ウマ娘達との出会い   作:ダシマ

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ルドルフ、マルゼン、シービー、ザパールは中1のころに所属。


シーキングザパール

第4話

 

 ルドルフ、マルゼン、シービーの無双は続いた。とにかく芝の中距離・長距離においては彼女たちの独壇場で、それ以外はもうおまけみたいなものであった。

 

 だが…

 

「ったく、このクソガキが!」

「トレーナー。悪かったってばー」

 

 大助はシービーを俵担ぎしていた。どうやらシービーは気分が載らずに授業を抜け出してしまったのである…。そして周りの教師や生徒は不思議そうに見つめていた。

 

「…意外と大変なんだなぁ」

「普段はあんな感じでもレースでは…」

「あぁ…」

 

 少なくともシービーの自由奔放さは学園中に知れ渡っていて、最初は大助に嫉妬やらしていた連中も少しだけ同情するようになった。

 

*****

 

 そんなある日のことだった。大助がほんの偶然で、選抜レースを見に来ていた。この日は曇りで地面もあまり良くはなかった。

 

増田「どなたか気になる子はいますか?」

大助「ほざけよ。もう新しい奴が来るのはうんざりだ…」

 

 そんな中、出走するウマ娘たちは大助に気づいて戦々恐々としていた。

 

「あ、荒垣トレーナー…!?」

「今有名なトレーナーさんだよね…」

 

 明らかに自分を見て怯えているウマ娘たちを見て、大助は困惑していた。

 

増田「大人気ですねぇ」

大助「誰のせいだと思ってんだ」

 

 そんな中、1人だけ大助を見て怯えるどころか、自分を見ろとアピールしてくるウマ娘がいた。

 

大助「…あ? なんだあいつは」

増田「彼女はシーキングザパールさんといって、短距離を得意としているウマ娘ですね」

大助「実力は?」

増田「確かですが…」

大助「確かですが?」

増田「コンディションによってばらつきがあるようです」

 

 そんなこんなで出走が行われた。ウマ娘たちは皆全員が全力を尽くして走っていた。ザパールも例外ではなかったが、走っているザパールの顔を見て大助はある事に気づいた。

 

大助「…成程」

増田「分かりましたか?」

大助「あいつらと同じだ。トレーナーがどうこう出来る問題じゃねぇ。オレは帰るぜ」

 

 そう言って大助は帰ってしまった。そして増田はそんな大助を見て苦笑いしていた。

 

****************

 

「入部を希望するわ!!」

 

 シーキングザパールが大助のトレーナー室に入ってきて、大助は困惑していた。ザパールもそうだが、増田もついてきたからだ。

 

大助「てめェ…!」

増田「今回はあなたが原因ですよ。荒垣くん」

大助「んだと!?」

増田「自分のレースを最後まで見ずに帰ってしまった事が、彼女に火をつける原因になったのです」

シーキングザパール「トレーナー。気の抜けた走りをしてしまった事は本当にソーリー。ただ、私の話を聞いて貰えないかしら!?」

 

 ザパールの言葉に大助はどうするか考えていたが、

 

ミスターシービー「トレーナー。聞いてあげたら? 多分アタシ達と同じ悩みを持ってるんだと思うよ」

マルゼンスキー「そうねぇ…」

大助「…いや、オレも聞きたい事がある」

「!?」

大助「座れ」

 

******

 

大助「単刀直入に聞く。お前、あの選抜レース…本気で走ってなかっただろう」

「!?」

 

 大助の言葉にマルゼンが驚いた。

 

シーキングザパール「…分かってたのね」

大助「ああ」

シンボリルドルフ「それが事実なら私も放っておけない。どういうつもりだ?」

 

 レースをするにあたって手抜きをするなど、侮辱行為でしかない。そう考えるルドルフの瞳には怒りがこもっていた。しかしザパールはルドルフの怒りに怯えることはなかった。

 

シーキングザパール「私が目指しているのは、ただの勝利じゃないの」

シンボリルドルフ「どういう事だ?」

大助「どんな状況においても勝てるようにしたい」

「!」

大助「だが、あの時のレースは思った以上にコンディションが悪く、どうやって勝とうか考えながら走っていた。そう言いたいんだな?」

 

 大助がそう言うと、ザパールは口角を上げた。

 

シーキングザパール「その通りよ」

ミスターシービー「ふーん…。なかなか面白い事するんだね」

大助「何故そこまでやる必要がある?」

シーキングザパール「よく聞いてくれたわトレーナー!」

 

 急に立ち上がったザパールに大助は露骨に嫌な顔をした。だが、ザパールはお構いなしに話を進める。

 

シーキングザパール「私は…レースを通じて世界中の絶望を取り払いたいのよ」

 

 というとんでもなくでかい野望を言い出したが、誰一人としてザパールの夢を笑わなかった。

 

シーキングザパール「…特にルドルフには聞いてほしいわ」

シンボリルドルフ「?」

シーキングザパール「人、そしてウマ娘は生まれながらに平等じゃない。私は世界中を見て回ったからそれが分かるの。大金持ちがたくさん集まる街の片隅に追いやられている人々や、産業のない国に生まれ…才能を持っていても活かすことが出来ない人もいた。そんなのおかしいと思わないかしら?」

ミスターシービー「まあ、それはそうだね」

 

 ザパールの言葉にシービーが返事をすると、紬もザパールの話を聞いていた。

 

シーキングザパール「私が目指しているものは、例えどんな不利な状況でも最後の最後で巻き返せる。希望を見せたいのよ。そしてそれが出来るのは…そう、レースよ」

大助「……」

 

 ザパールの言葉に大助は静かに目を閉じた。

 

シーキングザパール「私が困難を乗り越え、勝利する事でそれはメッセージになる。たとえ言葉が通じなくてもね。アンダスタン?」

大助「ああ、十分に分かった」

シーキングザパール「それなら…」

大助「だったら猶更別のチームに行った方がいい」

「!?」

 

 大助は入部を拒否した。

 

紬「え!? お、お父さん!?」

シーキングザパール「ご納得いただけなかったかしら?」

大助「いいや。お前の言いたい事は分かったが、オレがトレーナーをやるには規模がでかすぎる。お前の夢は海外のG1を制覇でもしない限り叶えることはムリだろうな」

シーキングザパール「海外のG1…」

大助「…まあ、短距離が得意みてぇだから、フランスの『モーリスドゲスト賞(G1)』あたりだろうが、オレは特に世界を目指してるわけじゃねぇんだ」

 

 そう言って大助が他のチームに行くように勧めたが、

 

ミスターシービー「…いや、それだったら猶更うちにいた方が良くない?」

大助「どういう事だ?」

 

 シービーの言葉に大助は思わず彼女の方を向いた。

 

ミスターシービー「いや、だって…。今短距離とマイルで1番強いのマルゼンだし、併走を頼もうと思ったら手間じゃない?」

マルゼンスキー「それにトレーナーくん。自由にやらせてくれるんでしょ?」

大助「…そうは言っても、海外G1となれば話は別だ」

「いいんじゃないかい?」

 

 すると理事長がまた現れて、大助はイヤな顔をした。

 

「あたしも見る限り、あんたが適任だと思うよ!」

大助「…オレの負担がかかりすぎるんだが?」

「勿論ただでとは言わないよ。増田くんにも協力してもらえばいいし、本気で海外のG1に挑戦するなら学園もある程度補助させて貰うよ! なんたって、海外G1制覇はまだ日本では誰もなしえてないんだからね!」

大助「……」

シーキングザパール「まあいいわ。とにかく今はあなたの元でトレーニングさせて貰うわ!!」

 

 こうしてザパールも大助のチームに入る事になるのだが…。

 

 

 

 その4年後、ザパールは本当に「モーリスドゲスト賞(G1)」を勝利して日本勢として初の海外G1制覇を果たしたのだった…。

 

大助「夢は叶ったか?」

 

 大助の問いにザパールはふっと笑った。

 

シーキングザパール「ちょっとだけよ。まだまだ足りないわ」

大助「そうか」

 

 

おしまい

 

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