ハイスクールD×Dー機械仕掛けの少年と紫髪の歌姫ー   作:ホスパッチ

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第七十四話『復活の三羽烏』

「あ、改めまして、ご挨拶を。フェニックス家の長女レイヴェル・フェニックスと申します。臨時ではありますが、これからアルヴェム様の『僧侶』としてよろしくお願いしますわ」

 

 やや緊張した面持ちで、レイヴェルは自らのスカートの裾を軽く抓んで挨拶する。

 イングヴィルドはパチパチと拍手を送り、エイミィーは一礼を返す。

 

「はじめまして、エイミィー・クァルタと申します。実際のレーティングゲームには出られませんが、アルヴェム様より『戦車』の駒を受け、名誉『戦車』をしています」

「そういうわけだから実際のゲームで作戦を立てるのに『戦車』は頭から外してくれ」

「な、なかなか難易度の高いことを仰りますね……」

 

 レーティングゲームにおいて『戦車』の存在は『女王』と同等にもなり得る。

 いないだけで多大なる不利なのはアルヴェムも分かっているが、そう普通の思考をされては面白みも試し甲斐もない。あまり考えてはいないものの、レイヴェルの能力が予想よりも下ならばリコールすることも考えなくてはいけないのだから。

 

 何か言いたげではあるものの、レイヴェルは何とか飲み込み、それでも気になることが一つあった。

 

「『戦車』は仕方がありませんが……『僧侶』や『騎士』、『兵士』も候補者がいないのでしょうか?」

「『兵士』はアテがあるって、言ってた気がするけど……」

「ああ。まずはそこからだな。成功するかは不明だから仮に失敗したら『兵士』すらもゼロだ」

 

 えぇ……とレイヴェルは思わず口にするも、アルヴェムは手を薙ぐと自らの亜空間より一つの筐体を取り出す。

 それはレーティングゲームの際にレイヴェルを捕まえたものであるカプセル。それを見るなりレイヴェルは思い出したようで若干顔が青ざめるも、

 

「そ、その中に候補者がいるのですか……?」

「劣化なく保存してるが、死んでから少し経っている上にバラバラだからな。これで上手く復活させられるか……『悪魔の駒』の実験にもなる」

 

 レイヴェル、イングヴィルド、エイミィーがカプセル内を覗き込むと、一斉に驚いた表情を見せる。

 何せカプセル内の液体に漬けられているのは原型すらわからない生物だったものの部位。一応、三人分にはなっているはずだ。

 

「こ、これって、もしかして……?」

「ああ。ミッテルト、ドーナシーク、カラワーナの三人だ」

「……? アルヴェム様の部下だった方達なのでしょうか?」

 

 イングヴィルドは察したものの、レイヴェルとエイミィーは一度も会ったことがないために怪訝そうに首を傾げる。

 

「堕天使だ。イッセーを一度殺し、アーシアの神器を奪ったレイナーレという堕天使の部下だったが、堕天使の実験のために鹵獲して雑用に使っていたんだ。コカビエル襲撃事件の際に皆殺しにされたがな」

 

 正直、生かしてもろくな戦力にならない上に堕天使の研究資料にもならない。

 放っておいても良かったが、彼女達が亡くなった後で学園の生徒から心配する声が上がっていた。

 本来ならば一般人など記憶を消して終わりだったが、アルヴェムはリアスやソーナに待ってもらったのだ。もしかすると、元に戻る可能性があるかもしれないと。

 

 ソーナからも彼女達の働きは評価されており、リアスも思うところはあるだろうが反対はしなかった。

 それに亡骸を見た際に抵抗の痕があったことから一応戦意は見せたのだろう。そのひと絞りの勇気に敬意を表する形だ。

 

 筐体に触れると幅を三人入るほどに拡張し、その内部では金属が音を立てて形を形成していく。

 骨格。人間をベースに堕天使の翼を考慮した素体を元々あった彼女達のデータを参照して三人分作成し、横並びにする。

 

 派手に混ざった肉片はこの際仕方がない。それらを全て一同に混ぜ、培養してそれぞれの骨格に肉を創り上げる。

 数分とせずともイングヴィルドの記憶にもある三人の堕天使の姿が完成し、見ていたレイヴェルも感嘆の声を上げた。

 

「これほどまでの技術……一体、どこで……」

「残念ながら、その記憶がないから答えられないな。まあ今は良いだろう。ミッテルト、ドーナシーク、カラワーナの素体はこれで完成だ。後は――」

 

 懐から取り出した『兵士』の駒を三つ。

 それを筐体の上に置くと、アルヴェムはここで顎に手を当てる。

 

「……ここからどうするんだ?」

 

 イングヴィルドが『女王』になった時は駒が独りでに入っていき、転生した。レイヴェルはいつでも『僧侶』の駒を返せるように、そもそもライザーからフェニックス夫人を経由してトレードされたに過ぎない。

 

 自分から転生させようとしたことがないため、止まってしまった。

 それを見て、イングヴィルドは、

 

「アルヴェムが思う言葉を言ったら良いんじゃないかな……? 戻ってきてって」

「契約の言葉はそれぞれですが、言霊という概念が転生にはあると聞きます。魂が肉体より離れた期間が長いほど転生は失敗しやすいものですので、死者が戻って来なければと強烈に思う言葉が良いかと思います」

「それは要するに……脅迫しろってことですね」

「そうか……」

 

 言われ、皆が見守る中で少し考えた結果、アルヴェムは駒に手を置いて、

 

「早く戻って来なければ、地獄の底でもお前らの魂を見つけて二度と生まれ変わらないように完全に消滅させてやる。五、四、三、二――」

 

 数を数えた途端に駒が鈍色に輝き、すぐさま筐体の中にある素体へと飛び込んでいく。

 あまりにも効果覿面。しかも、そこにはアルヴェムにとって嬉しい誤算があった。

 だが、それを追及する前に筐体内で三人が目を覚まし、一斉に呼吸を求めてがぼがぼと口から泡を立てる。

 

 金属の骨格を与えたことで呼吸は不要だが生前の癖だろう。

 筐体が開いた途端に三人は一斉に我先に外へ飛び出し、咽ながら周りを見渡し、

 

「げぼっ……おえ……ど、どこなのよ、ここ……?」

「わ、我々は死んだはず、では……」

「何が起こったと……いうのだ……?」

 

 一糸纏わぬ全裸で三者三様に疑問を口にするので、アルヴェムはすぐに三人の前に立ってやる。

 すると、ようやく焦点が合ってきた堕天使三人はゆっくりと見上げ、やがて口を大きく開けて呆けた。

 

「あ、あ……ああ……アルヴェム様!?」

「どどど……どうして、ここに!?」

「もしかして……あの、コカビエル様に……そうだ、我々はコカビエル様に……」

「端的に説明するが、お前らはコカビエルに殺されて一度死んだ。で、俺達の手でコカビエル襲撃事件は解決。間は省略するが、俺は上級悪魔になって駒を手に入れたから、お前らを『兵士』として蘇らせたわけだ」

 

 あまりにも一方的な説明に未だに理解が追いついていない三人だったが、今の流れで明確に理解していることがある。

 自分達は何があろうとアルヴェムから逃れられないと――ならば、と悪魔に転生したことは置いておき、堕天使三人の受け入れる速度は早かった。

 全裸だろうが構わず跪いて、

 

「「「これからもよろしくお願いします!!!!」」」

「ああ。それで良いよ」

「で、でも……ちょっと、嬉しいですね。アルヴェム様はわたくし達のことを何だかんだ言って必要としてくれてたんですね……!」

 

 などと、ミッテルトが指をもじもじさせながら言ってくる。

 対し、傍で見ていたドーナシークとカラワーナは『いらないことを言うな』と言いたげな視線を向けるも、アルヴェムは少しだけ機嫌が良かった。

 

「正直、お前達に『兵士』の駒三つを使用するのは気が引けたが妙な奇跡があったようだ」

「き、奇跡?」

「今、お前達の中にある駒は『兵士』の駒を三分割したものだ」

「え……? それって、つまり……?」

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 三人分の細胞を混ぜて同一化させた効果は思いもよらぬところで出ていた。

 転生する瞬間、筐体に乗せられていた三つのうち一つの『兵士』の駒だけが輝いたのだ。それが一番上の丸部分、胴部分、台座部分と分かれて、それぞれの身体へと入った。

 

『悪魔の駒』は未だに解明されていない部分が多いと聞くが、まさにこれはバグの一種だろう。しかし、そのおかげでアルヴェムの『兵士』の駒は相当余った。

 

 あれほど馬鹿にした一誠以下と知った三人はがくりと肩を落とすも、これからの待遇には変わりない。

 

「お前たちの骨格を俺が作ったから、より改造しやすくなった。その分、これからは戦闘面でも今まで以上に好き勝手使うから覚悟しておけ」

 

 と、率直に伝えられた堕天使三人は何とも言えない顔をしていた。

 構わず、アルヴェムは三人の後ろを指差し、

 

「挨拶しろ。暫定『僧侶』のレイヴェル・フェニックス、名誉『戦車』のエイミィー・クァルタ、『女王』のイングヴィルドは……知ってるな?」

「はいっ、それはもう! これからも粉骨砕身の覚悟で奥方をお守りします! ね、ドーナシーク! カラワーナ!?」

「「この身に代えても必ず!!」」

 

 短い期間でも下僕として洗練された掛け声にイングヴィルドも苦笑するばかりだった。

 しかし、いつまでも全裸でいられてはイングヴィルドも困っている様子のため、適当な機械を作成して三人へと与える。

 三人が着替えているうちにアルヴェムはレイヴェルへと向き直り、

 

「これで『兵士』も手に入った。『騎士』、『僧侶』は残り日数も考えるが――一先ずグラシャラボラスとのレーティングゲームは、このメンバーで戦うことになるな」

「エイミィー様を除く分、戦力としては痛いですが……いくらでも改造できるなら全然勝機はありますわね」

「すでにいくつか考えているよ。キミの兄から色々と教わったからね」

 

 勝つだけならばアルヴェムが全面的に前に出て敵を倒せば終わるだろうが、ライザーからはそれを否定された。

 レーティングゲームは、あくまでエンターテインメントの産物。そんな塩試合をすれば、アルヴェムから観客が離れてこれからの上級悪魔としての道に支障が出る可能性もあるらしい。

 

 何とも面倒だが、そういったパフォーマンスも必要とならば対応しなければならない。

 すでにレイヴェルは作戦を考え始めたようだが、先に聞くべきことがあった。

 

「レイヴェル、グラシャラボラスについてデータを用意して欲しい。戦うならば相応の情報が必要だからな」

「はい、それは必ず用意します。でも、今の時点から厄介な相手が一人いますね……」

「厄介な相手?」

 

 イングヴィルドが問うとレイヴェルは頷き、

 

「『女王』です。通常、眷属を持つ上級悪魔は社交界がある場合、必ず『女王』を連れるのですが……ゼファードル様の『女王』はまるで表舞台に姿を現したことがありませんの」

「いないというパターンではなくて、ですか?」

「いえ、いることは確実ですわ。誰もがその存在を知りながら無視している場所にいますからね……」

 

 少し歯切れの悪い言い方にアルヴェムはそれが相当嫌な存在であることを察した。

 意を決してレイヴェルは言葉を紡ぐ。

 

「ゼファードル様の『女王』はグラシャラボラス領の地下に存在する最大の地下賭博闘技場、その王座に君臨する最強の女闘士です。しかも、そのお方は――」

 

 そこから続く言葉にイングヴィルドも、エイミィーも、皆驚きを隠せなかった――

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