でも、最後にかなり重要なストーリーが……?
「……ん。ここは……?」
アメリが目を覚ますと、そこは見慣れない天井があった。
そこで、自分がベッドに横になっている事に気づくと、意識を失う前までの記憶が蘇り、体を起き上がらせると、耳元で声が聞こえてきた。
「アメリさん……起きたんですね」
「イ、イルマ!?」
そこにいたのは、やはり入間であった。
想い人の前で寝顔を晒していたのかと気付いたアメリは沸騰するように顔を真っ赤にするが、狼狽えてしまうのは恥ずかしいのでなんとか平静を保つと、頬を赤くしたまま入間に尋ねた。
「一つ聞きたいんだが……あの後、どうなったんだ?」
「何て事ないです。白ウォズを倒したアメリさんが寝ちゃったから、転移陣で迷宮を出てフェアベルゲンで宿をとったんですよ」
「そうか……何時間くらい寝ていた?」
「一時間くらいですね」
思ったよりも短かったようだ。アメリ自信、倦怠感のようなものは感じていないので、アナザーゼインとの戦闘と大迷宮の攻略で疲れが出たのだろう。
「すまない。迷惑を掛けた」
「いえいえ!アメリさんも頑張ってくれたんですし、お礼をいうのはこっちの方ですよ」
ブンブンと首と手を振る入間をかわいく思ってしまい、アメリは思わずクスリと顔を綻ばせる。
「……イルマ。白ウォズが言っていたことだが」
「僕が、世界の破滅の原因ってことですか?」
「あぁ、いや……それではない。話さなくてもいいことだが、改めて言っておきたくてな」
「?」
首をかしげる入間に、アメリは恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、しっかととした口調で入間に話し掛けた。
「白ウォズと戦った時に言ったな?未来がどうなろうと、私が何になろうと、私のしたいことをお前は全力で応援すると」
「はい。言いましたけど……?」
「…それは、私も同じだ。私はお前がどんな未来を創り上げるのかを目にするのが楽しみになっている。そしてそれは、私自身の未来でもある。だから……これからも、お前のやりたい事に私も付き合わせてもらうぞ。イルマ」
頬を赤く染めながら、目を細めて優しげに微笑むアメリ。その笑みには、普段から冷血にして高潔と呼ばれるエリート悪魔としての顔ではなかった。
その表情に、胸の高鳴りを感じながらほんのりと頬を赤くした入間は、アメリの腕を引き、ポスッと自身の腕の中に納めた。
「ひゃっ!?イ、イルマッ!?」
「……ありがとうございます、アメリさん」
途端に沸騰したように顔を真っ赤にするアメリに愛しさが込み上げてきて、入間はアメリの背中に腕を回してギュッと抱き締める。
「イルマち~~。まっかちゃんのようすどう~~?」
その時、部屋の扉をノックする音と共に、扉の向こうからクララの声が聞こえてきた。どうやら、入間と同じように眠っていたアメリの様子を見に来たらしい。
「っ!い、イルマ!離れ──おわっ!?」
「えっ!?」
アメリは咄嗟に入間の腕から抜け出そうとするが、ベッドのシーツに滑ってバランスを崩してしまい、入間はそれにつられてバランスを崩してしまうと……
という音を立てながら、二人は揃って転倒してしまった。
次の瞬間、バンッという音と共に扉が開かれた。
「イルマ様!一体何が……」
「大丈夫ですか、入間さん!!」
扉から姿を現したのは、アスモデウス達バビルのメンバーだった。どうやら、クララだけではなく全員でお見舞いに来たようだ。
しかし、今の入間とアメリの体制は、ベッドシーツに滑ったアメリが入間を床に押し倒しているような、非常に危ない状態であった。
そんなのをユエ達が目にすれば……どうなるかは言うまでもないだろう。
「……アメリ、弱ったフリして入間を襲うとは良い度胸」
「アメリ先輩。抜け駆けは許しません……」
「い、いやいやいや!違うぞユエ!クロケル!これはなんと言うかだな……」
背後に雷龍を氷山を出現させるユエとチマに、アメリは慌てて弁明を始める。シアとミレディはやれやれと肩を竦め、ティオはニヤニヤと面白がるような笑みを浮かべ、アスモデウスとクララはいつもの事なので苦笑い。
「何をやっているのですか、貴方達は……」
そこへ、送れてやってきた善井正義の呆れたような声が部屋に響き渡った。
アメリの事情説明を聞き、ユエとチマが落ち着いた後、入間達は、これから自分の世界へと帰還する正義の見送りを行うことにしていた。その場にはバビルの面々だけでなく、愛子や優花、光輝達もその場にいる。
当初、正義の事を知らない光輝達は少し警戒をしていたが、正義と直に対面した愛子と優花の説明により警戒心を解いてもらい、逆に正義も、愛子と優花から光輝達の事や、入間達のこれまでの旅の経緯などをについて教えてもらい、「かなり滅茶苦茶なことをやっていますね」とという感想を溢したとか。
「まぁ、なんだ……お陰で新しい力を手に入れられた。感謝する」
「構いません。私は贈り物とついでに、偶然見つけた悪意を駆逐しただけなのですから」
正義の渡してくれたカードのお陰でパワーアップすることが出来たアメリは正義に感謝の言葉を述べるが、以前邂逅したときから彼女を気に入っていた為にゲイツアンビションの鍵となるカードを渡したので、気にする必要はないと答える。
正義は、次いで入間達の後ろにいた光輝達の中から、昇に目を向け、口を開いた。
「相川昇君、でしたね?」
「は、はい?」
「紛いなりにも仮面ライダーアクセルである君に一言言っておきましょう。貴方からはオリジナルのアクセル……照井竜と比べても圧倒的に覇気がない。この先その力を持ち続けるのなら、自衛のためでなく自ら戦いに挑むように励みなさい。そして…」
昇を指差してそう告げた後、正義は光輝に目を向けた。
「天之河光輝君でしたね?君は“勇者”と聞きましたが……正直に言って、君には“金メッキ”にしか見えませんね」
「なっ!?」
「「「「ブフッ」」」」
正義からの言葉に、入間達ハビルは思わず噴き出してしまうが、光輝は一瞬で怒りを露にして正義に問い詰めた。
「おい!何で初対面のアンタにそんな事を言われなくちゃならないんだ!!」
「言葉通りですよ。貴方には“勇者”と呼べるほどの善意が見えません。貴方には善意を感じますが、その善意に見合うだけの意思が見えない。意思のない善意は何もかもが中途半端に終わるのが世の常です。貴方からは世界を救うという確固たる意思が見えないのですよ」
「!……くっ!」
淡々と答える正義の言葉に、光輝はギリッと歯を食い縛りながら正義を睨み付ける。
「……話しすぎましたね。それでは、機会があればまた会いましょう」
そう言った正義は、光輝の視線を意にも介さずに踵を返し、目前に出現したオーロラカーテンの向こうへと消えていった。
一面に広がる荒野。
焼けただれた地面が一面に広がる赤銅色の空が広がる世界に建てられた『鈴木入間初変身の像』の前に佇む、黄金の鎧を纏う王の姿があった。
『……ゲイツアンビション。異世界に存在するゼインの手によって生まれたイレギュラー、か』
黄金の鎧を纏うジオウの豪華版のような姿をした王──仮面ライダーオーマジオウは、目の前で揺らめくオーロラカーテンから、アナザーゼインを圧倒するゲイツアンビションの姿を見ながら呟やいた。
オーロラカーテンを消した後、オーマジオウは空を見上げる。すると、赤銅色の雲に包まれた空が突如として暗くなったと思うと、その空に無数の星々が煌めく宇宙空間に、幾つもの地球が不規則に漂う景色が現れた。
『ミッドチルダ、レジェンドの世界、そして異世界のゼイン……世界と世界を隔てる境界線が、嘗てない程曖昧になっている。このまま放置しておけば、やがて全ての世界が衝突し、滅びるだろう』
オーマジオウは空に写した映像を消し、腕を組んで考え込む。
『これだけの数の世界に影響を及ぼす力……バダンでもエヒトでもない。あらゆる世界を融合させる者は限られている。ならば、この異変の原因は……ぐッ!?』
その瞬間、オーマジオウの腹部に強烈な痛みが襲った。
視線を下げると、禍々しい色をしたエネルギーで創られた剣が、オーマジオウの装甲を破り、背中を貫通して、腹から切っ先を現していた。
『なん、だと……!?』
オーマジオウは膝を突き、混乱する。
思案していたとは言え、警戒は解いていなかった。クロックアップが来ようが時間が停止されようが対応できるようにしていたいたはずなのに、剣が腹を貫通することを察知すら出来なかった。
咄嗟に剣を砕き、振り替えると、オーマジオウはその姿をみて、仮面の下で目を見開いた。
『この私ということだ』
その声を聞き、オーマジオウは一瞬で背後に回っていたその存在から離れる。
『“
【サイクロンジョーカーエクストリーム】の能力で“地球の本棚”にアクセスしたオーマジオウは、一瞬で目の前の存在を閲覧し、全てを理解する。
『私の事を調べたか……ならば、説明は必要ない。お前の力を貰うぞ……!』
『そうはさせるか……ハァッ!!』
オーマジオウが右手から衝撃波を放つ。同時に、目の前の立つ存在も手から衝撃波を放つ。
お互いの中間点で衝撃波がぶつかり合い、空間を揺るがす程の衝撃が辺り一面に広がる。放射線状にいた鈴木入間初変身の像が無惨にも砕け、辺り一面に爆発が起こる。
『ぐっ……!』
衝撃波の衝突で膝を着いたのは、オーマジオウだった。腹部を抑え、苦しげに呻く。黒いスーツからドクドクと血が溢れだし、オーマジオウは自身の持つ絶大な力が安定しなくなっていくのを感じていた。
『どうやら、お前もその傷を負った上に
『ぐっ!?ぬぅ…!?』
目の前に立つ存在は、一瞬にしてオーマジオウの前に移動すると、その首を掴む。
その瞬間、オーマジオウの体から黄金のエネルギーが溢れだし、そのエネルギーが首を掴んでいる腕を伝うように、目の前の存在に向かって流れ込んでいく。そのエネルギーが伝う度に、オーマジオウは自身の力が急激に弱まっていくのを感じていく。
『私も、ここまでか……ならばッ!!』
『ッ!?』
オーマジオウは、体から強力な光を放ち目の前の存在の腕を振り払うと、右手を高く掲げる。
次の瞬間、オーマジオウの右手から色とりどりの光が溢れだし、オーマジオウの上空に現れたゲートの中に向かって次々と吸い込まれていく。全ての光がゲートの中へと消えると、その光の穴は一瞬にして収縮し、跡形もなく消え去った。
『力の一部を別の世界に飛ばしたか……』
『貴様の思い通りにさせるわけにはいかないからな……!』
立ち上がったオーマジオウはそう言い放つと、腰に巻き付けられた“オーマジオウドライバー”の両サイドに触れ、全身から黒と金色のオーラを放出させた。
飛び上がったオーマジオウは、背中のアポカリプス・オブ・キングダムを広げてエネルギーを増幅させると、右足を突きだしてキックの体制をとった。
そのまま、莫大なエネルギーを纏い接近するオーマジオウ。
それを目の当たりにした存在は、自身も空を飛び、右足キックの体制を取り、全身から禍々しいオーラを放出させて視に纏う。
『はぁああああああああっ!!!』
『でやぁああああっ!!!』
上空で二人のキックが同時にぶつかり合い、核爆弾が爆発したような凄まじい轟音と爆発が起きる。爆煙が半径二キロを包み込み、二人の存在が地面に墜落する。
『ぐぁっ!!』
地面に倒れ来んだのは、オーマジオウだった。
同時に、相対していた存在も地面に降り立つと、ガクリと膝を着いた。
『流石はオーマジオウ……だが、力を放出させたのが仇となったな』
自身も決して少なくないダメージを負いながらも、オーマジオウの力をある程度取り込んでいたことと、オーマジオウ自身が力を何処かに飛ばしたことでの弱体化が要因となってキックの打ち合いに勝利したその存在は、再び右手を突きだす。
その瞬間、再びオーマジオウの体から光が溢れだして、その存在に吸い込まれ始め、やがてオーマジオウの体が粒子となって透けていく。
『まさか、私の最後がこんなものだとはな………後は、お前次第だ……若き日の、私よ……』
その言葉を最後に、オーマジオウの体は光となり、吸い込まれる。
その瞬間、オーマジオウを下した存在から、世界を揺るがす程の莫大なエネルギーが溢れだした。
『素晴らしい力だが……私の悲願を達成するにはまだ足りない……。やはり、お前の力も手に入れる必要があるな……』
全身から黄金のオーラを噴き出しながら、その存在は虚空を見上げ、まるで誰かに語りかけるように、次の狙いの人物の名を口にした。
『……鈴木入間』
魔界。
悪魔が住む世界その世界の空に、突如として半径1メートルほどのワームホールが出現したかと思うと、その穴の向こう側から、十六の光の玉が飛び出しかたと思うと、その光はまるで意思を持つように散らばりながら飛び出していく。
その光景を、ある建物の屋上から眺める二人組がいた。
一人はトイカメラを首に下げた白髪の男、門矢士。そしてその隣で寄り添うようにして立っている金髪紅眼の美女、デモンサンダー。
デモンサンダーは、
「……ねぇ、士。あれ、一体なんなの?」
デモンサンダーの問いに答えず、トイカメラから顔を離した士は、独り言のように粒やいた。
「……大体分かった」
「分かったって、なにが?詳しく教えてよ」
「大体は大体だ。兎に角、今はあそこに向かわなくちゃな」
そう言いながら、士は近くに止めてあったディケイドに似た意匠のバイク──“マシンディケイダー”に跨がり、ヘルメットと手袋を着ける。それを見たデモンサンダーは、相変わらず説明不足な士に呆れつつも、自分もまたヘルメットを被り、マシンディケイダーの士の後ろに跨がった。
デモンサンダーは士の腰に手を回し、豊満な胸が士の背中にムギュッと押し付けられるが、士はどうでもいいように無反応のまま、マシンディケイダーを発進させた。
場所は変わり、入間の自宅であるサリバン邸。
豪華絢爛を体現したような部屋の中で、剥げた頭に二本の角を生やした老人悪魔──【サリバン】と、ピンクのツインテールにゴスロリ服の小柄な女性──【バチコ】が、共に神妙な顔で立っていた。
「……どうだった、バチコちゃん?」
「…ダメでした。人間界中を飛び回ってみましたが、何処にも……」
「そっか……」
サリバンは険しい顔で頷く。
普段のちゃらんぽらんな様子は欠片もなく、その表情には焦燥感が浮かんでいた。それは、バチコも同様だった。
彼がこの様な雰囲気でいるのは、つい数ヵ月前、突如としてサリバンの大切な孫にして、バチコの一番弟子──入間が、突如として姿を消してしまったことにある。
サリバンやバチコ、更に悪魔学校の教師陣は全力を上げて捜索をしようとしたが、そうしているのも束の間、入間と関わりの深い悪魔……アスモデウス・アリス、ウァラク・クララ、アザゼル・アメリ、クロケル・チマまでもが行方不明となってしまったのだ。
世間を密かに騒がせている
ここまで何もないとなると、“六指衆”の存在すらあり得てくると、サリバンとバチコは緊張感を高めていく。
その時、サリバンとバチコはある異変に気づいた。
窓の外から、光を纏う何かが三つ、超速で飛来してくるのだ。
やがて、その内の一つが少しだけ起動を変えて残りの二つから離れたかと思うと、その二つがサリバン邸の壁を突き破り、真っ直ぐサリバンとバチコに飛来したのだ。
人間や並みの悪魔が受け止めようものならば、手の骨が粉々になりそうな速度で迫ってきたそれを、サリバンとバチコはなんでもないように受け止める。十三冠の席に座る実力を持つこの二人にとって、この程度の豪速球などキャッチボールの球に等しい。あの光のもう一つが飛来した場所にいた悪魔も、恐らく楽々と受け止めているだろう。
二人は、飛来してきた何かを覗き込むと、驚きに目を見開いた。
「これは……!」
「イルマが使ってる、時計?」
それは、入間やアメリ達が使う時計のようなアイテム──ブランクライドウォッチだった。
次の瞬間、そのブランクライドウォッチが、サリバンの持つものには赤、バチコの持つものに金色の光が溢れだしたかと思うと、ブランクウォッチの見た目が変化した。
各々、赤と黒、銀と緑を基調とした見た目に変わったそのライドウォッチを、二人が見つめていると、部屋の扉から声が掛けられた。
「どうやら、未来の入間に託されたものらしいな」
「君は……門矢士君だね。イルマ君から時々話を聞いているよ。後ろの子は初めましてだけど……」
そう、そこにいたのは、門矢士とデモンサンダーだったのだ。
サリバンは、入間からその話を何度か聞いたことがあるゆえに対して驚きを見せないが、やはりこのタイミングで出てきた事には何かあると真剣な目を向け、バチコもまた、怪しげな二人に警戒に、万が一にも何かしてくるようなら動けるように構えながら、ジッと士とデモンサンダーを見つめていた。
そんな二人を他所に、士は魔界でも最強格に位置する悪魔達を前にしても悠然とした態度を崩さぬまま、口を開いた。
「どうやら……世界の崩壊が始まろうとしている」
第九章は最終回じゃないんですよ。もうちょっとだけ続きます。(亀仙人風)
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