第7話
池のある公園でウマ娘・マチカネフクキタルは池に身を投げようとしていた。
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彼女は昨年の3月末に行われた『金鯱賞』に出走していたのだが…。
『マチカネフクキタルの走りっぷりはあまりにも目に余るものだった。レース結果の問題ではない。走りに身が入っておらず、ただ不快でしかない。そこにはアスリートとしての誇りもファンに応えるショーマンシップもなにもない。レースを愛する者として、私は彼女をウマ娘と呼びたくない。彼女は…ナマケモノ娘だ』
クラシック三冠において好成績を残し、すっかり有頂天となっていたマチカネフクキタルは練習も碌に行わず、運気に頼り切りになってトレーナーの指示も碌に聞かなかったのだ。
その結果、金鯱賞で大敗。あまりにも無様な結果を残した彼女に観客は大激怒。遂には担当トレーナーからも契約解除を言い渡されてしまい、絶望の淵に落とされた。
それから半年間。フクキタルは精神を病んでしまい、レースにも出れない状態だった。
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マチカネフクキタル「もう…終わりです…いっそ、この池に身を投げて…」
フクキタルが池から飛び込もうとしたその時、テツマが通りかかったが特に何もする事なく、素通りした。
マチカネフクキタル「ちょ、素通りやめてくださいよお!!!」
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「…私、勘違いしてたんです。運気が良ければすべてよし。何をしても許されるって」
「……」
フクキタルはテツマを呼び止めて、独白をした。
マチカネフクキタル「そんな訳ないですよね。調子に乗って他の選手にも失礼な事を言ってしまいました。そのせいで他のトレーナーさん達も寄り付かなくなりました。ですが、ファンの皆さんにどうお詫びしたら良いのか…」
テツマ「それをオレに言ってどうすんだ」
テツマは冷静に一言だけ返した。
マチカネフクキタル「で、ですよね…。すみませんでした」
そう言ってフクキタルがベンチから立ち上がって去ろうとすると、テツマがあっさり去ろうとしていた。
マチカネフクキタル「だから何でそんなに早く去ろうとするんですかああああああああああああああああああああああああ!!」
テツマ「助けて欲しいならそういえばいいだろう」
マチカネフクキタル「た、助けてくれるんですか…?」
テツマ「他の奴に助けて貰え」
マチカネフクキタル「何でもしますうううううううううう!! 助けてくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
竜「テツマクン。イジワルしないで助けてあげなヨ」
竜がスッと現れて呆れながら突っ込んだ。
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テツマ「さっきの言葉に二言はないな?」
マチカネフクキタル「は、はい…」
トレセン学園に戻り、テツマ達は作戦を考える事となった。
テツマ「…トラブルを避ける為に合宿に参加しなかったのに、こうなるか」
マチカネフクキタル「ううう…すみましぇん…」
テツマ「まあいいさ。お前が少しでも口答えすればそこで終わるんだからな」
マチカネフクキタル「う…な、何をすれば良いんですか!?」
テツマ「まあ、お前の事は聞いた」
マチカネフクキタル「…やっぱり、占いに頼るのをやめろですよね。頑張ってみます」
テツマ「それもそうだが、まずお前に聞きたい事がある」
マチカネフクキタル「な、何ですか…?」
テツマがフクキタルを見つめた。
テツマ「お前、元々自信が無ぇだろ」
マチカネフクキタル「!」
テツマ「だから占いに頼って気を大きくしていた。違うか?」
テツマの言葉にフクキタルは俯いた。
マチカネフクキタル「…はい、その通りです」
テツマ「やっぱりか…」
テツマは静かにそう呟くと、
マチカネフクキタル「…私には姉がいるんです。それもよくできた」
フクキタルから発せられた『出来た姉』という言葉にテツマが反応した。
マチカネフクキタル「あ、勿論嫌いとかじゃないですよ!? 寧ろ尊敬してる位です!」
テツマ「で?」
マチカネフクキタル「…ですが、どうしてもその姉と比較してしまって。本当はトレセン学園に入学するのも迷ったくらいなんですよ」
竜「それならどうして入学したんダイ?」
マチカネフクキタル「それは…シラオキ様が導いてくださったからです!」
フクキタルの言葉にテツマは無表情になった。
マチカネフクキタル「ああああ!! ヤバイ宗教とかじゃないですよ!? その、私の家に大体伝わる神様のようなもので…」
テツマ「神か…」
テツマがそう呟くと、竜が少し気まずそうにしていた。
テツマ「まあいいさ。それがお前なら無理にやめろとは言わねぇ」
マチカネフクキタル「え…?」
テツマ「だが、占いよりもまず自分の力を信じろ」
テツマの言葉にフクキタルが息をのんだ。
マチカネフクキタル「で、ですが…私に出来るのでしょうか…」
テツマ「逆に聞くぜ。出来るようになりたくねぇのか?」
マチカネフクキタル「な、なりたいです!!」
テツマ「じゃあやれ。とにかくもう余計な事を考えるな」
テツマがフクキタルを見つめる。
テツマ「自信も勝利も幸福も、諦めねぇ奴にしか掴み取れねぇんだよ」
こうしてテツマは合宿期間中、フクキタルの育成をする事になった。元々クラシック三冠で好成績を残していた事もあり、育成するのに苦労はしなかった。
最初はためらっていたフクキタルだったが、金鯱賞での暴挙を皆に謝罪し、次のレースは実力で勝利する事で態度を示そうと励んでいた。
そして手の空いているウマ娘を集めては練習試合を繰り返し、いよいよ復活の場となる『札幌記念』に出走する事になった。
テツマ「まさか外に出してくれるとはな…」
マチカネフクキタル「…トレーナーさん」
テツマ「悪いがオレはもうここまでだ。後はもうやる事は分かっているだろう」
マチカネフクキタル「…はい!」
竜「今の君ならもう大丈夫。頑張って!」
マチカネフクキタル「行ってきます!!」
そしてフクキタルは札幌記念に挑んだのだが、出走者には大助のチームに所属しているエアグルーヴもいた。
レースが始まると、グルーヴが堂々とした走りでリードをしていたが…。
フクキタルは諦めなかった。そしてその気迫は観客にも大助にもグルーヴにもひしひしと伝わった。
マチカネフクキタル(諦めない…!! 私は…絶対に勝つ!!!)
最後の力を振り絞り、グルーヴを追い越して勝利を手にした。
『1着! 1着はマチカネフクキタル!! 半年ぶりの復帰で見事に勝利を手にしました~!!!!!』
フクキタルの勝利に大歓声が上がった。
マチカネフクキタル「ハァ…ハァ…」
そして上を見るとフクキタルコールが鳴り響いていた。
「おめでとー!!」
「やれば出来るじゃんかー!!」
「これが見たかったんだー!!!」
「ありがとー!!!」
と、観客たちがフクキタルを素直に讃えていて、フクキタルは号泣していた。
そして合宿に向かっていたメンバーもフクキタルの復活と勝利を知って歓喜に満ち溢れていた。
タイキシャトル「ウェエエエーン!! フクキタル~!!!!!」
サイレンススズカ・メジロドーベル「……!!」
以前から親交があったタイキ、スズカ、ドーベルは号泣していた。
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そしてトレセン学園に戻ってくると、残っていた生徒達からも祝福を受けるフクキタル。テツマと竜はそれを見届けると、テツマはその場を後にしようとした。
マチカネフクキタル「あ、ま、待ってください!!」
テツマ「何だ」
マチカネフクキタル「そ、その…。お願いがありまして…」
テツマ「何だ」
マチカネフクキタル「私をチームに入れてください!」
テツマ「新しいトレーナーを探した方が良くないか?」
マチカネフクキタル「そ、その…。今回はシラオキ様のお告げじゃなくて自分の意志です!」
テツマ「自分の意志でぶつける所、そこじゃねぇよ。それにもう今なら…」
マチカネフクキタル「…その」
テツマ「何だ?」
するとフクキタルが顔を赤くしてモジモジし始めた。
マチカネフクキタル「…もうちょっとだけ、一緒にいたいって言ったら…ダメですか?////」
この時、一般生徒達はフクキタルの事メチャクチャ可愛いと思っていた。だが…。
テツマ「バカ言っちゃいけねぇよ」
「!」
テツマはフクキタルを見つめた。
テツマ「これからはレースで観客の奴らを幸せにするんだろう?」
マチカネフクキタル「そ、それは…」
テツマ「お前がこれから目を向けなきゃいけねぇのはオレじゃねぇ。観客共だ。まあ、2次予選までの退屈しのぎには良かったぜ。あばよ」
そう言ってテツマが去っていったが…。
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9月
ヒシアマゾン「今月から新しく加入する事になったマチカネフクキタルだ!」
「イエーイ!!!」
テツマ「……」
ヒシアマ達に頼み込んでチームに加入した。
テツマ「そんなにオレと一緒にいたいか」
メジロライアン「トレーナーさん!!!」
テツマのデリカシーのない発言にライアンが顔を赤くして怒った。そしてフクキタルも頬を染めてモジモジしていた。
マチカネフクキタル「…そうですよ。悪いですか?」
「!!!?」
シラオキもビックリな展開になった…。
おしまい