タマモクロス・スーパークリーク・オグリキャップ・イナリワン(前編)
トレセン学園に転校してきた一丈字飛鳥率いる『チーム<フェニックス>』が、学生向けのリーグ『ダシマカップ』にて破竹の勢いを広げていた。
しかし、飛鳥が普通科であったことから、未来のトレーナーを育成し、ウマ娘科に次ぐ花形である『トレーナー科』の株を奪う事にもつながった…。
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「クソッ! 面白くねえ!!」
トレーナー科のとある教室で男子生徒が友人たちと愚痴をこぼしていた。
「超能力が使えるだかなんだか知らねーが、調子に乗りやがって!!」
「どうせインチキでもしてるんじゃねぇのか?」
「それ以外考えられねぇ!!」
完全に言いがかりである。ちなみにこの男子生徒達に関しては参加する気もない上に、そこまで真剣にやっていなかったのだ。
そんな彼らをクラスメイト達は見て見ぬふりをするか、困った顔で見つめていた。そんな中、大柄かつ長身で眼鏡をかけた無表情の少年は特に興味を示す事は無かった。
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ある日の放課後、その少年…黒島太一は河川敷にいて、何かを探していた。
太一(…食べられる野草を探しておこう)
そんな時だった。
「何かお探し物ですか?」
太一「?」
誰かが声をかけてきたので、太一が振り向くとそこには4人のウマ娘がいた。そして真ん中にいたのがとても大人びて母性溢れるウマ娘だった。
太一「あなたは…」
「突然ごめんなさい。私、スーパークリークと言います」
太一「やはり…」
名前を聞いて太一は確信した。彼女、スーパークリークはトレセン学園のウマ娘の中でもベテランに入る方で、昨年のURAのレース『トゥインクル・シリーズ』でも優秀な成績を収めていたのだ。
そんな彼女が声をかけてくることに太一は不信感を抱いていた。
太一「…何か御用でしょうか」
「いや、アンタが何か探しとるから声をかけただけや。なんか落としたんか? うち、タマモクロスや」
クリークと一緒にいた小柄のウマ娘・タマモクロスも話しかけてきた。クリークとは同期で彼女もまた昨年のTSシリーズで活躍したベテランウマ娘である。
太一「いえ…」
タマモクロス「いや、それはおかしいやろ。それやったらずっとこんな所で…」
太一「食べられる草を探してました」
太一の言葉に空気が止まった。するとクリークとタマモクロスと一緒にいた白毛の女子生徒が困った顔をした。
「…確かに野草も美味しいが、トレセン学園は食事が支給される筈だ。もしかして寮の生徒じゃないのか?」
太一「……!?」
彼女の姿を見て太一は驚いていた。彼女の名前はオグリキャップで、笠松から中央に移籍しながらも昨年のTSで『年間ウマ娘』に輝いたウマ娘である。超有名人だった。
太一「…いえ、寮には住んでいますが、いつ食べられなくなるか分かりません」
「どういう事だ?」
タマモクロスと同じく小柄の女子生徒・イナリワンも反応した。彼女もクリーク達と同期である。
太一「…すみません。それ以上はお話しする事は出来ません。失礼します」
スーパークリーク「あっ…」
太一が去ろうとするとクリークが追いかけようとしたが、タマが止めた。
タマモクロス「アンタの名前だけでも教えてくれへんか」
太一「!」
タマモクロス「アンタ…見た感じここに来たばかりやろ。あんたみたいにでかい奴、嫌でも気づくわ」
太一「黒島です」
イナリワン「下の名前も教えてくれ」
太一「太一です」
スーパークリーク「黒島太一くんですね」
タマモクロス「ちなみに何年生なん?」
太一「4年生です」
イナリワン「あたいらより2個下か…。分かった、あまり遅くならねぇようにな!」
太一「はい。失礼します」
そう言って太一は去っていった。そして彼が見えなくなると4人は顔を合わせた。
タマモクロス「…怪しいな。あいつ」
スーパークリーク「怪しくはないですけど…栄養失調気味ですね」
オグリキャップ「そ、それは良くない。何とかしなければ…」
イナリワン「まあ待て。ここで焦ったらおしめえだ。にしてもあいつ、かなり暗そうな顔をしていたな…」
恐らく家庭環境に何かあったのだろうと察していたが、あまり首を突っ込むのも良くないと考えていた。
タマモクロス「こうなったら増田のおっちゃんに聞いてみよ。あのおっちゃん、何でもかんでも知っとるさかい」
タマモクロス達は後日、ベテラントレーナーの増田に相談する事にした。
***
「黒島くんですか? 僕が連れてきたんですよ」
タマモクロス「アンタが連れてきたんかいっ!!」
後日、増田のトレーナー室にて、タマモクロス達は本当に増田に相談しに行くと、増田が自分が連れてきた生徒だと明かしてタマモクロスが突っ込んだ。
イナリワン「連れてきた? 一体どういう事でぃ!?」
イナリワンの言葉に増田が4人を見つめた。
増田「元々彼は大阪に住んでいて、そこで射撃や将棋といった大会で優秀な成績を収めていたのです。ただ、家庭環境に問題がありまして…」
タマモクロス「やっぱりそうかいな…」
増田「ええ。彼が8歳の頃に両親が作り出した借金によって、両親共々漁船に乗せられたきり、戻ってこなくなりました」
「!」
思った他重い過去にタマモクロス達は慄然としていた。
増田「妹さんがいるのですが、彼女共々知人に預けられていましたが、そこでギリギリの生活を行っていたそうです。彼が地元で名を上げたのは賞金の為です」
タマモクロス「……!」
増田「そして稼いだ賞金を妹さんの為に使い、彼はいつしか感情そのものもなくしてしまい、自分を犠牲にするようになりました。正直言って、中学生がやるには危ない大会やバイトもするようになったんです」
スーパークリーク「……!!」
太一のあのやつれぶりを見ているので、増田の話は本当だと4人は判断した。
増田「僕が初めて彼に会い、トレセン学園に来ないかと話した時もお金や妹さんの心配をして離れたがらなかったんです」
イナリワン「まあ、そうだろうな…」
増田「妹さんの学費を一旦1年分僕が負担するという条件で、編入試験も受けてきてもらいましたが…」
オグリキャップ「…増田トレーナー」
増田「何でしょうか」
オグリキャップ「彼は…まともに食事をとっていないのか…?」
増田「ええ。最低限必要なもの以外は全て妹さんに使っているので。もっとも、寮の食事はきちんと取るように言いましたが、やはり自分の置かされて立場もあって心配なんでしょうね…」
増田がそういうと4人は何とも言えない気持ちになった。
つづく