恋するヒットマン   作:ほろろぎ

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最終話 繋心

 林間学校の夜の行事である肝試しの最中に、桐崎千棘は忽然(こつぜん)と姿を消した。

 脅かし役の代理を受け持ったという彼女は人知れず山中に入り、そこから先の動向は誰も知らない。

 

 なぜなら彼女は……「アントライオン」なるギャング組織に拉致されてしまったのだから。

 

 その事実に、偽の恋人である一条楽を含めた友人たちは驚きを隠せない。

 

「アントライオンって、昔千棘ちゃんをさらおうとしたっていう……」

「で……でもそれって、鶫さんが昔に壊滅させたって言ってたよね?」

 

 小咲と純は、キャンプの時に鶫らが話していたことを思い出す。

 

「ああ。だが今、現に奴らからの通信がきたということは……どうやら生き残りがいた、と考えるべきだな」

 

 鶫が絞り出すように答える。

 

(以前、ハンバーガーショップでの勉強会の時に感じた殺気は、やはり気のせいではなかったのだ)

 

 あの時から、アントライオンは千棘の事に目をつけ、監視していたのだろう。

 そして今、人目に付きづらい夜という時間に加え、千棘自身が周りから離れ独りきりになるという、敵にとってまたとないチャンスがきたのだ。

 

「私のせいだ! 私がちゃんと、お嬢の側を離れず、注意の目を向けていれば……ッ!」

 

 悔やんでも悔やみきれない大きなミス。少女は自らを責めた。

 

「そ、それで桐崎の奴は無事なのか!?」

 

 楽が叫ぶように問う。

 いくら偽物の恋人の関係とはいえ、これまでの交流でいくらかは仲の深まった相手だ。

 それでなくても気にかけるのは当然だろう。

 

 鶫はいくらか冷静さを取り戻し、楽の言葉に答える。

 

「ここから近い山の中にある、今は使われていない廃ビルに囚われている様だ。さっきの通信で、私一人でそこまで来い、と言われた」

「それって……」

「ああ、十中八九罠だ。恐らくお嬢をダシにして、私への報復を狙っているのだろう」

「んなのが分かってんなら、わざわざ行くこと無ぇだろ!」

「お嬢がさらわれたのに、私が黙って引き下がると思うか?」

「ぅ……」

 

 少女の断言するような発言に、楽は否定の言葉を返せなかった。

 

 そのまま鶫は静かにこの場を離れ、行事に参加するため身にまとっていたジャージを脱ぎ、いつものブレザーへと着替えた。

 ヒットマンとしての仕事用に特別にあつらえた服の内側には、いくらかの武器が内装されている。

 

(とはいえ敵の人数が分からない以上、手持ちだけでは心もとないが……)

 

 今は四の五の言ってはいられない。

 いざ千棘の元へ向かわんとする直前、彼女を二つの声が呼び止めた。

 

「ちょっと待てよ、鶫」

「僕らも一緒に行くよ」

 

 こっそりと抜け出してきた一条楽と姫野純、彼ら二人が少女に同行を申し出る。

 

「何を言っている!? これは……」

「わかってるよ。ギャング同士のガチなやり取りだってのは」

「でも、だったら尚の事、鶫さん一人で向かわせるなんて出来ないよ」

 

 楽も純も、真剣な顔で鶫を見据える。

 共に、もしもという時の覚悟は完了している面構えだった。

 

「それにお前だけに任せちゃ、あとでハニーに『アンタはなにやってたのよ!』ってドヤされるからな」

 

 冗談めかした楽の物言いに、鶫もつられて口元が緩む。

 

「……仕方ない。問答している時間も惜しい」

「「じゃあ」」

「しっかり手伝ってもらうぞ、二人とも」

 

 楽と純は互いにうなづき合い、鶫を先頭にして駆け出して行った。

 

 

 

 

 

 一方──。

 肝試しが行われていた山からほど近い、さりとて人目に付きづらい山の中。

 とある廃墟の中で、桐崎千棘は手錠に足枷という厳重な拘束を受けた上で、イスにロープで縛り付けられていた。

 

 廃墟のなにも無いホールの中心に、拘束された千棘と──彼女の前に男が一人立っている。

 男の顔は暗がりでよく見えないが、ガッシリした体格と片手に拳銃を握っていることから、堅気で無いことは明白だ。

 

 千棘はキッと男を睨む。

 

「アンタ、一体私をさらって何が目的なの!?」

「…………」

 

 怒りを見せる千棘など意に介さず、男は腕時計に視線を落としている。

 まるで、誰かとの約束の時間を気にするように。

 

「……すぐに、つぐみが助けに来てくれるわ。そうしたら、アンタたちなんてすぐにやっつけて……」

「そう、それだ」

 

 寡黙だった男が、千棘の前で初めて言葉を発した。

 

「つぐみというのか……ブラックタイガーの真の名は」

「ブラックタイガーって……。まさか! アンタの狙いは私じゃなくて……!?」

「そうだ。私はかつてブラックタイガーに壊滅させられた組織、アントライオンの幹部だった者。今日という復讐の機会を、ずっと(うかが)っていたのだ」

「私を人質にして、つぐみをおびき寄せようって魂胆ね! この卑怯者!!」

「なんとでも言うがいい。かつての屈辱を晴らすためなら、どんな手段でもとってやる」

 

 男は懐から、一本のナイフを取り出した。

 刃が、欠けた窓から漏れ入る月光を受け、怪しく輝く。

 

「ッ! な、なにを……」

 

 男は無言で、ナイフの刃先を千棘の頬に当てる。

 少女の顔に、一筋の赤い線が走った。

 

「痛っ」

「たとえ、君の様な少女を傷つけようとも」

 

 千棘の目に、男の瞳が映った。

 復讐の炎に燃えるその瞳は、目の前の少女を傷つけることなどなんとも思っていない。

 

「ぎゃあぁあああ!?」

 

 出し抜けに、廃墟の外から男の悲鳴が響いた。

 アントライオンの構成員のものだろう。

 悲鳴は次々と、止むことなくなり続ける。

 

「……まさか!」

「来たか、ブラックタイガー……!」

 

 

 

 

 

 鶫は一人、アントライオンのアジトと思われる廃ビルの正面に向かった。

 事前に純と楽とは打ち合わせ済みの行動である。

 

 それは、表で鶫が派手に暴れて敵の注意を引き、その間に裏口から男子二人が潜入して、秘かに千棘を救い出すという作戦。

 

 荒事に慣れていない少年二人には危ない役目だったが、かといって鶫と三人で固まっていても彼女の負担が増えるばかりだろう。

 という純の提案によって、今彼は楽と共に裏手から人目をかいくぐって、捕まっている千棘の元を目指していた。

 

 幸いにも鶫が表で大立ち回りを演じてくれているおかげで、アントライオンの構成員たちはみな正面の防衛に駆り出されている。

 おかげで純たちは楽々とアジトの中まで侵入できた。

 

「……! 一条くん、あそこ!」

「桐崎……!」

 

 二人が出た広場の中央──ポツンと置かれた椅子の上で、少女が拘束された状態で放置されているのが見えた。

 

 純と楽は駆け足で千棘の元に向かうが、それに気づいた少女は、救援を(こば)むように首を振る。

 口に猿ぐつわを噛まされているため言葉が発せない中、二人になにかを伝えようとしている様に見えた。

 

「なるほど、ブラックタイガーを(おとり)にするとは、考えたものだ」

「「ッ!?」」

 

 少年らの前に、暗がりの中から出てきた一人の男が立ちはだかる。

 月光に浮かび上がる深い傷が刻まれた顔、片目に着けられた眼帯、立ち昇るただならぬオーラは、男がそのスジの人間であることを二人に悟らせた。

 

「悪いがこの(むすめ)は、こちらの切り札でね。君らに返すわけにはいかんのだよ」

「なんでだよ! そいつは関係ねぇーだろ!?」

「関係はある。彼女をきっかけに、私とブラックタイガーとの因縁は始まったのだからな」

 

 楽の訴えにも男は耳を貸そうとしない。

 次に純が言葉を投げかける。

 

「なら、因縁のあるアナタと鶫さんだけで、決着をつければいいのでは?」

「残念だが、今の私の力ではブラックタイガーに及ばなくてね。奴に報いるためには、桐崎千棘という(かせ)が必要なのだ」

「んだよそれ……そいつは体のいい人質ってことか!?」

 

 怒りを見せる楽の言葉を、眼帯の男は涼し気に肯定した。

 

 楽は純に目配せをする。

 ここは俺がどうにかして、千棘を助けると。

 

 楽の覚悟を見た純も、無茶を承知で助け舟を出す。

 

「ここまで来たら一蓮托生。僕もやれるだけやるよ」

「……悪ぃな、純」

 

 二人はうなずき合うと、同時に駆け出した。

 左右に分かれ、男がどちらかの相手をしている間に千棘の拘束を解く、という算段だ。

 

 が、腐っても相手はプロのギャング。

 別々の方向を走る少年らを前にしても、一切の動揺も見せない。

 

 千棘に向かう楽はいったん捨て置き、男は目の前に迫る純を相手にする。

 純は護身術を習ってはいたが、初戦素人のもの。

 プロの対人格闘術の前に成すすべもなく打ちのめされ、楽の方も少女の元にたどり着く前に追いつかれ、純と同様に拳をその身に受けてダウンした。

 

「や……やっぱり……」

「つ、強えぇ……」

 

 二人は一度では終わらず、何度となく立ち上がるも──そのたびに男からの一方的な攻撃を受け続けた。

 そして、ついに少年らの体には身動き一つとれないほどのダメージがたまり、地に倒れ伏すのみとなった。

 

「ここまで来たということは、君らもブラックタイガーの知り合いだろう? ついでに人質となってもらおうか」

「く……そっ……!」

「逆に……足手まといになっちゃった……」

 

 ロープを手にゆっくりと近づいてくる眼帯の男。

 が、不意にその場を飛びのく。

 直後──男の立っていた地面がはじけ、火花が散った。

 

「ようやくお出ましか」

「すまない、待たせたな」

 

 鶫誠士郎が、右手にリボルバーを構えたまま、そこにいた。

 表での大立ち回りの末、アントライオンの構成員をすべて打ち倒しての参上だった。

 

「鶫……!」

「鶫さん!」

「んーっ! (つぐみーっ!)」

 

 楽たちは彼女の到着に歓声を上げる。

 

 鶫は楽、純、そして千棘に視線を向けた。

 ボコボコにノサれた少年二人と──なにより敬愛する少女の頬に付けられたナイフの切り傷を見て、鶫の瞳に怒りの炎が燃える。

 

「今度こそ……チリも残さず潰してやるぞ」

「そう容易くはいかんさ」

 

 鶫と男は同時に銃を抜き、撃ちあう。

 二人は互いに狙いをつけながらも、自らに向けて放たれた弾丸は、凄まじい動体視力によって回避していく。

 

 共にこれではらちが明かないと、今度は接近戦へと持ち込む。

 ぶつかり合うナイフが暗いビルのホールに火花を散らせ、そのわずかな光の中で二人の優劣が次第に決まっていく。

 

「ぐっ……!」

 

 倒れ込んだのは、眼帯の男の方であった。

 男を見下ろす鶫は、ナイフの切っ先を向け投降をうながす。

 

「甘いな、ブラックタイガー」

 

 男は瞬時に立ち上がると、近くで未だ拘束されたままの千棘の隣りに並ぶ。

 鶫が動くより前に、男はナイフを椅子の上の少女の首元にかざす。

 

「お嬢ッ!」

「動くな。……やはりこの娘をさらっておいてよかった」

「貴様……ッ」

「卑怯だと(ののし)ってくれて構わんよ。君への借りを返すには十分だ」

 

 男は一方的に拳銃を鶫に向けると──ためらうことなく引き金を引いた。

 

 パンッという乾いた音が響き、直後に鶫が片膝をつく。

 

「鶫さん!」

「鶫ッ!」

 

 見守るしか出来ない三人の友が、悲鳴のような声を上げた。

 

「心配するな……足を撃たれただけだ」

 

 痛みをこらえながら鶫が言う。

 彼女の片足から、闇の中で黒い液体が流れ落ちるのが見える。

 

「……これ以上いたぶることもないだろう。次で止めといこう」

「…………」

 

 もはや手が出せずとも、射貫くような視線を向け続ける鶫に、男は最後の一撃を見舞わんと撃鉄を起こした。

 

「さらばだ、我が因縁の相手よ」

「鶫さん! 撃って!!」

 

 男は純の叫びに反応して、とっさに彼の方に首を曲げた。

 目の前には、何か小型の缶らしき物体が浮かんでいる。

 倒れたままの純が、必死の力で投げ寄越した物だろう。

 

「ッ!」

 

 鶫も少年の意図を察して、缶状の物体に弾丸を一発放った。

 

 缶はバンッ! と大きな音と共に、眼帯の男の眼前で破裂。

 男の顔に、缶の中身である液体が煙となったものが、ダイレクトに襲い掛かった。

 

「グオッ!? こ、これは……!?」

 

 純が投げたものは、彼が普段携帯している防犯スプレーであった。

 スプレーの中身が直撃した男は、刺激によって目を開けられなくなってしまう。

 

「ッ……ぉおおおおお!!」

 

 この隙を逃すまいと、鶫は痛む足を無理矢理動かし男に接近。

 敵がそれに気づくより先に、渾身の右ストレートが眼帯の男の顔面にヒットした。

 男は体ごと、豪快に吹っ飛ばされる。

 

「ぐ……ぁ……」

 

 男は頭部に受けた衝撃で起き上がれず、朦朧(もうろう)とした意識で地面の上でもがいていた。

 

「やった……のか?」

 

 楽は誰かに問うようにつぶやく。

 吹っ飛ばされた眼帯の男は、やがてもがくことを止めた。

 頭部に受けたダメージで気絶したのだろう。

 

 楽の問いに答える者はいなかったが……どうやら事態は沈静化したと見ていいであろう。

 

 安堵に体の力を抜く楽の隣で、純は息を飲んだ。

 それは鶫の顔に、未だ消えぬ怒りの火が燃えていたから。

 

 少女はコツコツと静かな靴音を響かせながら、倒れたままの眼帯の男に向かって行く。

 そして──すでに意識を失っている男に対して、手にする拳銃を向けた。

 

「貴様は一度ならず二度までも、お嬢を危ない目に巻き込んだ。三度目は無い」

 

 明確な殺意と共に、鶫は銃の撃鉄に指をかける。

 その手を、不意に止める温もりがあった。

 

「姫野くん……?」

「もう十分だよ、鶫さん」

 

 銃を持つ少女の手に自らの手を重ね、姫野純は彼女がこれから行わんとする凶行を制止する。

 が鶫もこれ以上、大切な人である千棘へ危険が迫るかもしれない可能性を放置できないと、譲る気はない様子。

 

「退いてくれ」

「いやだ」

「これはギャング同士(我々)の問題だ」

 

 純は鶫の前に出て、拳銃の射線上に身を置いた。

 

「冷静になって。今の君は頭に血が上ってる」

「そこを退くんだッ」

「……撃てば、なにもかも終わってしまう」

 

 少年の悲しげな瞳が鶫の目に映りこむ。

 

「誰かを(あや)めてしまえば、きっと桐崎さんの側にはもういられなくなる。一条くんや小野寺さん、友達の側にも」

「だが、それでは……」

「なにより……好きな人に、人殺しなんて罪を背負ってほしくないから」

 

 純の告白を聞いて、鶫は一瞬、彼が何を言ったのか分からないようなキョトンとした表情を浮かべた。

 そして数秒後──言葉の意味が理解と共に鶫の脳内に浸透し、少女はあわあわと動揺しはじめる。

 

「なっ……なななな、君は何を……ッ!?」

「ごめん、こんな時に。でも、他に鶫さんを止められるいい言葉が思い浮かばなくて」

「良かったじゃない、つぐみ!」

 

 空気の読めない発言をしてしまったバツの悪さに頬をかく純。

 その後ろから、楽の手によって(いまし)めを解かれた千棘がやって来た。

 

「私も、前々からアンタたちはお似合いだと思ってたのよね~」

「だな、俺も同感だぜ」

 

 彼女の言葉に楽も相槌を打つ。

 

「それに姫野くんの言う通りよ! 私だって、つぐみがこれ以上誰かを傷つけるところ、見たくないもん」

「お嬢……」

「私なら皆のおかげで平気よ! ほら、ね?」

 

 むんっと力こぶを作るようなポーズをして、おどけて見せる千棘。

 すべては親友である鶫誠士郎を安心させるため。

 

 自分を想う友人たちを見て、鶫は一筋の涙と共に銃を下ろした。

 

「お嬢、申し訳ありません……私のせいで……!」

「あぁー、もう! いいんだってそんなの!」

「うぅ……」

 

 こうして友らの声に打たれた鶫は、犯人への報復という凶行を改めた。

 あとは、ビーハイブに連絡してアントライオンの残党たちの確保は任せ、四人は肝試しが中断されたままの林間学校へと戻る。

 

 千棘が姿をくらまし、今またひょっこりと顔を見せたことで周囲は色々と問いただしたが──詳しいことを話せばまた騒動になると、四人はしどろもどろで話をごまかすのに苦心するのだった。

 

 

 

 

 

 そうして残った時間は無事に過ぎ、林間学校も終わりを迎える。

 学校へ戻った生徒らはそれぞれの帰路に付き、姫野純と鶫誠士郎の二人もまた、揃って家路の道を歩いていた。

 

 本来なら鶫は最後まで千棘の護衛に付きたかったのだが、千棘自身から、今日は純と一緒に帰ることを言い渡されたためである。

 彼女の(偽の)恋人でもある楽からも同じことを言われたのもあり、苦渋の決断であった事は記しておく。

 

 夜の肝試しから一晩明け、翌日の解散となったので今は日も明るい中、二人は並んで凡矢理市の街道を歩いている。

 前日の純からの告白もあり、微妙に気まずい空気が漂う帰り道で、鶫が先に口を開いた。

 

「……やはり、君が側にいてくれて良かったと思う」

「ぇっ?」

 

 突然の少女の言葉の意味を、純は分からずにキョトンとした表情を浮かべる。

 

「あの時、感情に任せて眼帯の男()を撃っていたら……君の言うように私は、お嬢の隣りに立ち続けることは出来なかっただろう」

「…………」

「それはヒットマンとして失格なことかもしれない。だが私は……ヒットマンではなく、友達としてお嬢のお側に居続けたいと思った」

 

 少女は立ち止まると、純のことを正面から見据え言葉を続ける。

 彼女の瞳はうるみ、頬は火照ったように赤い。

 

「お嬢だけでなく、これからは……き、君の隣にも居ていいだろう……か?」

「当然。ずっと側で居て欲しい」

 

 先の告白への返事。鶫の返した言葉に、純は即答した。

 差し出す少年の右手を、少女は迷わずに取る。

 二人は手を繋ぎあわせると、そのまま家へ帰る道を再び歩き出した。

 

 繋がったのは手の平だけでなく、心も同じように強く結び合わされる。

 きっと、この手が離れることは二度とないだろう。

 鶫誠士郎という少女こそが、姫野純にとって安心できる、どこへも行かないパートナーなのだから。




最後の話は小説ウラバナ収録の「クロトラ」の回を参考にオリジナルで構成しました。

短い作品でしたが、最後までお付き合いありがとうございました。
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