ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー 作:ホスパッチ
「こいつはタンニーン。元々龍の中でも特に強い連中が『六大龍王』って呼ばれていたが、タンニーンはその一人だった。まあ、訳があって悪魔に転生して抜けたから『五大龍王』になったんだがな。現役で活動している数少ないドラゴンだ。その火の息は隕石にも匹敵すると言われている――だから『
戦闘も一段落し、アザゼルが紫のドラゴン――タンニーンについての説明を行う。
それを聞いていたエイミィーは何を思ったのか、タンニーンの目を見つめて、
「じゃあ、隕石そのものを降らせる私の方が威力は上ということですね」
「ふっ、アスモデウスの末裔か。話には聞いているが、そう言うならば次の機会にぶつけ合ってみるか?」
「その時はよろしくお願いします。私ももっと強くならなければいけませんので」
好戦的な笑みを浮かべるタンニーンに、エイミィーもまた同様の笑みを返した。どうにも隕石繋がりで通じ合う部分があるらしい。
奇妙な縁が出来たところで、アザゼルが再び話し始める。
「今回の一戦で各々の課題が見えた。後はこっちで修行内容をまとめておくから待ってろ。それじゃあ、列車に戻ってグレモリー邸に向かうぞ」
その言葉に各々返事をして、協力してくれたタンニーンも飛び去っていく。
改めて列車に戻れば十分も経たずに『グレモリー本低前』とアナウンスが流れ、到着を告げる。
途中、冥界の本土がどれほどの規模かリアスに聞いたところ、人間界の地球とそう変わらない面積があるらしい。その中でもグレモリー領土は日本で言う本州程度。海もないために大地が広く、悪魔が人口も多くないために土地もかなり余っているらしい。
現にリアスは一誠達新参の眷属にグレモリー領土の地図を見せると、グレモリー領土の中でどの土地が欲しいか意見を募っていた。アルヴェムは枠外なので話には入らなかったが、どうやら別口で選択肢は用意されるらしい。
そうしているうちに列車は駅に着いて、徐々に速度を落として停車する。
リアスが先導する形で降車していく中、アザゼルだけは降りる様子を見せない。それを気にした一誠が問いかける。
「あれ、先生は降りないんですか?」
「俺はこのまま魔王領に行く予定だ。何せサーゼクス達との会合があるからな、一組織のトップともなりゃスケジュールが過密なんだよ。まあ、終わればグレモリー本低に向かうから先に挨拶を済ませておけ」
そう言うアザゼルに一誠やリアスがそれぞれ別れを告げると、列車の扉が閉まり次の駅へと向かって走っていく。
降りたメンバーは駅のホームを降りていき、改札を出たところで――
『リアス様、アルヴェム様、おかえりなさいませ!』
一斉に声を揃えた大声が空まで響く。
見ると花火が上がり、銃口を空に構えた兵士達が歓迎の意を示して祝砲を上げる。
中にはグレモリー家に仕えている執事やメイドの姿も多く見受けられ、いきなりの大歓迎に慣れていない一誠やアーシアは困惑していた。
「ひぃぃいいい……こんなに人がいるなんて……」
あまりの大人数にギャスパーも腰が引けてアルヴェムの背後へと隠れてくる。
流石にダンボール姿では会えないと思ったのだろうが、この震え振りからしてダンボールの方がマシだったかもしれない。
緊張する一誠達を置いて、リアスが執事達へ近付く。
すると、執事やメイド達の中から一歩前に出たのは銀髪のメイド――グレイフィアだった。
「お嬢様、アルヴェム様、御帰りなさいませ。道中、ご無事で何よりです。本邸まで馬車で移動しますので、眷属の皆様もお乗りください」
親子関係であろうともメイドとして態度を崩さず仕事を全うするグレイフィア。
その様子を見て、イングヴィルドも気になったのか耳打ちをしてくる。
「(リアスさんもそうだけど……アルヴェムは息子なのに、随分と他人行儀なのね……)」
「(仕事とプライベートを分けているんだろう。まあ、義理の息子だから扱いなんてどうでもいいが……それとなく息子アピールをしてみるか)」
「(えぇっ……絶対、やめた方が良いと思うけど……)」
せっかく息子になった……というより、されたのだ。
今の立場を使っていかなければ帳尻が合わないとアルヴェムは考え、イングヴィルドの制止も聞かずに挑戦する。
「ありがとう、グレイフィア。でも、イッセーとアーシアが不安そうだから私は下僕達と行くわ」
「かしこまりました。何台かご用意しておりますので、そちらにお乗りください」
グレイフィアが手を挙げると、人間界に生息するものよりも大きい馬が二頭で引く馬車がいくつも現れる。リアス達オカルト研究部のメンバーがそれぞれ分かれて乗っていく中、グレイフィアの視線はアルヴェムへと向けられた。
「アルヴェム様はどうされますか?」
「ママ上、俺もイングヴィルド達と一緒に乗るよ」
「職務中ですので『ママ上』はおやめください」
さりげなく混ぜたつもりだったが、即座にバレた。
鋭い目つきで睨まれてしまい、その目から『後で説教』だということが確定してしまう。
あまりの早さにエイミィーも噴き出して笑いそうになっており、彼女が笑ってくれたのならば挑戦した甲斐があったと無理矢理納得しておく。
しかし、最後の馬車に乗り込んだのはアルヴェム、イングヴィルド、エイミィー、そしてグレイフィアだったため、馬車内では少々気まずい雰囲気が流れてしまう。
「(アルヴェム様が作り出した気まずさなんですから、どうにかしてください……)」
「(無茶を言うな……)」
先ほどまで笑っていたのは何だったのか、隣に座るエイミィーが空気に耐えかねたのか耳打ちしてくる。
しかし、会話のタネがない。何かないかと小窓から外の風景を目にすると、ゆっくりと過ぎていく街並みは人間界の現代社会よりも少し遅れた中世ほどの光景に思えてくる。
舗装された道の先、見えたのはどの建造物よりも高く大きい巨大な城だった。それを見て、疑問が浮かんがアルヴェムは質問してみることにする。
「あー……グレイフィアさん、あの巨大な城がグレモリー家の本邸なんですか?」
「はい。グレモリー家が所有するお家の一つとなりますが、普段から旦那様も奥様も居を構えております」
どうやら思っていた以上にグレモリー家の財力は凄まじいようだ。
権威を見せられるとアルヴェムも息を吐きたくなってくる。何せ、あの城に着けばサーゼクスの息子としての演技が本格的に始まることを意味していた。
気が重い、とはまさにこのことだろう。
リアスの父ジオティクスと母ヴェネラナに挨拶。サーゼクスの息子であるミリキャスとの初対面。
記者会見なども含めれば、冥界で行動をするには思った以上に苦労するようだ。
「アルヴェム様、気が重いのでしょうか?」
そんな心境を読んでグレイフィアが問いかけてくる。
雰囲気として出てしまっていたか、そんな風に思いながらもアルヴェムは頷いた。
「そうですね……上手くできるか、考えるところはあります」
「演じる必要はありません。普段通り、あなた様の思うように接すればいいのです。サーゼクス様も、それを願っているのですから」
「……ママ上」
「ですから『ママ上』はおやめください」
良い流れだと思って混ぜたが、やはり駄目だったようだ。
そんな話をしていると舗装された道から美しい花々が咲く、グレモリー家の庭へと入っていた。
すでにリアス達が乗る馬車は前方で停止しており、馬車から降りている。次いでアルヴェム達が乗っている馬車も停止、降りると両脇に執事やメイドが並んでおり、リアス達が通る道には赤いカーペットが敷かれていた。
その先にある城門が音を響かせながら開き、遠くからでも見えていた城への道が開かれる。
「皆様、どうぞお進みください」
そうグレイフィアに促されて進もうとした瞬間、メイド達の列から小さな影が飛び出した。
その人影はリアスを見つけるなり駆けつけてきて、
「リアス姉様っ! おかえりなさい!」
「ミリキャス、ただいま! 本当に大きくなったわね!」
リアスに抱き着くと、リアスもまた現れた紅髪の少年を愛おしそうに抱きしめる。
ミリキャス――その名前を聞いたアルヴェムはその正体がわかったが、一誠には全く事情が分からないので怪訝そうにし、
「部長、その子は……?」
「この子はミリキャス・グレモリー。お兄様の子供で、私の甥よ。ほら、ミリキャス。私の新しい眷属たちに挨拶なさい」
「はい。はじめまして、ミリキャス・グレモリーです!」
ミリキャスが元気良く挨拶をすると、一誠やアーシア、ゼノヴィア達新参の眷属達が挨拶を返す。
「魔王の名は継承した本人しか名乗れないから、この子の姓はグレモリーなの。私の次の当主候補でもあるのよ?」
可能性は低いだろうが、その当主候補にアルヴェムもいてしまう。
なるべく気配を消してミリキャスの視界に映らないようにしていたアルヴェムだが、不意にミリキャスと目が合ってしまった。
一瞬、ミリキャスが呆然とアルヴェムの容貌を見つめてくる。
すでに話を通してあるとは聞いていたが、ミリキャスの心境としては複雑なものだろう。いきなりアルヴェムが兄だと知らされても、幼きながらにすぐ受け入れることなどできないに違いない。
裏事情を知っているリアスがやや心配そうに見る中、ミリキャスはリアスから離れてアルヴェムの前に立つ。
どことなく周囲から緊張感が漂うも、アルヴェムは片膝をつくとミリキャスに視線を合わせた。
「はじめまして、ミリキャス。俺はアルヴェム……アルヴェム・オーヅァ・グレモリーだ。キミの兄だ、と言ってもすぐに受け入れられないだろうが、これからよろしく頼むよ」
「…………」
口を開けて驚くミリキャス。
できるだけ優しい声音を意識して言ったが、やはり厳しいものがある。
そう思ったが――ミリキャスの双眸はすぐに爛々と輝いた。
「アルヴェム兄様って、呼んでいいですか? 僕、お姉様もいいけどずっとお兄様がいてくれたらなって思ってて……そしたらいてくれて、本当に嬉しい!」
いくら魔王の息子でも子供は子供。年相応の興奮した様子で、両拳を握ってぶんぶん振っており、アルヴェムに対する警戒心などどこにもなかった。それどころか、物凄く受け入れてくれている。
それを見て、アルヴェムも一瞬目を丸くするも、やがてミリキャスの頭に手を置いて撫でると、
「ああ、俺も嬉しいよ。理由は話せないが……今までキミに会えなかったことはすまないと思っている。これからは仲良くしてくれると俺も嬉しい」
「うんっ! 父様からお話は聞いてるから理由は聞かないよ!」
「ミリキャス様、いくら兄上相手でも言葉遣いを崩し過ぎです」
「あっ……ごめんなさい」
グレイフィアから注意を受けて、ミリキャスは慌てて口調を戻す。
しかし、グレイフィアも本気で怒ったわけではない。職務中だからこそ平静を装っているが、どこか微笑んでいるようにもアルヴェムには見えた。
だが、そこでアルヴェムはふと気付く。
今まで手が届かないと思っていた
自分を見て注意されながらも喜びを隠しきれないミリキャスに手を引かれながら、アルヴェムは赤いカーペットの上を歩いて行く――