季節は5月中旬だった…。
「お願いします! エルをあなたのチームに入れてくだサイ!」
ここはトレセン学園。エルコンドルパサーというウマ娘がテツマの元にチーム入りを志願してきたのだ。それに対して他の生徒達が驚いている。
「マジかよ…!」
「あのエルコンドルパサーまで…」
「あいつ本当に何者なんだ!?」
「ていうか、どうしてあいつばっかり…」
時は遡る…。
テツマはその日、ネイチャ、ヒシアマと保護者である石崎竜と共に会場の近くまでトレーニングをしに来ていたのだが、大会が終わった後に不良達の取っ組み合いがあったのだ。その時、ヒシアマゾンが外していてネイチャはどうしたら良いか分からずにいたが、テツマと竜は冷静だった。
ヒートアップする喧嘩にネイチャは困惑したが、テツマは全く興味なさそうにしながら不良達を小ばかにすると、その不良達はテツマの方を見てメンチを切ってきたのだ。
ナイスネイチャ「ト、トレーナーさん! やばいって…」
テツマ「警察呼びな」
ナイスネイチャ「え?」
テツマ「時間稼ぎだ。博士は証跡を集めといてくれ」
「分かったヨ」
そう言って竜が証跡を集めた。
「おい、さっきからてめぇ。何舐めた態度取ってんだ。あ?」
テツマ「悪いね。SNSも盛んな中、人前で堂々と喧嘩してるもんだから不思議に思ってよ。何かショーでも見せてくれるのかい?」
「舐めてんじゃねぇぞオラァ!!」
と、殴りかかるとテツマはその拳を受け止めて握りつぶそうとした。
「ぐっ…!!」
テツマ「生憎だがそれはやめといたほうがいいぜ。オレは色々持ってないんでね。とっとと逃げないとこのままお縄につくぜ」
その時だった。
「コラー!! 何してるデース!!」
そう言ってエルコンドルパサーとそのトレーナーがやってきた。
エルコンドルパサー「この町で悪さをするのはこのエルコンドルパサーが許しまセーン!!」
エルコンドルパサーが戦闘態勢に入ったが、テツマは博士に合図を送って、博士は自身の発明品らしき丸薬をエルコンドルパサーの方に投げ、バリアを作り出してエルコンドルパサーが自分の所に来れないようにした。
エルコンドルパサー「そ、そっちに行けないデース!!」
テツマ「NHKマイルカップのチャンピオンの出る幕はねぇぜ。で、どうすんだ」
「か、関係ねぇ!」
「やっちまえ!!」
そう言って不良達は一斉にテツマに襲い掛かったが、全員返り討ちにして、ネイチャたちは驚いた。
エルコンドルパサー「す、すごいデース…」
ナイスネイチャ「あーあ…やっちゃった…」
エルコンドルパサーが驚く中、ナイスネイチャは額を手で押さえていた。
「く、くそぉ!! なんだコイツ!!」
「馬鹿強ぇ…!!」
テツマ「さっさと帰ってくれ。こちとらヒーローごっこをしに来たんじゃないんだぜ」
「こ、この野郎~!!!」
そう言って不良達がまた襲い掛かろうとしたが、
「コラー!! 何をしとるかぁ!!」
そう言って警察官がやってくると、博士がテツマの手を引いて腕時計のボタンを押すと消えた。
ナイスネイチャ「あっ!!!」
エルコンドルパサー「き、消えたデース!」
****************
テツマ「トレーナーはどうした」
エルコンドルパサー「いますが許可は取ってマスヨ。エルもダシマカップに出たいんデース!」
テツマ「他当たれ。もう5人もいる上に時間もねぇ」
テツマはあからさまにやる気がない様子だった。
テツマ「それにダシマカップは担当トレーナーがついてねぇウマ娘向けの大会だ。トレーナーがいる上にG1を勝ってるお前が出てもただの嫌味だぜ」
エルコンドルパサー「それならヒシアマ先輩達はどうなんですか!?」
テツマ「あいつらも嫌がらせしてぇとしか思えねぇよ」
エルコンドルパサー「それに、誰でも良いという訳ではないんデスヨ!? 此間のヴィクトリアマイルでバクシンオー先輩を勝たせたのは、トレーナーさんの手腕だったと聞いてマス!」
テツマ「あいつが勝手にやった事だ」
テツマはあくまで自分のお陰ではないという。
テツマ「そもそもダシマカップに出て何の意味がある? お前の夢は何だ?」
エルコンドルパサー「エルの夢は世界最強になる事です!」
エルの言葉に皆が目を開いたが、テツマは冷ややかだった。
テツマ「だったらTSに力を入れるべきじゃねぇか?」
エルコンドルパサー「確かにそうですが…今、ダシマカップはTSに負けない程熱い戦いが繰り広げられているではないですか!!」
というのも、太一率いるベテラン組と、飛鳥率いるニューカマー組による激突が繰り広げられていた。
エルコンドルパサー「G1やTSシリーズだけがレースじゃありませんし、ダシマカップもまた最強を決める大会! そこにエルが出てもおかしくない筈デス!」
エルの言葉にテツマは一息ついた。
「あたし達は大歓迎だよ!」
ヒシアマゾン、ウイニングチケット、メジロライアン、サクラバクシンオー、そしてナイスネイチャが現れた。
テツマ「ほざけよ」
ヒシアマゾン「まともに練習メニューも組まないんだ。人数が増えようが問題ないだろう?」
エルコンドルパサー「え、ど、どういう事ですか?」
テツマ「ああ。原則こっちから指示は出さねぇ。好きにやって貰う」
エルコンドルパサー「エエッ!?」
テツマの言葉にエルコンドルパサーが酷く驚いた。
「じゃあ、バクシンオー先輩の時はどうしたんですか!?」
テツマ「練習メニューは用意してやったが、あくまでも諦めさせる為だ。練習メニューを組まねぇのは負けた時に責任転嫁させねぇ為だ。どういう意味か分かるか?」
エルコンドルパサー「ど、どういう意味って…」
テツマ「それが分からねェなら猶更別の所に行った方が良い」
サクラバクシンオー「人のせいにしてはいけないという事ですよ!」
バクシンオーが横槍を入れると、エルの目は大きく開いた。
テツマ「壁にぶち当たった時にそいつの真価が問われる。他人に当たる奴は成長しねぇ。そうやって落ちぶれていった奴は嫌という程見てきた。そしてさっきも言ったが、こっちにはもう5人もいる。邪魔だ」
担当ウマ娘に対して暴言を吐くテツマに周りの人間は辟易していたが、
エルコンドルパサー「エ、エルはそんな事しません!」
テツマ「そうかな。お前、結構メンタル弱いだろう」
テツマの言葉にエルが冷や汗をかいたが、すぐに言い返した。
エルコンドルパサー「そ、そうじゃないって所、証明しマス!!」
テツマ「そうか。それなら一つだけ条件がある」
「!?」
テツマの言葉に皆が驚いた。
エルコンドルパサー「な、なんですか…? 何でも仰ってください! トップスピードでコースを30周!?それとも日が暮れるまでダッシュ…」
テツマ「もう一度G1取ってこい」
テツマの発言に皆が絶句した。
エルコンドルパサー「へ…?」
テツマ「他のチームに行くってんなら取らなくていいぜ」
ナイスネイチャ「ト、トレーナーさん! いくら何でも難しすぎるんじゃ…」
テツマ「何言ってやがる。オレは面倒を見る気ねぇんだ。それに、世界最強を目指すってんならこれくらいはやって貰わないとな」
テツマの挑発にエルがカチンと来た。
エルコンドルパサー「そ、それは…バクシンオー先輩と同じくらいの期待をエルにかけてると言っていいんですね…?」
テツマ「いいや? 諦めると踏んでるよ」
またしてもカチンとくるエル。
テツマ「今のお前の性格じゃ、テストに合格したいが為に無理をして怪我をし、最悪引退ってのが目に見えてる。他のチームに行くか、TSシリーズに専念した方が楽で安全だと思うがな」
エルコンドルパサー「楽…!? 安全…!!?」
テツマの言葉にエルは怒りに震えていた。すると…。
エルコンドルパサー「もう怒ったデス!! 何が何でもG1で勝ってチーム入りを果たしてやるデスよ! 今度日本ダービーに出るから見に来るデェス!」
ウイニングチケット「あ、うん! 日本ダービーには行くから、頑張ってね!」
テツマ「…行く予定はないぜ?」
ウイニングチケット「増田トレーナーには許可を取ってくるから!!」
テツマは保護観察を受けている関係で、外出する時は許可が必要なのだ…。
エルコンドルパサー「見てるデスヨォオオオオオ!!!」
そう言ってエルは走り去っていったが、テツマは一息ついた。
さあ、エルがチーム入りを出来たかどうかは…また別の機会でお話ししましょう。
おしまい