ウマ娘達との出会い   作:ダシマ

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2024/1/21:誤字確認しました。ありがとうございます。


ウオッカ

 

 飛鳥が転校した来た日。午前中のレース場ではウマ娘達がトレーナー達に実力を見せる『選抜レース』を迎えるにあたって、1年生達が教官の指導を受けようとしていた。

 

 そして選抜レースに出るであろうウマ娘達をトレーナー達が見学に来ていた。

 

 だが、ここで問題が起きた。

 

「んじゃ、オレはここで抜けさせてもらうんで。お疲れっしたー」

 

 と、一人のウマ娘が勝手に抜け出して皆驚いていた。彼女の名前はウオッカ。トレセン学園に今年入学した新人なのだが、問題児でもあった。

 

「ちょ、ちょっとウオッカ! どこ行くのよ!!」

 

 同期であるダイワスカーレットが声をかけるも、ウオッカが戻ってくることはなかった。そんなウオッカに対してスカーレットは呆れながら一息ついた。

 

ダイワスカーレット「…全く。カッコいいと思ってんのかしら」

「実力は確かにあるとは思うのだけど…」

 

 教官の女性も困り顔だった。彼女は人間でウマ娘に無理やり迫って返り討ちにされる危険もあったので、特にウオッカを引き留める事はしなかったが、それでも彼女の事は心配だった。

 

ダイワスカーレット「…まあ、その事に関しては心配ないと思いますので、続けましょう! 他の子達も待ってますし!」

「…それもそうね」

 

 と、スカーレットの機転でトレーニングが行われることとなったが、ウオッカが抜け出したことをトレーナー達は不安に思っていた。

 

*********

 

「フンッ。なーにが『担当トレーナーがつくまでは、お揃いのメニューでトレーニングしましょうね』だ。やってられるかっつーの」

 

 ウオッカは文句を言いながらトレーニングルームで、自己流のトレーニングをしていた。練習自体が嫌いなわけではなかったようだ。

 

ウオッカ「みーんな仲良しこよしなんてオレはごめんだね。同じ練習メニューをしてたんじゃ、同じようにしか成長出来ねーじゃねーか。オレが目指してるのはそういうのじゃねーんだよ!」

 

 と、ウオッカは一人で練習していた。

 

****

 

 その夜。ウオッカはトレーニングを終え、自分の寮である栗東寮に戻ってきた。

 

「ちょっとウオッカ!」

 

 ダイワスカーレットがウオッカを待っていて文句を言おうとしていた。

 

ウオッカ「ヘッ。お前が何といってもオレの意志は変わんねーよ」

ダイワスカーレット「少しはフォローするこっちの身にもなりなさいよ!」

ウオッカ「はー? オレがいつそんな事頼んだんだよ。お前が勝手にやってるだけだし、点数稼ぎ出来ていいじゃねーか」

ダイワスカーレット「なんですってー!!?」

 

 ウオッカとスカーレットがもめだした。この2人、同期でありライバルなのだがすぐに喧嘩する。仲が悪いという訳ではないのだが、性格や考え方が合わずそれでいて2人ともけんかっ早い事から、すぐに喧嘩に発展するのだ。

 

「何を騒いでいる!」

「エ、エアグルーヴ先輩!!」

 

 副会長のエアグルーヴがやってきてウオッカとダイワスカーレットが驚いて硬直する。

 

「外で騒いだら近所迷惑だ!! 静かにしろ!!」

「いや、君もうるさいし、寧ろ君が一番声がでかい」

 

 と、寮長のフジキセキがツッコミを入れるとエアグルーヴが気まずそうに視線をそらした。

 

フジキセキ「おかえりポニーちゃん」

ウオッカ「う、うっす」

エアグルーヴ「ハァ…」

 

 エアグルーヴの様子がおかしいのでウオッカとダイワスカーレットも気になっていた。

 

ダイワスカーレット「ど、どうしたんですか?」

エアグルーヴ「何でもない」

フジキセキ「あ、そういや聞いたよ。今日来た転校生の事」

「転校生?」

 

 フジキセキの言葉にウオッカとスカーレットが反応すると、フジキセキは2人を見て詳細を話した。

 

フジキセキ「人間でありながらウマ娘の同等の走りを見せたって、皆大騒ぎしてるよ」

ダイワスカーレット「そ、そんな話が!?」

ウオッカ「へえ…」

エアグルーヴ「言っとくが妙な事をするなよ。もうそういうのはゴールドシップだけで十分だ…」

 

 そう言ってエアグルーヴは疲れ切った様子で中に入っていったが、ウオッカはゴールドシップと同等に走れる上に人間であるなら、名を上げるチャンスだと考えていた。

 

**

 

 ウオッカは何とか名前とクラスを聞き出して飛鳥の所にやってきた。

 

ウオッカ「一丈字飛鳥ってのはどいつだ!?」

 

 普通科の教室にウオッカが現れて皆が驚いたが、当の飛鳥本人は普通にウオッカを見ていた。ちなみにあの騒動以降超能力が迂闊に使えなくなってしまった。

 

飛鳥「一丈字は私ですが…」

ウオッカ「お前が一丈字飛鳥か。面貸せ!」

 

 この時、飛鳥はウオッカは何が目的か理解した。

 

飛鳥「もしかして…ゴールドシップの手下ですか?」

ウオッカ「て、手下じゃねー!!」

飛鳥「子分とか…」

ウオッカ「子分でもねえ!」

飛鳥「下っ端」

ウオッカ「さっきから意味が同じだよね!?」

 

 飛鳥の言葉にウオッカはツッコミを入れるが、ウオッカとしては調子を崩されて複雑そうにしていた。

 

ウオッカ「と、とにかくオレと勝負しやがれ!!」

飛鳥「ペーパーテストでですか?」

ウオッカ「おちょくってんだろお前ェ…」

 

 さっきから自分の痛い所を突いてくるので、ウオッカの額には青筋が立っていた。

 

飛鳥「まあ、冗談はさておき、あの追いかけっこの事でそう言ってるんですよね?」

ウオッカ「わ、分かってるじゃねーか」

飛鳥「知ってると思いますが、あれは超能力を使ってるので…」

ウオッカ「それでもかまわねーよ。敗けねーから」

 

 ウオッカはそう自信満々に言い放つと、飛鳥が一息ついた。

 

飛鳥「それなら一つ条件がございますよ」

ウオッカ「な、何だよ」

飛鳥「エアグルーヴ副会長の許可が取れれば勝負しましょうか」

 

 飛鳥の言葉にウオッカが気まずそうにしていた。よほどの理由がない限りOKなんて出る筈がないからだ。

 

飛鳥「魂胆は分かってるよ。オレとレースする事で皆からの注目を集めて、そこで勝つ事で名を上げようって魂胆だ。違うかい?」

ウオッカ「ど、どうしてそれを…!」

飛鳥「まあ、これくらいは超能力を使わなくても分かるよ。まあ、そういうこった。エアグルーヴさんの許可が取れなければ諦めるんだな」

 

 しかし、事もあろうに許可が取れてしまった。

 

エアグルーヴ「私としてもお前の実力は気になるからな」

飛鳥「……」

 

 まさかOKが出るとは思わず、飛鳥は困惑していたがエアグルーヴの真の目的を理解したので、勝負を引き受けることにした。

 

 そして勝負当日。一応非公式という扱いでエアグルーヴ立ち合いの元でトレセン学園のレース場で勝負する事となったが、噂を聞きつけた生徒達やトレーナー達がやってきた。

 

飛鳥「これで負けたら偉い事になるぜ…」

 

 思った他ギャラリーがいて、飛鳥は困惑していた。

 

ウオッカ「よう。逃げずに来たみたいだな」

 

 ウオッカが得意げに話しかけると飛鳥はまたしても困惑した。もし仮に勝負に勝ったとしてもウオッカに明るい未来はない事は分かっていたからだ。

 

飛鳥「まあ、実戦を積むには良さそうだから勝負するよ」

ウオッカ「一応トレセン学園の試験は突破してるんだ。簡単に勝てると思うなよ!」

 

 と、飛鳥とウオッカが会話をしているのをダイワスカーレットも見ていた。

 

ゴールドシップ「ふっ…。お前の活躍、ここから見守らせて貰うぜ」

ダイワスカーレット「あんたはどの目線で言ってるのよ…」

 

 そしてレフェリーはエアグルーヴが行う事となり、レースが始まろうとしていた。

 

エアグルーヴ「試合は芝・マイル1600m! 先にゴールした方が勝ちだ! なお、一丈字飛鳥は超能力でスピードの強化は認めるが、あからさまな相手選手への妨害行為は禁止とする!」

 

 こうしてレースが始まった。飛鳥は逃げでウオッカは差しの作戦で行き、最終コーナーまでは飛鳥が大きくリードしていた。

 

飛鳥(そろそろ来る頃か…)

 

 飛鳥が後ろをちらっと見てウオッカの様子をうかがっていた。

 

ウオッカ「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ウオッカが差し切ろうとスピードを上げていった。そんな2人に対しゴールドシップは無表情で見つめていた。

 

ダイワスカーレット「ど、どうしたのよ…」

ゴールドシップ「勝負はもう決まった」

ダイワスカーレット「え?」

 

 すると飛鳥もスピードを上げていき、更に差をつけてゴールした。

 

エアグルーヴ「勝者! 一丈字飛鳥!!」

 

 エアグルーヴが勝者の名前を上げるも、ギャラリーはざわついていた。超能力を使っていたとはいえ、人間がウマ娘にレースで勝つなど前代未聞だったからだ。

 

ウオッカ「はぁ…はぁ…」

 

 ウオッカは息を切らして両膝を掴んでいた。そんな彼女に対し飛鳥は何も言わずに見つめていた。

 

飛鳥(…やっぱりコーナー曲がりにくいなぁ)

 

 飛鳥はコーナーを曲がるのが苦手だった。直線を走るのは得意だが、直線が速い分コーナーに差し掛かった時に曲がる為に超能力をコントロールしないといけないのだ。だが、コーナーを曲がる為に無暗に調節するとパフォーマンスが落ちてしまうのだ。

 

飛鳥(このレース…やった意味があるかもな)

 

***

 

ウオッカ「じ、自分で勝負をしかけといて負けるなんてダサすぎだぜ…」

 

 ウオッカがそう呟いて飛鳥の方を見た。

 

ウオッカ「や、やるじゃねーか…。流石オレが見込んだだけの事はある」

飛鳥「気は済んだ?」

ウオッカ「だけど勘違いするな! 次はオレが勝つからな!」

 

 と、ウオッカが指をさしてリベンジを宣言したものの…。

 

「その前に貴様にはやるべき事があるだろう」

 

 そう言ってエアグルーヴとフジキセキがやってきて、飛鳥は嫌な予感がしていた。

 

ウオッカ「や、やるべき事って…」

フジキセキ「話は聞いたよ。選抜レース前の団体練習、ポイゴッドしたんだってね?」

 

 フジキセキにそう言われてウオッカが青ざめた。

 

ウオッカ「あの、オレの言い分を聞いてもらえないでしょうか!」

エアグルーヴ「問答無用だ!」

フジキセキ「いいじゃないか。話位は聞こうか」

 

 そう言ってウオッカは事情を説明した。同じトレーニングをしたところで同じようにしか強くならず、集団の中で埋もれてしまうと。それを聞いたエアグルーヴやフジキセキ、教官は彼女の言い分は理解はした。

 

エアグルーヴ「…成程。そういう意味では貴様の言う事は一理あるな」

ウオッカ「で、ですから…」

エアグルーヴ「とはいえ、その団体練習は授業中だった筈だ! 同情の余地はない!!」

 

 健闘空しく、ウオッカはエアグルーヴに大目玉を食らって、フジキセキにペナルティを課されたのだった…。

 

飛鳥「やれやれ…」

 

 

おしまい

 

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