ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー   作:ホスパッチ

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フェーズⅣ.Selection『停止教室のヴァンパイア』
第四十三話『会合決定とショッピング』


「冗談じゃないわ! 悪魔、天使、堕天使、三大勢力のトップ会談がこの町で行われるとはいえ、私の縄張りに堕天使の総督が勝手に侵入して営業妨害をしていただなんて……!」

 

 真夜中、そう言いながら、怒りを露にするリアス。

 ここまで怒っている理由は、一誠と堕天使の総督アザゼルの接触にあった。

 少し前より一誠の得意先になっていた男性は『神滅具』を宿した一誠に興味を持つアザゼルであり、素性と気配を隠して契約していたのだ。それが堕天使のトップがしているのだから、冗談では済まない。

 明らかな挑発行為にリアスの怒りは止まらない様子で、

 

「アザゼルは神器に強い興味を持つと聞いているわ。だから『赤龍帝の籠手』に惹かれて、私のイッセーに接触してきたのね……でも大丈夫よ。私が必ずあなたを守ってあげるから」

 

 言って、リアスは一誠の頭を愛おしそうに撫でる。

 リアスは眷属の悪魔を大事にしており、中でも一誠は特別可愛がっていた。それは単なる下僕愛だけではないが、一誠にはそう見えているだろう。

 

「やっぱり、狙ってきてるのかな……?」

「アザゼルは神器の造詣が深いからね。有能な神器所有者を集めているとも聞く……現に『白龍皇』もそうだけど、堕天使側にはかなりの神器所有者がいるらしいよ」

「しかし、イッセーを欲しがるだろうか? 確かに神器は優秀だが正直、本人の力量だけで言うと有能とは程遠いと思うが」

「おまっ、気にしてること直球で言うなよ!」

 

 一誠がツッコミを入れてくるも事実は事実。

『兵士』の駒を八つ消費と言っているが、宿っているドライグが九割以上を占めているだろう。

 そんなことは周知のものなので誰も異論は唱えない。代わりにリアスが顎に手を当てる。

 

「どうしたものかしら……相手は堕天使の総督だから、こちらから下手な真似はできないし」

 

 トップ会談前ともあって、緊張状態は続いている。

 その中で下手な行動に出れば会談にも影響が出るだろう。向こうにその気がなくても情勢が許さない状態だ。

 

「――昔から、アザゼルはそういう男だよ。まあ、悪戯はするだろうけど不用意に手出しはしてこないはずだ」

 

 不意に聞こえた声。

 部室にいる皆が振り向くと、そこに立っていたのはサーゼクスとその傍らにグレイフィア。

 見覚えのある顔に朱乃たちは跪き、リアスも表情を驚愕へと変える。

 状況がわかっていないのは一誠とアーシア、そしてエイミィーぐらいだった。

 

「おっ……お兄様!?」

「ああ、跪かなくていいよ。くつろいでくれたまえ。今日はプライベートだからね」

 

 手を挙げてサーゼクスが言うと、皆徐に立ち上がった。いくら相手からそう言われても、現魔王を目の前に座ってられるほど無礼ではない。

 アルヴェムにとっては最近出会ったばかりで記憶にも新しいが、一誠やアーシアにとってはほとんど初対面のようなものだろう。一誠は会ってはいるものの、婚約パーティを壊すのに必死でほとんど覚えていないはずだ。

 

「お、お兄様……どうして、このような場所に?」

「何を言っているんだ。授業参観があるのだろう? ぜひとも勉学に励む妹の姿を見たくてね。それにキミの普段の様子も見に来たんだ、アルヴェムくん」

「俺も……?」

 

 確かに駒王学園では、近いうちに保護者を呼んで普段の授業風景を見せる授業参観がある。

 一誠やアーシアは兵藤家の両親が来るとは聞いていて、両親のいない自分にはまるで関係ないと思っていたが、急に白羽の矢が立ってきた。

 

「父上もこられる。キミとは婚約パーティの時、話せずに残念だったと言っていたからね。良ければ話に付き合ってあげて欲しい」

「構いませんが……何故、俺なんですか?」

「……それは会談の後にしよう。今回はただ遊びに来たわけじゃなくてね。トップ会談の会場をコカビエルが襲撃したこの駒王学園に決まったのだよ。だから、今日はその下見さ」

「ほ、本当にこの学園でするおつもりですか?」

「この学園には奇妙な縁があるからね。私の妹を筆頭に赤龍帝、謎の実力者、聖魔剣使い、デュランダルの使い手、魔王の血を引く者、神器を創り出す天使と悪魔の混血、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹、そして白龍皇とコカビエルが襲来した。これは偶然では片づけられない因果を感じるよ。だから、この場を選んだ」

 

 サーゼクスはそう説明すると、まずはゼノヴィアに目を向ける。

 いきなり魔王に視線を向けられたゼノヴィアは物怖じすることなく一礼し、

 

「あなたが魔王か。はじめまして、ゼノヴィアという者だ」

「デュランダルの使い手が眷属になったと聞いた時は驚いたよ。転生したばかりで慣れないことも多いだろうが、どうか妹のことを支えてやって欲しい」

「聖書に名を残す魔王にそこまで言われれば私も後には引けない。持てる全力は尽くそう」

 

 その返答にサーゼクスも満足げな笑みを零す。

 流石、兄妹と言ったところでその表情はそっくりなものだった。

 そして、次にサーゼクスの視線が映ったのはアルヴェム。

 

「アルヴェムくん、コカビエルの制圧、そしてアスモデウスの特性を覚醒させたエイミィー・クァルタの制圧、本当にありがとう。キミがいなければ駒王町はおろか、人間界がどこまで破壊されていたかわからなかったよ」

「礼は結構です。相応の礼はすでに受け取っていますから」

「ははは、危うく冥界が消されかけたのも聞いているよ」

「俺が言うのも何ですけど、笑い事じゃないですよ」

 

 いくら脅しとはいえ、悪印象のことをしたとわかっているが何故かサーゼクスは愉快そうに笑う。

 一方、名前を挙げられたエイミィーはバツが悪そうにアルヴェムの後ろへと隠れてしまった。

 それを見て、サーゼクスは軽く手を挙げる。

 

「そう警戒しないでくれ。イングヴィルドくん同様に前魔王の血筋の者は丁重に保護することを約束しよう。例えキミが悪魔側についてくれなくとも、それは変わらない。だから無理をして悪魔(われわれ)の味方にならなくていい」

「確かに私はあなた様達の味方とはなれません。ただ、私はアルヴェム様の契約者(もの)ですから、アルヴェム様が悪魔側にいる限りは私も悪魔側の者として力を行使します」

「助かるよ。神器を創造する力を持つキミが敵に回らないだけ、こちらには得があるからね」

 

 隠れながらだが気丈に対応するエイミィーに、アルヴェムも一安心する。

 しかし、少し気になることがあった。

 今、アルヴェムの背中にエイミィーが密着している。服を掴んで身体を押し付けてくるので、彼女の抜きん出た才覚のひとつ豊満な胸がずっと当たっているのだ。

 

 エイミィー自身は気にしていないのか、それどころではないのか定かではないのだが、アルヴェムとしては少し困る状況だ。大抵、女性とこういった接触がある時、必ずと言っていいほどイングヴィルドが不機嫌になってしまう。

 

 恐る恐る、イングヴィルドを横目で見る。

 そこには――普段と変わらない表情のイングヴィルドがいた。何ならアルヴェムの視線を受けて、反対に怪訝そうな表情で返してくるほど気にした様子はない。

 

 何か共通点があるのか、ふと考えてしまう。

 おおよその予想でしかないが、考えられるとしたら『能動的』か『受動的』の差なのかもしれない。

 前にエイミィーを抱き寄せてゼノヴィアにマウントを取った際、あれはアルヴェムが自分の意思で抱き寄せた。そして、今回はエイミィーが自ら引っ付いてきた。

 

 試しにエイミィーの頭に手を置いた時、イングヴィルドが少し反応したので合っているのだろう。

 思わぬところで傾向と対策を得た。これで未然にトラブルを防ぐことができる。

 そう思っていると、サーゼクスの話には続きがあったようで言葉を続けた。

 

「イングヴィルドくん、エイミィーくんに関しては少しこちらとしても複雑な状況にあって、なかなか立場を与えることはできないが……アルヴェムくん、キミの力、そして活躍に私以外の上層部も気付いてしまったようでね。色々と議題が上がっているんだ」

「何かしら立場が与えられると?」

 

 そうなったら少し面倒なことになる。

 完全に悪魔側へ席を置くのは正直考えていなかった。エイミィーが研究対象として加わったことで、拠点は駒王町に置いたまま、世界中を旅して不可思議なものを探しても良いと考えていたからだ。

 

「それはキミ次第だ。会談が終わった後、少し私に時間をくれないか? その話についてキミに提案があるんだ」

「良い返事は約束できませんが大丈夫ですよ。会談後、サーゼクス様の都合に合わせますのでお待ちしております」

「ありがとう。それでは終わり次第、キミに声を掛けよう」

 

 何を言われるかは不明だが、十中八九ろくなことではないだろう。

 当のサーゼクスは笑むと、今度は軽く手をぽんと合わせる。

 

「難しい話はこれまでにしよう。うーむ……人間界に来たというのに、もう真夜中だ。宿泊施設は空いているだろうか?」

「あ、それなら――俺の家に泊まりますか?」

 

 言ったのは、小さく挙手した一誠だった。

 思わぬ提案にサーゼクスは目を丸め、少し考える。やがて、出した答えは――

 

「それはいい。妹の下宿先の夫婦には前々からご挨拶したいと思っていたんだ。お言葉に甘えさせてもらうよ」

「ダメ! 絶対ダメですから!」

「サーゼクス様、それでは宿泊用の荷物をご用意致します」

「ああ、頼むよ」

 

 驚いたリアスが慌てて止めようとしたがサーゼクスとグレイフィアはそんな制止では止まらない。

 一誠の了承を得た以上、リアスはそっちのけで勝手に決めていってしまい、口を挟む余地はなかった――

 

 ―○●○―

 

「兵藤様はあれからサーゼクス・ルシファー様と行動を共にされているんですね」

「うん。街の視察をしてるって、言っていたわ」

 

 サーゼクスの来訪から数日、エイミィーとイングヴィルドは街の中でも栄えている、品揃えも多いショッピングモールへとやってきていた。

 やはり、休日ともあって人通りは多く、エスカレーターから下を見渡すと多くの人が行きかっていた。

 その中で、はぐれないためにエイミィーはイングヴィルドの袖口を指でつまみながら移動している。

 

 そんなエイミィーの仕草にイングヴィルドから見ていて妹の要素を感じていた。

 発育は末恐ろしいほど良いが、精神面では年相応。もしかすると、少し幼いまである。意外とゼノヴィアはそういう面をエイミィーから感じて、妹にしたいと言い出したのかもしれない。

 

 今回、ショッピングモールに来ているのは二人だけでアルヴェムはいない。何せ、彼がいたらこの買い物に意味がなくなってしまう。

 探している物は――水着だ。

 リアスから連絡があったのだが、休日明けに学園にあるプールの清掃をオカルト研究部で行うらしい。

 その後で一番に使わせてくれるらしく、そのために水着を用意してはどうかと提案されたのだ。

 

 ――どうせならアルヴェムにかわいいところ、見せたくない?

 

 と、言われてしまえばイングヴィルドも気合いを入れざるを得ない。

 学園で支給されている水着は機能性があるものの、かわいらしさの欠片もない。

 

 どうせなら、いつも無表情に近いアルヴェムがリアクションするような水着が欲しいとイングヴィルドは考えている。

 参考程度にリアスや朱乃の水着を見せてもらったが、布面積が異様に少ない。あまりにも大胆な形状の水着……と言っていいのかわからないほど露出度の高いものだった。

 一誠の目を引くために他の女性よりも大胆なものを選ぶ。好きな異性のためならば手段を選ばない乙女心が成す作戦だとは思うが、その真似をするのは厳しいものがある。

 

 大体アルヴェムは一誠と違って、そういう大胆な恰好を好まない可能性が高い。

 なので、真面目に選んで気に入った物をにしようとイングヴィルドは考えていた。その方がアルヴェムの興味を惹ける可能性が高い。

 

「エイミィーはどんな水着にするの?」

「私、泳いだことがないものですから、どのようなものが良いかわからないんですよね……ですから、胸が収まれば何でもいいかなんて思っています。衣服を創造する神器がありますので、自分に合ったものを作ろうかなと今日はデザインの下見をするつもりです」

「そっか、エイミィー大きいものね」

 

 コカビエル襲撃事件から少しして、エイミィーはゼノヴィアと同じタイミングで駒王学園に転校して授業を共にしている。

 自己紹介の時、ゼノヴィアがエイミィーのことを血は繋がっていないが妹だと紹介した。だが、エイミィーはそれを無視して自己紹介をし、そそくさと席についてしまい、ゼノヴィアが悲しそうな顔をしていたのを覚えている。

 

「そんなに大きいと困ったこと、ない?」

「足先が見えないことですかね。あとは……よく女子生徒に触られそうになることでしょうか? 前に後ろから触られそうになって、反射的に手首を握り潰しそうになってしまいましたね」

「あれ、アルヴェムが止めなかったら、危なかったね……」

 

 アーシアと仲が良い桐生という女子が果敢にもエイミィーの胸を揉もうとしたが、実戦の中で生きてきたエイミィーに背後から迫るのは駄目だ。アルヴェムもすぐに止めに行ったが、危うく桐生の手が本当に手首から取れるところだった。

 

「正直、親しくないお方に触られたくないという気持ちがあります。ですから、やめてくださいとは言っているんですが度々ありまして……」

「魔法で何とかならない……? 暗示、とか?」

「私の胸に興味を抱かないような暗示、ですか……一度やってみても良いかもしれませんね」

 

 顎に手を当てたエイミィーは逡巡して、笑みを作る。

 助けてもらった際も魔法を使っていたようなので、その気になればできるだろう。イングヴィルドが気になったのは、そこではなく――

 

「……? どうされたんですか?」

 

 怪訝そうにエイミィーが小首を傾げる。

 親密度で胸に触れられるかどうかを決めている……アルヴェムならば不意に触ったところでエイミィーの反撃を受けないだろう。周囲の者でエイミィーが心を許しているのは彼しかいないのだから。

 だったら、自分はどうなのだろうか、とイングヴィルドは気になった。

 今は互いに隣り合って話している。少し手を伸ばしてみればすぐに触れられる距離だ。

 

 試してみよう、そうイングヴィルドの知的好奇心が前進を宣言した。きっと、アルヴェムの影響が強くあるのだろうが確かめずにはいられなかった。

 ゆっくりと、エイミィーの胸に手を伸ばそうとした瞬間――エイミィーが何かに気付いた様子でピクッと身体を動かした。

 

「ご、ごめん……っ」と、思わず謝ろうとしたイングヴィルドだが、そうではない。

 辺りに漂う違和感にイングヴィルドも気付く。

 

「これ、は……」

 

 一瞬の浮遊感。

 強制的な転移、そうかと思ったが周りの光景は変わっていない。

 婚約パーティの時に用意された戦闘空間とはまた違ったもので、乗っていたエスカレーターや周りの風景には何ら変化はなかった。

 しかし、ショッピングモールを魔力が覆っている。どうやら、イングヴィルドとエイミィー、そして他の人間たちは完全に閉じ込められてしまったようだ。

 

「何が狙いかは不明ですが……確実に敵がいますね」

 

 どの勢力であれ、戦争時でも彼らは人間界を巻き込むことはしなかったらしいが、今回は違う。

 周囲に刺さるような敵意はイングヴィルドやエイミィーだけでなく、人間すらも捉えていた――

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