古龍種ギルド「古龍の血」   作:古龍の浄血

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あなたがもしも古龍種の力を手に入れられるのなら、どれがいいかな?


吾輩はクシャルダオラである。名前はまだない

 

 吾輩はクシャルダオラである。名前はまだない。

 とまあ、某文学作品のように言うが、実際はどうなのだろうか。今の私には記憶の連続性がない。気がつけばこの体で、この場所に佇んでいた。

 わけも分からず佇んでいると、おぼろげながら浮かんできたんです。私の前世と思わしき記憶が。

 とはいっても、前世の私がどうであったか、などの知識ではない。家族構成や性別、趣味嗜好ですら曖昧であったが、モンスターハンターというゲームとその知識だけは明確に残っている。

 

 かすかな知識を頼りに、これは転生というやつではないかと思う。もしかしたら違うのかもしれないが、わたしは人間からクシャルダオラに転生した。少なくとも、そう思うことにした。

 

 そこまで思考が住んだところで、果たしてここは何処なのだろうかと疑問に思う。そして考えた。今の私はクシャルダオラなのだから、飛んで探そうと。

 

 そうと決まれば話は早い。四足と別に備わる鋼の大翼を震わせ、この巨体を浮かすのに必要な力を確保し、空へと舞い上がる。

 

 元人間としての感覚が残っているため、満足な動きができるか不安であったが、この体に備わる本能か、特に違和感もなく空を翔ける事ができている。

 

 は、はは。ははははは!すごい!これはすごいぞ!

 

 龍としてのわたしは努めて冷静に風を掴むために翼を動かすが、人としての意識が感動に打ち震える。

 自力での飛行が、こんなにも気持ちのいいことだとは!

 まさに人類の夢の一つとしても数えられるだけのことはある。

 

 クシャルダオラは、初めて自転車に乗ったばかりの子供のように、最初は恐る恐る、やがてスピードや姿勢を変えて、大気全てが大地であるかのように軽々と翔けまわる。

 

 鋼龍クシャルダオラのもう一つの別名。風翔龍の名に偽り無しというところだろう。

 

 そして、ここまで己の体の動かし方を実感したのならば、次に来るのは身体機能の確認だ。

 

 クシャルダオラである彼、あるいは彼女は、興奮冷めやらぬまま息を吸い吹き付ける。鋼龍の口から放たれた暴風のブレスは、大地の森をなぎ倒し、巨大なクレーターを残す。それを確かめるように何度か繰り返し、今度は空中に留まったかと思うと、いくつもの竜巻の群れを作り出した。

 

 この風は大地を抉り、如何なる巨木であれどその根ごとなぎ倒して更地へと変えていく。尾の一撃は巨木を両断し、四肢の突撃は阻むものなど何もない。

 

 存分に暴れ回ったクシャルダオラが、冷静さを取り戻したのは、この森の半分ほどが禿げきってしまってからのことだった。

 

 

 

 やりすぎてしまった。特に理由もないのにこうまで暴れ、環境を破壊するなど、いい大人のすることではない(大人であったという記憶はないが)。クシャルダオラ特有のあの悪天候も、起こそうと思えば起こせそうだ。せめてもの罪滅ぼしに、ここら一体に雨を降らせてやろう。

 

 どこからエネルギーが来て、どんな原理かは不明だが、強く念じることで悪天候を呼び起こす。まあ、人間でも自身の肉体を完璧に理解している者などいないので別に疑問には思わないが。

 

 晴れ渡った青い空は次第に渦を巻き、瞬く間に暗雲立ち込める曇天へと変貌した。

 更に力を込めると、黒雲が雨を地上へ落とす。最初はポツポツとしたものだったが、成長を繰り返した雲により、辺り一帯が豪雨へと包まれる。

 

 よきかなよきかな。まるで神様になったような気分だ。いや、そう助長するものではないと理解はしているが、どうにも有り余る活力がそう思わせてしまう。そもそも、これも森を荒らした謝罪のようなものだ。反省。

 

 と、そうではない。このような異常気象。有能な古龍観測所にすでに発見されている可能性もあるだろう。

 わたしは出来れば人類に敵対したくはないし、かといって大人しく狩られたくもない。故に、逃げ一択だ。

 

 未だこれといった目標はないが、別に目標がなくては生きていけないなどということもあるまい。そう考え、わたしは両翼で風をきって彼方の空へと目指し始めた――――

 

 

 

――――はずだったのだが…。

 

 固まるわたしの前には複数の影が佇んでいた。

 同じくらいの体格の獅子のような赤い龍。カメレオンじみた紫の龍。赤い龍に酷似した外見の青い龍に、屍肉纏う龍と剛力の化身の如き棘まみれの龍。その他にも龍龍龍龍龍龍龍龍龍龍龍龍龍龍――――!

 

 一体出現するだけで災害の起きる古龍が、所狭しとひしめき合っているこの光景は、さる学者がみればこの世の終わりかと嘆くことだろう。終いには、見えないことにしていたが彼らの奥に控える黒き龍と白き龍。

 

 その圧力は、先程までの軽々しい気持ちを一瞬で後悔するほどのものであったとだけ言っておく。

 

 どうしてこうなった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 あれから数十年。……いや、百年近く経ったと思う。

 人間の感覚はそのままでも龍としての感性も持ち合わせているから何とも妙な感じだ。長いような、短いような。

 

『そろそろこっちに来て百年くらいでは?』

『あー、もうそんな経つのか…。どうする?10周年の時みたくなんかするか?』

『今度はチーム戦でもしてみんか? あとは外野の竜とかも誘ってこの際でっかくとかか?』

 

 そして、この百年色々あった。

 今話している炎王龍と霞龍もそれらのうちの一つだ。この世界に来た直後に出会った彼ら古龍種は、みなわたしと同じ様な境遇であり、このように言葉も通じる。一時は協力して生活したり、様々なことをして遊んだりもしたが、それもそう長くは続かなかった。

 いや、中が悪くなった訳では無い。むしろ仲はかなりいい。全員が無二の親友と言ってもいいほど信頼している。ただ、あれほどの古龍が一同に集まると、環境に与える影響が尋常ではなかったのだ。抑えようと思えば軽減できなくもないが、ふとした時に制御を離れれば酷いことになる。

 

 実際、あるときなんて森が瘴気に覆われ、熱波が滞留している銀世界に吹き荒れる大嵐にウイルスが乗っていき、大地が隆起したり隕石が落ちたりと、散々なものだった。

 ちなみに、これらの古龍災害は祖龍の方が何とかしてくれました。……禁忌って、怖いね。

 

 そこからは、ある程度距離を保ちながら仲良くしている。

 実際、生活環境が合わなかった仲間もいるからありがたいのだけど。

 

『そういえば、人間たちが面白い魔法を作ったらしい』

 

 オオナズチが何処から仕入れてきたのやらそう呟く。彼はその隠密性からよく人間の様子を見に行ったり、偵察なんかを努めてくれている。そんな彼からの情報ならば、たとえ荒唐無稽であれ一考の余地があるというもの。

 

 …先の言葉で理解しているであろうが、この世界には“魔法”というものが存在している。それも、人類が扱う手段として確立されているのだ。加えて、現れるモンスターも見慣れたものもなく、新鮮味に溢れている。

 

 ここまで条件が揃っていればみな自ずと気づいた。『ここ、モンスターハンターの世界じゃないな』と。

 そうと決まれば、情報収集は当然のことだろう。まあ、色々あった。素晴らしき友人との出会いもあれば、不幸なすれ違いから起こった対立もあった。それらを通して、わたしは成長したのだろう。

 

 因みに、この世界には、『竜』がいる。

 モンスターハンターの世界の定義上での竜でなく、多少例外はあれど四足に翼を持つこの星の最強種。

 私達の同類を探す旅にて、数多の竜と出会った。彼らはみな知性があり、言葉を交わすことも出来る種族であり、いよいよモンスターハンターの竜とは違う存在なのだなと実感させられたものだ。

 因みに、普通に野蛮な者もいたため、彼らには古龍の恐ろしさを身に刻ませてやったとも。まさか龍属性があそこまで凶悪だとはわたしすら思わない。いや、あれはまああっちが悪いからいいとはいえ……。

 

 と、まだオオナズチの話の途中なのだった。清聴するように。

 

『ドラグノフ王国だったかの。ベルセリオンがいたところの。そこの魔導士が竜に対抗するための魔法を作ったらしいんじゃ。体質を竜に近づけ、恩恵を得るタイプの魔法らしいが。対抗できるようになったのはよいものの、その分それをよく思わない竜からのやっかみも買ってるみたいじゃな』

『へえ、一歩を踏み出したのか。でも、そのせいで狙われるのはなんとも不運だな』

『それは当然だろう。竜には人間を蹂躙してきた者も多い。今まで散々下等種族と見下してきた彼らが対抗手段を手に入れようとしていれば気に食わないという意見も出るでしょう。それも、竜の模倣なのだから尚更に』

 

 彼ら共存派の竜たちは人間と共に生きるために反対派の竜と戦っている。人と竜が手を取り合い、団結してことを為す事ができればどれだけいいことだろう。いがみ合うよりも手を取り合ったほうがいいのは誰に言われなくとも理解している。

 だが、どうにも共存派の竜たちは人間側に寄りすぎている気がしてならない。それが悪いとは言わないが、その生命としての規格の違いをそのまま型に落とし込んでいる節がある。互いに己の強さと弱さを実感している分、殊更庇護対象としての立場のようにも見える。

 当然、彼らにそのつもりはないだろうが……。人間と竜は違う。理解し合うことも、共存も、友になることもあるだろう。だが、決して同じ生命としての歩みは出来ない。上辺だけを理解した気になりそれから目を背けているのであれば………。

 彼らの視点の違いが、いつか大きな不和を齎しそうでわたしは不安でならないのだ。

 

 尚、私達が選んだのは基本的には不干渉。ということだ。共存、反対とも違う、強いてつけるとするのならば調和派といったところだろうか。

 

 魔法がなく、便利な設備もなく、強力な龍のひしめき合う世界に生きる生命を私達は知っている。知識面でしかなくとも、これはみなの総意でもある。

 

 どちらかの派閥に深い肩入れはしない。自身にとばっちりが来た際にはその限りではないが、人は人の歩みに。竜は竜の歩みに任せることにした。

 そも、同じ世界に生きる生命という点では人類も我々も変わりない。敵対したいのなら個人で、共存したいのなら小集団で。その程度で留めておけば互いによかったものを。

 

 せめてあと数世紀。築き上げた歴史があれば今の形でもこうは荒れ狂わなかったと思うのだが…。これは、今更詮無きことなのだろう。

 

『まあ、その魔法は今は様子見でいいだろう。私はこれからメタリカーナを誘ってマムの黄金郷へディナーと洒落込むつもりだが、テオとナズチは?』

『俺はイグニアに稽古付けに行ってくる。最初はすぐ折れるかと思ったが結構粘るからな…。流石はイグニールの子だけある』

『儂は特にないが…。まあ、色々とぶらぶらしとくわい』

 

 人と竜の均衡が崩れかけたこの時代に、しかして彼ら古龍は黙して世界の流れに身を任せていた。

 

 因みに、今もどこぞで環境改変を繰り返している仲間に対しては全スルーの方針である。余のせいじゃないもん!

 




因みに、彼らの中にフェアリーテイルを知っている者はいません。
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