ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー 作:ホスパッチ
「大公、アガレス家の次期当主――シーグヴァイラ・アガレスです」
ゼファードルとシーグヴァイラの小競り合いを止めた後、一度広間の修復が行われ、その後でサイラオーグが戻ってくると同時にリアスとソーナ、そして眷属達がやってきた。
不良がいなくなったことでサイラオーグと従兄弟の関係にあるリアスはともかく、互いに初対面もいることから代表者がテーブルを囲んで改めての自己紹介をすることとなったのだ。
そして、最初に挨拶をしたのはシーグヴァイラ。その後は特に順番を決めたわけでもないので、それぞれタイミングを見計らって名を名乗ることになり、次に名乗ったのは喧嘩を静観していた優し気な雰囲気を持つ黒髪の青年だった。
「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主となります。よろしくお願いしますね」
一見、虫も殺せなさそうな風体だがエイミィーが引っかかっていたあたり、何か裏があるのだろう。
アスタロト家と言えば、現四大魔王の一人アジュカ・ベルゼブブが生まれた家でもあり名家と称されている。
その後もリアスやソーナ、サイラオーグと順に自己紹介が進んでいき、アルヴェムの番が回ってくる。
「アルヴェム・オーヅァ・グレモリーだ。訳あってこれまで身を隠して、一度は叔母のリアス・グレモリーの眷属をしていたが、この度こうして表舞台に出ることになった。事情は詮索しないでくれ」
と、牽制は打っておくが……正直、困ったことになっているのも事実だ。
何せ、先ほどからチラチラとシーグヴァイラの視線を感じる。どうにも彼女はアルヴェム……というよりも機械、ロボットの類に興味があるのかアルヴェムの変形がどうにも気になるらしい。
それによって何が起こるか――イングヴィルドが身に纏う雰囲気が冷たくなる。
背後で控えるイングヴィルドはそんなシーグヴァイラの視線に気付いているようで、機嫌があまり良くない。普段は大人しく見えるが今までの寂しさから独占欲が爆発しているのだ。
そこが可愛らしくもあるが、恐ろしくもある。
この後でどう機嫌を取るか。アルヴェムはもはやそこに注力しなければならないだろう。
「これで後はグラシャラボラス家だけど……アルヴェムが殴り飛ばしてしまったのよね?」
「あぁ、先に攻撃してきたのはあちらだったんでな。やむを得ず都市外まで殴り飛ばしてしまった」
「でも、不思議ですね。事前に聞いていた次期当主の人柄と随分違うように思うのですが……」
そう言ったのはソーナだ。
対し、その疑問に答えたのはサイラオーグだった。
「グラシャラボラス家は先日、次期当主とされていた者が眷属共々行方不明になったのだ。何でも向かった辺境の村で何者かと戦闘になり、そして消えた。すでに死んでいると考えられている。そこで新たな次期当主となったのが先ほどまでいたゼファードルだ」
あえて名前を出さないようにしているのか、アルヴェムには『禍の団』が関わっているようにしか思えなかった。それに気付いているのは他の面々も同じようで、話はそこで区切られる。
一瞬の沈黙、それを破ったのは扉を開けた使用人の悪魔だった。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました。ゼファードル・グラシャラボラス様の保護及び各準備が整いましたので移動のほどよろしくお願いいたします」
―○●○―
戻ってきたゼファードルも加えて、若手悪魔達が案内されたのは異質な雰囲気が漂う大広間だった。
アルヴェム達を見下ろす形で高い位置に雛壇状で上役の悪魔達が席を並べている。その最上段に四大魔王の全員が顔を揃えていた。
アルヴェムの現父親であるサーゼクス。魔法少女の恰好ではないセラフォルー。スキンヘッドの巨漢は背後に飾られた紋章からしてアスモデウス。その隣に座るのがベルゼブブだろう。
静寂が場を支配しながらも伝わってくるのは四大魔王以外の上役悪魔達から向けられた見下されている感覚。その気になれば数秒で掃討できるが向こうにも立場があり、冥界を支えている一部でもある。危害を直接加えてこない限りは見逃しても良いだろう。
と、もう一つアルヴェムに向けられる視線が合った。
目を合わさずともわかる。先ほど殴り飛ばしたゼファードルだ。顔面を陥没させたはずだが所持していたフェニックスの涙ででも治癒したのだろう。その顔は元通りになっている。
変なのに因縁をつけられたものだと嘆息したくなるも、初老の姿をした男性悪魔が話を切り出す。
「此度は次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認するために集まってもらった。これは一定周期で行う貴殿らを見定める機会だと思ってくれていい」
「さっそくやってくれたようだがな……」
髭を蓄えた別の男性悪魔が威厳を声音に込めて言ってくる。
視線はアルヴェムへ。どうやら先ほどの騒ぎのことを言っているようだ。
一応の謝罪をすべきかとも考えたが、先にサーゼクスが話し始める。
「キミたち七名は家柄、実力共に申し分のない次世代の希望となる悪魔達だ。だからこそ、レーティングゲームデビュー前にお互い競い合って、力を高めて欲しいと思っている」
「我々もいずれは『禍の団』との戦に投入されるのですね?」
「時が来ればそうなるかもしれないが、今はその時ではない。勇気は認めるが、成長途中のキミたちを戦場に送るのはなるべく避けたい。次世代の悪魔を失う損失は計り知れないのだから。キミ達は我々にとって思っている以上に宝だということを自覚して欲しい」
サイラオーグが出した直球の質問に対し、サーゼクスは優しく答える。
きっとアイシェルや情報で聞いたティクレン・ベルゼブブのことを警戒しているのだろう。ティクレンは直接出会っていないために能力は不明だが、アイシェルの『悪光魔耀』は想像以上の被害を出した。
悪魔、堕天使、天使を瞬殺する悪逆の光――その気になれば、いつでも首都を落とせるほどの能力にサーゼクスやアザゼル、ミカエルは強い警戒心を抱いている。だからこそ、サイラオーグの勇気は現場を知る者からすると蛮勇にも見えてしまう。
どこか不満そうな表情を浮かべるサイラオーグだが、サーゼクスを含めた上役の悪魔達の話は続く。やがて、サーゼクスから「長い話に付き合わせてすまなかった」と気さくな言葉を受け、
「最後にそれぞれが持つ今後の目標……夢でも良い。聞かせてくれないか?」
その言葉を受け、最初に一歩前に踏み出したのはサイラオーグだった。
「俺は魔王になるのが夢です。大王家から魔王が出るのは前代未聞と思われるでしょうが、俺が魔王になるしかないと民が思えばそうなるのは必然です」
はっきりと断言する姿は自信に満ち溢れていた。それに裏付けされる実力もある。
対し、次に一歩前に出たのはリアスだった。
「私はグレモリー家の次期当主として生き、レーティングゲームの各大会で優勝していく……それが近いうちの目標ですわ」
実にリアスらしい堅実な夢だった。
グレモリー眷属に在籍し続けていればアルヴェムもその夢の手伝いはしていただろう。現にリアスの言葉で背後に控えている一誠達グレモリー眷属の士気が上がったように見える。
「アルヴェム、キミはどうだい?」
それからディオドラ、シーグヴァイラ、ゼファードルが夢、目標を語ったところでサーゼクスの指名が入る。自分は最後にして、それとなくはぐらかそうと思ったがそうはいかないようだ。
上役の悪魔達もアルヴェムに注目する。それもそうだ。彼らからするとアルヴェムはサーゼクスの息子、実妹であるリアスよりもある種期待される存在なのだから。
視線を一身に受けたアルヴェムは一息吐くとサイラオーグやリアスと同様に一歩前に出て、上役の悪魔達を見上げる。
「私に夢や目標は現状ありません。今まで生きるために精一杯でしたから……ですが、魔王の息子である以上は自らの実力を証明しなければならないというのも事実。ですから――まずはレーティングゲームでこの場にいる他の若手悪魔全員を倒して私がトップだということを証明します」
思い切りの良いアルヴェムの宣戦布告に、それぞれのトップが三者三様の反応を見せた。
不敵に笑む者、驚く者、憎々し気な目で見つめてくる者、そんな反応はアルヴェムにとってどうだって良い。今までどのような関係であっても、すでに道は分かれている。その途中でぶつかり合う覚悟は相手にもあるはずなのだから。
アルヴェムの答えに対し、サーゼクスも笑んでいた。
そして、意外にも他の上役達にも好感触だったようで嘲笑ではない愉快そうな笑いが聞こえてくる。
「ほう、これは大きく出たな……」
「ほっほっほ、流石はサーゼクス殿の息子。俄然、ゲームが愉しみになりますな」
「その言葉が
妙な評価を得たが、イングヴィルドを見ると彼女も満足そうに笑みを浮かべている。どうやら選択肢としては間違っていなかったようだ。
だが、一瞬和やかになった雰囲気は最後に夢を語ったソーナで一変する。
彼女が掲げる目標は『下級悪魔、転生悪魔でも通えるレーティングゲームの学校を建てること』だった。
だが、それは嘲笑の的となる。伝統と誇りを重んじる彼らにとっては全く意味のないものに思えたのだろう。
途中、匙が我慢できずに反論するも、すぐ上役の悪魔達はそれを言葉で潰す。
いくら変革の時代にあろうとも匙は転生悪魔。そして元人間。悪魔は誰しもグレモリー家のように情愛深くはない。むしろ、人間や転生悪魔を差別する風潮まであるほどだ。
反対にソーナが謝罪することになってしまい、匙は奥歯を噛み締めて悔しさを滲ませる。
「酷い……」
イングヴィルドも思わずそう言葉を零すも、アルヴェムは違った。
レーティングゲーム。フェニックス家との一戦前に歴史を調べたが、はっきり言って上級悪魔や一部特権階級の遊びに過ぎない。
下級悪魔や転生悪魔など文字通りゲームの『駒』扱いでしかないのだ。
レーティングゲームで成り上がろうとすれば、主である上級悪魔に才能を見出されてゲームで結果を残すしかない。それがどれほど難しいことかをソーナは知っているため、夢を掲げたのだろうが教えたところで見出されなければゲームには参加できないのだ。
変えるとするならば、まずはどう下級悪魔や転生悪魔に機会を与えるか――その根幹に向き合わなければならない。そうでなければ、今の悪魔社会では笑われて当然の夢物語だろう。
「ソーナちゃんがゲームに勝ち続けたらいいんでしょ!? レーティングゲームで得られるもの、変えられるものは大きいんだから!」
だが、批判され、笑われ続ける妹に耐えかねてセラフォルーが立ち上がる。
その目尻には涙を溜めながらも憤りを見せるセラフォルーに上役の悪魔達も困惑する中、口を開いたのはサーゼクスだった。
「だったら、早速若手同士のゲームをセッティングしよう。リアス、ソーナ、戦ってみないか?」
突然の提案に眷属も含めてリアス達は驚きを隠せないでいた。
「元々、リアスとアルヴェムのゲームはそれぞれ近日中に予定されていたんだ。アザゼルが三大勢力以外にも各勢力でレーティングゲームに興味を持つ者を集め、デビュー前の若手のゲームを観戦させる名目が企画されていてね」
サーゼクスの言葉にリアス、ソーナは互いに拒否する理由はなかった。
互いに火花を散らし、駒王学園同士の対戦カードになったがやる気に満ち溢れている。
ただ、アルヴェムが気になったのはそこではなく――
「えっ、俺もあるんですか?」
「ああ、今世間の目はキミにあるからね。お披露目会とでも思ってくれたら良い。期間が短いことを気にするかもしれないがキミなら問題ないだろう。対戦相手はまだ決めていないが――」
「だったら、サーゼクス様、その対戦相手ってヤツを俺にさせてくれませんかね?」
声を上げたのは――ゼファードルだった。
薄々感じていたもののゼファードルの目は敵意剥き出しであり、よほど殴り飛ばされたことを根に持っている様子で、
「俺はナメられた分の借りは返す主義でな。このまま終わるのは気が済まねえ!」
「なるほど……負けたらいよいよ言い訳できなくなるが、それでも良いなら受けて立つよ」
「何だとゴラァ!!」
「――二人の意思はわかった。ならば、アルヴェムとゼファードルの対戦にしよう。二人の対戦は三日後、リアスとソーナの対戦は二十日後とする。それまで各自好きに時間を割り振ってくれて構わない。詳細は明日にでも送ろう」
三日、リアス達と比べてあまりにも少ない時間だが、ゼファードル相手なら十分過ぎるだろう。
唯一の問題としては、現状イングヴィルドしか眷属がいないことだが――