ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー   作:ホスパッチ

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第二十七話『生徒会のソーナ・シトリー』

「イッセーに変な噂が流れている?」

「ああ。美女をとっかえひっかえしている野獣イッセーはリアス先輩、姫島先輩に留まらず、ロリロリボディのアイドル塔城小猫ちゃんにまで手を出し、挙句は転校してきたアーシアちゃんにも毎夜エロエロなプレイを強要してるってな!」

「まあ、俺たちが流してるんだけどな」

「うぉおおおいっ! 何してんだ、お前ら!?」

「うっせぇ! こっちはそうでもしないと嫉妬で狂ってしまいそうなんだよ!!」

 

 昼休み。

 元浜から急にそんな話を聞いてみれば、ただの自作自演のような噂話だった。

 途中から聞いていた一誠が元浜と松田へ襲い掛かり喧嘩が始まったが、人間の嫉妬というものは怖い。人をここまで蛮行に走らせるとは。

 

 しかし、噂の効果は絶大なもので一誠に突き刺さる女子生徒の視線があまりにも冷たかった。正直、松田と元浜も同類かと思うが、どうやって女子生徒たちに噂を回したのか。

 少しだけ気になるものの追及したところで意味はないだろう。

 それより、

 

「イングヴィルドには、そんな噂は流れてないんだな」

「流石に俺たちにも良心はあるからな……それに、下手な噂を流すとお前からとんでもない報復を受けそうだし」

「賢明な判断だな。例えキミたちでもイングヴィルドに危害を加えるなら、こちらも容赦はしなかったよ。一族全員、社会に出られないようにしていたところだった」

「めちゃくちゃ怖いんだけど……」

 

 一誠と戦っていた元浜と松田の顔が青ざめる。

 おそらく本気ですることがわかっているのだろう。アルヴェムも、ひとつとして冗談は言っていない。

 

「だけど、お前とセットで噂にはなってるぜ? もちろん俺たちが回したものじゃないけど……」

「俺にもあるのか。それで、何の噂だ?」

「イングヴィルドちゃんと学生結婚してるって」

「もうどこにも情報元(ソース)がない噂じゃないか……」

 

 一誠の場合、小猫を除いて実際に性交とまではいかないが、肉体的な関係はある。

 リアスの胸を揉んだことがあり、朱乃からは代償としてドラゴンの腕になった左腕の治療と称して指をしゃぶられたり、アーシアはリアスに対抗するため色々と頑張っていると一誠から聞いていた。

 

 で、対するアルヴェムに至ってはどこにもその要素がない。

 イングヴィルドとそういう関係でもないし、学園では普通に過ごしている。

 甚だ疑問に思うアルヴェムだが、元浜的にはそうでもないらしい。

 

「イングヴィルドちゃんは転校してきてから未だにアルヴェムにしか心を許してないからなぁ……いつも一緒にいるし」

「そうか?」

 

 振り返ってみると、確かにイングヴィルドが女子生徒と一緒にいるところをあまり見たことがない気がする。たまにアーシアと話しているが、基本的にアルヴェムの傍にいた。

 今もアルヴェムの隣で元浜の話を聞いている状態で、アルヴェムはあまり考えていなかったが周りには少々以上に見えるらしい。

 

 かと言って、馴染めていないわけでもない。

 授業でグループを組む際も声を掛けられて問題なさそうに見える上、周りから避けられている様子もない。何というか、この状態がデフォルトと受け入れられているようだ。

 

「イングヴィルド、今更だけど無理に俺の近くにいなくていいんだぞ?」

「……? 無理はしてないわ。ここにいたいから、いるだけ」

 

 そんな返事をされてしまえばアルヴェムも「そうか……」としか返せない。

 この学園生活はイングヴィルドが望んだもの。特に苦労していなければアルヴェムも手を貸す必要がなく、現状で満足しているならそれでいい。

 

「あー、そうだ。今日昼から部活の集まりがあるんだった。アルヴェムもイングヴィルドも行こうぜ」

 

 思い出したように一誠が言って、元浜たちとのバトルが終わる。

 アルヴェムたちも連絡は受けていたため立ち上がると、一誠は少し離れた席で女子生徒と昼食をとっているアーシアへ手を振る。

 

「おーい、アーシア。そろそろ時間だから部室に行くぞー」

「ほら、アーシア。彼氏が呼んでるよ」

「かかかか彼氏ぃっ!? 何を急に言うんですか、桐生さんっ!?」

 

 何気なく言われた言葉にアーシアが今まで見たことがないほど動揺する。

 その様子を見て眼鏡をかけた女子――桐生はにやにやといやらしい笑みを浮かべ、

 

「え~違うの? あんたらいっつも一緒にいるから、もうそういう関係なんだって思ってたわ。だって、あんた兵藤のことむぐぐぐっ!」

「やめてくださいぃ!!」

 

 何か言おうとしたところで桐生の口がアーシアの手で塞がれる。

 一誠は何の話か掴みきれていないようだが、アルヴェムは何となく察していた。

 アーシアは一誠に命懸けで助けられている。好意を持っていても不思議ではないだろう。

 ただ、一誠がアーシアを性愛というよりも家族愛で見ているところが壁だろうが、それも時間の問題だ。

 

 ともあれ、こうやって噂は生まれるのか……そう感じながら、アルヴェムもイングヴィルドを連れて教室から出て行くのだった――

 

 ―○●○―

 

「失礼しまーすっ」

 

 扉を開けた一誠がそう挨拶すると、リアス、朱乃、小猫はすでに部室に着いていた。相変わらず木場の姿はないが今はいいだろう。

 そして、リアスの対面に座っているのが一人。背後には七人ほどが控えていた。

 女子生徒が六人、男子生徒が一人。しかも、その面々には見覚えがある。

 

「生徒会長の支取蒼那……そして他はその眷属か」

 

 ソファに座っていたのは駒王学園の現生徒会長である支取蒼那(しとりそうな)

 度々廊下ですれ違っていたが計測器では彼女もまた悪魔。そして、その後ろにいる生徒会のメンバーと思われる面々も全員悪魔と表記されている。

 アルヴェムの言葉に一誠も気付いて、

 

「眷属……ってことは、もしかして――」

「リアス先輩、俺たちのことを兵藤に話していないんですか? 同じ悪魔なのに気付かないっていうのもおかしいですけどね」

 

 生徒会の中で唯一の男子生徒である――匙がそう言うと、蒼那は静かに返す。

 

「サジ、基本的に私たちは『表』の生活で関わりを持たないようにしています。兵藤くんは悪魔になってまだ日も浅い。我々のことを知らずとも無理はありません」

「お、オカルト研究部以外にも悪魔がいたのか……」

「えぇ、その中でも生徒会長の支取蒼那様の本当の名はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主ですのよ?」

 

 眷属を持っている時点で大物とは思っていたが、立場的にはリアスと同じ。

 計測器の数値で見ると戦闘能力はリアスの方が高いが、知性だけで言うと支取蒼那――ソーナ・シトリーに軍配が上がるだろう。

 

「この学校は実質グレモリー家の支配下にありますが『表』の生活では私たち――シトリー家が一任されています」

「会長と俺たちシトリー眷属が動いているからこそ平和な学園生活が送れてるってもんだ。少しは感謝してくれていいぜ? 前なんて堕天使たちをこの学園の用務員にしたいって無茶をどうにかしたのもこっちなんだからな」

「その件についてはソーナ・シトリー様に感謝しています。その借りは必ず返しますので、何かあればご連絡を」

 

 上から物を言ってくる匙だが構わない。

 懐から自分に直通の魔法陣が描かれた紙を取り出すとソファに座るソーナまで近付き、跪いて手渡す。

 ソーナはそれを受け取り、

 

「確かに無茶でしたが、こちらも堕天使側の情勢を知られて上も納得してくれています。もし、手を借りたい状況であれば遠慮なく呼ばせてもらいます――フェニックスの不死身性を上回ったあなたには、私も興味がありますので」

「それはどうも、いつでもお呼び下さい。俺個人としてはシトリー家の力に興味がありますから」

「おいおいおい! 会長をナンパしてんじゃねえ!」

 

 そこで引っ張られ、アルヴェムはソーナから引き離される。

 見ると先ほどの男子生徒が間に割って入り、ファイティングポーズまで取られる始末。

 何かまずいことをしたのかわからないが、敵意を向けられてしまっている。

 

「確か……生徒会書記の匙元士郎(さじげんしろう)だったな」

「お、おぉ……知ってくれてたのか。じゃなくて、俺がいる限り会長には指一本触れさせねえぞ!」

「その意気はいいが戦うつもりならやめておいた方がいい。俺に触れる前にキミの全身が消し飛ぶ。これは脅しでも冗談でもなく、本当のことだ」

 

 戦闘になればサーゼクスから着想を得た消滅のバリアを容赦なく使うが、そんなものを使ってしまえば匙は塵一つ残らず消えてしまう。

 敵意を向けられたのも冷静に考えればわかるものだ。敵か味方であるかわからない状況で己の主に近付かれれば警戒もする。

 非はこちらにある。なので、アルヴェムは頭を下げた。

 

「こちらに配慮がなかった。謝罪する。どうか、これで矛を収めてくれないか?」

「あ、あぁ……こっちも熱くなっちまった。悪い」

 

 心からソーナを慕っているからこそ、匙の行動は早かった。

 一触即発の雰囲気を逃れ、アルヴェムは元いた位置へと戻るとまた視線が突き刺さる。

 視線の主はイングヴィルドで何やら不満そうだ。さりげなく、頭突きをされてしまっている。

 

「その頭突きの意味は何なんだ……?」

「……不満を示してるの」

「わかった。後でどうにかするから、今はやめてくれ」

「…………」

 

 交渉成立したのか、イングヴィルドは頬を膨らませながらも頭突きをやめてくれる。

 場が収まったのを確認して、ソーナは匙を手で示す。

 

「改めてご挨拶を。こちらは新たに私の『兵士』となった匙です。兵藤くんたちと同じ二年生、良ければ仲良くしてあげてください」

「俺としては、そこのアルヴェムやアーシアさんはともかく、エロ三人組の一人と同期なんて気が引けるけどな……」

「な、なんだとっ! 同じ『兵士』だから歩み寄ろうと思ってたのに!」

「へっ、俺は駒四つの『兵士』だぜ? お前と一緒にすんな!」

「残念だったな! 俺は駒八つで転生してるからお前より上だな!」

「見ろ、イングヴィルド。あれが同レベルの戦いだ」

「「おい、アルヴェムてめえ!!」」

 

 口が揃うあたり、思考回路が一緒なのだろう。

 これにはソーナも嘆息して「おやめなさい、サジ」と制止する。

 

「兵藤くん、ごめんなさい。うちの眷属は実績がない分、余裕がなくて失礼な態度を取ってしまうことがあります。それでも私としては新人同士仲良くして欲しいと思っています」

「えっ、あ、はい……がんばります」

「サジ、あなたも」

「は、はい……よろしく」

「よろしくお願いしますね、匙さん」

「はっはっは! 兵藤はともかくアーシアさんなら大歓迎だよ!!」

 

 対象がアーシアに変わった瞬間に爽やかな笑顔へと変化する匙。

 とんでもなく現金な者だが、アーシアと握手しようとした瞬間に横から一誠がその手を取り、

 

「はっはっはっは! よろしく、匙くん! ちなみにアーシアに手を出そうとしたらマジで殺すから、そこのところよろしく!!」

「こちらこそ兵藤くん! 金髪美少女を独り占めしながら他の女性にも手を出す鬼畜ぶりは聞いているよ! 悪魔だけど神に祈るよ、どうかこいつに落雷をぶつけてくださいってね!!」

 

 一見笑顔だがその水面下では互いの手を握り潰さんほどの力で締め上げている二人。

 それはもう主人側からは丸見えで、リアスもソーナも息を吐くしかなかった。

 

「挨拶はこれぐらいにして――本題に入りましょう」

 

 切り出したソーナに匙は瞬間的に一誠から離れて元の場所に戻る。それに合わせて、先ほどの少しふざけた空気は一変した。

 どうにも挨拶だけが目的ではなかったらしい。リアスの目も自然と鋭くなる。

 

「今朝、教会側の人間――エクスカリバーの使い手たちが私に接触してきました。目的はリアス、あなたと交渉をしたいということでした」

 

 早速、相手方が動き出したようだ――

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