悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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 今回は短めです。


94話 善意VS樹海

 鞭のようにしなり不規則な軌道を描いて襲い来る巨大な枝。刃物のように舞い散り飛び交う葉。砲弾のように撃ち込まれる木の実。突如地面から鋭い切先を向けて飛び出してくる槍のような根。一つ一つが致死の攻撃。

 

 それは、かつて入間が【オルクス大迷宮】のとある階層で戦った木の魔物に酷似していた。いわゆるトレントと呼ばれる魔物だ。もっとも、入間が相対したトレントに比べれば大きさが段違いであり、目の前で大暴れしているそれは直径十メートル高さ三十メートルはありそうな巨木である。

 

 そんな巨大トレントと相対するのは光輝、雫、鈴の三人だ。

 

 遂に最後のメンバーであるクララと合流し、周囲の樹々と比べ明らかにサイズの異なる巨木が鎮座している場所に辿り着いたのだが……その巨木が「この先に通りたければ我を倒していけ!」とでも言うように暴れ始めたのだ。それが、眼前のトレントである。

 今のところ成果が特にない光輝達が「こいつは俺達で倒す!」と飛び出し、まぁいいかとバビルは見物することにしたのだ。まぁ、回復役くらいは担ってやるが。

 

「ぐぅううっ。攻撃が重い!」

 

 それだけで丸太のような太さの枝が風を切り裂きながら迫り、光輝が聖剣でその一撃を受け止める。しかし、あまりの攻撃の重さに食いしばった歯の隙間から呻き声が漏れた。その表情には全く余裕がない。

 雫は手裏剣のように飛んでくる葉刃を捌くので手一杯だ。鈴も強力な障壁を張って、どうにか攻撃をしのぎ光輝が一撃を決める隙を作ろうと必死である。

 

「くっ、ダメね。鈴木くん達がいるから継戦能力は心配ないけれど……」

 

 音叉剣の切断力をフル活用し、次々と枝葉を切り裂きながら雫が押しきれないことに歯噛みした。

 大迷宮に入ってからというもの、今の雫達では死ぬだけだというかつての入間の言葉が身に染みる。入間達がいなければ雫達はとっくに全滅しているところだ。アークゼロやバダンでとっくに受け入れていたとはいえ、自分達が井の中の蛙であったことを改めて実感させられる。

 

 雫は少し悩んだあと光輝に向かって叫んだ。

 

「光輝!“神威”を使って!」

「なっ、ダメだ。詠唱が長すぎる!」

「大丈夫よ!私達が必ず守るから!信じて!」

 

 光輝は雫の提案にどうしたものかと悩んだ。

 目の前のトレントモドキは明らかに魔人族が引き連れていた魔物よりも強い。たった一体だけで攻撃方法もパターン的な上、入間による驚異的なバックアップがあるので何とか戦えているが、一瞬でも気を逸らせば即座に命を狩られかねない。そんな中、無防備を晒すのは並みの神経で出来ることではない。

 

 しかし、圧倒的な攻撃力不足に全くトレントモドキへ攻撃が届いていないことも確かであり、このままではいずれ何も出来ないまま敗北するのは目に見えていた。

 

 それに……

 

 光輝は入間とユエが再会した時のことを思い出す。

 姿が変わっても何ら変わることのない信頼関係。

 入間は一瞬で恋人の正体を見抜いたし、ユエも光輝に殺されかけながら動揺一つ見せなかった。正直、そんな風に信頼し合う二人に、そんな関係を築けていることに、嫉妬しなかったといえば嘘になる。

 

 故に、光輝は決断した。自分達にだって信頼関係はある。それは決して入間達に負けるものではないのだと、そう証明する為に。

 

「わかった。後を頼む!」

「ええ、任せなさい。鈴!固まって!」

「了解だよ!」

 

 光輝がその場で聖剣を頭上に掲げたまま微動だにしなくなった。口元だけは詠唱のためにブツブツと動いているが、意識は“神威”の発動に全て注がれているため無防備といっていい状態だ。

 その隙をトレントモドキが逃すはずもなく、左右から木の枝が、頭上から竜巻のように迫る葉刃が、木の実の砲弾が正面から、木の根が地面を隆起させながら下方から襲い来る。

 

「ここは聖域なりて、神敵を通さず!“聖絶”!」

 

 それを見越していた鈴が輝く障壁を張る。今まで何度も自分達の窮地を救ってきた十八番の障壁は、多大な衝撃にヒビを入れられながらも初撃の集中砲火を何とか凌ぎ切った。

 

「つぅうう!」

 

 連続して放たれるトレントモドキの攻撃に“聖絶”のヒビは大きくなり、やがて耐え切れず粉砕される。鈴の呻き声が響く中、急迫する攻撃を雫が必死に捌いた。

 

「っぁああ!」

 

 それでも、怒涛の攻撃に無傷でとはいかず、一瞬にして傷だらけとなる。悲鳴とも雄叫びともつかない声を上げながら持てる技の全てで迎撃する。捌ききれなかった攻撃によって傷ついた体から血飛沫が噴き出し宙に舞うが、それでも、ただの一撃も後ろへは通さない。

 

「“回天”」

 

 戦場に響くその一言で、雫達の傷は一瞬で癒えた。ミレディの回復魔法だ。

 鈴が再び障壁を張り数秒を稼いで、また破壊され、再び張り直すまで雫が体を張る。傷ついた体は香織が即座に癒し、また鈴が障壁を張る。それを繰り返すこと三度。

 

 遂に、光輝から膨大な魔力が迸り掲げる聖剣に収束していった。太陽のように燦然と輝く聖剣をグッと握り直し光輝は大きく息を吸う。

 そして、

 

「──みんな、行くぞ!“神威ッ”!!」

 

 自身の切り札たる最大の魔法を解き放った。

 光の奔流が射線上の地面を削り飛ばしながら爆進する。葉刃を吹き飛ばし、木の枝を消滅させ、木の実の砲撃を真正面から呑み込み、そして、トレントモドキに直撃した。

 

 轟音と共に光が爆ぜ、周囲を白に染め上げる。

 

「やったか!」

 

 光輝が会心の笑みを浮かべて叫ぶ。後方に控えて、ちょっとしたお菓子を頬張りながら観戦していた入間が、思わず「あ、フラグ立てちゃった……」と呟く。

 そのフラグはきっちり回収された。

 光が収まり粉塵が晴れた先には……無傷のトレントモドキの姿。

 

「うそ、だろ……」

 

 光輝の呆然とした声が虚しく虚空に響く。呆けているのは光輝だけではなかった。雫達もまた、光輝の切り札が通じなかったことに激しく動揺していた。

 トレントモドキは、そんな光輝達目掛けて殺意を滾らせると再び怒涛の攻撃を繰り出した。

 

 “神威”──それは、読んで字の如く勇者の切り札にふさわしい威力を持った最上級の攻撃魔法だ。

 まだ、この世界に来たばかりの頃の光輝ならいざ知らず、レベルも上がり、それなりの戦闘経験を積んできた今なら大抵の敵を屠れる必殺技だった。

 しかし、それを受けたトレントモドキは無傷で粉塵の奥から現れた。

 心の何処かで、光輝は“自分なら出来る”、“自分なら大丈夫”だと思っていた。

 何故なら、()()()()()()()()なのだ。大迷宮攻略は。

 なら、自分に出来ないはずがない。

 だが、現実は非情だ。切り札をもってしても、自分の力は大迷宮の魔物には及ばないのか……。いや、そんなことあるはずかまない。これはきっと何かの間違いだ!

 光輝がそうやって心の中で必死に現実を否定していると、傍らの雫が声を張り上げた。

 

「光輝、あれを見て! 直撃していなかったのよ!」

「えっ?」

 

 光輝が雫の視線を辿ると、そこには木っ端微塵になった大量の樹々が散乱していた。どうやら光輝の放った“神威”はトレントモドキに直撃することなく、その手前で大量の樹々にぶつかり防がれたようである。

 直前まで何もなかったはずなのに、一体どこからそんな大量の樹々が現れたのか……そんな光輝達の抱いた疑問は、直後、トレントモドキ自身によって回答された。

 

 トレントモドキが淡くその巨木を輝かせると同時に、根元付近から外へ広がるように大量の樹々が物凄い勢いで生えてきたのである。

 

「……固有魔法」

 

 そう呟いたのは鈴だ。その見解は正しく、トレントモドキの固有魔法“樹海現界”は、大量の樹々を生み出しそれを自由に操れるという能力なのである。

 

「ま、まずいよ!聖域にて神敵を通さず!“聖絶”!」

 

 一瞬呆けた鈴だったが、直ぐに状況の不味さに気が付いて詠唱省略した“聖絶”を発動した。光り輝く障壁が鈴達を中心に展開されるのと、全方位から攻撃が殺到したのは同時だった。

 先端を槍のように尖らせた枝や木の根が“聖絶”に次々と激しい衝撃を与える。

 

 トレントモドキだけでなく、生み出された周囲の樹々からも繰り出される同様の攻撃は視界の全てを樹々で埋め尽くし、まるで物量で圧殺しようとしているかのようだ。

 到底、詠唱省略版の“聖絶”では堪えきれない。実際、既に至る所がヒビ割れており、もう数秒も持ちそうになかった。そして、鈴の障壁が砕かれたとき、果たして彼女が再び“聖絶”を発動するまで光輝達は持ち堪えられるのか……出来ると判断するのは楽観が過ぎるというものだろう。

 

「もう……ダメ……」

 

 鈴が、とんでもない勢いで消費されていく魔力に歯噛みしながら障壁が破られると伝える。

 光輝はそんな鈴を見て「こうなったら“限界突破”を使って切り抜けるしかない!」と覚悟を決めた。大迷宮に入って、こんな序盤で切り札を二枚も切らされるとはとんだ誤算ではあるが、自分の認識が甘かったのだと割り切るしかない。

 

 しかし、そんな光輝の内心を察したように後方より援護が飛んできた。

 

「世話が焼けるなぁ……“刻永”」

 

 ミレディが発動した再生魔法“刻永”は、有機物・無機物を問わず対象を一定時間の間、一秒ごとに一秒前の状態に再生し続けるという魔法だ。

 

 光が鈴の展開する今にも壊れそうな“聖絶”を包み込み、一拍の後、まるで何事もなかったかのように最高位防御魔法の威容を取り戻させた。トレントモドキ達の怒涛の攻撃により亀裂が入っても直後には元に戻っている。一秒ごとに“聖絶”そのものが再生しているのだ。

 

「ふわっ、ミレディさん!ありがとぉ!」

 

 鈴が障壁を維持しつつ、背後を振り返ってミレディに大声で礼を言う。光輝達もひとまず窮地を脱したと強ばっていた体を僅かに弛緩させ鈴と同じく背後を振り返った。

 

 そこには、光輝達と同じくトレントモドキが生み出した大量の樹々に囲まれ一斉攻撃を受けているにもかかわらず、何の気負いもなさそうな雰囲気で佇む入間達の姿があった。

 その入間の周囲には、足元から樹木の根を生やしたドーム状結界が張られていた。空間魔法と複合させたことで更に硬度を増した空間遮断型の“保護繭(グラン・ココン)”である。

 再生魔法を掛けられているわけでもないのにトレントモドキ達の攻撃にも揺らぐ気配すらない。あらゆる攻撃を全く寄せ付けず全て弾き返す有様は、まるで難攻不落の城壁のようだ。

 

「そろそろ限界っぽいね。まぁ、彼等の実力を鑑みれば、あまり期待してなかったけど……」

「す、鈴木君。少し言いすぎですよ……」

 

 入間が、自分達の方を振り返って複雑そうな表情をしている光輝を見返しながら呟くと、愛子が頬をひきつらせる。

 

「う~ん、あの勇者さんが“限界突破”を使えば、いけるんじゃありませんか?」

「どうだろうな。まぁ、限界突破の派生技でも発動すればあるいはいけそうだが……」

「ですが会長。それではあの男が弱体化してしまいますからね。普通の回復では治せないから問題ですよ」

『……再生魔法なら治せるかもだけど』

「消費が大きいから余り使いたくないよね。問題はここからなんだし……」

『?ミレりん、疲れたの?お菓子食べる?』

『いや、クララさん。そう言うことじゃないと思うんですが』

『ふむ。他の大迷宮の攻略を前提としたハルツィナは、ミレディでも苦戦するほど難易度が高いと言う事じゃな……では、勇者の坊やが使ってしまう前に片付けてしまうのがいいかのぅ』

「それじゃあ、私達でやりますか?」

 

 果たして、このまま進めたとして大迷宮は光輝達を攻略者と認めてくれるのだろうかと入間は頭を悩ます。光輝達が神代魔法を手に入れられなかったとししても、それは彼等の問題なのでどうでもいいのだが、そうなると次の迷宮こそは!とでも言ってシュネー雪原の迷宮にも着いてきそうな気がする。元々、光輝達の同行を許したのはハルツィナ樹海だけなのだが、光輝あたりはその言葉をなかった事にしそうである。

 

 この先、何があるかわからない以上、無闇に神代魔法を連発して魔力を大量消費するのは望ましくない。魔晶石による魔力のストックがあるとはいえ、今はユエとティオとクララと優花が戦力外となっておりいつ元に戻れるのかわからない以上、余裕をかまして足元をすくわれるわけにはいかないのだ。

 

『ご主人様よ、何を悩んでいるのか大体わかるがの、戦闘での成果は余り意識せんでも良いのではないかと思うのじゃ』

「うん?どういう事?大迷宮のコンセプトのこと?」

 

 頭を捻る入間にゴブティオが助言する。度し難い変態ではあるが知識も思慮も深い彼女の言葉はとても価値が有る。どうしようもない変態ではあるが。

 

『うむ。おそらくじゃが、ハルツィナは“絆”を試しておるんじゃろう』

「絆……そう言えば、入口の石版にもその言葉はあったな」

『そうじゃ。あれは単に亜人族による大樹までの案内だけでなく、攻略において絆を試すという意味でもあったのではなかろうか。仲間の偽物を見抜くこと、変わり果てた仲間を受け入れること、まさに“紡がれた絆”が試されているように思うがの。違うかの、ミレディよ?』

 

 水を向けられたミレディは、参ったというような表情で答えた。

 

「大正解だよ。戦闘は誰が勝利しても問題ない。勿論、攻略するためには一定の実力も必要だけど……この先に待っている“絆を試す試練”を乗り切れば、彼等も神代魔法を習得できる」

 

 創設者の一人の言葉を聞いて、入間は納得する。

 次いで、入間ははゴブティオをチラリと見てもう一度嘆息した。今のように、ティオは時折、鋭い考察を行ったり含蓄のある助言をしたりと自分達より遥かに長く生きた者を感じさせることがある。高潔で敬意を払うべき種族であると思わせるのだ。

 本来の彼女は思慮深く思いやりがあり、そして強いと、まさにユエが憧れた竜人族の素質を完璧に備えている。その外見の美しさと相まって男なら誰でも意識せずにはいられない魅力的な女性なのだ。

 

 だというのに、中身は既に手遅れ確定のド変態……

 

 「やっぱり、僕のせいなのだろうか?」と入間は内心で頭を抱えた。そして、物凄く残念なものを見るような眼差しをゴブティオに向ける。

 

『む?なにやらご主人様から哀れみに満ちた眼差しを感じるのじゃ。……はぁはぁ、これはこれで……既に妾はご主人様なら何でも良いのかもしれん!』

「……イルくん。ミレディさんね、時々本気で責任とった方が良いと思うんだ」

「……真面目に考えるよ」

 

 ゴブリン姿で身をくねらせるティオは激しく気持ち悪かった。

 入間は、“保護繭”と鈴の“聖絶”が破れないことに業を煮やし、更に樹々を生成しながら間断なき攻撃を加えてくるトレントモドキを一瞥する。周囲は既に視界の全てが埋め尽くされるほど、うねる樹々で溢れかえっていた。

 

「折角だし、新しい力を試してみようかな」

 

 そう言った入間はジクウドライバーを腰に巻き、ジオウウォッチと、白と金で彩られたウォッチ──“ゼインライドウォッチ”を取り出し、ベゼルを回した。

 入間はベルトにウォッチをセットし、ロックを外すと、ドライバーを回転させる。

 

 

ジオウ!

 

ゼイン!

 

 

「変身!」

 

 

アーマータイム!

 

ゼインライズ!ゼインーッ!

 

 

 ゼインを模した白いそう言ったに身を包み、ゼインプログライズキーを模したアーマーを両肩に装備し、複眼には「ゼイン」という文字が書かれた姿──【仮面ライダージオウ・ゼインアーマー】に変身した。

 

「これは、どんな力があるのか……!?」

 

 姿を変えたジオウが呟いた時、天空からカブトムシのようにも見える大剣の形をしたゼクター──“パーフェクトゼクター”が飛来し、ジオウの手に収まった。

 

「……あぁ。そういうこと?」

 

 納得したジオウは、前方で周囲三百六十度からの一斉攻撃を凌いでいる鈴に、念のため念話石で障壁を解かないように忠告する。

 

『谷口さん。今から全部吹き飛ばす。死にたくなかったら絶対に結界を解かないでね』

「え?」

 

 突然の念話に、思わず素の声で呆けた返事をする鈴。光輝達が訝しげな表情を鈴に向けるが、その表情は直ぐに唖然としたものに変わることになった。

 

 

KABUTO THEBEE

DRAKE SASWORD POWER

 

 

 三つのゼクターがパーフェクトゼクターに合体され、ジオウが柄のボタンを押すと、黄金のエネルギーが銃口に蓄積されて行き、ジオウは引き金を引いた。

 

 

All ZECTOR CONBINE!

 

MAXIMUM HYPER CYCIONE!!

 

 

 銃口から赤い竜巻状の超巨大エネルギーが発射され、一瞬にしてトレントモドキを呑み込んだ。トレントモドキ達はなすすべなく瞬時に滅ぼされていく。声帯などないはずなのに、彼等の断末魔の絶叫が聞こえてくるようだ。

 

 発射されたエネルギーの渦が敵を巻き込みながら遥か地平線まで飛んでいき、その向こう側で発射地点から視認できるほどの極大爆発を巻き起こす。日常では決してありえない光景だ。今、結界の外に出れば間違いなく唯の炭化した物体に……いや、消し炭すら残らないかもしれない。

 

「全ての仮面ライダーの力を扱えるアーマーなんだね。これは良いかも……」

「鈴木君。納得してるところ悪いんですが、やりすぎでは……?」

「ホントにイルくん規格外すぎない?あんな威力、ミレディさんでも全力でないと出来ないよ?」

『……鈴木。アンタ少しはオーバーキルを控えなさいよ。いくらなんでも魔物の方が可愛そうじゃない』

「逆に滅茶苦茶ゆらかす方がイルマらしいと思えている自分自身が不思議だ」

『イルマち、ドッカーンしてて面白かったね!!』

「まいりました、イルマ様!!」

「入間さんのいるところに破壊あり……父様達が見ていたら喜々として新しい二つ名を考えそうですよね」

『……自重しない入間……素敵』

『同意するぞ、ユエよ。容赦のないご主人様……濡れるのじゃ』

「イルマ先輩、スゴいです」

 

 入間が変身を解除し、どこか疲れた目をして脱力している光輝達のもとへ歩きながら、どこか困った人を見るような眼差しを向ける愛子、優花、ミレディ、アメリ。しかし、それ以外のメンバーは、むしろ「流石入間」「入間はこうでなければ」と、どこか満足気な表情をして、うんうんと頷いている。

 

「鈴木君……さっきのは……いえ、何でもないわ。これまでも城を一撃で真っ二つにしたり、ミサイルやバズーカを乱射したりしてたもの。これくらい彼にとって普通のことなのよ。だから、しっかりするのよ、私……」

「大丈夫だよ、シズシズ。未だに鈴も現実逃避したくなる時があるけど、でも、その内慣れるよ。だから大丈夫」

 

 傍らの光輝達が、それは本当に大丈夫なのだろうかと物凄く微妙な顔をする。同時に、光輝は入間に視線を移してギュッと唇を噛み締めた。

 

 自分が切り札を使っても倒しきれなかった相手を、入間はまるで片手間のように片付けてしまった。ここには、その差を覆すためにやって来たのだと自分に言い聞かせても、助けられっぱなしで果たして神代魔法は手に入るのか……そんな不安が心の内から湧き上がってくる。

 ネガティブな考えを振り払うように入間から視線を逸らして頭を振った光輝は、背後でメキメキッという音が響いたことにハッとして慌てて振り返った。

 

「再生している?」

 

 光輝の言葉通り、そこには炭化した地面から地響きを立てながら生えてきて急速に成長する巨木の姿があった。あっという間に成長したそれは先のトレントモドキそっくりである。まさに“再生した”といった感じだ。

 

 身構える光輝達だったが再生したトレントモドキは特に襲いかかるでもなく、しばらく佇むと大樹の時と同じように洞を作り始めた。幹が裂けるように左右に割れて中に空間が出来上がる。

 

「中ボスっぽいなとは思っていたけど、次のステージに行く扉でもあったんだね」

 

 入間は納得したように頷き躊躇うことなく洞に向けて歩みを進めた。その後をユエ達も付いて行く。身構えていた光輝達も構えを解いて慌てて追随した。

 洞の中は特に何の特徴もない空間だった。しかし、全員が中に入った直後、やはりと言うべきか洞の入口が勝手に閉じていきほぼ同時に足元が輝きだした。

 

「また転移だね……」

 

 大樹の入口とほぼ同じ魔法陣の発動に、入間は呟きながら傍にいたユエゴブとゴブティオ、優花コボルトをグッと抱き寄せた。その傍らでは、アスモデウスがクラファルファルを抱き上げている。抱き締めた所で転移陣が引き離そうとするなら抗えない可能性の方が大きかったが何もしないよりはいい。

四人は現在戦えないのだから、ちょっとしたことが致命傷になりかねないのだ。些細なことでも出来ることはしておきたい。ここまで来て、今更四人を失うなど有り得ないことだ。

 

『……入間』

『ご、ご主人様……うぅ、優しくされると反応に困るのじゃ』

『す、すすす鈴木!アンタいきなりッ!?』

『うぅ~!アズアズ~。恥ずかしいよぉ~~』

 

 そんな入間の心配する気持ちが伝わったのか、四人は見る者が見れば明らかに喜んでいると分かる雰囲気を漂わせる。ティオの方は珍しく、素で照れてもいるようだ。

 

 愛子が羨ましそうにチラチラとユエゴブ達と入間に視線を向け、アメリ、シア、ミレディ、チマが「あ、私も~」と入間に抱きつこうとして飛びかかったが……

 その試みは一歩遅かった。入間の視界は4人が手を伸ばして向かってくる光景を最後に莫大な光によって塗りつぶされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな光景を、木の影から眺めていた白服の男は、片手に持って開いていた本をパタンッと閉じると、一つの物体を取り出した。

 黒い懐中時計に似たアイテム──“ブランクライドウォッチ”を眺めていると、そのウォッチに紫色の時計のようなエフェクトが浮かび、そのエフェクトの長身が回転すると、光と共にブランクライドウォッチの姿が変化した。

 

 

ゼインッ!

 

 

 白を基調とした怪物の顔が描かれた時計──アナザーウォッチを見つめ、青年は笑みを浮かべた。




▪︎ライダー紹介

仮面ライダージオウ・ゼインアーマー

【概要】
 ジオウがゼインライドウォッチを使い変身した姿。
 高い格闘能力の他に、一号からギーツⅨまでの仮面ライダーの武器を召喚・特殊能力の行使を行える能力を有している。まだ、ゼイン本来のラーニング能力と時間停止能力を兼ね備えている。


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