ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー   作:ホスパッチ

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第十八話『諦めない心』

「アルヴェムくん、通信機器が使えなくなってて状況がわからないんだけど、今戦況はどうなってるんだい?」

「部長はアルジェントを連れて屋上でライザーと一騎打ち。通信機器を封じているのは俺だが今はこの状況が必要なんだ」

「なるほどね……ここはキミを信じる他にないようだね」

 

 木場は詳しく話さずとも察してくれる。

 一方の一誠は考えが及ばないようで、詳しく説明している暇もないため、

 

「イッセー、俺を信じろ。今は一刻も早く部長の援護に行く、それが何よりも優先事項だ」

「わかった! そんじゃあ、さっさと倒さねえとな!」

「威勢のいい『兵士』だ。そして『騎士』も登場か……先ほどは非道な真似に憤慨したが、我が名はカーラマイン! グレモリー眷属の『騎士』よ、いざ尋常に剣を交えようじゃないか!!」

 

 鞘から剣を抜き、炎を滾らせる甲冑の女性――カーラマイン。

 その闘志は木場の心にも火をつけたのか、アルヴェムたちの前に出て自らも剣を抜く。

 

「ご指名とあらば、逃げるわけにはいかないね。僕はリアス・グレモリー眷属の『騎士』木場裕斗、お相手願う!」

 

 刹那、『騎士』同士の戦いが始まった。

 互いに特性である超スピードを活かした剣戟の数々。その速さは火花が遅れて発生するほどで、一誠の目にはついていけない世界となっているだろう。

 

 しかし、これで『騎士』が一人消えた。

 残った『戦車』――仮面を顔の半分に着けた女性が前に出てくる。

 

「リアス・グレモリーの『兵士』よ。手持無沙汰なら私と戦おう。私の名はイザベラ、そちらの名を聞かせてくれ」

「俺は兵藤一誠、やるならやるぜ! ブーステッド・ギア・スタンバイ!」

Boost(ブースト)!!』

 

 一誠もイザベラと相対し、神器を起動させる。

 相手を倒せるまでパワーアップするには少々時間がかかり、その間、一誠は逃げに徹しなければならない。

 こちらも援護に入るか……そう思った瞬間、しゃがみ込んだアルヴェムの頭上を蹴りが通り過ぎる。

 

「レイヴェル様を返してもらうわよ!」

「先にこっちからだな」

 

 すっかりダメージから復活したニィとリィ。

 そして今度は後方に控えていた和服の『僧侶』が援護射撃で魔法の数々を放ってくる。

 レイヴェル・ハンマーを盾にして魔法を防ぎながら、ニィとリィの打撃を捌く。

 

 その途中、アルヴェムは改めて屋上へと目をやった。

 炎と消滅の魔力。二つの力が飛び交ってはいるが、最初とは違って炎の方がだんだんと押してきているように見える。

 リアスの魔力、体力も限界が近付いてきていた。急がなければライザーの勝利は確定的なものとなる。

 

「キミたちの動きは勉強になった。だが、そろそろ勝たせてもらうよ」

 

 足の爪先を地面に引っ掛け、土を巻き上げる。

 それでニィの視界を奪い、次いで迫るリィの直線的な拳を腕を縦に構え掠らせるようにして軌道を逸らす。

 体勢を崩されたニィとリィ。その二人の手首を掴み、その場で回って『僧侶』へ向かって投げつける。

 

「っ!?」

 

 流れるような動きに『僧侶』は受け止めるか、弾くか選択を躊躇った。

 しかし、その後を投擲されたレイヴェル・ハンマーに巻き込まれ、三人は下敷きとなる。

 まだ意識はある。『僧侶』が魔法で脱出を図ろうとするも、すでにアルヴェムはその場から跳んでいた。

 

 追撃。三人を下敷きにしているレイヴェル・ハンマーを上から勢い良く踏みつける。

 地面が割れるほどの衝撃。三人は喀血し、白目を剥いて脱力する。

 すぐさまリタイアの光に包まれ、その姿はどこかへと消えていった。

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』二名、『僧侶』一名、リタイアとなります』

 

 これでこの場に残るライザーの眷属はカーラマインとイザベラのみ。

 まずはカーラマインの方を見ると木場との戦いが続いていた。

 剣戟の中、木場が持つ闇の剣がカーラマインの一撃で霧散し、木場は得物を失っている。

 だが、木場に焦る様子はない。見たところ、あの闇の剣が神器のはずだが――

 

「光を喰らう闇の剣……それでは私の炎はどうにもできん。神器の相性が悪かったようだな」

「残念だね。僕の神器はそうじゃない――凍えよ」

 

 木場が低く唱えると、次いで手元に新たな剣が生まれていた。

 先ほどの闇の刀身とは違う。周囲を冷やすほどの冷気が柄へと集まっていき、刃を形成していく。

 

炎凍剣(フレイム・デリート)。この剣の前では、あなたの炎の剣は意味を成さない」

「バ、バカなっ!? 神器を二つ持っているだと!?」

 

 通常、神器は一人ひとつだと、リアスから聞いたことがあった。

 カーラマインと共にアルヴェムも驚いていると、それと同時にカーラマインの炎の剣が音を立てて砕け散る。

 

 しかし、カーラマインは想定外にも怯まない。

 すぐさま短剣を引き抜き、

 

「これならばどうだ!?」

 

 カーラマインを中心に炎と風が渦巻く。

 その熱量は味方であるイザベラすら顔を手で覆うほどで、木場の剣も徐々に溶けていく。

 それでも木場は余裕を崩さない。

 

「止まれ、風凪剣(リプレッション・カーム)

 

 今度は刃の途中で円形の風穴が開いた刀身へと変化した。

 そこから渦巻く風がカーラマインの炎の渦を吸収。すぐさま消し去ってしまう。

 

「……複数の神器。まさか他の神器所有者から神器を奪っているというのか?」

「それは違う。僕の神器はただひとつ、でもそれは魔剣を創るものなのさ」

「創る、だと……!?」

 

 驚愕するカーラマインを前に木場は地面から無数の剣が飛び出す。

 その全てがそれぞれ違った形であり、属性も違う魔剣。

 不敵に笑んだ木場は言う。

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』、それが僕の神器さ」

「魔剣……どうやら私はつくづく特殊な剣士と縁があるようだ」

「へぇ、僕以外の魔剣使いと戦ったことがあるんだね」

「いや、私が戦ったのは――聖剣使いだ」

 

 聖剣、その言葉に木場の雰囲気が一変する。

 殺意に満ちた木場の目。それはただごとではない。

 

「手足を斬り飛ばしてでも、その話を聞かせてもらおうか」

 

 酷く低い声音。

 聖剣と木場にどんな因縁があるかは計り知れないが、確実に木場の動きは鋭くなっていた。

 状況は変化する。それは一誠の方でも同じだった。

 

「よし、溜まった!!」

Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

 イザベラからの拳、蹴りによるラッシュを防いでいた一誠のパワーアップも上限を迎える。

 身体の各所はすでに青痣が見え、息も切れかかっている。一誠も無傷ではない。それでもリアスへの想いが一誠を奮い立っていた。

 

 一誠が放つ重い拳の一撃。それをイザベラは腕を交差させて防御するも、防御ごと後方へと飛ばされる。

 それを見た一誠が笑みを浮かべる。その笑みはいつも破廉恥なことを考えている時に見せるもの。

 何故、その笑みが今――その理由はすぐにわかった。

 

「今だ!『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』!!」

 

 破れる音と共にイザベラの衣服が一片も残さず弾け飛ぶ。

 恐らく触れた瞬間に相手の衣服が破れるイメージを魔力として送り込み、指を鳴らすことを引き金に発動する魔法のようだが、あまりにも非道だった。

 一誠は一誠で目をこれでもかと大きく広げ、大事な部分を隠す前の全裸を脳内フォルダに記憶しているようだ。

 

「とんでもない技だ……あんなことをされれば、ほとんどの女性はまともに戦えないぞ」

「僕もはじめて見たけど……相手に申し訳なくなるぐらい破廉恥極まりない技だね」

「お前らそれでも味方か!? 俺の全才能をつぎ込んで作り上げた唯一の魔法だぞ!!」

 

 ある種、才能があるとも言える。

 しかし、イザベラとの決着はまだついていない。

 裸にされながらも彼女の戦意は尽きてはいないようで、すぐさま立ち上がって拳を構える。

 

 一方、一誠はイザベラから受けた攻撃が思った以上に効いていた。

 これまで学園中を走り回り、戦闘を繰り返して、今ここでも戦っている。

 いくら山籠もりで体力や筋力を鍛えても緊迫した戦闘空間では肉体的にも精神的にも疲弊していく。

 まして一誠は今回がまともに戦う初めての実戦。鍛錬とはまるで違う。

 

 膝をつき、肩で息をする一誠。その疲労は遙かに濃いもの。

 それでも、一誠は拳を地面に叩きつけて立ち上がる。

 

「負けるわけにはいかねえんだ……おい、ブーステッド・ギア。俺に力を貸しやがれぇええええッ!!」

Dragon booster(ドラゴン ブースター) second Liberation(セカンド リベレーション)!!』

 

 一誠の叫びに、その想いに神器は応えた。

 今までにない赤い輝きが左手の籠手から発せられ、次に姿を見せた時には形状に変化が訪れていた。

 手の甲に大きな宝玉があったが、その他にも宝玉が散りばめられ、全体的にデザインが鋭利なものへと変化している。

 

「木場ァアアアアッ! 神器を解放しろぉおおおおおお!!」

 

 神器から新たな力が伝わったのか、一誠は喉が張り裂けんばかりに叫んだ。

 その言葉に意味を問わず、木場は促されるまま魔剣を地面に突き立てる。

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』ッ!!」

「『赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)』!!」

Transfer(トランスファー)!!』

 

 籠手の宝玉が輝いたかと思えば、木場の力が一気に底上げされる。

 金属が激しくぶつかり合い、擦れ合う音と共に地中から天に向かって魔剣の切っ先が幾重にも飛び出し、カーラマインとイザベラの身体を捉える。

 

「バカな……これほどまでに……」

「やはり、警戒すべきは『兵士』だったか……」

『ライザー・フェニックス様の「騎士」一名、「戦車」一名、リタイアとなります』

 

 その言葉を最後にカーラマインとイザベラはリタイアの光に包まれる。

『赤龍帝の籠手』第二の力は――譲渡。

 高めた力を第三者に与えることができ、使い方を考えればライザーをも倒せる代物となる。

 一誠もそのことに気付いているようで、表情は希望に満ちたものとなっていた。

 だが、その希望は長くは持たない――

 

『リアス・グレモリー様の「女王」一名、リタイアとなります』

 

 それはライザーの『女王』と戦っていた朱乃の敗北を告げるものだった。

 瞬間、一番に動いたのはアルヴェムだ。

 木場と一誠、強敵との戦いを乗り越えた先で、朱乃の敗北を知った――つまり、一瞬呆気に取られてしまっている状態だ。

 これを見逃す相手ではない――

 

「間に合わないか……」

 

 二人共は助けられない。

 アルヴェムは一誠の襟首を掴むと無造作に放り投げる。

 投げ飛ばされる一誠には何が起こったかわからないだろう。

 だが、その刹那――突如として巻き起こった爆発が木場とアルヴェムを飲み込んだ。

 

「き、木場っ! アルヴェム!!」

『リアス・グレモリー様の「騎士」一名、リタイアとなります』

 

 無情な宣告が一誠を襲う。

 大きく地面が震動し、クレーターが生まれた先、木場は全身から煙を上げて倒れていた。

 すぐにリタイアの光に包まれ、このフィールドから去っていく。

 

 一方、アルヴェムは無事だった。

 制服はあちこち破れているものの戦闘には問題ない。

 その視線の先、魔導士のローブに身を包んだ妖艶な女性が黒い翼を羽ばたかせて浮遊している。

 口端に浮かべる笑み、他の眷属を全て失ってもなお余裕は崩れていない。

 

「あら、さすが『戦車』とあって頑丈ね」

「何をした? そちらの戦闘能力からして、姫島先輩と戦って無傷で済むわけがないはずだが……」

 

 爆発よりもアルヴェムが気になったのはその一点だった。

 衣服は解れているものの傷自体はどこにも見られない。

 まだ自分たちの知らない何かがある――そう考えていると、もう勝利を確信しているのか『女王』は懐から小さな小瓶を取り出す。

 

「これはフェニックスの涙――ゲーム上、二名にしか所持が許されていませんが一滴でも浴びればたちまちどんな傷でも治す代物よ。これもまたフェニックス家がゲームにおいて無類の強さを発揮する理由のひとつね。このゲームでは私とレイヴェル様が所持を許されていたわ」

「野郎……ッ!!」

 

 目の前で木場を、小猫を、そして朱乃もやられた一誠が激昂して飛び出そうとするも、アルヴェムがそれを手で制止する。

 

「ありがとう。いいことを聞いた」

 

 レイヴェルから貰っていた小瓶、その意味が今わかった。

 懐から小瓶を取り出すと、それを一誠へとかける。小瓶から一滴、輝きが一誠の身体へ触れると今まで受けていた青痣がみるみるうちに消えていき、外傷は全て一瞬のうちになくなる。

 

「どうやら本物だったようだ。くすねておいて正解だった」

「あなた、それは……ッ!」

「レイヴェル嬢から拝借していたものだよ。まさかルール違反と言うつもりか?」

 

 今までの余裕な表情から苦虫を嚙み潰したような表情へと変化させる『女王』。

 しかし、それでもすぐに彼女の余裕は戻る。

 

「でも、無駄よ。そのボウヤを治したところで体力までは戻らない。もう勝ち目はないのよ」

「あいにく、そう言われて諦めるようならこんなゲームは受けていない。そうだろ、イッセー?」

「ああ、当たり前だ!」

 

 見たらわかる。一誠の体力はとっくに底をついている。

 それでも一誠はまだ戦おうとしていた。

 その意志だけで十分、彼に賭けるだけの材料は揃っている。

 

「ゲームの最初に言ったことを覚えているか?」

「死ぬ気でライザーに食らいつけ、だろ?」

「ああ。諦めない心がある限り、真の敗北はない。追い詰められても突き進め。勝利は意地を貫き通した者にのみ訪れる。あともう少しで必殺の一撃ができるんだ。それでゲームを終わらせられる。あの『女王』は俺に任せて先に行け」

 

 一誠の手を掴み、立ち上がらせるとその背を手で軽く押す。

 迷っている暇はない。それは一誠にもわかっていた。だから、振り返らずに走り始める。

 

「アルヴェム、任せたぞ!!」

「何をする気かは知らないけど――ここで終わりよ」

「いや、あなたの相手は俺だ。これを見ろ」

 

 アルヴェムの言葉に『女王』の視線がこちらへ移る。

 そこにはハンマー扱いされていたレイヴェルを入れたカプセル捕獲機があり、それを見るなり『女王』が身に纏う魔力の質が上がる。

 

「どうやらおイタが過ぎたようね、ボウヤ……ッ!」

「それはこちらの台詞だ。せめて倒された仲間の分は仇討ちさせてもらう」

 

 レーティングゲームも終盤戦。

 今も過ぎていく、この数秒が勝敗を分ける――

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