ルドルフ・シービー・マルゼン・ザパールがトレセン学園に入学し、大助のもとでトレーニングを始めて1年が過ぎようとしていた頃、トレセン学園も新学期を迎えていた。
ルドルフ達と同様、入学当初から注目を集めるウマ娘も存在していた。そのうちの1人がエアグルーヴというウマ娘である。
かつてTSで有名を馳せた母を持ち、彼女自身もまた、躍動して風を切る端正な肉体と軽やかに地を蹴る長い両足。一切の迷いなく前を見据える麗しくも力強いまなざし。
そして何よりも全身から溢れ出る気品と剛毅さを孕んだオーラが人々から畏怖される異質ぶりを物語っていた。
「……」
しかし、そんな彼女もこの男のお眼鏡には合わなかった。
「如何でしょうか」
「ほざけ。もう4人もいる上に…ありゃあ本当にダメな奴だ」
大助の言葉に増田は意外そうにしていた。
大助「ルドルフ達…いや、あいつら以上に厄介かもな。まあ、もうオレには関係ねぇ」
そう言って大助は去っていった。エアグルーヴの周りにはたくさんのウマ娘やトレーナーが集まっていたが、大助はそれすらも目に向けなかった…。
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だが、暫くして大助の予感は的中することになる。
「なんだその態度は!!」
グルーヴの担当トレーナーらしき男性がルドルフに怒鳴っていたが、ルドルフは開き直っていた。
「トレセン学園は生徒の自主性を重んじている。多岐にわたる生徒会の活動もその一環だ」
「…何だと?」
ルドルフの態度にトレーナーは激怒していた。
シンボリルドルフ「彼女は明確な意思と目的があって活動に参加をしているのだ。誰であれ、彼女の同意なしにその権利をはく奪できない筈だが?」
トレーナー「だからって少しはこっちの言う事を聞いてもらわないと困るんだよ! そんな事も分かんねーのか!」
トレーナーはとにかく頭ごなしに叱っていた。
シンボリルドルフ「…少なくとも、トレーニングに集中するために生徒会の活動をやめるという件について彼女は承認しているのか?」
トレーナー「それは今から…」
「いいえ。その必要はありません」
エアグルーヴが現れた。
トレーナー「エアグルーヴ…」
エアグルーヴ「ルドルフ先輩。後は私が話をしますので」
シンボリルドルフ「…そうか。あまり無茶はするなよ」
そう言ってルドルフは去っていったが、グルーヴはトレーナーをにらみつけていた。
エアグルーヴ「さて、随分と勝手な真似をしてくれたな」
トレーナー「は?」
エアグルーヴの言葉にトレーナーは激怒した。
トレーナー「勝手な真似だと? それに何だその態…」
エアグルーヴ「もうこれ以上貴様と話をする価値もない」
トレーナー「いい加減にしろ! たまにはトレーナーの言う事を聞いたらどうなんだ!」
トレーナーがそう怒鳴るもグルーヴは動じない。
エアグルーヴ「…要するに、レースに勝つことだけを考えろ。と、言いたいのだな?」
トレーナー「それもそうだが…」
エアグルーヴ「だったらもういい。私と貴様では視座が違ったという訳だ」
トレーナー「話を聞け!!!」
エアグルーヴ「契約も打ち切る。では失礼」
トレーナー「待て!! まだ話は終わってないぞ!! 待ちやがれ!!」
トレーナーが激怒して追いかけようとすると、周りのトレーナー達が止めた。
「おいよせ!!」
「あいつは…」
トレーナー「離しやがれ!! くそう!! バカにしやがって!!!」
と、騒ぐ中で周りのウマ娘たちは困惑していた。
「…ねえ、今の見た?」
「ええ…。おっかないわね」
「まあ、家が家だからね…」
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そして…
大助「…エアグルーヴの『元』トレーナーからオレにクレームが来た。どういう事か説明しろ」
大助のトレーナー室にて、エアグルーヴの元トレーナーから大助に対して告げ口があり、大助は監督不行き届きとしてルドルフから話を聞くことにした。マルゼン、ザパール、シービーも居合わせていた。
シンボリルドルフ「…彼女の行動が全て正しかったとは言えませんが」
と、ルドルフは大助に事情を説明した。元トレーナーが半ば強制的にレース以外の活動をやめさせようとした事と、グルーヴがトレーナーの言う事を殆ど聞かなかったこと、中立の立場で説明した。
大助「成程。そりゃあどっちも落ち度がある訳だ」
シンボリルドルフ「私としては彼女の自主性を重んじたいのですが…」
大助「そりゃあ好きにすればいいさ。自主性を重んじてるのはオレも同じだ。だがルドルフ、一つ勘違いするなよ」
大助がルドルフに対して睨みつける。
大助「自主性を重んじるのであれば、お前たちも向こうの都合なども考えるべきだった。そうだろう? いくら学園が生徒の自主性が重んじてるとはいえ、普通に考えろ。自分たちばっかり優遇しろなんてバカな話はねえ。ハッキリ言って考えが甘いんだよ」
大助の言葉にルドルフが俯くと、マルゼンとザパールが困った顔をする。シービーはいたって普通だった。
ミスターシービー「まあ、アタシもちらっと見たけど、ちょっとナマイキだよね」
「!!」
ミスターシービー「ちょっとヤバいんじゃないかなあ」
大助「ああ…」
シンボリルドルフ「ど、どういう事だ?」
大助「ルドルフ」
シンボリルドルフ「!」
大助「それが分からねぇようなら、お前もグルーヴも生徒会をやめた方がいい。いずれ大きな失敗をするぞ」
大助がそう言って歩いてトレーナー室を出ようとする。
大助「多分あいつはこう考えているだろう。トレーナーの力などいらないと」
「!」
大助「そりゃあ大きな間違いだ。いくら力があるとはいえ、お前らはまだ自分も責任取れねぇガキだ。そして考えも甘ぇ。だから大人(トレーナー)がいるんだよ。ましてや自分一人ででかくなった気でいる奴なんか、誰も振り向かねぇよ。そういうのも見てきたんだ。こっちは」
大助は一瞬だけルドルフ達を見つめるとまた背を向けた。
大助「お前達はオレの嫌いな人間…いや、ウマ娘になってくれるなよ」
そう言って大助は部屋を後にした。
つづく