ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー   作:ホスパッチ

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第七話『悪魔のお仕事①』

「部長から聞いてたけど、アルヴェムも悪魔だったんだな……それで、その子は?」

「彼女はイングヴィルド。俺の研究対象だ」

「研究対象!? 何だ、そのただならぬ関係は!? しかも、めちゃくちゃ美少女だし!!」

 

 あれからさらに数日後、放課後に部室へ集められたオカルト研究部のメンバー。

 早々に一誠は驚き、イングヴィルドを見るが彼女は慌ててアルヴェムの背中に隠れてしまう。

 

「ご、ごめん。急に大きい声出し過ぎた」

「あなたは、もしかしてあのえっちなDVDの持ち主……?」

「最悪の覚えられ方してる!? あぁ、そうか! アルヴェムと一緒にエロDVDを観たっていうのは……」

 

 こくりと頷くイングヴィルド。

 その返事に一誠はがくりと落ち込む。

 松田や元浜とあれだけ楽しそうに"エロス"を語っていたというのに、どうやら女性にはバレたくないらしい。

 朱乃は笑っているが、小猫の目は厳しいもの、エロDVDとは本来女性の目に入ってはいけないようだ。

 

 それはさておき、一誠はイングヴィルドとは初対面。

 アルヴェムはイングヴィルドを手で示す。

 

「イングヴィルドは悪魔と人間の混血、キミと同じように神器を持っている」

「そうだったのか……だったら、俺と同じように堕天使に狙われたのか?」

「いや、彼女は悪魔から狙われている。悪魔の一部にとってイングヴィルドは腫れ物らしい。だが心配はいらない。俺が守る」

「そこまで自信満々に言えるのはすげえな……」

「二人とも雑談はそこまで。イッセーにチラシ配りもしてもらったことだし、今日から二人には本格的に悪魔の仕事をしてもらうわ」

 

 チラシ配り……アルヴェムが悪魔になってから説明されたことがある。

 昔と違い、悪魔を召喚する人間はほぼいなくなった。そこで魔法陣が描かれたチラシを欲が深そうな人間を悪魔側が選定して配ることにしているらしい。

 

「イッセーがチラシをある程度配ってくれたから準備が整ったわ」

「仕事と言うのは?」

「――契約よ。相手の召喚に応じて、契約を結んで、願いを叶える。その代償に相応の代価をいただくの。それが悪魔の基本的なお仕事よ。代価はお金、物、命……は最近ないわね。人の命は平等じゃないから各個人によって願いの代価は違うから、レートはそのタブレットを確認するように」

 

 アルヴェムと一誠はそれぞれ朱乃からタブレットを手渡される。

 液晶画面が付いているタッチパネル式のもので、人間界にはない最新鋭のモデルだった。

 

「よぉし、やってやる!」

「随分とやる気だな。何かあるのか?」

「そりゃそうよ! 何たってハーレム王への第一歩だからな!!」

 

 親指を立てて良い笑顔で返される。

 ハーレム王、その言葉にいまいちピンと来ていないアルヴェム。

 だが、それを察してか話したいだけか、一誠は拳を握り締めて続ける。

 

「女子率の高いこの学校に来て早二年生……モテるなんて縁遠い世界にいたけど、それは人間での話! 悪魔なら爵位さえ手に入れりゃ美女、美少女を毎日とっかえひっかえはべらせることができる! これが俺の夢! それがハーレム王!!」

「俺にはわからない世界だな」

「お前はあんまりそういうの興味なさそうだもんな……」

「だが、良いとは思う。悪魔らしい」

「……ただの最低です」

 

 小猫の痛烈なツッコミに一誠は肩を落とす。

 しかし、前向きなのかすぐに復活して、

 

「アルヴェムは……確か『女王』の駒をもらうために頑張るんだよな?」

「ああ。爵位を得る形でなくても何でもいい。今はそれが目標だ」

 

 そこまで答えると一誠は腕を組んで少しだけ悩む。

 やがてアルヴェムに拳を向けて、

 

「お前の気持ちはわかった。俺、イングヴィルドで妄想するのはやめとく!」

「何の意識表明だ……?」

「……私でもしないで欲しいです」

 

 何を察したのか、そんなことを言い出す始末。

 これにはアルヴェムも首を傾げるが、女子にとっては結構なバッドステータスらしい。

 こほん、とそこでリアスの咳払いが入る。

 

「とにかく、今日は初めてだからイッセーは予約が重なった小猫の分を。アルヴェムは裕斗の分をお願いすることにするわ。二人ともいい?」

 

 リアスの言葉に二人とも「はい」と、返事を返す。

 すると、部室の中心にあった魔法陣が淡い光を放ち始める。

 その近くでは朱乃が何かを詠唱しており、準備しているようだった。

 

「朱乃も準備できたことだし、二人とも魔法陣まで来てちょうだい。あなたたちの刻印を魔法陣に読み込ませるわ」

 

 促され、アルヴェムと一誠は魔法陣へと近づいていく。

 聞いたところ、この部室にある魔法陣はグレモリー家の家紋を示しているようで、悪魔はこの家紋によって相手の所属や立場を判断している。

 まずは一誠の手のひらをリアスの指がなぞっていく。次いでアルヴェムも同様に手のひらを指でなぞられた。

 少しして、なぞられた箇所が淡く輝き、一誠も驚いていた。

 

「これは転移用の魔法陣を通って依頼者の元に瞬間移動するためのものよ。はい、これで終わり。依頼者の魔法陣も反応しているようだし、まずはイッセーから魔法陣の中心に立ってみて」

「はい!!」

 

 新たな人生の門出に一誠の気分も最高潮に高まっていた。

 魔法陣が大きく光を放ち、一誠の身体を包む。

 一瞬でも瞬きをすれば一誠の身体は依頼者の元に飛んでいることだろう。

 

 誰もがそう思っていた――

 

 恐る恐る目を開けた一誠の前には部室の光景がしっかり広がっていた。

 何も変わっていない。ただ魔法陣が光って……それで終わりだ。

 困り顔のリアスは額に手を当て、困惑している一誠に言う。

 

「残念だけど、あなたは魔法陣で転移できないみたいだわ」

「ええっ!?」

「魔法陣は一定の魔力を必要とするの。とは言っても、高い魔力を必要にするわけじゃない。悪魔なら誰でも、それこそ子供でもできるわ」

「つ、つまり……?」

「あなたの魔力は子供以下……って、ことよ」

「……無様」

 

 ハーレム王への道が一歩目から崩れ去る瞬間を見てしまった。

 一誠は膝から崩れ落ち、魔法陣の中心で手をついて完全に落ち込んでしまっている。

 先ほどまでの夢を見ていた一誠はどこへ行ってしまったのか。

 そんな一誠は一旦小猫に回収されていき、今度はアルヴェムが促される。

 

「とりあえず、イッセーの対処は後にして。まずはあなたから送るわ」

 

 頷くと、魔法陣が再び輝き始める。

 アルヴェムの身体は大きな光に包まれ――やはり何も起こらなかった。

 

「どうやら、俺にも魔力がないようだな」

 

 今度はリアスが膝から崩れ落ちるのを見てしまった。

 まさか新たに眷属へ加えた二人が揃いも揃って魔力がないとは悪魔としても前代未聞だろう。

 朱乃も怪訝そうにアルヴェムの身体を見て、

 

「少ない……というものではありませんね。イッセーくんはともかく、アルヴェムくんには全く魔力を感じられませんわ」

「つまり俺は魔力なしの悪魔……滑稽としか言えないな」

「アルヴェム、元気出して。私がいるから」

「俺への励ましはゼロか……くっ、これがイケメンとの違いかよ!」

「そんなことを言っている場合じゃないわよ。依頼者が待っている以上、移動手段は問わないわ! 足りないものは他で補うのよ!」

「ということは、またチャリですか俺!?」

「前代未聞だけど、それしかないならそれで行くの! ほら、二人とも依頼者を待たせないで!」

 

 リアスに急かされて一誠は焦って準備をし始める。

 アルヴェムも部屋から出ようとすると、誰かが制服の裾を抓んできた。

 振り返ると抓んでいたのはイングヴィルドで、

 

「どうした?」

「私もついていったらダメ……?」

 

 今からするのはリアス・グレモリーの下僕としての仕事。

 上目遣いで言われてもアルヴェムには判断しかねる。

 

「安心しろ。キミの状況はそのリストバンドでわかる。何かあればすぐに戻って来る」

「そうじゃなくて……」

 

 そこでイングヴィルドは言葉に詰まる。

 考えていることはわからないが、離れたくないのであれば一応意思は尊重しなければならない。

 

「部長、イングヴィルドを連れて行っても――」

「今日はダメよ。一人で行ってきなさい」

 

 即答だった――

 

 ―○●○―

 

「はぁ……出だしから最悪だなぁ……」

「そう落ち込むな。状況で言えば俺も同じだ」

「いやいや、聞いたぞ。元々強いんだろう?」

「恐らく、この世界に俺を殺せる奴はいないくらいには」

「その自信が今は羨ましいな……」

 

 よほど魔力がほぼないことがショックだったようで、一誠は長い息を吐く。

 

「俺ってば、こんなんだから元カノに殺されたのかな……」

「――その件だがキミは悪くない」

 

 そこだけははっきりと否定する。

 

「力があるないじゃない。神器の存在も知らず、普通に暮らしていたキミの心に堕天使がつけ込んできただけだ。それに悲観せずとも、キミには微量だろうが魔力はある。神器もある。悪魔は永遠とも言える長い時間を生きる存在……これからいくらでも磨き上げることができるはずだ」

「アルヴェム……お前、イイヤツなんだな」

「事実を言ったまでだ」

 

 どちらかと言えば、悪魔の社会においてアルヴェムの方が不利だ。

 何せ悪魔は才能を重視し、血統を重んじる種族。

 魔力を持たないアルヴェムはきっと純血の悪魔から見ると、それはもう劣等種だろう。

 こればかりはどうしようもない。原因は不明で対処しようもない。

 それならば今持っている力でどうにかする。生憎、別方面での力では恵まれている。

 そんなことを考えていると、一誠は笑って、

 

「変わってるとは思ってたけど、今は何だか心強いぜ。なあ、せっかく同じ部長の眷属になったことだし、俺のことは『イッセー』って呼んでくれよ。オカルト研究部のメンバーもみんなそう呼んでくれてる」

「あだ名……確か、親しみか嘲るためのものだったな。どっちの意味だ?」

「親しみに決まってるだろ!?」

「だろうな。ここで嘲る方だったら余計に意味がわからなかった」

 

 呼ぶことがあるかはさておき、了承しておく。

 

「それでさ、聞きたいことがあるんだけど……」

「……?」

「ここだけの話、イングヴィルドとは、もう付き合ってるのか?」

 

 何故、そんな話が今出てくるのか。

 急がなければならない状況で理解に苦しむが――

 

「部長たちも気になってるらしくて、多分今頃イングヴィルドに聞いてると思うぜ?」

 

 人間界の女子高生は恋愛話を好むという。

 どうやらそれは悪魔の世界でも同じようで、とりあえず部室に戻るとしたが仕事前なので一誠に全力で止められてしまった――

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