さかのぼる事数年前。マルゼンスキーを担当ウマ娘にした大助。そしてレースは言わずもがな、すぐさま結果を出していた。
(完全にあいつら自身のセンスだな…)
ルドルフとマルゼン。芝に関しては完全に総なめしている状態だった。大助は観客席から娘の紬と共に観戦していた。
そしてトレセン学園でもすぐに話題となった。
「絶好調ね」
「…ああ」
理事長室にて大助は先代の理事長と話をしていた。理事長の隣にはたづなもいる。
「やはりあんたに任せて正解だったわ」
大助「ほざけ」
たづな「あ、荒垣トレーナー!!」
先代の理事長に対して無礼な発言をする大助をたづなが諫めた。
「あの子たちみたいな癖の強いウマ娘と相性がいいのかしら?」
大助「バカ言うな。なんだかんだ言ってこっちの指示に従ってくれるから成り立ってんだ。あれが本当に聞き分けの悪い連中だったら、どうにもならねぇよ」
あくまで自分の手柄ではないと大助は言いはるも、先代の理事長は何か思う所があったようだ。
「…まあ、実力はあってもまだまだ子供だからねぇ。ましてや才能がある子なら猶更」
先代の理事長が呟くようにそう言うと、大助もまた思う所があって何も言わずに理事長の話を聞いている。
「まあいいわ。近いうちに2人を連れてパーティに出て貰うから宜しく。あ、紬ちゃんも連れてきていいわよ」
大助「…分かったよ」
こうして話は終わったが、大助は不満そうだった。ちなみに紬はというとやよいと遊んでいた。ちなみにこの時の紬はまだ小学生である。
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そんなある日の事。この日は雨で練習は禁止だった。大助はたまたま芝のレース場に来ていたのだが、そこに1人のウマ娘が走っていた。
大助「あいつは…」
大助はウマ娘を見つめると、嫌な予感がしたのかすぐに立ち去った。
「あ、ちょっとちょっとちょっと!!」
ウマ娘もそれに気づいたのか、大助を追いかけて行った。
大助のトレーナー室にて大助とウマ娘、そしてルドルフとマルゼン、紬もいた。
「あんな急に逃げられたら気になるじゃん」
「……」
ウマ娘がそう言うと、大助はめちゃくちゃ不満そうにしていた。それを見たルドルフも思わず苦笑いした。
シンボリルドルフ「…トレーナー。お気持ちは分かりますよ。この『ミスターシービー』は私たちと同じくらいの実力を持っていて、数多のスカウトを受けていると」
マルゼンスキー「でも全部断ってるのよねぇ」
大助「オレはこっちから断ってたつもりなんだがな…」
大助が皮肉気味にツッコミを入れた。
紬「…どうしてスカウトを断ってたんですか?」
ミスターシービー「うーん。皆熱心なのはいいんだけどさ、アタシとは合わないんだよね。ああしろこうしろってうるさいの」
シービーの言葉を聞いて、トレーナーはイヤな予感がしていた。
マルゼンスキー「分かるわ。あたしも似たような感じなのよ」
ミスターシービー「え、そうなの?」
マルゼンの言葉にシービーが反応する。
マルゼンスキー「まあ、トレーナーとしては『クラシック三冠』や『G1』を狙いたい所なんだろうけど、あたしとしては走ってるところを後輩たちに見せたいだけなのよ」
ミスターシービー「分かる。もうこんな事言うと凄く失礼だけど、トレーナー側の都合を押し付け過ぎなんだよね」
マルゼンの言葉にシービーは本音をぶつけるように言い放つと、ルドルフが困惑していた。
大助「…まさかとは思うが、うちに来るなんてことはないだろうな?」
ミスターシービー「アハハ。まあ、そう思うだろうけど…そうだね」
大助「勘弁してくれ。こっちはもう2人いるんだ」
シンボリルドルフ「お言葉ですがトレーナー」
大助「んだよ」
ルドルフが助け舟を出そうとしていて、大助が困惑していた。
シンボリルドルフ「このミスターシービーは確かに気分屋なところはありますが、実力は班者です」
大助「知ってるよ。そいつの親が有名なトレーナーだったからな」
マルゼンスキー「…まあ、一旦ちょっとチームに置いてみたらどうかしら?」
大助「何かあった時に責任取らされるのはオレだぞ」
ミスターシービー「分かった分かった。あまりムチャはしないからさ」
「良い考えだと思うね」
大助「おい何であんたも当たり前のようにいるんだ!!」
先代の理事長がいつの間にか現れて…気が付けばシービーと契約を結ばされていた大助であった。
*****
で、この後どうなったかというと…。
「おい、聞いたか…!?」
「あのミスターシービーもあいつのチームに…」
「どうなってんだよ!」
ミスターシービーが大助のチームに入った事を知って他のトレーナー達が大騒ぎしていた。そしてレースはというと…。
大助「レースに勝てたらある程度好きにしていいぞ。勝てなかったら…分かるな?」
ミスターシービー「…うん。任せて」
そしてシービーはレースに勝ちまくった。時にはルドルフやマルゼンとも競い合っていたが、あまりのレベルの高さに他のウマ娘たちがついてこれなくなってしまった。
「じ、次元が違う…」
「確か同じチームだったわよね…?」
あまりにも強すぎるウマ娘が3人もいるという事から、大助のトレーナーとしての知名度が急激に高まっていった。
で、その後大助の所に入団希望者が続出したわけだが…。
大助「レースに勝てたのはルドルフたちの才能があってこそだし、お前らは基礎をしっかりやれ。話はそこからだ」
と、大助は追い返した。希望者も地味な基礎トレーニングをやらされ続けるのはイヤだったのか、二度と近づくことはなかった。
紬「お、お父さん…」
大助「フン。強い連中と同じチームに所属してあやかろうってのが、見え見えなんだよ。現にあのバアさんや増田もあいつらに関しては口出ししてこなかっただろう?」
確かに入団希望者に関しては増田や理事長からも入れてやってほしいという事は言っていなかった。そう、彼女たちの本質に気づいていたからだ。
ミスターシービー「でもいいの? アタシ達の才能だよりって思われてるよ?」
大助「レースの結果だけ見れば半ば事実だ。まあ、精々お前らが勘違いしねぇように、大人として注意するくらいだよ」
大助の言葉にマルゼンが苦笑いした。
大助「それはそうとシービー。お前また雨の日にターフを走ったらしいな」
ミスターシービー「だって、雨の日に走るの気持ちいいんだもん」
大助「せめて申請取れ。何のためにレースで勝たせてると思ってんだ」
大助の言葉にルドルフたちが驚いた。
ミスターシービー「どういう事?」
大助「お前が自由にやりたいというのは良く分かった。だが、それには自由にさせてやる側にもメリットがなきゃならねぇ。今のお前の実力で言えば理事長も首を横に振る事はねぇだろうよ」
そこまで考えてくれていた事にシービーは思わず嬉しくなって、大助に抱き着いた。
大助「…何の真似だ」
ミスターシービー「大した意味はないよ。お礼♡」
大助「バカな事やってねぇで離れろ!」
とまあ、何だかんだチームとして馴染むようになったシービーなのであった。
おしまい