サブタイトルの元ネタは仮面ライダーゼロワン第15話『ソレゾレの終わり』からです。
背中と後頭部に当たる冷たく硬い感触と乾いた空気。それを感じて、僅かに微睡んでいた入間の意識は急速に浮上すると、聞き馴染んだ声が聞こえた。
「っ……ここは……」
「イル坊!やっと起きたか」
「アリさん?」
その声は、いつの間にか指輪から飛び出していたアリクレッドであった。
「まったく、どんだけ寝てんだよ。俺ちんが精神世界に入り込んで起こそうとしたってのに、のんきにグースカ眠り込んでよ」
「ご、ごめん。ちょっと破るのに時間かかって……」
呆れ顔のアリクレッドの言葉に苦笑いしつつ、入間は辺りを見渡した。
光源は一切なく真っ暗闇だった為、トランスチームガンにライトボトルを装填して擬似的な光源を作り出してそれを天井に打ち出す。その結果、どうやら気を失う寸前に入った巨樹の洞と同じような、されど二回りは大きい場所にいるらしいと分かった。
ただ、一点だけ決定的に異なる点がある。それは部屋の中に異物があることだ。ドーム状の空間の中に規則正しく円状に置かれているそれは、長方形型の物体で透明感のある黄褐色をしていた。大きさは人一人がすっぽり入れるくらい。入間は、まるで柩のようだと思った。
入間が目を覚ました場所は円周に並ぶそれらの一つのようだ。黄褐色の部分だけがなくなっている。部屋の中央は特に何もない。周囲の壁にも出入り口らしきものは一切なかった。
入間は両サイドに並ぶ柩のようなそれに視線を向け、僅かに迷ったあと右側のそれに歩み寄った。
「っ。これは……まるで琥珀だね」
思わず息を呑んだ入間の視線の先にはシアがいた。
入間自身が称したように、まるで琥珀の中に閉じ込められた太古の虫のように黄褐色の柩の中に横たわって目を閉じている。
一瞬、死んでいるのかと焦りを覚えた入間だったが、意識を集中するとしっかりとシアの鼓動が感じ取れる。自分が目を覚ました場所のことも考えると、おそらく自分も、ついさっきまで琥珀の中にいたのだろうと推測できたので、どうにか冷静さを保つことができた。
部屋の中には全部で九つの琥珀が安置されている。それらを一つ一つ確認すれば、案の定、他のメンバー達が閉じ込められていた。おそらく、トレントモドキの洞から転移し、そのまま琥珀の中に閉じ込められたのだろう。
先程まで見ていた泡沫の夢、あるいは甘い蜜で誘い一度捉えれば二度と離さない食虫植物の如き仮初の世界を、きっと他のメンバー達も見させられているに違いない。そして、あの世界から脱出できれば、現実において目の前の琥珀から解放されるのだろう。
入間は、ユエが閉じ込められている琥珀を見つめながら現状をそう結論づけた。
「そういえば、アリさんはどうして僕の世界に現れたの?」
「あん?そりゃお前、イル坊達が転移してあの琥珀に閉じ込められてから、どうにかイル坊の意識の中に潜り込んだんだよ。まぁ、人の意識に入り込むなんて俺ちんも初めてだったから、直ぐに引き戻されちまったんだけどよぉ~」
「アリさんは、理想の世界に閉じ込められなかったの?」
「俺ちんは指輪の化身的な存在……言っちまえば意思のあるアーティファクトみたいなもんだからなぁ~。大迷宮も俺ちんをそう判断したんじゃねーの?」
「その節が一番有力だね……まぁ、何にせよ、ユエ達も戻っているようで何よりだよ。後は、自力で戻って来られるかだけど……問題ないか」
入間の言葉通り、琥珀の中のユエ、ティオ、クララ、優花は魔物の姿ではなく元の美しい姿だった。これも推測だが、あのステージをクリアすれば自動的に戻ることになっていたのだろう。
入間はたとえどんな姿だろうと、それがユエであるなら全力で愛せる自信はあったが、やはり見慣れた元の姿が一番だ。
入間はユエの琥珀の傍らに腰を下ろすと、目を閉じて横たわる愛しい恋人にそっと手を伸ばした。もちろん琥珀に阻まれて手は届かないが、それでもユエの顔をなぞる様に手を這わせる。
「早く戻って来てね、ユエ。今、無性に君の声が聞きたいんだ……」
「おやおや~。熱々だねぇ」
「当然、恋人だもん」
「おっと。アワアワすんのかと思ったらサッと惚気てくるとはねぇ。毎晩盛りのついた猿みたいに腰振ってりゃそうなるか」
「何で人の夜の楽しみを見てるの!?」
「おいおい、俺ちんはみせられた側だぞ?」
アリクレッドとバカな会話をしつつ、力尽くで琥珀を打ち破ってやろうかと物騒な発想が脳裏をよぎったが、それで解放できても、おそらく試練は失敗判定を受けるだろうと考え入間は破壊衝動をグッと抑えた。
その時、ユエの琥珀が仄かな光を放ち始めた入間は触れていた手を放して一歩距離をとり、アリクレッドが指輪の中に戻っていくのを確認してから、その変化を見守る。
琥珀は放っていた光を徐々に収めていくと、次に端から順にトロリと溶け始めた。溶けた琥珀は、そのまま地面に吸い込まれるように消えていく。五分もしない内にユエを覆っていた琥珀は完全に消えてしまった。
静かに横たわるユエの胸が呼吸で上下していることを確認して、僅かに残っていた緊張を解いた入間は直ぐにユエに駆け寄りそっと抱え上げた。いつまでも冷たい場所に寝かせておきたくなかった……というか、ぶっちゃけさっさと抱き締めたかったのである。
入間がユエを横抱きに抱えながら顔に掛かった髪を払い除けていると、ユエの長いまつ毛が目蓋と共にふるふると震え始めた。そして、ゆっくりと目を開ける。
「ユエ……調子はどう?」
「……ん、入間?」
「うん、僕だよ」
ユエは少しボーとしているようだったが、その視線は僅かたりとも入間からそれたりはしなかった。完全に意識が覚醒した後も一心不乱に入間を見つめている。
「……本物の入間?」
「何でそんなことを聞くのか何となく理由はわかるけど……それはユエが判断してくれればいいよ。今、目の前にいる僕がユエにとって本物か。それとも偽物か」
きっとユエが見させられた夢の中に偽者の入間が出てきたのだろう。そのことに、理想を映したあの仮初の世界に自分が登場したことに、入間は嬉しさを感じつつ判断をユエに任せた。
「ちなみに、僕は今、自分の腕の中にいるユエが正真正銘、本物のユエだと確信してるよ」
入間の言葉に、ユエは一瞬、キョトンとした表情をするものの直ぐにその意味を悟り微笑みを浮かべた。入間もまた、夢の中で偽物の自分と出会ったのだと言うことがわかり、理想世界の中に自分がいることが嬉しかったのだ。ユエの目尻が下がり、口元が柔らかく弧を描く。実に嬉しそうな笑みだ。
「……どうしてそう思うの?」
ユエは、その理由はわかっていたが敢えて聞いてみた。たとえ心で通じていても、愛しい人から言葉にしてもらうのは嬉しいことだ。大切な事でもある。
入間もまた、そんなユエの心情が手に取るように分かった。なので肩を竦めつつ、あっさり答える。
「違和感を何も感じないから、かな。……僕の心の深いところで、君が君だってことを教えてくれている」
「ふふ……私も、私の深いところが、今、私を抱いている人が入間だって言ってる。さっきの質問は忘れて?」
「まぁ、寝起きだしね」
再び肩を竦める入間にユエは更に目元を緩めると、そのまま入間の首筋に腕を回してギュッと抱きついた。入間も、そんなユエをギュッと抱き締め返す。
入間の脳裏に、「俺ちんがいるのに秒でイチャつきやがったよ」と呆れ顔をするアリクレッドが浮かんだが、無視した。
──ゴホンッ!
「……そっちの私はどうだった?」
「ユエと過ごす学校生活が最高だった」
入間の夢の中の自分がどんなだったのか、それを聞いたユエに返ってきたのは思いがけない感想。それだけで、入間がどんな世界を見ていたのか理解したユエはクスリと小さな笑い声を上げた。
「……じゃあ、家での過ごし方は?どんな格好してた?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「……予習しておきたい、入間の好み」
「…………………黙秘します」
「……フフっ。入間~、どんな格好させたのか教えて?
「ウグッ!………学校の制服とか……ネグリジェとか……後はドレスとか悪ドル風のヒラヒラのフワフワとか……」
「ふぅ~ん、そういうのが良いんだ……わかった」
「ユエ!?」
「……入間の理想の衣装、いつか全部着てあげる」
「~~ッ!!ユ、ユエの方は!?」
──ウオッホン!
自分の首筋に顔を埋め、触れる程度のキスを繰り返すユエに、入間はユエの悪魔的な誘惑にかおを赤くしながら聞き返す。
「……礼服と玉座が死ぬほど似合ってた」
「何故、玉座?」
「くふふ……王妃スタートだった。既に子供は十二人いた」
「進みすぎじゃない!?というか子供の数が二桁って大家族すぎるよ!!?」
思わず体を離し、驚愕の眼差しをユエに向ける入間。
ユエはキスで湿った唇にペロリと舌を這わせ、艶やかな眼差しで入間を見つめる。色気たっぷりの眼差しと吐息に入間の心臓が跳ねた。どんな魔物から奇襲を受けても乱れない自信のある精神が容易くグラつく。
「……ふふ、期待してる」
「っ……はぁ、やっぱりユエには一生敵いそうないな」
──ゴホッエッホン!!
入間は悪戯っぽく微笑みながら、瞳の奥に本気を感じさせる光を宿したユエに見つめられて降参するように天を仰いだ。そして、これこそ俺のユエだと改めて実感する。入間は高ぶる気持ちのまま片手をユエの後頭部に、もう片手を腰に這わせグッと抱き寄せた。
入間が何を求めているのか察したユエは自身が求めていたこともあり、スッと目を閉じて顎を上げた。薔薇色に染まった頬が途轍もなく可憐で、魅惑的な唇からチロチロと覗く鮮やかな色合いの舌はひどく艶かしい。
既に言葉はなく、ただお互いが求めるままに唇を重ねようと近づいていく二人の距離。それが、十センチ、五センチと近づいていき、遂にゼロになるという瞬間、
「ウゴッツクエッェヘンゴホッガハッツトブエックショイッ!!!!」
「──あ?」
「──ん?」
先程から、何となく聞こえていた気がしないでもない異音が耳元で怪音になったことで流石にスルー出来なくなった入間とユエが至近距離で顔を見合わせる。そして、同時に怪音のした方へ視線を巡らせた。
すると、そこには……
「あっ!ミレディさんは気にしなくて良いから、そのままブチュッといっちゃって良いからね☆」
“コブラケータイ”を手にし、それに備えられたカメラ機能をオンにして、それをこちらに向けているミレディの姿があった。
その隣には……
「うっく、ぐすっ、どうせ…私はいらない子なんですぅ……頑張って現実に戻って来たのに…いきなり空気だし…ひっく……気を遣って咳払いで存在をアピールしたのに……うぅ…ぐすっ…それすら……現実はいつだって非情なんですぅ~」
ウサミミを萎れさせ、泣きべそを掻くシアの姿があった。目尻に溜まる雫が何とも哀れを誘う。どうやらユエが起きたすぐ後にシアとミレディも起きたようだったのだが、入間もユエも互いのことしか見ていなかったので全く気が付いていなかったのは不覚である。
完全にネガティブ思考になってしまったシアを、入間とユエは二人がかりで宥めにかかった。特に、入間が自らシアを抱き寄せてギュゥウウとキツく抱き締めた甲斐あってか、寂しがりのウサギは何とか精神を立て直した。今は、二人にウサミミやほっぺをモフられて嬉しそうにウサシッポをパタパタさせている。
入間は、二人がどんな世界を見たのか聞いたところによると、シアハウリア族が死なずに済んだ世界で入間達と幸せな日常を送るというものを見させられたらしい。
そしてミレディは、オスカー達解放者も生きていて、入間達と共に神を打ち倒して作ることが出来た平和な世界で過ごすという世界を見ていたらしい。
そしてユエの方にも改めて聞いてみると、かつての国が滅びず、裏切りもなく、入間を婿に迎えて子供をもうけたという夢だったらしい。
「僕は最初から仮面ライダーになることもなく、この世界に召喚されず、平和な日常の中でユエやシア達と過ごしていくって夢だった。……おそらく、過去に受けた大きな苦痛を伴う出来事をなかったことにして、その上で今ある幸せを組み込んだ世界を見させられるって感じなんだろう」
「なるほど……確かに、それはある意味理想的な世界と言えなくもないですね」
「……シアとミレディはどうやって?」
どうやって理想世界から抜け出したのかという質問に、二人はにこやかに笑いながら返す。
「それは勿論、今の自分を否定するなんて出来ませんし、したくありませんでしたから。こんな世界嫌だぁー!家族を利用しやがって、ふざけんなーーって」
「……なるほど」
「そっか」
納得顔のユエ。入間もどこか優しい表情で頷く。
「夢の中では、家族が追われる前に入間さん達と出会っていた上に一緒に暮らしていることになってましたからね。私はただ守られているだけで良かった。でも、そうじゃない!そんな弱さを許容するような生き方であの人達の傍にいられるわけ無い!って、心の奥が叫ぶんです。守ってやるって言ってくれる入間さんや、心配しないでって抱き締めてくれるユエさんは……確かに甘やかで優しくて、心地よいものではありました。だけど、そう言われれば言われるほど違和感は広がって……気が付けば戦うことを選択してました。入間さん達の隣で」
「それで戻ってこれたわけか……」
「はい!これからも、私は入間さんやユエさんの背中を見るのではなく横に並んでいたいですからね。たとえ、その道が痛みや苦しみを背負うものであったとしても」
そう言って、ニッと笑うシアを見て本当に逞しくなったなぁと入間は感慨に耽った。
出会った当初は、強者にすがるしか出来なかった負け犬の一人に過ぎなかったというに変われば変わるものである。その理由が、入間達と一緒にいたい、並び立ちたいというものなのだから、もう何とも言えない。特に、入間に対しては愛ゆえに、である。
「じゃあ、ミレディは?」
「シアちゃんとおんなじだよ。オーくんやイルくんはそんなこと言わない!ってね」
「辛くはなかった?」
仲間を集め神を挑んだが届かず、次の世代に託すしか出来なかったミレディ達“解放者”。他の6人は既に亡くなり、一人だけゴーレムに魂を移すことで生き残ってしまってから、何千年も孤独に生きてきたミレディにとって、その仲間達と過ごせる日々を夢と割りきるのは辛くなかったのかと尋ねると、ミレディは肩を竦めながら答える。
「そりゃあ、何千年ぶりにオーくん達と会えたのは嬉しかったし、これが現実だったらどれだけ良いんだろうって思ったよ……でも、私達は試練を課した張本人だよ?理想通りのオーくん達に絆される程、ミレディさんはチョロくはないよ。それにしても、リューちゃんのアホみたいな提案がまさかあそこまで強力だったとはね~。ここまで激ムズな試練をアッサリと創れてしまうミレディさんの完璧ぶりには参っちゃうぜ☆」
最後の台詞はいつものようにとびきりウザイ声色の自画自賛ながらも、入間達は改めて、ミレディ・ライセンという女の強さに感嘆する。口でいうのは簡単かもしれないが、何千年も前に永遠の別れをした仲間と再会というのは、そう簡単に決別をすることが出来ない。もしも常人ならば、例えそれが夢だとわかったとしても抜け出せることはないだろう。しかし、ミレディは死んだ仲間達としっかり向き合い、そして今度は入間達の仲間として前に進もうとしているのだ。
入間は、そんな逞しい二人に確かな愛情が湧き上がってくるのを感じて、二人の腰に手を回して抱き寄せる。傍らのユエが、そんな入間の心情を察しているのか慈しむような表情をしている。
「ふぇ、えっと、入間さん?」
「イ、イル君?ミレディさんが魅力的すぎるのは分かるけど、これはちょっと大胆すぎるというか~……」
「……おかえり、二人とも」
「あ……はぃ、ただいまですぅ……」
「うん……ただいま」
お前の帰る場所は僕の傍だという言葉に、言葉にせずともそう言われた気がして、シアとミレディは一瞬呆けるものの直ぐに照れくさそうな、しかし、これ以上ないほど幸せそうな笑顔を浮かべて入間に抱きついた。
再び琥珀のうちの二つが淡く輝き出した。甘い誘惑の夢という名の牢獄を打ち破り現実へと帰って来たようだ。
「あの琥珀は……確か」
入間が、その琥珀に入っていた人物を思い出して呟く。
と、同時に、
「ぬがぁー!!ご主人様の折檻はそんなに生温くないわァーー!一から出直して来るんじゃな!」
「「「「……」」」」
そう言って寝起きそうそう空中に拳を振るうその人物は、言うまでもなくティオである。
その発言から大体どんな夢を見ていたのか察した入間達は、思わず無言となり蔑んだ眼差しを向けた。特に、自分のことを言われている入間は既にゴミを見るような眼差しである。
その視線を受けてティオの背筋がブルリと震えた。
同時に、もう一つの琥珀の中にいたアメリが、頭をふるふると振りながら起き上がった。何故か入間、ユエ、シア、ミレディが侮蔑の目を向けていることに困惑したが、ティオが棺に足をかけながら扇子を掲げているのを見てなんとなく事情を察したのか、呆れ顔になった。
すると、ティオ歓喜の表情を浮かべてパッと振り返り、そこに入間達の姿と極寒の眼差しがあることを認識して更に体を震わせた。入間と視線が合うやいなや恍惚の表情を浮かべながら、次の瞬間には飼い主を見つけた犬の如く走り出す。
「ご主人様よぉ~、ただいま戻ったのじゃ~!愛でておくれ~!」
ゴブリンになっていたときと全く変わらず、ル○ンダイブを決めながら飛び込んでくるティオ。
「あふんっ!」
入間は無言で“ファイズフォンX”を抜くと、銃声一発。空中でティオを撃ち落とした。喘ぎ声にも似た悲鳴を上げて後方三回転宙返りをしながら後頭部から地面にダイブするティオに、入間は無言で近寄るとそのまま背中を踏みつけグリグリと踏み躙る。
「この駄竜。一体、夢の中で僕に何をさせたの?」
「アァアア、これじゃ!これなのじゃ!頑張って仮初の世界から帰って来たというのに、出迎えが発砲と踏み付け!そしてまるでゴミを見るような眼差し!偽物のような甘さなど一切ない、この絶妙な痛み!これぞ我が生涯の主様なのじゃ!もっとぉ!もっとぉなのじゃ~」
「……果てろ、変態」
「ッアバババババババババババっ!!!」
あまりに聞くに堪えないティオの雄叫びに、プチリと来た入間は割かし本気で“雷撃”を発動。海老反りアバババするティオは白煙を上げながらパタリと力尽きた。
しかし、その表情は「見せられないよ!」という自主○制君がやって来そうな恍惚とした変態顔だ。実に幸せそうである。入間的には極めて不本意だが。
そんなティオを非常に残念そうな目で見ながら、アメリは棺から出て入間達に歩み寄った。
「……すまない、遅くなったか?」
「いえ、アメリさん。僕たちもついさっき起きた所なので」
「そうです。気にしないでください」
「寧ろ、寝起き早々にこんなの見ちゃったアメちゃんが不憫だよ」
「……で?アメリはどんな夢を見てた?」
「ヴェ!?そ、そそそれは、普通の夢だぞ!うむ!私が野望を叶えて、お父様の後を継ぐといでいるというな!」
「……どんな野望を叶えたの?」
「ッ!そ、それは今言っただろう!!」
「……本当に家業を継ぐだけ?」
「~~ッ!!」
「どうどう。ユエ、あんまりアメリさんをからかっちゃダメだよ」
入間は、顔を真っ赤にして涙目のアメリを見かねて、ユエを背後から抱き締めて宥める。そしてアメリに視線を戻すと、「おいでおいで」というように手招きする。その意図を察したアメリは、顔を真っ赤にした角髪をピコピコさせながら、おずおずと入間の側に寄り添った。
その後、特にダメージを負った様子もなく普通に復活したティオは、聞いてもいないどころか聞きたくないと言う入間達を無視して、如何に夢の中の入間のご主人様ぶりがダメだったのかを熱く、それはもう熱く語った。
仮初の世界は、対象者に理想的な甘い世界を見せて夢の中に捕えるというもののはず。
だとすれば、ティオが脱出できた理由が“物足りない”というのは何ともおかしな話である。嫌な想像だが、おそらく大迷宮でもティオの変態性を測りきれなかったのではないだろうか。入間がティオの想い人であり、ティオ自身には性的被虐趣味があるということまでは読めたが、具体的なティオ好みの“お仕置き”“ご褒美”というものがきっと分からなかったのだ。
むしろ、頑張ってティオの理想通りのご主人様を作ったのに貶されるだけ貶されて満足できないからなんて理由であっさり脱出された大迷宮の方に同情してしまう。
側でミレディが「リューちゃん……」とリューティリスの名前を呟きながら天を仰いでいる。まさか、そのリューティリスがティオに似た性格で、当時自分が怒り狂った提案を一蹴する程の変態がくるとは夢にも思わない。
そうこうしている内に更に琥珀が輝いた。次に脱出してきたのはバビルの残りのメンバー…アスモデウス、クララ、チマのようだ。入間達が傍らに近寄ると、三人はゆっくりと目を開いた。そして、自分の周りにいる入間達を見て安堵の吐息を漏らす。
「戻ってきたか……。お待たせして申し訳ありません、イルマ様」
「ううん、丁度いいタイミングだったよ。どんな夢を見てたの?」
「はい!私の夢は、見事魔王として君臨するイルマ様の忠実な右腕として忠義を尽くしている所でした!偽物とはいえ、魔王となったイルマ様は実に凛々しく……」
「……クララは?」
「うぇ!?あ、あはは~。覚えてないや……」
自身の夢を暑く語り始めたアスモデウスを無視して、ユエがクララに尋ねると、クララは途端に顔を赤くしてはぐらかした。だが、視線は妙にモジモジしながらアスモデウスにチラチラと向いていたのを、ユエ達女性陣は見逃さなかった。
すると、チマと入間と目がパチリと合った瞬間、血が沸騰でもしたかのように一瞬で顔を真っ赤に染め上げてズザザザザーと壁際まで後退ってしまった。
今の今まで、チマからそんな風に距離を取られたことのない入間は、驚きよりも困惑が先に来てどうしたものかとユエ達に視線を向ける。
入間の困惑を感じ取ったチマが慌てて誤解を解きにかかる。
「あ……い、イルマ先輩!今の避けたわけじゃなくて」
「あ~、いや、別にいいんだけど……どうせ、夢が関係してるんでしょ?一体、どんな夢を見たの……」
「え?どんなって、それは………………」
入間に苦笑いされながら聞かれた内容を答えようとして、チマは更に赤面すると両手で自分の顔を覆ってしまった。とても入間と顔を合わせられないといった様子だ。
そんなチマの様子を見て大体どんな夢を見ていたのか察した女性陣が、それぞれの反応を示す。アメリは「むぅ…」と頬を膨らませ、ミレディとティオは「ほほぅ~」と心底面白そうにニヤニヤとした笑みを浮かべ、シアは少々頬を染めて「……チマちゃんってば」と呟きそっと目を逸らした。
そして、ユエはと言うと……
「……チマのムッツリすけべ」
蔑んだ眼差しと、辛辣な言葉で罵倒した。ビクンッと震えるチマは顔を真っ赤に染めたまま慌てて弁明する。
「む、ムッツリじゃないです!」
「……じゃあ、どんな夢だったか話して」
「それは……べ、別に何の変哲もない日常です」
「……日常的に入間を襲っていたと」
「襲ってません!ちょっと押し倒しただけで、その後はイルマ先輩が……あっ」
「……チマは入間に近づくの禁止。入間が危ない」
どうやらチマは夢の中で入間と“色々”あったらしい。曰く、結局“そう”はならず、何とか誘惑?を振り切り帰還したそうだが……入間に好意を持つメンバーでも比較的積極的な彼女がこうなるとは、一体何があったというのか……。
「まぁ、何にせよ、これで僕達バビルは全員帰還できたわけだね」
「ですね。それで、彼等はどうしますか?」
入間の言葉にシアが安堵から肩の力を抜きつつ、そう尋ねる。視線は愛子と優花、光輝達勇者パーティーが収められている琥珀に向いていた。
「そうだな。……最終的には琥珀を壊して助け出すしかないだろうけど、取り敢えず、自力で脱出できるまで待ってみよう。でないと、大迷宮に挑ませた意味がない」
「どれくらい待ちますか?」
「ん~、二、三時間くらい待てば良いんじゃないかな?ズルズル引き伸ばすとキリがないし、それくらいが妥当だと思う」
入間の言葉に、ユエ達も異論を挟まなかった。
そうして、ちょっとした食事を済ませ、暇潰しにトランプやらボードゲームをして時間を潰していると、体感で一時間くらいした頃、遂に二つの琥珀が輝きだした。
琥珀が溶けて姿が露になると、愛子と優花の姿が露になる。どうやら、突破したのはこの二人らしい。呻き声をあげて体を起こす二人を、アメリが背中を支えて起き上がらせる。
「ここは……どこですか?」
「大迷宮の中だ。お前達は試練を突破したのだ」
「そっか、戻って来れたのね。何だかスッゴい疲れたわ……」
そこへ、入間も歩み寄る。
「乗り切れたようで何よりです、二人とも」
「す、鈴木くん!?そ、そそそそうですね……」
「っ!そ、そうね!」
何故か、入間が声をかけた途端、妙に視線を彷徨わせどもる愛子と優花。
そんな二人の様子を見て、ユエ達は「あぁ……」と納得した表情でを見せると、二人は猛烈にいたたまれなくなってきて、視線をそらすと、その場で踞る。恥ずかしい夢を見たようだ。話したくなさそうな雰囲気をこれでもかと醸し出していたので取り敢えずそっとしておく事にした。
「教師……私は教師なのに、鈴木くんが生徒になってあんな……あうぅ……」
「別にそんなんじゃないし……鈴木への気持ちを自覚したからって、あんな……」
その際、二人はそんなことを呟いていた。それが聞こえていたものは
それから更に数時間、ティーセットを用意して愛子と優花の精神的な疲れも十二分の休息によって完全に回復し、更にそれから二時間程待っても未だに戻ってこない光輝達の強制脱出が決定された。流石に、これ以上攻略を先延ばしにすることは出来なかった。
入間は壁に立て掛けた棺に手を伸ばすと、ポツリと呟いた。
「“補食”」
その瞬間、右手にはめられた悪食の指輪から漆黒の靄が溢れだし、その靄が怪物の顔を形成すると、光輝達を包んでいた琥珀は、溶け出すのではなく表面からまるで風化するように崩れ去っていき、目で見えないほど細かな粒子になると、その靄の口へと吸い込まれていく。
そして、三分もかからないうちに完全に全ての琥珀は魔力となって悪食の指輪に吸収され、規則正しい呼吸を繰り返す光輝達が現れた。
「……あ?あれ、香織?雫?ここは?俺は、二人と……」
「……香織?香織っ!何処っ!?」
「え?そんな、恵里はっ、恵里……」
そう時間をおかずに三人は目を覚ました。
それぞれ直前まで見ていた夢から、いきなり薄暗い穴ぐらへと場面が切り替わったようで少々意識に混乱が見られるようだ。
特に、雫と鈴に至っては何もない虚空へ必死に手を伸ばしている。何を求めて手を伸ばしたのかは、その言葉から明らかだろう。それは二人が見ていた夢の内容も同じだ。それを思えば、自力で夢を振り切れなかったのも仕方ないかもしれない。
雫と鈴の有様に、愛子と優花が悲痛な表情になる。気丈なように見えて、やはり親友からの裏切りは二人の心に深い傷を作っていたようで、その傷は、きっと今も血を流しているのだろう。
ようやく、先程まで見ていたのが夢だったのだと理解した三人は、しばらく呆然としていた。
しかし、その後の反応はバラバラだ。
光輝は悔しげに唇を噛み締めていおり、鈴は直ぐに誤魔化すように笑顔を浮かべ、雫は「心配かけてごめんなさい」と謝ったが、余りに痛々しいそれに愛子と優花の方が耐えられず、優花が鈴を抱き締め、愛子は雫の背中を優しく擦ってやる。
と、そんな彼等に入間が声を掛けようとしたその時、部屋の中央に魔法陣が出現した。
どうやら全員が琥珀から脱したことで次のステージへ強制的に送られるらしい。光輝達の精神が不安定な状態なので、もうしばらく休息をとりたかったのだが……どうやらそんな猶予は与えてくれないようだ。
「天之河、八重樫さん、谷口さん、省みている時間はないみたいだよ。意識を切り替えて。でないと、君たちの望みは本当の意味で潰えることになる」
「っ……ああ、わかってる」
「ごめんなさい……大丈夫よ」
「う、うん。そうだね!」
次の瞬間、魔法陣の光が爆ぜ、三度入間達の視界を塗り潰した。
▪︎悪魔の孫は時の王者となって世界最強 補完計画
入間「鈴木入間は悩んでいた……。それは、唐突にスタートしたこの新企画……悪魔の孫は時の王者となって世界最強 補完計画の事である」
ユエ「……入間。このコーナーはなに?」
入間「後書きスペースに乗せられたコーナーだよ。何が原因かはよく知らないけど……最近、作者のMTHRさんがゴジュ○ジャーの○ジュウ計画を見たらしいよ」
シア「絶対にそれが理由ですね。あの人、直ぐに影響受けるんですよねぇ……」
アメリ「まぁ良いではないか。私達は、ここで何をすれば良いんだ?」
入間「ここでは色んな人達から寄せられてくる質問に答えて、このお話の曖昧な部分を補完していくんだよ」
クララ「うはぁ~!面白そう!!」
ティオ「メンバーは……妾達バビルの面々だけなのか?」
ミレディ「あんまりわんさか出てきても台詞が足りなくなっちゃうしね。レギュラーメンバーでやればいいんじゃない?」
チマ「それ言ってもいいんですか?」
アスモデウス「このハガキを読めば良いのですね……。先ずは、
ユエ「……それ、確実に優花」
アメリ「ユエ、ここで名前を明かさなくても良いだろう」
アスモデウス「……読むぞ。『鈴木のトータスで好きな食べ物が知りたい』だそうですよ、イルマ様」
入間「トータスの料理?そうだね……魔界の料理も好きだけど、トータスの料理と結構好きだよ。特にクルルー鳥のトマト煮とニルシッシルは美味しかった」
シア「成る程、入間さんは私の手料理とニルシッシルが好きなんですね~」
ユエ「……男を落とすには胃袋を掴む。優花、抜け目無い」
クララ「へぇ~、そうなんだぁ」
入間「ユエ?クララ?何でなにかを企むような顔をしてるの?」
ミレディ「ふっふーん、貴重な話が聞けたね☆それじゃあ次の質問だね。PN【魔王の娘なの】さんの質問…『いんふぃにっとじおうのいんふぃにっとってなーに?』だそうです」
入間「インフィニットは『無限の』『果てしない』っていう意味の形容詞だよ。空間や量って言う意味にも使われるけど、僕の場合だと『計測できない』『限界がない』って言う意味で使われているね」
アスモデウス「流石はイルマ様!限界の無いそのお姿こそ、イルマ様の偉大さの証!」
入間「フフン、そうでしょ?」
クララ「……イルマち。自信満タン?」
シア「質問してきた人があの子ですからねぇ。無理もないですが……」
ユエ「……でも、インフィニティージオウでも良かったのに」
入間「それは……ティオとミレディとアメリさんは分かるかも」
ティオ「妾が?……うぐっ!?何故か脳裏に知らぬ記憶が流込んでくるのじゃ………○夏、馬に蹴られてs」
ミレディ「な、何故かミレディさんの脳裏に貴族っぽい記憶が…………さあ、踊りなさい。わたくしとブルー・ティアーz」
※しばらくお待ちください。
入間「流石にやりすぎだね」
シア「い、言い出したのは入間さんなのに……」
アメリ(……何故か、私にも別に記憶がよぎったのだが、言わなくて良いか)
ティオ「ヌッフフフ……ご主人様からの素晴らしいパンチを頂いた後で、次の質問じゃ。PN【立派な教師です】さんからの質問じゃな。『鈴木くんのインフィニットジオウ以外に、他の仮面ライダー達のオリジナルフォームはあるんでしょうか?』と、愛子は訪ねておるそうじゃよ?」
チマ「もう隠す気もないですね」
ミレディ「っていうか、それもう補完じゃなくてネタバレだよね?イルくん、これどうすれば……」
入間「オリジナルフォームならあるよ」
シア「しれっと言っちゃいましたよ!?」
ユエ「……入間、私達にもあるの?ドッキリとか嘘じゃなくて?」
入間「うん。これ、設定資料だよ」
ユエ「……ん。悪くない」
アメリ「私のオリジナルフォームか。TVには出てなかったアーマータイムも似たようなものかもしれんが、これはこれでアリだな」
シア「良いですね~。オリジナルフォームも二次創作の醍醐味ですからね」
ミレディ「これがミレディさんのオリジナルゴーストかぁ。デザインは兎も角、悪くはないね」
ティオ「ふむ。妾のはシンプルじゃが、アリじゃと思うぞ?」
チマ「そこまで言わない方がいいですって……。それに、今回は文面体ですから分かりませんよ?」
クララ「そうだね~!イルマちみたいにパワーアップできて嬉しいね!アズアズ!!」
アスモデウス「それはいいのだが……誕生経緯に文句アリだ!何故私がイルマ様と──」
入間「それはストップ!これ以上はネタバレだから!!」
シア「最後のPNは……【天職勇者】さん?確実にあの人じゃないですか」
入間「嫌そうな顔しないの」
シア「分かりました。えっと……『この作品に、ちょくちょくリリカルなのはの要素が出てきますが、どうしてですか?』だそうです」
ティオ「ふむ。流石は声優が柿原徹也なだけはあるのぅ」
入間「これは簡単。pixivでTTMの名前で作品を投稿してるMTHRさんが連載している『ガッチャし魔す!入間くんStrikerS』とのコラボだよ。元々は悪魔紅蓮っていう人からリクエストされた作品なんだけど、その人がこの作品を読んでくれていたらしくて、リクエストを提案された当時からコラボの話が出てたんだ」
ミレディ「ホント?いやぁ~。ミレディさん達の活躍の虜になっちゃうなんて、悪魔紅蓮さんは分かってるねぇ☆」
ユエ「……でも、コラボやった?正義とのコラボしか記憶に無い」
アメリ「pixivにもないが……」
アスモデウス「まだ掲載されていないのだ。コラボ作品を投稿する時の『ガッチャし魔す!入間くんStrikerS 』の時系列は原作アニメ『リリカルなのはStrikerS』14話以降の話にする事が決まっているが、現時点ではまだアニメで言うところの9話辺りまでしか投稿されていないのだからな」
チマ「スロースペースですね……」
入間「作者も4月から社会人だし、ハーメルンでの小説の執筆とか、他のユーザーからもリクエストを受けてたり、ガッチャし魔す!入間くんStrikerSは番外編とかR18版とかも頼まれて執筆してるから、触れたことのない作品のリクエストが多くて時間かかってるらしいよ」
ティオ「いや、ご主人様よ。お主、さらっと作者のプライベートやらなにやら暴露しておるのじゃが……」
ユエ「……入間、私達もR18やろう」
入間「ユエッ!?」
ユエ「……pixivに出てくる入間が“ピー”するのなら、私達がやらない道理はない」
入間「あるよ!別にpixivがそうだからって僕達がそうする必要はないし、前のリクエストでは投票箱そこそこだったじゃん!」
シア「いいえ!R18版をここでやれば、私達も入間さんと熱い夜を過ごせる可能性が……!」
ミレディ「そうか!その手があったか!!」
ティオ「ふむ。ならば妾もご主人様にあ~んな事やそ~んな事を……グヘヘヘ」
アメリ「何を言っているのだお前達は!そんな……そんな…………いや、悪くない?」
入間「アメリさんまで!?」
チマ「皆さん!こうなったら作者に抗議に行きましょう!」
ユエ「んっ!」
シア「おうですぅ!」
アメリ「う、うむ……。話すだけなら」
ミレディ「よし、ティオちゃん!“竜化”お願い!」
ティオ『承知したのじゃ!!』
入間「いや待ってーー!!」
クララ「あーあ。イルマち達、いっちゃったね。ねぇアズアズ、あーる18ってなに?」
アスモデウス「お前にはまだ早すぎる。はぁ……こんな終わり方で良いのか?」
……続くかも?
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