アフリカ中部レイク・ヴォグトリアシティー
アフリカ最大の湖である、ヴィクトリア湖上に作られたこの街は、軌道エレベーターのステーションを有し、数少ない宇宙と地球の物理的な架け橋となっている街である。
その為、この街には地球に駐在している多くのスペーシアンと、その元で働く貧しいアーシアン達が多数住む街となって居た…
一週間前までは…
強襲揚陸艦アルビオン
ブリッジ
「…」
「…」
強襲揚陸艦アルビオンの艦長である、ヨーロッパ連邦軍正規軍所属のエイパー・シナプス大佐とその部下達は、目の前で、軌道エレベーター施設を除く、すべての街や建物が、火に包まれ炎上しているレイク・ヴィクトリアシティーを見て言葉を失って居た。
「見事な働きだな、これで地球に寄生する虫ケラ共も、あの世で自分達の存在が、いかに罪深いか自覚していることだろう」
一方で、ティターンズ地上軍総司令官であり、この惨状を引き起こした張本人であるバスク・オム大佐は、満足そうな様子でそう言った。
すると
「バスク…大佐、貴官はこの様な…民間人をも平気で犠牲にした作戦を行なって、なんとも思わ無いのですか?」
あまりの惨劇に見かねたシナプス大佐は、思わずそうバスクに聞いた。
すると
「当たり前だ、奴らは我が母なる故郷である地球を食い潰す虫ケラと、それに同調する売女共だ。死んで当然、いや死なねばならん連中なのだよ」
バスクは、さも当たり前の様な様子でそうシナプス大佐に言い放ち、それを聞いたシナプス大佐は、まるでバスクを軽蔑するかの様な視線を向けた。
だが、作戦の成功により機嫌が良いのか、バスクはそれに対して余裕の笑みを浮かべると、徐に自分の横に立つ、一人の女性に目を向けた。
「それはそうと、突然の実戦投入であったが、奴ら、良い働きをするな…そうは思わんかね、ウィンストン博士?」
「え、えぇ…そうですね…」
すると、バスクにそう聞かれた女性、元オックスアース社の研究機関である、ヴァナディース機関の研究員であり、現在はバスクら地上軍とティターンズ最高総司令部が、多額の投資をしている、オーガスタ研究所の主任研究員である、ベルメリア・ウィンストン博士は、映像に映る炎上するレイク・ヴィクトリアシティー、そして3機の黒いガンダムを、その酷く悲惨な光景、罪悪感からか、映像から目を背けると、そう言った。
「さて、街の虫ケラ共もあらかた片付きはしたが、まだ生き残っているやつもいるだろう。軍用オートマトンをキルモードで使用し、生き残りは殲滅する」
だが、バスクは彼女の反応には見向きもせず、今度は軍用オートマトンを市内に突入させる様、命令を下した。
レイク・ヴィクトリアシティー市内
バスクの苛烈な作戦手腕により、軌道エレベーター施設以外のすべてのものが、炎と残骸、そして死体だらけとなっている街と化した街中で、マラサイとハイザックで編成された中隊規模のMS部隊、そしてこの街に駐留して居たほとんどの戦力を殲滅した、ティターンズお抱えのGUND-ARMの軍事転用研究所である、オーガスタ研究所で開発された3機のガンダム、開発コードネーム、Mk-IIと呼ばれるガンダムが展開して居た。
「…あれだけ居た敵をこうも簡単に…だがそれよりも…」
「これが…魔女か…」
その、残虐かつ圧倒的な戦いを見たティターンズの兵士達は、今日ほど自分達がティターンズであった事が幸運だった事を実感していた。
一方
アメリカ西海岸カリフォルニア州
ロサンゼルス
西海岸の中でも最大の都市である、ロサンゼルスの市内は現在、戦場の街と化して居た。
西からオセアニア方面軍、東から北米方面軍が突入する前に、ブラン・ブルターク中佐率いるアッシマー部隊が、事前に対空対艦防御施設や、航空基地などを潰して居たおかげまで、多少の抵抗はあったものの、市内への突入そのものは成功し、沿岸部や都市内には、蜂の巣にされ、破壊された両軍のMSや、転がって居た。
「ぐぁあ!!」
「狙撃だ!気をつけ…!」
そして、市街戦を行なっている敵のMSである、デュランザとデミトレーナーが、上空に陣取るマイクこと、マクシミリアン中尉が操る、ジムスナイパー3の狙撃によって破壊された。
「いっちょ、上りっと」
『マイク、可能な限り市街の建物には被害を出すなよ』
「分かってますよ隊長」
一方、マイクが上空から狙撃による援護射撃を行っている一方、レオン、レイヤーの二人は、ビルとビルの合間を縫って、できる限り建物に被害を与えないよう注意しながら、市街戦を戦って居た。
「クソ、隙がない!」
「連携した攻撃で攻めてくる…ある意味、エース相手に戦うより厄介だ!」
そしてその連携を重視した攻めの戦いと、レイヤーの高い洞察力と統率力による隙のない戦い方で、ベネリット軍は苦戦を強いられて居た。
司令部
「市内地の防衛戦突破されました!」
「第五MS小隊壊滅!」
海上からの、ティターンズ 部隊の強襲攻撃後、急速に悪化してゆく戦況が、次々と司令部に入っていた。
するとそれを聞いた司令官は、オモロに立ち上がった。
「司令、どうなさいましたか?」
「…すぐ戻る」
そう聞いてきた将校に、司令官はそう言いながら、何やら分厚い封筒をその将校のポケットに突っ込むと、そのまま司令所を出て行った。
そしてそれっきり、司令官は帰って来なかった。
その頃
「何か妙だな…」
「どうかしましたか、隊長?」
「敵の動きに、統率と士気が見られなくなっている…一体どうしたのだ?」
レイヤーは、敵の動きに士気と積極性、そしてわずかだが統制が無くなっている事に気づいた。
確かに、この押されている戦況、士気を保つと言うのが難しい事ではあるが、一方でいまだに司令施設がある、中心地は健在、それゆえに統制が落ちるなど、今の戦況であっても考えられなかった。
「もしかしたら…航空部隊、周囲の警戒を強めろ!」
すると、ある一つの結論に至ったレイヤーは、自分の指揮が及ぶ航空部隊にそう命令した。
その頃
「クソ…アーシアンの軍隊如きに、この醜態…」
兵士の一人を買収し、さっさとこの場から逃げ出そうと、脱出用軍用機に乗り込んだ司令官は、忌々しそうにそう述べた。
「ロサンゼルスでは負けたが…カリフォルニアではこうはいかんぞ、アーシアンめ」
この借りは必ず返す、そう決意した司令官は、パイロットに機体を出すよう命令すると、機体は離陸し、カリフォルニアを目指して飛んでいった。
だがその時
「なっ!なんだ!?」
突如、機体のエンジンにビームが着弾、エンジンを撃ち抜かれた軍用機は出力を失い、重力に引っ張られ、落下して行った。
「エンジン被弾、出力確保できません!!」
「何としても安定させろ!!」
だが、司令官の檄も無なくしく、機体は安定を取り戻す事なく、市街地の中心に不時着した。
「あぁ…クソ…」
運良く司令官は生きており、ヨロヨロと、機体の中から這い出た。
しかし
『そこまでまだ』
瞬く間にレオンとレイヤーが乗る機体に取り囲まれた。
『こちらは、ホワイトファング隊のマスターPレイヤーだ。見ての通り貴官は我々の包囲下にある。これ以上の無駄な犠牲を避ける為、投降し、市内の全部隊に対して、攻撃停止命令を布告する様要請したい』
「…クッ」
こうして、ホワイトファング隊の活躍により、現地司令官を捕らえる事に成功したティターンズのオセアニア方面軍および、北米方面軍は、西海岸の要所であるロサンゼルスの攻略に成功した。
その頃
ベルリン中心地
ティターンズ本部(旧ヨーロッパ連邦軍本部)
「お待ちしておりました、クルーヘル中佐」
「ジャミトフ閣下より呼び出されてここに来た、命令書はこれだ」
「確認いたしました。それでは、地下総司令部へご案内します」
リドリック・クルーヘル中佐
ティターンズの兵士が出迎えた彼は、元ドミニコス隊のメンバーでありながら、とある事情でジャミトフ・ハイマンより気に入られ、当時、まだ結成へ向けて動き出して居たばかりのティターンズへと入った、所謂ティターンズの古参メンバーの一人である。
普段は、ティターンズ 宇宙軍の本部がある、グリプス2に駐屯するMS部隊を統括して居るが、今回ジャミトフより秘匿命令を伝えると知らされ、地球へと降りて来たのだ。
(秘匿命令…ジャミトフ閣下からは、本部に来た時に口頭で伝えると言われたが…一体なんだ?)