ウマ娘達との出会い   作:ダシマ

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マルゼンスキー

 

 大助がシンボリルドルフのトレーナーを務めてからというもの、ルドルフは期待以上の成績を出していた。

 

「…やっぱり強いよな。シンボリルドルフ」

「ああ…」

「だけど、どうして荒垣なんかに…?」

「理事長からの推薦もあったらしいぞ。前に担当してた奴、殆どダートだったのに…」

 

 大助はふてぶてしい態度でルドルフのレースを見ていた。その横で当時、小学生だった紬が心配そうに大助を見ている。

 

紬「お、お父さん…」

大助「ほっとけ。ルドルフの実力だけを見て言ってる新人レベルの奴の言う事なんざ。何年目だよ」

 

 そしてルドルフが出るレースに出ると必ず負けるとまで言われ、この後のトレセン学園が暗黒時代を迎えるのはまた別の話…。

 

****

 

 それからしばらくして。ルドルフが『神童』として崇められていた頃、とある選抜レースがあり、大助は通りかかったので見てみることにした。

 

 そんな中で、ひときわ目立っていたのは、『マルゼンスキー』というウマ娘だった。他のウマ娘を大差で引き離して勝利した上に、余裕の笑みを浮かべていた。

 

大助「……」

 

 大助はそれを見てその場を去ろうとしたが、

 

「彼女もルドルフさんと同じ天性の才能がありますよ」

 

 増田が現れた。そして、彼を見るなり大助は嫌そうな顔をしていた。

 

大助「…もうあの皇帝だけで十分なんだよ」

増田「はい。そう簡単に増やすものではございませんし、彼女も中々の気性難でしてね」

大助「…そうかよ」

 

 そう言って大助はばつが悪そうに去っていったが、増田は何かを見透かしたかのように大助の方を見て笑みを浮かべた。

 

 そしてマルゼンスキーはというと、実力のあるトレーナー達からスカウトを受けていたが、どこかばつが悪そうに断っていた。それを増田がじっと見ていた。

 

*****

 

 その夜。大助が見回りをしていると、ターフで走っているマルゼンスキーがいた。そして嫌な予感がしたので、大助がその場を離れようとしたが、

 

「ちょっとちょっとちょっと!!」

 

 マルゼンが大助に気づいて、追いかけた。

 

マルゼンスキー「何で逃げるのよう!!」

大助「…嫌な予感がしたから」

マルゼンスキー「嫌な予感がしたからって何よ! 失礼ね…って、あら?」

 

 マルゼンスキーは大助の服につけられているトレーナーバッジを目にした。

 

マルゼンスキー「あなた…トレーナーさんだったのね」

大助「ああ…」

 

 そして大助の顔を見るなり、マルゼンは思い出した。

 

マルゼンスキー「思い出した! あなた、あのシンボリルドルフのトレーナーさんでしょう!」

大助「そうだよ。まあ、殆ど指導なんてしちゃあいねぇがな…」

マルゼンスキー「え?」

 

 大助は一息ついた。

 

大助「レースを見てるなら分かると思うが、あいつは今まで見てきたウマ娘の中で群を抜いて実力のあるウマ娘だ。正直オレが育成する必要もねぇ」

マルゼンスキー「…それだったら何で」

大助「あのババア…理事長に押し付けられたんだよ。まあ、やる事といえばメチャクチャ偉そうな態度を取ってたら大人として叱るくらい事くらいだ。レースの世界じゃ名家のウマ娘でも、世間からしてみたら口の利き方がなってねぇ、ただのクソガキだ。それこそ学園の信用に関わるんでな」

 

 大助の言葉にマルゼンはぽかんとしていた。

 

マルゼンスキー「…ねえ」

大助「何だよ」

マルゼンスキー「あなたは、あたしの事スカウトしたいと思った?」

大助「ほざけよ。さっき言っただろう。とんでもねぇ奴押し付けられてんだ。二人も面倒見れるか」

マルゼンスキー「…そ、そうよね」

 

 マルゼンがしゅんとすると、大助は静かに目を閉じた。

 

大助「…お前が何しにここに来てるかは分からねぇがな。ここにいるトレーナーの大半はG1制覇や上を目指してる」

マルゼンスキー「!」

大助「そして生活の為にやってる。『ただ単にレースを楽しみたい』っていう奴の考えなんざ理解されねぇよ。トレセン以外の道があるんじゃないか?」

マルゼンスキー「そ、それは…」

 

 マルゼンが俯いた。

 

マルゼンスキー「…その、可愛がってる後輩の皆があたしがTSシリーズで活躍してる所を見たいって言ってて、その期待に応えたくて」

大助「結局人のせいか」

 

 大助の言葉にマルゼンが憤った。

 

大助「期待に応えるのが悪いとは言わねぇ。だが、ここに来たからには誰かの為ではなく、自分の為にレースをしろ。いくら実力があろうが、それだけで勝てる程TSは甘くねぇし、後輩たちも本来のお前自身のレースが見たいんじゃないのか?」

 

 大助の言葉にマルゼンが俯いた。

 

大助「話はそれだけだ。もう門限の時間も迫っている。とっとと帰れ」

マルゼンスキー「え…あら、やだ! もうこんな時間だわ!!」

大助「とっとと帰れ」

マルゼンスキー「そうするわ! ありがとね!」

 

 そう言ってマルゼンは去っていったが、大助はため息をつきながら、その場を後にした。

 

大助「…オレもヤキが回ったもんだな」

 

*****

 

 その夜、マルゼンは自室で考えていた。大助や後輩、周りの人間に言われていた事。

 

マルゼンスキー(…もう少し。自分にワガママになってもいいのかも)

 

*****

 

 後日…。マルゼンは大助の元を訪ねたが…。

 

増田「そういう事なので、マルゼンスキーさんも荒垣トレーナーのチームに入れてあげてください」

大助「ふっざけんな!!」

 

 増田も同行していて、その上彼から依頼されていたので大助が激怒していた。

 

マルゼンスキー「いやあ…。あそこまで言われたら、もうあなた以外考えられないわ」

大助「……!」

 

 確かにマルゼンみたいな考え方をしている奴を受け入れるトレーナーは数少ないだろうと大助は思っていた。

 

大助「…そいつでもいいだろうが」

増田「僕は事務やスカウトの仕事がありますから」

マルゼンスキー「それもそうだけどトレーナー。昨晩考えたの」

大助「……」

マルゼンスキー「…後輩たちの期待に応えたいっていう気持ちは変わらないんだけど、やっぱりあたしはレースを楽しみたいわ。だから、特にこの賞を取りたいとか、G1を目指したいって言うのはないの。あなたはそういうのある?」

大助「…いいや。もうまるでねぇな。ルドルフの奴はより高みを目指しているがな」

 

 ルドルフとは考えが違っても、ウマ娘の為に合わせてくれようとしている大助にマルゼンはまた心を奪われた。

 

増田「そういう意味ではウマ娘にチャレンジさせてくれるトレーナーともいえますね」

マルゼンスキー「…ええ。もう決めたわ! あなたのチームに入るわ!」

大助「いや、ちょっと待て…」

増田「まあ、理事長先生がもう手続きしてますけどね。ババアって言ってたの聞いてたみたいですよ」

大助「あのクソババアー!!!!!!!」

 

 こうして、マルゼンも加わって色々無双しだすのはまた別の話…。

 

 

つづく

 

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