ネイチャと出会い、現実を突きつけたテツマ。クラスメイトとの溝も深まらないまま放課後を迎えた。
テツマ「…このまま戻るか」
テツマは寮には暮らしておらず、そのまま家に帰ろうとしていたその時だった。
「いいじゃんか。オレ達と遊ぼうよ」
「イ・ヤ・だ!」
道中、トレセン学園の女子生徒3人が男たちに絡まれているのを目撃した。男たちはどう見てもヤバそうな風貌だった。
「チケゾー先輩…」
「もうケリ入れちゃいましょうよ!」
「ダ、ダメだよ! そんな事したら!」
チケゾーことウイニングチケットの後ろにいた2人のウマ娘の片方が蹴りを入れようと提案したが、チケットが止めた。
「そうそう。流石G1ウマ娘」
「いくら正当防衛って言っても、相手にケガさせたらアウトだし、ウマ娘の蹴りは凶器としてみなされてるからね~?」
と、あからさまに生物的には弱者なのに偉そうにしている男たち。
「これでもくらえ!」
ウイニングチケット「わっ!!」
男の一人がスプレーを取り出してチケット達に吹きかけると、チケット達の力が抜けた。
ウイニングチケット「ち、力が抜ける…!」
「へへへ。やっぱりウマ娘に効果覿面だなぁ」
「これさえあればもう怖くねぇぞ! 慰み者、いや…慰みウマ娘にしてやる…!」
ウイニングチケット「ア、アタシだけにして…! この子達には…」
その時、男たちはテツマの視線に気づいたが、テツマはスマホで撮影をしていた。
「な、何撮ってんだてめえ!!」
テツマ「おいおい。自分から死亡フラグ立てるなよ。そいつに後ろから押されて逃げ出すかもしれねぇぜ?」
そう言ってテツマはスマホをしまった。
「と、とにかくそのスマホをよこせ!!」
男たちが襲い掛かると、テツマは普通にブッ飛ばした。それを見てチケット達は唖然としていた。そしてテツマは男からスプレーを取り上げて、自分の制服にかけた。
「て、てめぇ…」
テツマ「正当防衛にはならないからお前の人生終わりだって? 生憎だが前科持ちなんでね。もう今更気にしちゃいねぇぜ」
「コラー!! 何をしてるかぁ!!」
警察官がやってくると、テツマはスプレーを建物と建物の隙間に投げると、男の胸ぐらをつかんだ。
「一体何をしてるんだ!!」
テツマ「決まってんだろ。弱い者いじめだよ」
「と、とにかく署まで来い!」
テツマ「その前にあの姉ちゃんたちを学園まで連れ戻さなくていいのか?」
「そんな事よりもお前を逮捕だ!!」
ウイニングチケット「た、逮捕!!? 違うよ! その人は…」
テツマ「諦めな。警察官にもノルマがあるらしいぜ。さ、行こうぜおまわりさん」
そう言ってテツマは警察に連行されていった。
*****
その夜。ネイチャは寮で落ち込んでいた。
『傷つくのが怖いなら、勝負の世界から降りろ』
テツマから言われた言葉がずっと頭の中から離れなかった。同期のトウカイテイオーみたいにクラシック三冠というでかい目標を持っているわけでもなければ、そんな度胸もない。そしてあの言葉にはこんな意味が含まれているとも思っていた。
お前は何しにこの学園に来たんだ? と。
ナイスネイチャ(そんなの分かってる。けど…)
ネイチャとしても言われた事はきちんと分かっていた。というかずっと前から分かっていた事である。大した度胸もないのに目立ってみたい、輝いてみたいという気持ちはあった。だから今日まで頑張ってきたのだ。しかし、あと一歩が踏み出せないでいた…。
そんな中だった。
「うわああああああああああああああああーん!!!!」
チケットの泣き声が聞こえてきた。
ナイスネイチャ「チケゾー先輩…? 相変わらず声でかいなぁ…」
チケットの声のでかさと泣き虫っぷりは学園中の皆が知っており、ネイチャもいつもの光景だと苦笑いしていた。
「一体どうしたんだチケゾー」
「うるさいんだけど」
チケットの親友でライバルであるビワハヤヒデとナリタタイシンの声も聞こえてきた。
ウイニングチケット「あたしのせいで肌が黒い男の子がおまわりさんに連れてかれちゃったよぉ~!!」
ナイスネイチャ「……?」
肌が黒い男という単語を聞いてネイチャはまさか…と思い、チケットの所に向かった。
ナイスネイチャ「あのう。チケゾー先輩…」
ウイニングチケット「ネイチャ…」
ナイスネイチャ「…さっき、肌の黒い男の人って言いました?」
ウイニングチケット「もしかして知ってるの!?」
ナイスネイチャ「どんな特徴だったか覚えてます? うちの制服着てませんでした?」
ウイニングチケット「うん。着てたよ! 黒髪で鼻も大きくて…身長はハヤヒデよりも大きかった!」
ナイスネイチャ(絶対あの人だ!!)
チケットから特徴を聞いて、ネイチャはテツマだと確信した。
ビワハヤヒデ「その顔は…ネイチャくん。詳しく聞かせて貰えるか?」
ナイスネイチャ「は、はい…」
ネイチャは今日起きた事を説明すると、タイシンとハヤヒデが顔を合わせた。
ナリタタイシン「…そういやアイツ、あたし達の間でも有名になってるよ。結構ヤバい奴だって」
ビワハヤヒデ「何故トレーナー科にいるのか理解できなくてな…」
タイシンとハヤヒデの話を聞いてネイチャもテツマの事を不良だと思っていた…。
ウイニングチケット「そ、そんな事ないよ! あたし達の事を助けてくれたもん!」
ナリタタイシン「…多分アンタ達を助けようと思って、ぶちのめしたんじゃないと思うよ?」
そんな話をしていると、他のウマ娘達もやってきた…。
************
その頃、テツマはというと誤認逮捕という事で釈放され、警察署から出てきた。一応警察から謝罪はあったのだが…。
「またお前か…」
という態度を取られたが、テツマはどうって事なかった。この部署は前にトップが不祥事でボーナスをカットされたからである。しかもテツマが帰った後で、次あいつに会ったら見逃すように指示があったという。
そんな中、増田が迎えに来ていた。
テツマ「アンタかい」
増田「ええ。来ましたよ」
増田の言葉にテツマは静かに目を閉じた。
テツマ「手間をかけさせたんだぜ。少しはキレてもいいんじゃねぇのか?」
増田「いえいえ。僕にはきちんと分かっていますから」
増田の言葉にテツマは鼻を鳴らした。
テツマ「…前にもこんな事があったな」
増田「そうですね。あ、そういえば彼女…風見くんのチームで頑張ってますよ」
テツマ「そうかい。あいつはオレや黒島と違って優しすぎるからな。その方がいいだろう」
そう言ってテツマは増田と共に警察署を後にした…。
テツマ「少し寄りたい場所がある」
増田「ええ…あるといいですね」
***
翌日、チケットが落ち込みながらハヤヒデ、タイシンと共に理事長室の近くを歩いていると、理事長室から増田とテツマが出てきたのを目撃した。
ウイニングチケット「あーっ!!!」
チケットの言葉に増田とテツマが振り向いた。
ウイニングチケット「君は昨日の!」
テツマ「…ああ。昨日の奴か」
ビワハヤヒデ「増田トレーナー。これは一体…」
増田「ええ。昨日の事件に関して理事長に事情を説明していた所です」
ナリタタイシン「…やっぱり謹慎とかあるの?」
ウイニングチケット「ええっ!?」
増田「いえいえ。まあ、相手に手を出したので反省文の提出はありますが…」
ウイニングチケット「うええええええええええん!! ごめんねえええええええええええええええええええ!!」
増田の言葉にチケットが哭いて謝るが、テツマは全く興味を示さなかった。
テツマ「じゃあオッサン。オレはもう行くぜ」
増田「いいんですか?」
テツマ「それこそ皆無事で何より。だろう?」
そう言ってテツマは去ろうとしたが、
ウイニングチケット「あ、ちょっと待って…」
チケットが呼び止めようとしたが、増田が止めた。
ウイニングチケット「増田トレーナー! どうして邪魔するの?」
増田「……」
******
ある日の実習。今度は選抜メンバーとの合同授業が行われることとなったが…。チケットもそのメンバーの一人だった。
そして授業が始まるやいなや、チケットがテツマに話しかけてきた。
ウイニングチケット「アタシとダシマカップ出よ!!」
「!!?」
チケットからの言葉に皆が驚いていたが、太一だけは分かっていたかのように振舞っていた。
テツマ「…あのオッサンの差し金か」
ウイニングチケット「一緒に出るウマ娘を探してたんだよね!?」
テツマ「ああ。それは合ってるぜ…」
ウイニングチケット「それだったらあたしと出ようよ! 自慢じゃないけど、2年前の日本ダービーにも勝ったんだよ!」
テツマ「今は?」
ウイニングチケット「今は…うーん…」
入着こそしているが、なかなか結果が出せずにいた。
ウイニングチケット「で、でもやるからには優勝目指すよ! ネイチャからも話は聞いてるから!!」
テツマ「ネイチャ? ああ、あいつか…」
テツマはネイチャの顔を思い出した。
「オレも良い考えだと思います」
太一が前に出ると、チケットとテツマが見た。
太一「一度練習を見てあげてはいかがでしょうか」
テツマ「トレーナーはどうしたんだよ」
ウイニングチケット「あ、そうそう! トレーナーさんにも相談したんだけど、君…。トレーナーさんの奥さんを助けたって聞いたよ!」
「!!?」
チケットの言葉に皆が驚いた。
ウイニングチケット「覚えてる!? 22番高架下で女の人を助けたの!」
チケットの言葉にテツマは考える仕草をした。
テツマ「…あぁ。そういや絡まれてたのは覚えてるな」
結果的に助けた事を認めたテツマにクラスメイト達はただの大口男じゃないと判断した。
だが、冤罪をかけられた男子生徒はまだ納得してなさそうにした。
ウイニングチケット「君の事を話したらOKだって言ってたし、今度会いたいって!」
テツマ「……」
こうしてテツマはチケットとチームを組むこととなった…。
つづく