ウイニングチケット「ネイチャ! それに皆!」
ナイスネイチャ「あ、あはは…」
盗み聞きがバレて、ネイチャは笑ってごまかそうとしたが、テツマが睨みつけてきていて、生きた心地がしなかった。
テツマ「何しに来た」
ナイスネイチャ「いや、近くを通りかかったから何を話してるのかなって…」
テツマ「人の心配より自分の心配をしたらどうだ」
ウイニングチケット「テ、テツマくん!」
テツマの厳しい発言にチケットが慌てて諭そうとすると、ネイチャはテツマを見つめた。
ナイスネイチャ「その…トレーナーさん」
テツマ「何だ」
ナイスネイチャ「…今度、中等部対象の選抜レースがあるのはご存じですか? アタシ、選ばれまして…」
テツマ「見に来いと?」
ナイスネイチャ「え、えっと…嫌とは言いませんが…」
テツマ「勝てるんだろうな?」
ナイスネイチャ「え、えっと…」
テツマの質問にネイチャが困惑すると、タンホイザとイクノが後押しをしようとしたが、ネイチャは自分で言おうとした。
ナイスネイチャ「か、勝ちま…」
テツマ「ウソだな」
テツマは厳しく突っぱねた。
テツマ「まだ力を出し切ってねぇだろ。だから勝てるって言いきれねぇんだ。出直してこい」
ナイスネイチャ「……っ!」
テツマ「それが出来ねぇなら諦めろ」
するとヒシアマが口角を下げた。
ヒシアマゾン「…テツマだったか?」
テツマ「気が変わったのなら構わねぇぜ」
ヒシアマゾン「いいや、その逆だよ。だが、その前に一つやりたい事が出来てね。ネイチャ!今度の選抜までアタシが面倒を見てやるよ」
ナイスネイチャ「え、えええ!!?」
ヒシアマの言葉にネイチャ達は驚いた。ヒシアマゾンも重賞を数回勝利した事のあるウマ娘である為、ネイチャ達からしてみたら雲の上の存在だったのだ。
ナイスネイチャ「い、いや…えっと…邪魔になるかもしれませんし…」
ネイチャがそう言うと、テツマは呆れたように一息ついた。
ヒシアマゾン「邪魔かどうかはアタシが決める事だし、このままでいいのかい。こいつに言われっぱなしで」
ヒシアマが真剣にそう言うと、ネイチャは困惑していた。
ヒシアマゾン「今、ここで逃げてもまた別の所で似たような事が起こるよ。その時、アンタはどうするつもりだい?」
ヒシアマの言葉にネイチャはまだ迷っていると、
テツマ「もうそいつに見て貰え」
テツマがそう言い放つと、皆が驚いた。
テツマ「そうやっていつまでもウジウジしても時間の無駄だ。こいつに見て貰って駄目ならもう諦めるんだな」
テツマが諦めるように宣告すると、ネイチャは少し嫌そうにしていた。
テツマ「ヒシアマゾンだったか? あいつの事は任せたぜ」
ヒシアマゾン「いいよ! アタシも前からずっと気になってたんだよ」
ナイスネイチャ「え」
ヒシアマゾン「さあ! ヒシアマ姉さんが全て受け止めてやるから、選抜レース勝つんだよ!!」
そんなこんなでネイチャはヒシアマ、ターボたちと共に選抜レースに向けて練習した。いつもよりも練習量が増え、ネイチャは音を上げそうになっていたが、
テツマ『諦めろ』
テツマの言葉が脳裏に浮かびあがっては、無意識に闘志を燃やしていた。そしてその兆候をヒシアマゾンは感じ取っていた。
当日、選抜レース会場にはネイチャは勿論、テツマの姿があった。行く予定はなかったのだが、チケットによって強引に引きずられたのだ。
ヒシアマゾン「ネイチャ。とにかく思いっきり走りな!」
ヒシアマ達の声援を受けて、ネイチャはスタート地点に立った。
そしてレースが始まると、テイオーがやはりリードをしてきたが…。
ナイスネイチャ(負けたくない…どんなにテイオーが強くてもアタシやっぱり…負けたくない!!!!)
終盤にかけてネイチャが最後の力を振り絞って、テイオーを追い抜いてゴールした。
ナイスネイチャ「か、勝った…。あのテイオーに…」
ずっと遠い存在だった同期のトウカイテイオーにも勝って、ネイチャは驚いていた。
ウイニングチケット「やったー!! ネイチャが勝ったー!!」
ヒシアマゾン「とても成長したねェ…。アタシも嬉しいよ…」
チケットが号泣するとヒシアマはふっと笑いながら目に涙を浮かべていた。ターボたちも大喜びしている。
テツマ「普通に勝てるじゃねぇか」
ヒシアマゾン「そうなんだよね。あいつ、本気出せば勝てるだけの力があるんだよ。でもまあ、勝った要因はやっぱりアンタにあったんだよね」
テツマ「……」
そして解散して、ネイチャは沢山のスカウトが来ていた。勿論テイオーにも来ていたのだが、1着じゃないという理由でむくれて帰ってしまった。
ナイスネイチャ「あ、えっとすみません…。その前にちょっと…」
と、ネイチャはテツマの所に来ていた。
ナイスネイチャ「その…勝ちましたよ…」
テツマ「勝てるじゃねぇか」
勝ったのにどこか冷めてるテツマ。それを見て周りが不穏な空気を感じていた。
ナイスネイチャ「えっと…」
テツマ「で、説教か?」
ナイスネイチャ「い、いや! そうじゃなくて…その…」
ネイチャは意を決してテツマの顔を見た。
ナイスネイチャ「アタシをチームに入れてください!」
ナイスネイチャの言葉に周りは驚くも、テツマは一息ついた。
テツマ「何故だ?」
ナイスネイチャ「その…。トレーナーさんやヒシアマさん達に言われて色々気づいたんです。今、こうやってテイオーには勝ちましたけど、まだ足りない事だらけで…」
テツマ「ああ。全然足りねぇ」
テツマが堂々と嫌味を言うと、ネイチャは少し苦しそうにしていたが、それでも持ちこたえた。
ナイスネイチャ「…正直、まだTSシリーズでやっていく自信が無いんです。だから、縹トレーナーに色々教えて貰いたいんです」
テツマ「教えるなんて事はしてねぇぜ」
ナイスネイチャ「えっ…」
テツマは一息ついた。
テツマ「まあいい。オレとしてもここまで卑屈な奴は見た事ねぇ。一つ条件がある」
ナイスネイチャ「な、何ですか…?」
テツマの性格を考えたら、本当にとんでもない事をしでかす可能性があった為、ネイチャは戦々恐々だった。
テツマ「オレのやり方に口答えは一切許さねぇ」
テツマが険しい顔でそう言うと皆が驚いた。
テツマ「お前は自分の事を良く知り過ぎている。それ故に自分の限界も自分で決めてしまっている。まだ全力を出し切れてねぇ」
テツマの言葉にネイチャは息をのんだ。
テツマ「チームに入るってんなら、オレは徹底的にお前を『諦めさせる』。それで構わないなら好きにしな」
ウイニングチケット「諦めさせる…?」
するとネイチャはすぐに意を決してこう言った。
ナイスネイチャ「分かりました! 宜しくお願いします!」
テツマ「……」
こうして、ナイスネイチャは正式にテツマのチームに入った。
ヒシアマゾン「勿論、ここからアタシも入るからね!」
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別れた後、テツマはチケットやヒシアマとトレーナー室に戻った。
ヒシアマゾン「それにしてもテツマ。アンタ、ネイチャの加入に関しては結構前向きだったね」
テツマ「今ならまだ見込みがあると思ったからだ」
ウイニングチケット「それはそうと、諦めさせるって…」
テツマ「言葉の通りだ。まだあいつの中には『迷い』がある」
テツマの言葉にヒシアマとチケットが反応した。
テツマ「今のアイツに必要なのは試合に勝つ事じゃない。経験を積ませる事だ。それも格上とのレースをな。あの様子じゃまともなレースが出来てなかったんだろう」
ヒシアマゾン「ま、まあ…。ネイチャはまだデビューしてないからねぇ…」
テツマ「お前達は重賞を勝ってるから必要はなかったんだが、あいつは別だ。試合に勝つ前にあの捻じ曲がった根性を叩きなおす必要がある」
テツマの言葉にヒシアマとチケットは少し驚きながらも、少しずつ心境の変化が見られたため、野暮な事は言わないことにした。
ウイニングチケット「それで…具体的にどうするの?」
テツマ「どの種目に出るかは聞いてねぇが、近いうちに黒島のチームに練習試合を申し込む」
ヒシアマゾン・ウイニングチケット「え!?」
テツマ「格上と戦わせる為にな。先に言っておくが、戦うのはネイチャ一人だ。お前らがいるとお前ら任せになるんでな。強敵相手にも立ち向かう心を作り上げる」
さあ、果たしてどうなる事やら…。
おしまい