季節は秋。ダシマカップ2次予選が始まった時のことだった。
テツマ「……」
担当ウマ娘が7人になったテツマ。人数が増えて仕事が増えることに関しては特に問題はなかった。
テツマ「…もうそろそろ潮時かもな」
テツマは意味深にそう呟いていると、
「おーい!! テツマくーん!!」
チケット・ライアン・ネイチャの3人がやってきた。
テツマ「…どうしたんだ?」
ウイニングチケット「これからどこ行くの?」
メジロライアン「もしかしてトレーニングですか?」
テツマ「いいや。トレーナー室に向かう所だ」
ナイスネイチャ「トレーナー室…? 今日はオフじゃ…」
テツマ「担当ウマ娘が7人になったからな。ここまで人数が増えたら、少しは頭を使う必要がある…」
テツマの言葉にチケットたちが驚いた。
ウイニングチケット「え、もしかしてずっと裏で作戦とか考えてたの…?」
テツマ「いいや。単に人数が多すぎるから作業量が増えただけだ」
ナイスネイチャ「まあ、7人もいれば…」
テツマ「特にお前に1番時間かかってるぜ」
ナイスネイチャ「え」
テツマの言葉にネイチャが固まると、チケットとライアンが苦笑いした。
その時だった。
「見て! あの子じゃない?」
「きれーい」
という声が聞こえてきて、チケット・ライアン・ネイチャが声がした方を向くと、そこには金髪の美少女ウマ娘がいた。
ウイニングチケット「あ、シチーだ」
ナイスネイチャ「相変わらずキラキラしてんなぁ…」
メジロライアン「アタシとは大違い…」
と、皆がシチーに見とれている間にテツマはトレーナー室に向かおうとしていた。
ナイスネイチャ「あ、トレーナーさん!」
ウイニングチケット「待ってよー!!!」
チケットが大声を出しながら追いかけると、テツマはチケットの方を振り向いた。
テツマ「待つ必要なんかねぇだろ」
ウイニングチケット「一人で無茶するつもりなんでしょ!」
テツマ「んな事した所で試合に勝てねぇだろ」
メジロライアン「た、確かにそうだけど…」
「……」
金髪のウマ娘もテツマの方を見ていた。
ナイスネイチャ「あ、あのう…。なんかこっち見てるんですケド…」
ネイチャの言葉にテツマはシチーを見つめた。
テツマ「知り合いか?」
ウイニングチケット「知り合いといえば知り合いだけど…え、もしかして知らない?」
テツマ「ああ」
テツマがあっさり認めると、ネイチャは呆れていた。
メジロライアン「…一応モデルやってる子なんだけど、あ…雑誌とか読まないんだね」
テツマ「で、アイツは強ぇのか?」
ナイスネイチャ「つ、強いって…レースが速いって事? 速いと思いますよ…」
テツマ「知らねぇんだろ。悪いがこっちは強いウマ娘以外には眼中にねぇんだ」
ウイニングチケット「またそういう事…」
「ちょっと。今の聞き捨てならないんだけど」
テツマの挑発的な発言にシチーも黙ってはいられなかったのか、ずがずがとやってきた。
テツマ「ダシマカップには出てるか?」
ゴールドシチー「出てないけど、アタシ強いよ」
テツマ「そうかい」
ゴールドシチー「…その目。まるで信じてないね。だったら今度の選抜レース来てよ」
テツマ「生憎だがこっちは7人も担当がいてね。期待には応えられねぇな」
ゴールドシチー「何? 逃げるの? 情けないね」
テツマ「情けないも何もオレは前科…」
ウイニングチケット「わかった!! い、行くから!!」
テツマが危ない発言をしようとしていたので、チケットが慌てて止めた。
とまあ、そんな感じで選抜レースを見に行くことになった。
テツマ「……」
当日、テツマはチケットたちと共にきていたが、特に抵抗する様子はなかった。そしてターフの上にはシチーがいて、シチーはテツマを見ていた。
テツマ「肩に力が入り過ぎてるな…」
ウイニングチケット「テツマくんがあんな事言うからでしょ!」
テツマ「いいや。それにしたってメンタルが弱すぎる。これはもう結果が見えてるな…」
こうしてレースが始まったが、シチーは苦戦していた。
ゴールドシチー(くそっ…まだ…まだアタシはやれる…っ!!)
と、得意とする追い込みで相手を抜かしていったが、結果は5着で終わった。
「うーん…。二足の草鞋でよくやるとは思うけど…」
「ちょっと厳しいかな…」
スカウトしようとしていたトレーナー達もシチーの結果を見て、困り顔になっていた。そしてテツマはというと、即座に立ち上がった。
ナイスネイチャ「ト、トレーナーさん…?」
テツマ「ショーは終わりだ。オレは帰るぜ」
メジロライアン「ショ、ショーって…!」
帰っていくテツマをネイチャたちが追いかけた。そしてシチーはテツマが失望した様子で帰っていくのを見てうつむき、拳を握っていた。
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そしてネイチャたちと別れたテツマは一人河川敷に向かっていたが、シチーと一人の女性が揉めているのを目撃した。
テツマ「……」
テツマは背を向けて去ろうとした。
「ちょっとちょっとちょっと!!!」
「シチー!! 待ちなさい!!」
テツマ「……」
シチーがテツマを追いかけた。
テツマ「何だよ。取り込み中だから気を利かしてやったのに」
ゴールドシチー「いや、あんな露骨に避けなくてもよくね!?」
そしてマネージャーも追いかけてきた。
「シチー。その人知り合いなの?」
ゴールドシチー「あ、うん…。ちょっとね…」
テツマ「全く知らねぇ」
テツマがそう言うと、シチーはテツマの靴を踏もうとしたが、テツマはかわした。そしてマネージャーは険しい顔をした。
「…ホントに? カレシとかじゃないわよね?」
ゴールドシチー「違うってば!」
テツマ「…で、あんたは誰だい?」
ゴールドシチー「…モデルのマネージャー」
テツマ「そうか…」
テツマは心底どうでもよさそうにしていたが、マネージャーがテツマを見た。
マネージャー「…シチーが迷惑をかけたみたいでごめんなさいね」
テツマ「ああ」
ゴールドシチー「かけてねーし!」
マネージャー「迷惑かけてこんな事言うの凄く申し訳ないのだけど、シチーは今すごく大事な時期なの。だから今後は極力会うのを控えて貰っても良いかしら?」
ゴールドシチー「は!? だから何でそんなのを勝手に決めんの!」
テツマ「キーキーうるせぇよ。耳障りだ」
テツマの暴言にシチーもマネジも驚いた。
テツマ「…首を突っ込むつもりはねぇが、バラバラだなあんたら」
ゴールドシチー「なっ!」
マネージャー「…それは承知の上よ。だけどこっちも仕事で、シチーの事を想って言ってるのよ。それなのに…」
ゴールドシチー「マネジが余計な事するからでしょ! 大体話が違うじゃん!」
マネージャー「シチー! なんでわからないの!」
テツマ「うるせぇな」
テツマがまた悪態をつくと、シチーとマネージャーはテツマを見た。
テツマ「何があったかは知らねぇがな。人を巻き込んでこんな喧嘩をしてる時点でたかが知れてんだよ」
するとテツマは背を向けて、シチーの方を振り向く。
テツマ「選抜レースもあのザマだ。お前みたいな奴には絶対負けねぇよ。じゃあな」
そう言ってテツマは去っていった。
つづく