ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー   作:ホスパッチ

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第四十二話『人生のリスタート』

「こうしてご挨拶するのは初めてですね。エイミィー・クァルタ改めエイミィー・アスモデウスと申します。これからイングヴィルド様と同様にグレモリー家の保護下に入り、アルヴェム様の研究対象となりました。以後、よろしくお願いします」

 

 数日後、部室にて、ゼノヴィアが仲間入りしたことを一誠やアーシアたちが知った後、入室してきたエイミィーは頭を下げて挨拶をする。

 それを聞いてイングヴィルドは笑顔でパチパチと拍手をし、他の面々もつられて拍手をする。

 

 エイミィーは今回の一件で一誠たちと関わり合いを持たなかったため、実際には初対面のようなものだ。

 一誠たちの視線はエイミィーの顔、そして下に行って、視線が胸へと集中してしまう。

 ほぼ初対面の相手に寄ってたかって胸をガン見なのは如何なものかと思うが、あの一誠ですらそのビッグサイズに慄いてしまっている。

 

「も、もう『たぷんっ』とか『ぷるるん……』とかじゃないよな。『どったッッッぷるるるぅん!!』みたいな……」

「……最低です。でも、おっきいです」

「うふふ、あまり見てしまうとエイミィーちゃんに失礼ですよ?」

「見ちゃダメ……って言いたいところだけど、あれは見てしまうわよね。私も自信があったけど、あれは天性の才能よ……」

 

 三者三様のリアクションを取るオカルト研究部のメンバー。

 何の話をされているのかいまいち理解ができていないエイミィーは首を傾げるばかりだ。

 しかし、悪意……と言うより、その卑猥な視線に気付いたゼノヴィアがエイミィーの前に両腕を広げて立つ。

 

「私のことはどれだけ卑猥な目で見ようが構わないが、妹にはやめて欲しい。見たければ私に言え。妹の代わりに差し出すぞ!」

「急に脱ぐなよ……」

 

 ゼノヴィアが制服を破る勢いで脱ぎ、露になる胸元。ボタンは弾け飛び、その一つが一誠の額に貼り付くも一誠はゼノヴィアの胸元をガン見で鼻血を垂らしていた。木場は紳士なのか、目元を手で隠す。

 アーシアが頬を膨らませて一誠の腕をつねったことで一誠は冷静さを取り戻して「そういえば」と切り出す。

 

「二人とも、血は繋がってないんだよな? どうやって姉妹になったんだ?」

「む、聞きたいか? いいだろう。あれはエイミィーが私のいる施設に預けられた時のことだ……当時、家族に憧れていて妹が欲しくなっていた私は初対面からこの子だと思ってゴリ押ししたんだ」

「『私はゼノヴィア。キミは……エイミィーというのか。わかった――キミは今日から私の妹だ。私のことは「姉」と呼ぶようにね』といきなり言われました。無視してもあまりにしつこく、終いには泣かれてしまってシスターグリゼルダに『ごめんなさい。どうかお姉さんにしてあげてください』と懇願され、仕方なくお姉様と呼んでいるんです」

「え、エイミィー! そこまで言わなくてもいいじゃないか!」

 

 ため息交じりに解説するエイミィーにゼノヴィアは顔を真っ赤にする。どうやら知られたくなかった詳細らしく、いつもクールな印象のゼノヴィアとは思えないほど狼狽していた。

 

「だが、姉としてキミの苦しみに何一つ気付いてやれなかった……本当にすまない」

「いいんです――期待していなかったんで」

「エイミィー……もしかして、私のことが嫌いなのか? 私の想いは一方通行なのかな……?」

「むしろ、今まで好感度があると思っていたことに驚きですね……」

「ふふ……私でも泣く時はあるんだぞ?」

 

 力ずくで抱き着こうとするゼノヴィアにエイミィーは右肘をその顔面に押し付ける。

 普段は誰にでも一定の愛想を見せるエイミィーだが、ゼノヴィアには容赦がない。それだけで他者よりは特別な気もするが、ゼノヴィアの様子からして微塵も気付いていないだろう。

 

「……お姉さん」

 

 小猫がその様子を見て、小さく呟く。

 何か意図があってか、少し気になったもののゼノヴィアを弾いた勢いでエイミィーがアルヴェムのいる方へと体勢を崩していた。

 こてん、とぶつかるとエイミィーはすぐに謝罪する。

 

「あっ、も、申し訳ありません……」

「いや、いい。キミも大変だな」

「あぁっ! アルヴェム・オーヅァ、私でもエイミィーを抱きしめられないというのに……っ!」

 

 ただ受け止めただけだというのに、何故か憎々し気な視線をゼノヴィアから受ける始末。

 よく見るとアルヴェムは胸元でエイミィーを受け止めている。彼女の腕が勢いでアルヴェムの背中に回ったために抱きしめているように見えた。

 このまますぐ離してもいいが、羨まし気でもあるゼノヴィアの視線に少しからかいたくなってしまった。

 

 ぎゅっと、一度だけエイミィーを少しだけ強く抱きしめてみた。

 ゼノヴィアにはあれだけ抵抗したエイミィーも、今回はされるがままでその有り余る豊かな身体がアルヴェムの腕に包まれる。

 

「ゼノヴィア、これが俺とキミの差だよ」

「くっ、ぐぅうう……」

 

 本気で悔しがる素振りを見せるゼノヴィアにアルヴェムの感情は『愉快』を示す。

 しかし――

 

「アルヴェム……」

 

 何やらすごい目で睨まれている気がする。

 その重圧は本気を出したサーゼクス……いや、今この瞬間に限ってはそれすらも上回っているレベル。

 アルヴェムはゆっくりとエイミィーから腕を放すと、視線の主――イングヴィルドへと振り向き、

 

「これは眷属同士の交流だよ、イングヴィルド。ユーモアというものだ」

 

 頭突きされた。

 そこまでは半ばいつものことだ。エイミィーを放して頭突きしてくるイングヴィルドの頭をキャッチして、撫でて宥めておく。

 今はそのことよりも、ゼノヴィアをからかうのにエイミィーを無下にしてしまった部分がある。不快な想いをさせてしまったのならば、謝罪しなければならない。

 

 そう思ってエイミィーを見ると、不快さを露にしている様子はなかった。

 何故かアルヴェムの身体を見て、

 

「やっぱり、たくましいんですね……」

 

 などと感想を言っていた。

 ともあれ、これでゼノヴィアもエイミィーも挨拶が終わり、部員が全員揃った。

 それを確認するとリアスが話し出す。

 

「教会は今回の一件で魔王に連絡を取ってきたそうよ。遺憾ではあるものの、堕天使の動きが不穏で不透明なため連絡を取り合いたいって……現にあの事件以降、各地で起こっている教会関係者たちの焼死事件も続いているから余計に気になるのでしょうね。それとバルパーに関しては逃がした非を認めて謝罪してきたわ。形だけでしょうけど」

 

 連続焼死事件に関してはアルヴェムの仕業でしかないが、勝手に堕天使を勘繰ってくれているので結果としては上々だろう。

 その話になった途端、エイミィーの視線がアルヴェムに向けられたあたり彼女だけは気付いているようだが、説明せずとアルヴェムの真意に気付いているらしい。

 

「今回のことは堕天使の総督アザゼルから神側と悪魔側に真意が伝わってきたわ。今回の事件は全てコカビエルの単独行動で他の幹部は知らなかった。だからこそ、コカビエルは『地獄の最下層(コキュートス)』にて永久冷凍の刑に処されたそうよ」

 

 それがどれくらいの刑なのかは知らないが、永久冷凍と言うからには後生外には出て来られないはずだ。

 戦争を望んだ果てが孤立と凍結――哀れな末路だろう。同情する余地はないが。

 

「近いうちにアザゼルが天使側の代表、悪魔側の代表を招いて会談をするらしいわ。本来なら堕天使側である『白い龍』が場を収めて、自分たちの組織内の問題を解決しようとしたけどアルヴェムが解決しちゃったから動かざるを得なくなったのでしょうね」

「エイミィーに関しては天使側から何の連絡もなかったのか?」

「あったわ。それも今回の会談に天使側が乗ってきた理由のひとつよ。アザゼルも『神の失敗作』と呼ばれた『神滅具』を創り出す神器に興味津々らしいから、事件の顛末を知っている私たち、コカビエルを倒したあなた、そしてエイミィーにも会談に参加してもらうことになるわ」

 

 やはり三大勢力にとってエイミィーの存在は避けて通れないものらしい。

 思わず、エイミィーがアルヴェムの制服を握り締めてくる。不安なのだろう。

 その不安に寄り添うように、アルヴェムはその手に自らの手を重ねて、

 

「大丈夫だ、俺がいる。今まで我慢してきたことをぶつけてやればいい。キミにはその権利と力がある。何なら先制で隕石をぶつけてやってもいいさ」

「……ふふ、そんなことをしたら、また校舎が吹き飛んでしまいますよ?」

「戦いになったら、私も頑張るから。エイミィーのこと、守るよ」

「イングヴィルド様は意外に好戦的なんですね……」

 

 イングヴィルドの新たな一面を知りつつ、アルヴェムはこの会談を好機と感じた。

 悪魔、天使、堕天使、全てのトップが一堂に会する。そうなれば、それぞれの種族の戦闘能力を知ることができ、情報収集に大きな役目を持つだろう。

 

「アルヴェム、何だかわくわく……してる?」

「ああ。これで三大勢力全て、そのおおよその戦闘能力がわかる。エイミィーと契約できたことで神器の解析も多少制限はあるができるし、俺がキミに教えられない魔力や神器の扱い、魔王の特性も学べるだろう。これで研究に必要な下準備は完了だな」

 

 イングヴィルドが患っていた"眠りの病"を治し、不安定な魔力を安定させるためにフェニックス家から『女王』の駒を受け取って彼女を完全な悪魔へと転生させた。

 エイミィーとの契約によって、天使の光の威力、悪魔に『特性』があることを知り、神器の中でも特別な『神滅具』すら創り出す神器を手に入れたも同然。後は彼女たちの成長をサポートしながら、全ての対策を考えていくだけだ。

 

「さっ、全員が揃ったのだから部活動始めていくわよ!」

 

 リアスの掛け声に各々返事をし、久しぶりにまともな部活動が始まっていく――

 

 ―○●○―

 

 夕暮れ刻、アルヴェムはイングヴィルドとエイミィーを連れて海辺に来ていた。

 そこにエイミィーが魔法で結界を張り、誰にも干渉されないようにしてから訓練を始めている。

 

 視線の先ではイングヴィルドがエイミィーと相対していた。

 イングヴィルドはその歌声で海を操り、魔法によって生み出された幾体もの十数メートルの龍を模した水が空を飛ぶエイミィーへと襲い掛かっている。

 

 海辺を選んだ以上、地の利はイングヴィルドにあった。現に周り全てが海である以上、手数はイングヴィルドの方が上だがエイミィーはイングヴィルドにない豊富な戦闘経験がある。

 

 十四枚もの翼で空を縦横無尽に駆け回り、その両手には刀身が氷の西洋剣が握られていた。

 木場の持つ『魔剣創造』を創造して氷の魔剣を創り出し、両手に装備している『赤龍帝の籠手』がエイミィーの力を倍加させ、それを魔剣に譲渡する。

 

 その一振りで海の一部が大きく凍てついた。

 イングヴィルドの歌声が響こうとも凍った箇所は動かない。武器の一部を封じられてしまった。

 戦闘経験のないイングヴィルドは動揺を隠せずにいた。そして、今まで順調に操っていた海も魔法にも影響が出る。途端に動きが不安定なものとなってしまっていた。

 

 それを見て、エイミィーが声を上げる。

 

「イングヴィルド様、神器は想いの力で能力が向上します! この程度ならば何とでもなりますから、動揺を相手に悟られてはいけません!」

「う、うん……っ!」

 

 エイミィーからの激励でイングヴィルドの目に再び戦意が灯る。

 さらに声量を上げた(うた)によって凍結された海が活力を取り戻したように大きく震動した。そして、氷が耐えきれず悲鳴を上げて割れていき、再び動き出す。

 

「その調子です、それでは私もいきますよ!」

 

 エイミィーも笑みを浮かべ、イングヴィルドへと向かって行く。

 それから数分、訓練は続いたが結果的には全力で手加減をしたままエイミィーの圧勝だった。

 反対に息を切らせたイングヴィルドは砂浜に背を預けて寝転がる。

 

「はぁ……はぁ……悔しい、な……」

「そう思えるなら、まだまだ伸びしろはありますよ。何せ、あなた様にはまだ顕現していない魔王の特性がありますから、それが覚醒すれば私との差はうんと縮まります。神器だって禁手がありますし、急がなくても必ず力は得られますよ」

「『掉尾(とうび)の海蛇龍』って、コカビエルが言ってた……名前だけじゃ何も、わからないけど……」

「その解明には考えがあるから焦らなくていい。まずは今ある神器の力と向き合おう。何せ『神滅具』を創り放題なエイミィーでさえ扱えない代物だ。音痴という微妙な弱点がここで響くとは」

「あの、その点はあまりいじらないでください……恥ずかしいですから」

 

 訓練前に名称はまだ不明だが試しに創ってみてもらったのだ。しかし、エイミィーが扱おうとすると、あまりに音痴過ぎて海が嵐となってしまった。

 あれは歌というよりも一種の超音波攻撃とも言っていい。本人は望まないという点を除けば、凹まずとも利用価値はある。

 そんなことを考えていると、ふとイングヴィルドが顔を上げて微笑んだ。

 

「ふふっ……こうして皆で何かするの、楽しいね」

「そうですね。私も自分の技術が役に立つのは……嬉しい、と思います」

 

 つられてエイミィーも笑って、その姿にアルヴェムは安堵のような感情を覚えた。

 今まで誰かを殺すためでしかなかった技術に別の使い方が生まれた……それは、彼女の人生観を変えていく上で必要な一歩だろう。

 ここからが人生リスタートの一歩だ。幸い、エイミィーは悪魔で途方もない寿命がある。やり直そうと思えばいくらでもやり直すことができるだろう。

 

「次はアルヴェム様、私の相手をお願いします。今度はもう少しアルヴェム様に力を出させてみせますから」

「わかった。相手するよ」

「二人とも、がんばって」

 

 起き上がったイングヴィルドは起き上がると、二人の応援を始める。

 この光景がアルヴェムたちにとって日常となっていくだろう。そう、思っていた。

 

 アルヴェムとイングヴィルド……二人を繋ぐ契約は三大勢力による会談を経て消滅するとは、誰も予測はできなかった――

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