ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー 作:ホスパッチ
「トラウマの克服、おめでとう。これで問題は解決したな」
「あ、あぁ……だが、もう少し手心があっても良かったんじゃないか……?」
アルヴェムとライザー率いる眷属達との一戦が始まって数分、すでに決着はついていた。
平坦だった地にはあちらこちらにクレーターが生まれ、その中心にはそれぞれライザーの眷属達がダウンしており、当のライザー自身も首から下は全て地面に埋まった滑稽な姿となっている。
「全力で来るならば相応の力で対するのが礼儀だろう。わざわざ負けるほど加減する意味もないしな」
「まだまだ力不足というわけか……まあ、いい。一応、礼は言っておく。貴様のおかげで、また立ち上がることができた」
「俺はきっかけを与えたに過ぎない。真に感謝するなら眷属にするんだな。それに無償でキミのカウンセリングをしたわけじゃない」
「……何?」
何も説明されずに連れて来られていたライザーは怪訝そうに首を傾げる。
すると、様子を見ていたレイヴェルが一歩前に出てライザーの前にしゃがみ込み、
「アルヴェム様は私を『僧侶』にするため、交換条件としてお兄様の引き篭もりを解決してくださいましたの。お父様もお母様もすでに了承済みです」
「な、何ぃ!? レイヴェルが貴様の眷属にだと!?」
「あくまで期間限定のレンタルという形だがな」
地中から飛び出したライザーは今にも反対の意を込めた炎を高ぶらせようとするも、アルヴェムの言葉を聞くなり炎は静まり冷静となる。
「レンタル?」
「ああ。若手悪魔同士のレーティングゲームが組まれてな。三日後、俺はグラシャラボラスと試合をすることになっている。今は『女王』しかいないからな。他はお試しといったところだ」
「ほう、それでレイヴェルを選んだわけか。ふん、悪くない目をしている」
出会って初めてまともに褒められた気がするも、アルヴェムにとってはどうでもいいこと。
とりあえず、さっさと屋敷に戻ってレイヴェルと駒をトレードして欲しいところだが――
「だが、駒がいくら優秀でもお前自身がレーティングゲームを知らなければ宝の持ち腐れ……今回の礼だ! プロの世界に立つ俺が直々に『王』たる者の立ち振る舞いを教えてやる!!」
復活した不死鳥は変なテンションになっていた。
それを見て、レイヴェルが額に手を当てて、
「申し訳ございません……お兄様は何せ同性の友人がいなかったものですから、アルヴェム様に似たような感情を覚えているんだと思います。ご迷惑かもしれませんが、お時間の許す限り付き合ってあげてください……」
「……まあ、いい。次のアテはまだないし、プロの世界を見た者から話を聞くのも悪くはない」
「何をゴタゴタ言っている! さっさと屋敷へ戻るぞ!」
実際にレーティングゲームをするアルヴェムよりも張り切った様子を見せるライザー。どうやら、今まで引き籠っていた分、体力が有り余っているようで先に飛んで行ってしまった。
ライザーの眷属達はへとへとになりながらもその後を追っていき、この場に残されたのはアルヴェムとレイヴェルのみ。
フェニックス家の友達(?)という若干のおまけがつきながらも、暫定ながら『僧侶』が決まった。
アルヴェムはレイヴェルへと手を差し出し、
「短い間かもしれないけど、よろしく」
「はい、こちらこそ至らぬところはありますがよろしくお願いしますわ!」
快活に笑って見せたレイヴェルはアルヴェムの手を取り、握手を交わす――
―○●○―
気まずい。
エイミィーは今の空気に対して率直な感想を抱いていた。
アルヴェムがグレモリー邸を去ってから、エイミィーは言われた通りグレモリー眷属の修行を手伝うことになっていた。
そして、その中でもアザゼルから最初に指定されたのが――朱乃。
用意された場所で一人、無言で自らの手を見つめ続ける朱乃は普段の柔和な雰囲気とは違う何とも剣呑な雰囲気を身に纏っていた。
それもそうだ。アザゼルが朱乃に伝えた修行内容は『自分の中に流れる血を受け入れろ』。
何でもアザゼル曰く、朱乃には堕天使の血が流れているらしく光の力を使って『雷』を『雷光』にすることが可能らしい。
しかし、隠していたともあって朱乃は堕天使に良い印象を抱いていないようだ。
エイミィーが訪れた今でも一度も『雷光』を使用していない。彼女の中で強い葛藤があるようだった。
どう声をかけるべきか、いや声を掛けるべきなのか。
そう迷っていると、不意に朱乃から声が零れた。
「エイミィーちゃん、一つ聞いてもいいかしら?」
「私に答えられることなら一つと言わずいくらでも答えますよ」
「……ありがとう。もし、答えたくなかったら言わなくて良いんだけど……エイミィーちゃんは自分の中にある天使と悪魔の力のこと、どう思ってる?」
振り向いて、不安そうな表情で問いかけてくる朱乃。
その表情にいつもの頼れる年上の雰囲気は感じない。むしろ、年相応に迷い、不安に駆られている少女そのものだった。
それは朱乃の望む答えではないだろうが、エイミィーにははっきりとした答えがある。
だから、迷わずに答えた。
「私は……両親から力を継いで良かったと思っています。だって、
聞いて、朱乃は複雑な表情を浮かべる。
きっとアザゼルが最初に朱乃を選んだのは似た境遇にあるからこそ、エイミィーの本音を聞かせたかったのだろう。だから、言葉を取り繕うことはしない。心からの本音を伝える。
「朱乃様の過去に何があったのか……それはわかりません。きっと深い悲しみがあって、許せないことがあって、だからこそ自分に流れる血を否定しているのだと思います」
それでも、
「すぐに受け入れろなんて言いません。ですが例え受け継いだものであっても、
「……っ!」
エイミィーの言葉を聞いて、複雑な表情を浮かべていた朱乃は一瞬呆気に取られて目を見開く。
そのまま何かを言いかけたが気付いて口を閉じたが、やがて――
「ねえ、エイミィーちゃん。私に光の使い方、教えてくれる?」
「っ! はい、微力ながらお手伝いさせてもらいます!」
いつもの優しい笑みを浮かべた朱乃にエイミィーも笑顔で返す――
―○●○―
「はうぅ……やっぱり、回復の力を飛ばすのは難しいですね……」
そう言って、神器の使用によって体力を消耗したアーシアは地面へとへたり込んだ。
朱乃との修行を一通り終えたエイミィーはアーシアの元へ来ていた。エイミィーは神器を創り出すことができる唯一の存在、それを利用してアーシアの神器を創り自ら使用することで何か助言をしてやって欲しいとアザゼルに頼まれていたのだ。
アーシアへの課題は二つ、『
今はエイミィーがアーシアから離れた位置に立って、アーシアはエイミィーに向かって治癒の力を飛ばす鍛錬をしていた。
やはり一朝一夕では上手くいかない。
矢の形にして射出するところまでは良いが、現状飛んでも数十センチほど。それでは遠距離の治癒とは言えない。
へたり込んでしまったアーシアにエイミィーは一旦鍛錬を中断して近付いて、
「一度休憩にしましょう。無理をしたところで良い結果は出ませんから」
「は、はい……」
その場に座るとグレモリー家に用意してもらったポッドとカップを自分用の空間から取り出し、紅茶をカップへと注ぐ。
それをアーシアへ渡すと「ありがとうございます」と礼が返ってきて、彼女はカップを一口嗜む。
「わぁ……とっても美味しいです」
「疲労回復効果があるそうですよ。何でもシトリー領で栽培されている茶葉らしくて高級品だと聞きました。冥界で育つ植物は全部呪い関連と思っていましたがそうではなかったようですね」
「ふふ、せっかくですから冥界にいるうちに他の植物も見てみたいですね」
などと談笑していると、アーシアが問いかけてくる。
「あの、突然なんですけど、エイミィーさんはアルヴェムさんと仲良し……ですよね?」
「はいっ! イングヴィルド様と同じく『親友』だと思っていますよ!」
にこにことした笑顔、そして両手サムズアップで勢い良く答えて見せるエイミィー。
しかし、アーシアは反比例して少々表情が暗いものとなる。
「羨ましいです。私、実は部長の眷属になってからアルヴェムさんとまともにお話したことがなくて……」
「そんなはずは……」
と、否定してあげたかったが言われてみると思い返す限りエイミィーもアルヴェムがアーシアと話している姿がまるで浮かばない。
「も、もしかして知らないうちに何か粗相をしてしまったのでしょうか……何か知っていたら教えて欲しいんです! せっかく同じ学校で、今は同じ眷属じゃなくなりましたけど部活は同じですし仲良くしたくて……」
「何かと言われましても……」
はっきり言って、アーシアに嫌われる要素はないように思える。
誰にでも分け隔てなく優しく、クラスでも彼女の陰口を聞いたことはなかった。友人にも恵まれている上、美少女ということもあって男子からも人気がある。
アルヴェムがイングヴィルドにしか興味がない可能性も……と考えるも、リアスや朱乃。ゼノヴィア、そして自分と知り合った女性とは普通に話している。
正直、親友とは言ったもののアルヴェムの人となりはいまいち掴めていない部分は多い。もしかしたら、シンプルに嫌いだという可能性もゼロではない。
「やっぱり嫌われているのでしょうか……?」
今にも泣きそうな涙目のアーシアを見れば、エイミィーは勢い良く首を横に振って、
「いえいえ、きっかけがないだけだと思いますよ! アルヴェム様はたまに人の心が分からなくなる人ですから、今回もきっとそうです! 大丈夫ですよ、私がお二人の仲を紡ぎますから!」
「ほ、本当ですか!?」
「はい! 何てったって私はアルヴェム様の名誉『戦車』ですからね。私の話ならきっと聞いてくれるはずですし……無理だったらイングヴィルド様にお願いしますから」
などと、結局他人任せな部分もあるがエイミィーは快諾し、アーシアと固い握手を交わすのだった――