に聖杯案件とか。
死にたい奴しか行かないよ。
それはともかく。
学生としてはなんか色々あるのだ。
そう、進路とか色々と。
「私は専門に入って服飾の勉強でもするつもりだけど、そこの2人はどうするの?」
少なくとも魔術師として以外の、表側の職業は決めておかなくてはならない。
個人的に今修羅場してる服飾関係に進むのがベターかなと考えている。
もっと人数を増やすか提携先を増やさないと……死ぬ……!
「アイドル!」
「……まだ決めてない」
星野兄妹は想像通り。
まあ、こうなる感じだよね。
まだ2人は中学2年生。
暫く猶予はあるけれど、まあ今のうちに何かあるといいだろう。
目標とか。
「そういえば、胡桃さんの次行く場所は……」
ここでアクア君が私の向かう先について聞いてくる。
ははーん自分の事から話を逸らしたいんだな?
まあ仕方がない、流されてあげよう。
大人だからね。
……そういえばアクア君の中の人はお医者さんだった気もするけど。
まあいいか。
地図を出して向かう先を指差す。
「ここに行きます」
「……ここって不審死とかあった場所じゃなかった?」
知ってる。
何か凄い勢いで死人が出ていて、夜間外出禁止令まで出たとかなんとか。
「大丈夫なの?」
「問題ないない」
魔術師を錯乱死させたら大したもんですよ。
それに、どれだけ衣装に気を使ってると思っているのか。
最近の服には聖骸布まで縫い込んであるからね。
誰の物かは知らないけど。
つまるところ、1人で行く分には全く問題はないのだ。
スタッフなどいない。
流石に他の人間がいたら守り切れないからね。
「というわけで、よっぽどの事がない限り平気だよ!」
「心配だよぉ!」
ルビーちゃんが心配してくれるけど、安心して欲しい。
よっぽどのことは、起こらないからよっぽどのことなのだ。
「グルルルルルル……!」
よっぽどのことが起こりました。
「うーんナイスアクシデント。スタッフがいたら死人が出てたね」
魔術で強化された大型犬だ。
魔術の影響で全身が強化されている上に、アンデッドに近い身体にされている。
噛まれたらどうなるかわかったもんじゃない。
なるほど、不審死はこいつが原因か。
カメラは先程嚙み砕かれたので、今は両手も空いている。
嫌な予感は付きまとうが、今はこいつをどうにかしなくてはならない。
「是悉く燃えよ! 是悉く凍てつけ!」
しゅばばばっと印を結んで魔術を編む。
燃やして冷やして物理で叩く。
その後で安らかに眠らせてあげるのが私の役目だろう。
「というわけでべちーん!」
「ぎゃん!」
ダメージを受けている犬の頭を思いっきりバッドで殴って脳を揺らす。
アンデッドに近くなっているとはいえ、一応は生きているはずだ。
脳を揺らせば一時的に動けなくなるのは動物の常である。
「というわけで成仏させるついでに、お話どうですかお嬢さん」
「……バレてたのね」
背後から、つぎはぎのウサギ人形を持って現れた少女。
年齢は大体10歳くらいだろうか。
見た目は黒髪のおかっぱ。
ただし瞳はスカイブルー。
肌は雪みたいに白い。
そんなのが着物で出て来たのだった。
その身体からは魔力が放たれていた。
魔力量からして私よりも格上。
うーん逃げられそうにない。
「で、あたしの庭に入ってきて、何してたの?」
「ユーチューバー」
「へえ、え? ゆー……何?」
どうやら魔術師にかなり傾倒しているらしい少女に、私からユーチューバーのレクチャーをしなければならないらしい。
とりあえずタブレットを取り出して動画を見せる。
主に私がわーきゃー言ってる動画などを。
「これは
「これでお金を稼いてます」
「へぇ……今はこのようなことで稼げるのね」
そうなのです。
ちゃんとしていればの話だけど。
魔術師としてちょっとやらせを作ってるけど、大目に見て欲しい。
一応霊障だし。
「ふむ……決めたわ」
「何を?」
「貴方について行きます。拒否権はないわ」
はい。
どうやら気に入られてしまった様子。
お犬様のお墓を立ててあげつつ、私は色々と考える。
この少女が私についてくるということは、何かあるのだろう。
彼女の生まれとか何とか。
というかここの主がこの少女なら色々と聞きたいこともあるのだけど。
……まあいいか。
拗れそうだし。
「そういえばお名前は? 私は蘆屋胡桃」
「
名前を聞いて、失敗したなあと思ったりなど。
浅神かあ……浅上の本家本元出てきちゃったかー。
らっきょ時代の設定だけどまだ生きてるかな?
生きてるよね。
多分。