悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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 お久し振りです~。
 最近、仕事が忙しくて帰宅後は殆どの時間を睡眠に費やした為、投稿が遅れました。これからも亀更新になると思いますが、どうかよろしくお願い致します。


ep.3 真相を知る時

 電灯の一つもない闇一色の空間を、臆した様子もなく突き進む人影があった。

 

「随分と長く続いてますね、この通路……」

 

 畑山愛子は、白入間から貸し与えられた“クモランタン”で暗闇を照らしながら、ポツリと呟いた。かれこれ30分ほど歩いているが…チート持ちのステータスゆえに疲労することはなく、目が慣れてきて多少は見えるようになったとはいえ、光源もない暗闇を歩き続けるのは精神にくる。口には出さなかったが、優花も同じような気持ちだった。

 

 その時、先頭を歩いていた白入間が立ち止まる。ユエと士と英寿とデモンサンダーも何も言わずに立ち止まり、愛子と優花は目を丸くする。

 

「す、鈴木君?」

「どうしたの……?」

 

 不安げに尋ねる愛子と優花。その時、白入間は“ソニックアロー”を手に取り、振り返って弦を引き絞る。目を見開く愛子と優花だが、すぐにその狙いが、この場にいる誰でもなく、その後ろに向けられているものだと気づいた。

 

 愛子と優花が白入間の視線を追ったのと、聞き馴染みのない声が響いたのは、ほぼ同時だった。

 

「……子供が撃たれる覚悟をもって武器を向けるとは、物騒な世の中になったもんだな」

 

 その声と共に柱の影から姿を現したのは、白いスーツを着込んだ帽子を被った壮年の男性だった。身に纏う雰囲気から、明らかに只者ではないと悟ったユエとデモンサンダーが身構えていると、白入間はポツリとその男の名を口にした。

 

「貴方は……鳴海荘吉…!」

「……何?俺を知っているのか?」

 

 白入間が呟いた名前に、壮年の男性──【鳴海荘吉】は僅かに目を見開き、愛子と優花はその名前に疑問符を浮かべながら、白入間に問い掛ける。

 

「鈴木君…この方を知ってるんですか?」

「えぇ、まぁ……彼は鳴海荘吉。仮面ライダースカルで、仮面ライダーダブルの師匠であり…風都の闇と戦ってきた先代とも言える仮面ライダーです。でも………」

 

 そこで、白入間は訝しそうな表情で荘吉に視線を向ける。ユエ、愛子、優花、デモンサンダーがその表情に疑問符を浮かべていると、白入間と同じく神妙な表情を浮かべた士が口を開いた。

 

「鳴海荘吉……俺の知っている歴史では、お前は翔太郎を庇って死んだ筈だ……そんなお前が、何故ここにいる?」

「し、死んでる!?」

「……まさか、蘇生された?」

 

 明かされた事実に、愛子や優花は顔を強張らせ、ユエは自身が手に入れた魂魄魔法のように蘇生されたのかと考える。

 一方で、荘吉は自身の詳細を事細かく知っている白入間達に違和感を覚え、眼を鋭くする。

 

「お前達……一体何者だ」

「あっ、名乗り遅れました。僕は仮面ライダージオウの鈴木入間。貴方の弟子である仮面ライダージョーカー…左翔太郎さんとは面識があるんです」

 

 愛子、優花、デモンサンダーは、基本的に他人と話す時は敬語を使うが、唯我独尊を地で行く白入間がやけに荘吉にたいして丁寧な対応をしていることに驚きを露にする。

 彼女達は知らないが、白入間は仮面ライダーとしての在り方──人類の自由を守るための戦士になる道こそ選ばず、寧ろそれに反する生き方を選らんだが、自身に力を託してくれたライダー達には、ある程度の敬意を払っているのだ。

 

「翔太郎だと?そう言えば、お前……」

「……なにか?」

「いや、なんでもない」

 

 荘吉は、白入間の声を聞き、脳裏に弟子の幼い姿を思い浮かべるが、関係ないだろうとその考えを切り捨てた。そこで、一応の納得を見せた荘吉は、帽子を深く被りながら口を開く。

 

「お前達の言う通り、俺は死んだ。だが、気が付けばこんな所にいて…妙な大会に出場させられてな。そこで、大会をそっちのけでコソコソしていたお前達をつけていた……」

「死人までこの大会に呼び寄せられて、参加させられてるってことですか……」

「なるほど。お前達が引っ掛かっていたのはそれか」

 

 荘吉の言葉を聞いて腕を組む白入間を見て、英寿は白入間と士がこの大会を調べようとした理由の一つを察し、士が代弁するように答える。

 

スカリエッティ(お前の協力者)が倒した、仮面ライダーデューク……奴も、かつてオーバーロードとなったバロンとの戦いで敗北し、致命傷を負って死んだ。その後、メガヘクスの力でサイボーグとして蘇ったが、それも斬月に倒されて破壊された筈だ……だから、デュークがこの大会に参戦しているのは、本来ならばありえない事だ」

「……でも、そんなことをしてこの大会を開催する意味はなんなの?」

 

 消えたクラスメイトの手がかりを探す筈が、予想以上に大きな陰謀が隠されていたかもしれないと悟った優花は顔を青くして、震えた声で呟いた。

 

「その答えはきっと、この先にある。皆、行こう」

 

 白入間の言葉に頷き、一同は更に奥へと歩きだす。荘吉はその背中を見つめて思案した後、帽子を深く被りなおし…その背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し遡ること数分前。ライダーコロシアムの観客席へと続く通路を、二つの小さな人影が突き進んでいき、曲がり角に差し掛かったところで、二人はバッタリと鉢合わせた。

 

「ん?」

「む?」

 

 その人影は、チマとチンク。トータス組とミッドチルダ組のメンバーの中で一際小柄な体躯を持つ二人は、試合を終えて飲み物を購入していた帰りの曲がり角で意外な人物と鉢合わせた事に二人は少しだけ驚いた。

 

「確か……クロケル・チマだったな?」

「……うん。よろしく」

 

 チンクの言葉に、チマはスン…とした表情で返す。白入間が絡まなければ基本的に口数の少ないチマは、特に興味がなさそうな表情で歩きだすと…目的地が同じチンクも彼女と共に歩きだす。互いに会話を好む方ではないので、しばし沈黙を保ったまま歩いていくが、チンクはチラリと隻眼をチマに向けながら思案した。

 

(気のせいかもしれないが……やはりこのチマという女、誰かに似ている気がするな)

 

 チマがチンクをどうとも思っていないのに対して、チンクはチマへ何かしらの引っ掛かりを覚えていた。

 彼女とは初対面であるし、名前すら聞いたことがなかった。しかし、何故かチンクは彼女に何処か既視感を覚えていた。その時、チマがチンクの視線に気づき…「何?」というように視線を返してきたのを見て、チンクは誤魔化すように咳払いをしながら前に歩きだす。

 

「……何か落とした」

「ッ!ま、待て!!」

 

 その時、チンクの羽織っているコート内側から…ピラリと一枚の紙が落ちたのを見て、チマはそれを拾い上げる。それに気づいたチンクは、途端に顔を強張らせて取り上げようとしたが、その瞬間にチマが呟いた台詞に動きを止めた。

 

「おね、くろむちゃんの写真……」

 

 そう、その写真は、チマの実の姉──【クロケル・ケロリ】のもう一つの姿、魔界を震撼させる大人気アクドルの【くろむ】の写真だったのだ。まさか、目の前にいる人物がそれを持っているとは思わず、チマはチンクに眼を向ける。

 チンクは、ダラダラと冷や汗を流しながら眼を泳がせていると、チマはチンクにズイッと顔を寄せ、チンクの顔にくろむの写真を押し当てながら問い詰めた。

 

「……なんで貴女がこんなものを持ってるの?」

「いや、それは拾ったというか……」

「……」

「だ、だから………その、だな…………」

「…………………」

「~~~~~ッ!そ、そうだ!!お前が考えているとおり、私は彼女の…くろむちゃんの大ファンだ!!!」

「………え?」

 

 チマのジト目攻撃に耐えきれなくなり…チンクは顔を真っ赤にしながら、逆上したかのように真実を明かした。

 

 そう。ナンバーズの一人であるチンクはかつて、スバル達が所属する機動六課を調べている際に…ほほ同じ時期にミッドチルダにやって来た青入間が持っていたケミーのうちの2体─【スマホーン】と【テレヴィ】が流出したくろむのライブ映像を見て心を奪われ、彼女の大ファンとなったのだ。それからというもの、ナンバーズの頼れる姉御的存在であったチンクは、元のクールビューティーから一転してくろむちゃん激推しのドルオタへとキャラ崩壊し、スカリエッティの協力者となった英寿にちょくちょく魔界に連れていってもらってライブやイベントに参加している。本人は姉妹(ナンバーズ)にそれを隠しているつもりらしいが、実は全員にバレていたりもする。

 

「おかしいと思うか!?女で戦闘機人の私が、あんな歌もダンスも完璧な人気アクドルに夢中になっている事が似合わないなど、自分が一番よくわかっている!」

「……………」

「どうした!?笑うなら笑え!お前がどう思おうが……誰がなんといおうと、私はくろむちゃんが好きで好きでたまらない!!心火を燃やしてフォーリンラブなんだ!!!」

 

 言葉の選び方がおかしい気もしたが、それでも顔を真っ赤にしながらくろむへの愛を叫ぶチンク。チマは、ツンとそっぽを向きながら洗い呼吸を繰り返すチンクに向けて口を開いた。

 

「………笑わない」

「は…?」

「そのセントウキジン?っていうのは知らないけど……人の“キラキラ”を笑う程、私は狭量じゃない」

「お前……」

「(それに、異世界人までお姉ちゃんの魅力が通用するのは嬉しいし……)でも、それ以前にファンなのを隠す理由がわからない」

「ッ!だが、私はノーヴェ達の姉として…腑抜けた姿などを見せるわけには……」

「…それは違う。なんであろうと、貴女のくろむちゃんが好きっていう“欲”は間違ってない。素直になる方が一番キラキラしてる」

「よ、欲に素直に……だが、失望されるではないか……?」

「…貴方の姉妹って、そんなことで失望するくらい薄情なの?」

「ッ!そんなことはない!!」

「……なら、それが答えじゃないの?」

 

 守秘義務のため、自身がくろむの妹であるということは明かさないながらも…ここまで真剣にくろむに夢中になっているチンクを微笑ましく思う。

 それに青入間と面識があるという事は、自分がいた世界とは違う平行世界のくろむである可能性が高いが、それでも尊敬する姉の魅力は凄まじいものなのだと、チマは常人が見れば分かりにくいが……とても満足そうな笑みを浮かべる。

 

 しかし、その時──

 

「ッ!!!!!」

 

 乙女の直感ともいうべきか、それとも何かの本能というべきか……チマの脳内に、ある警報が響き渡った。

 

「……これは」

「ん?ど、どうした……?」

 

 チンクの疑問には答えず…チマは魔力を操り、自身の周りに吐息すら凍てつくような極寒の冷気を発生させると、鬼の形相を浮かべながら叫んだ。

 

「……イルマ先輩が、ユエさんと二人きりになってる気配がする!!!」

 

ズドォオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!!!

 

 その瞬間、チマが発生させた巨大氷山が、轟音を立てながら目の前の壁を破壊した。

 チンクが突然の事に眼を見開いていると、氷山によって破壊された壁の穴から、壁の構造的にありえない建設のされ方をされている通路が露になった。

 

「こ、これは……隠し通路か………?」 

「……………」

「ッ!お、おい待て!?」

 

 嫉妬オーラを放ちながらズンズンと隠し通路を突き進み始めるチマを追い、チンクは慌てて彼女の背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……?あの、入間さん。何か今、変な音がしませんでしたか?」

「え?変な、音…?いや、何も聞こえなかったけど……」

 

 ライダーコロシアムの観客席に座っていたエリオは、突然聞こえてきた爆音のようなものに首をかしげる。しかし、その音が聞こえなかった青入間達はエリオの言葉に疑問符を浮かべながらも、コロシアムのモニターに映る光景に眼を向けていた。

 

 そこでは、様々な廃材が錯乱する廃工場内で…銅褐色の蟹を模した戦士──仮面ライダーシザースと、黒く西洋風のデザインが施されているスーツの上に金と赤をベースとした兎型にカットされたリンゴを模しているアーマーを装着した戦士──仮面ライダーマルスがぶつかり合っている光景が広がっていた。

 

 

STRIKE VENT

 

 

「はぁっ!!!」

「くっ!?」

 

 シザースは左腕に装着されている鋏が付いた手甲型の召喚機“シザースバイザー”にアドベントカードをセットすると、右腕に巨大な蟹のハサミを模した籠手“シザースピンチ”を装備した状態でマルスに向けて振り下ろすが、マルスはその一撃をアップルリフレクターでそれを防ぐ。高い防御力を誇る盾の前にシザースは一度弾かれたように距離をとるが、体勢を立て直し、再びシザースピンチを振るうために走り出す。

 

「“天翔閃”!!」

「ッ!」

 

 そこへ、マルスがソードブリンガーから光の斬撃を放つ。それを見たシザースは、ベルトに装填されたカードデッキから一枚のカードを引き抜いた。

 

 

GUARD VENT

 

 

 カードを使用し、シザースバイザーの上に重なるように装着された蟹の甲羅を模した盾“シェルディフェンス”を装備したシザースは、ダイヤモンドに匹敵する盾を前にだしてマルスの斬撃を完璧に防ぐと、シザースはカードデッキから新たに取り出した一枚のカードを、シザースバイザーに装填した。

 

 

ADVENT

 

 

 その瞬間、シザースの近くの地面が鏡面に変化し、そこからずんぐり体型をしている銅褐色の蟹を模した二足歩行のミラーモンスター──【ボルキャンサー】が現れる。仮面の下で眼を見開くマルスを無視して、シザースとボルキャンサーは巨大な鋏を構えて走り出した。

 

「ッ!ぐっ!?うあぁっ!!?」

 

 ボルキャンサーの振り下ろした鋏をアップルリフレクターで防ぐが、そこへシザースが繰り出したシザースピンチの一撃に襲われ、マルスはボディから火花を散らしながら地面を転がる。しかし、それほどのダメージは負っていなかったようですぐに起き上がったかと思うと…何を思ったのか、シザースに向かって声を張り上げた。

 

「おい!反則だぞ!!」

「……何?」

「これは一対一の対決のはずだろ!?なのにそんな奴を使って二対一だなんて、卑怯だと思わないのか!!??」

「……まるで意味がわかりませんね」

 

 この場合、シザースの行いは反則ではない。龍騎系のライダーは総じて契約したミラーモンスターを使役する事が出来る為、広義の意味では特殊能力のようなものだ。故に、シザースの召喚には反則負けになるような要素など、何一つ存在しなかった。

 

 シザースは、マルスの言い掛かりとも言える言葉を無視すると、カードデッキからライダークレストと同じマークが刻まれたカードを取り出し、それをシザースバイザーに装填した。

 

 

FINAL VENT

 

 

 その瞬間、シザースの背後に立ったボルキャンサーは両手の鋏を重ね合わせると、シザースはその鋏を踏み台にして高く跳躍する。

 そうして、宙を飛ぶシザースは膝を抱えて丸まり、高速で前回転しながらマルスに接近する。

 

「はぁっ!!!!!」

「うぁああああああああああっ!!!!!?????」

 

 高速前回転による体当たり──シザースの必殺技である“シザースアタック”が炸裂し、マルスは爆発を起こしながら吹き飛ばされた。

 

「ぐっ…!ガハッ!?あ、あぁ……ッ!!!」

「これで、私の勝ちです……!」

 

 必殺技によるダメージが大きくて立ち上がれないマルスに対し、シザースはシザースピンチを構えながら…ボルキャンサーと共にゆっくりと歩み寄る。

 

「ッ!?ハァ、ハァ、ハァ……!(こ、殺される!!)」

 

 マルス(光輝)は、シザースが向けてくる明確な殺意に、全身を震わせた。

 人より多くの戦闘を経験している光輝だが、実は明確に殺意を向けられた経験は非常に少ない。大迷宮の魔物達は、所詮は知能の低い獣であり、“神の使徒”としてのチート持ちのクラスメイト達で蹂躙できるレベルだったし…バダンにとって光輝は取るに足らない虫けら程度にしか見られておらず、明確な殺意を向けられてはいなかった。せいぜい、ハイリヒ王国にやって来たガハルド皇帝に僅かに向けられた程度だ。故にシザースから明確に自身へと向けられた殺意に、光輝(マルス)は、気づけば無意識に動き出していた。

 

「ぁ、っ、うぁわぁああああっ!!!“限界突破”ァッ!!!!!」

「ッ!」

 

 マルスは悲鳴とも絶叫ともつかない叫びを上げながら、“限界突破”を発動した。己の勝利を疑っていなかったシザースは、マルスの体から溢れだした魔力の本流に押されて後退すると、即座に詠唱を完了させていたマルスが大技を放った。

 

「“天翔剣四翼”ッ!!!!!!!」

「なっ!?ぐわぁっ!!!?」

 

 ソードブリンガーから曲線を描く四つの光の斬撃が放たれ、まるで金色に輝く鳥のように飛翔する。予想外の攻撃にシザースは避けることができず、四つの斬撃が直撃した腹部から爆発を起こしながら吹き飛ばされた。

 

「…あの勇者、“限界突破”を使ったみたいですねぇ」

「死を目の前にして、ほぼがむしゃらに発動したな……相変わらず見るに耐えんな」

「ですが、今の奴には紛いなりにも仮面ライダーマルスの力があります。時間制限さえこなければ、勝てるかもしれませんね」

 

 観客席からその映像をリアルタイムで目にしていたバビルの面々は、取り乱した光輝(マルス)の姿に呆れたような表情を浮かべながらも、十中八九シザースには勝てるだろうと見越してコメントをいれる。

 

「いや……もしかすれば、ちと面倒な事になるやもしれぬぞ」

 

 ただ一人、口元を扇子で隠したティオはスクリーンの向こうで、V()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()シザースの姿をみて、目を細めながら呟いた。

 

 一方、廃工場にいたマルスは、荒い呼吸を繰り返しながら体勢を整え、再びシザースに向かって走り出そうとした時、シザースの腹部から聞こえてきた音に、足を止めた。

 

ピシッ!ピシピシピシッ!!バキンッ!!!

 

「「ッ!?」」

 

 それは、シザースが腰に巻いたVバックルに装填されたカードデッキがひび割れ、粉々に砕け散る音だった。マルスとシザースがそのベルトに注目した瞬間、シザースの体から粒子が溢れだし、その背後から声が聞こえてきた。

 

「バカな……!契約が…ッ!?」

『グルルルル……!』

「ッ!!!!!」

「アイツが召喚したカニッ!?何で……!」

 

 振り返ると、シザースの背後に控えていたボルキャンサーが、唸り声をあげながらシザースを睨み付けていたのだ。

 

 龍騎系ライダーは、ミラーワールドに存在するミラーモンスターと契約を結ぶことで力を得ており、その契約の証とも言えるのが『アドベント』のカードだ。そのカードの紛失や破棄…そして、カードを収納するカードデッキの破損は、モンスターとライダーは契約する前の関係──捕食者と被食者の関係に戻ることを意味している。

 

「私は、今度こそ…絶対に生き延びて……ぐぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!!!???????」

 

グチャッ!バリッ!!バリバリッ!!!

 

 ボルキャンサーの巨大な鋏がシザースの体を包み隠し、不快な補食音と、シザースの断末魔の悲鳴が響き渡る。

 かつての吉野真央と同じ光景を目にして硬直するマルスを放置し、不快な音を響かせながらボルキャンサーはシザースの装甲を砕き、肉を食らっていく。

 

「ア、アイツ……仲間を食って……!?」

 

 マルスが信じられない様子で呆然とその光景を眺めていると……補食音が止まり、ボルキャンサーはゆっくりと顔を上げてマルスを睨み付ける。その鋏と口元には、大量の血液が付着していた。すると、ボルキャンサーはマルスに狙いを定め、唸り声を上げながら歩み寄ってくるのをみて、マルスの緊張感は限界を超えた。

 

「ッ!!!うっ、うぉおおおおおおおおおっ!!!!!」

『シャアッ!!!』

「ぐぁっ、ああああああああああ!!!???」

 

 マルスはソードブリンガーを構えてボルキャンサーに斬りかかるが、鋏に剣を弾かれて再び攻撃を受けると、凄まじい速度で吹き飛ばされながら無数の廃材の中に埋まるように倒れ込む。

 そこへ、ボルキャンサーは瀕死の獲物を食らおうと走り出した時、マルスは咄嗟に戦極ドライバーのカッティングブレードを2回倒した。

 

「くっ、来るなぁああああああああああっ!!!!!」

 

 

カモン!ゴールデンオーレ!!

 

 

「“天翔閃”ッ!!!!!!!」

 

 振り抜かれたソードブリンガーから、巨大な黄金の斬撃が飛ばされ、ボルキャンサーの体に黄金の剣閃を刻み込む。

 

 非殺傷設定の実験のために白入間が片手間で作った試作品で、従来のものより若干スペックが劣ってるとはいえ、アーマードライダーの中でも非常に抜きん出たスペックを誇るマルスの必殺技の前には、流石のボルキャンサーも為す術はなく、傷跡から火花を散らしながら仰向けに倒れ、盛大に大爆発を起こした。

 

『WINNER! MARS!!』

 

 勝利の確定を示すアナウンスが響き渡る。

 しかし、マルスはその勝利に歓喜する心の余裕は存在せず、地面に突き立てて杖がわりにしたソードブリンガーの柄を力強く握りしめた。

 

 その光景を、モニター越しに見ていたミッドチルダ組は、心配そうな眼差しを光輝に向けていた。

 

「……あの人、大丈夫かな」

「なんだか、余裕なさそう……」

「でも、あんな事になったら仕方ないかも……」

 

 そう言いながら、スバルはシザースの末路を思い出して顔を青くした。エリオとティアナ、そして白入間達も、幾度もの視線を潜り抜けてきたとは言え、こう言った血みどろの戦いに慣れていない面々は、顔を青くして震えていた。

 

 一方で、殺し合いに慣れているバビルの面々は、その光景に今更どう思う事などある筈がなかった。

 

「…あの勇者、今回はいつになく取り乱してましたねぇ。彼もそこそこ戦闘経験ある筈ですし、人死にも目にしてきましたよね?いや、慣れる筈がないのが当たり前なんですけど……ちょっとオーバーな気がしますねぇ」

「うん、スッゴク慌てんぼさんだった。アズアズ、何でなのかな?」

「状況が悪かったのやもしれぬな。奴はこれまで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いくら戦いと言っても、()()()()()()は大きく違うからな」

「それの結果、間接的にとはいえ…シザースを殺す結果になってしまうとはな……はてさて、勇者の坊やはどうするのやら」

「案外、すぐに忘れたりして?」

「どちらにせよ、あの性根をなんとかしない限りは私達バビルに同行しようが単独行動しようが…神代魔法を手に入れるどころか、大迷宮の攻略すら無理だろうな」

 

 シア、クララ、黒アズ、ティオ、ミレディ、アメリの順に、オーロラカーテンを介してフィールドに戻ってきた光輝を見据えながら、呆れたように酷評を並べるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇の通路を突き進んでいた白入間達は、やがて大きな扉の前に辿り着いた。鋼鉄で作られたであろう重厚な扉に……そうして、白入間が巨大な取っ手に触れ、押したり引いたりしてみるが、びくともしない。

 

「ダメか……」

「……でも、怪しい」

「何か隠されているのは事実だろう。はてさて、どうしたものか……」

「……ブッ壊す?」

 

 開く手段を模索し、デモンサンダーは待機状態のバルディッシュを手にしながら尋ねる。

 

「いや、ここは……園部さんにやってもらおう」

「私ッ!?なんでそんな……あっ!」

「思い出したみたいだね」

 

 矛先を向けられた優花は咄嗟に否定しようとするが…すぐにその手段を思い出し、優花はロストドライバーとエターナルメモリを取り出した。

 

「ッ!それは……」

 

 

ETERNAL!

 

 

「変身」

 

 

ETERNAL!!

 

 

 荘吉はそれを見て目を見開くが、優花は気づかぬままエターナルに変身。エターナルエッジを装備すると、一本のガイアメモリを取り出し、エッジに装填した。

 

 

KEY!

 

KEY MAXIMUM DRIVE!!

 

 

 鍵の形をしたオーラを纏ったエターナルエッジを扉に突き刺し、『鍵』の記憶を内包したメモリの力で扉が解錠され、ゴゴゴ…と音を立てながら左右に扉が開かれる。

 

 エターナルはドライバーからメモリを抜いて変身を解き、白入間達は開け放たれた扉の向こうに足を踏み入れると──その先に広がっていた光景に絶句した。

 

「なんて光景だ……」

 

 白入間が静かに呟いた。

 そこに広がっていたのは、2kmは続くであろう広大な部屋を、無数の生体ポッドが埋め尽くし、内包されている不気味な緑色の液体が怪しく光を放ちながら光源となっている光景であった。

 更に、そのポッドの中にいる存在も目にして、彼等は更に眼を見開く。

 

「彼は……RX!Gにメテオ…アギレラとデストリーム、サウザー……!!」

「ッ!?宮崎さん!菅原さん!玉井君!仁村君!相川君!八重樫さん!谷口さん!」

「リリィまで……!」

 

 不気味な液体の中にいたのは、これまでの試合で敗北し、オーロラカーテンの向こうへと消えていった仮面ライダーの姿だった。更に、変身が解除され…生まれたままの姿で生体ポッドに入れられた雫達の姿も含まれていた。

 

 愛子と優花が雫達が入ったポッドに駆け寄る中…士達は、そのポッドの行列の前に設置された様々な書類や本が積まれた簡素な机に眼を向け、物色を始めた。

 

「……どうやら、仮面ライダーについて調べられているな」

「ガッチャードの事だけじゃなくて、バビル(アンタ等)の事についても調べられてるわよ。何でこんなに……」

 

 士とデモンサンダーが疑問符を浮かべながら呟くと、部屋の捜索していた荘吉と英寿は、壁際にある謎の装置を見つけ、ショーケースの中に納められた()()を見て、英寿が声を上げた。

 

「どうやら、これを作るのが敵の目的だったみたいだな」

 

 その言葉に、白入間達も英寿と荘吉の下に集まると、英寿はそのショーケースを開く。

 そこには、無数の“レジェンドライダーの変身ベルトのイラストが施された小型のバックル”が並べられていた。

 

「これって……!」

「おそらく、ライダーの力を宿したレイズバックルだ。このバックルのイラストを見る限り…どうやら大会に負けたライダー達はここに送られ、コイツを作る為に利用されていたという事になるな」

「なるほど。俺達が蘇った理由はわからずじまいだが……あの仮面の女の目的は読めた。ライダー同士の大会は言わば消耗戦……優勝者の願いを叶えると唆すことで躍起にさせ、体力を使い果たしたライダー達を一斉に捕えることが奴の狙いという事か……」

 

 英寿と荘吉の推理に、白入間は全ての辻褄があったと言わんばかりにため息を吐いた。今にして思えば、あの時に白入間が見つけたガルメも、試合に敗北したジオウかRXのどちらかを拘束するための監視役だったのだろう。

 

「とりあえず、こんな不愉快なものは残しておいても意味ないし……畑山先生、そこ退いてください。全部まとめて消し飛ばします」

「え゛っ」

「ちょ、ちょっと!?アンタ、なんでミサイル(そんなもん)持ってんのよぉっ!!?」

 

 右肩に巨大なミサイルランチャー“ギガント”を装備した白入間が引き金を引こうとするのを、愛子と優花が慌てて止めにはいる。このままでは助けるどころか爆殺しそうな勢いだ。変身した状態のライダー達は平気かもしれないが、生身の姿でいる雫達は無事では済まない。

 

 愛子と優花の説得、そして士と荘吉に咎められたことでギガントをしまった白入間は、時間はかかるが、ポッドを一つ一つ解錠していく方法をとろうとした時……

 

「「「「イーーーーッ!!!」」」」

「「「「グォオオオオッ!!!」」」」

「「「「ジュラピラーー!!」」」」

 

 白入間達が入ってきた扉の外側から、【ショッカー戦闘員】【チャップ】【ノバショッカー戦闘員】【マスカレイド・ドーパント】【屑ヤミー】【ダスタード】【グール】【眼魔コマンド】【トリロバイトマギア】【シミー】【ギフジュニア】【ポーンジャマト】といった、歴代仮面ライダーの戦闘員の軍勢が、拳や武器を構えながら、白入間達に突撃してきたのだ。

 

「な、なな、なんですか!この人達はぁッ!?」

「さながら、捕獲した戦利品を逃がさないための衛兵って所ですね!」

 

 慌てる愛子を他所に、白入間は先頭で武器を振り上げてきたショッカー戦闘員を蹴り飛ばしてから、ユエに視線を向ける。ユエは、コクリと頷くと、ウィザードリングも魔法と使う様子を見せずに、手の骨をコキコキと鳴らしながら前に出た。

 

 魔法で一掃する手もあったのだが、万が一にも施設に影響を及ぼして、今もなお生体ポッドに閉じ込められたライダー達に影響を及ぼすわけには行かないため、生身での戦闘を選択したのだ。とはいえ、この場にいるのはどれも猛者ばかり。戦闘員レベルの相手に負ける要素は一つもない。

 心配なのは愛子と優花くらいだが…… 

 

「先生、園部さん。自分の身は自分で守ってくださいね。自分からここに来たんですから、どうなっても知りませんよ!」

 

 その言葉と共に、白入間とユエは同時に走り出し、士と英寿は愛銃を手にし、デモンサンダーと荘吉は動きにくいジャケットを脱いでから走り出し、愛子と優花を置いて戦闘を開始した。 

 

「ふっ、はっ!」

 

 白入間は、先頭から襲い掛かってきたショッカー戦闘員を合気道張りの動きで受け流しながら、鳩尾に膝蹴りを御見舞いして悶えさせると、踞った背中に片手をついて、帽子が飛ばされないように片手で抑えながら、側転の要領で背後にいたグールに蹴りを落として地面に叩きつける。

 

 続いて向かってきたグールが突きだした槍を片手で掴み、グールの腹部を蹴って槍を奪い取ると、その槍を投擲して五体の戦闘員を指し貫いて壁に磔にさせる。続いてやってきたマスカレイド・ドーパントのパンチを腕で受け止め、カウンターで顔面にパンチを食らわせると、肩がけしていた上着を一度脱ぎ、目前から剣を振るおうとしていたダスタードの顔面に被せる。

 

「おりゃっ!!」

 

 視界が遮られて慌てるダスタードに回し蹴りを炸裂させ、白入間は倒れたダスタードから上着を取り返して再び肩に掛けると、横から迫ってきた屑ヤミーを殴り飛ばし、走り出して跳躍すると、壁に片足をつき、その壁を蹴った。

 

「はぁっ!!!」

 

 三角飛びの要領で、眼下にいたポーンジャマトを地に沈めると、更なる戦闘員を目にして、再び走り出した。

 

「……んっ!邪魔ッ!!」

 

 ユエは黒のミニスカートをフワリと翻しながら、グールの顔面に鋭い回転蹴りを炸裂させる。

 

体を180度回転して地面に頭をぶち当たってこと切れたグールを無視して、ユエは体をクルクルと回転させながら、戦闘員達の振り下ろす武器を避けていき、目前まで迫ってきたシミーの剣を持つ腕を掴んで受け止める。

 

「……はっ!」

 

 腹部に蹴りをいれてから、回転で勢いを増したアッパーを食らわせ、体を回転させて地面に倒れるシミー。更に前方から迫ってきた眼魔コマンドとショッカー戦闘員に連続で蹴りをいれると、バク宙のような動きで二人の顎に蹴りをいれて吹き飛ばす。

 更に無数の戦闘員が迫ってくると、ユエはガンモードのウィザーソードガンを手にし、数発の銃弾を放って戦闘員達を撃ち抜くと、武器を手に向かってくる射ち漏らしにウィザーソードガンの銃身を叩き付けた。

 

「はぁっ!!!」

 

 そして、ユエは片足を軸に何度も回転し、迫り来る戦闘員の顔面に鋭い蹴りを叩き込み続け、その場にいた全員を地に沈めた。

 

「はっ!てりゃっ!!」

 

 デモンサンダーは眼魔コマンドの顔面に回し蹴りをいれて倒れさせると、マスカレイド・ドーパントの足を払う。続いて迫ってきたシミーの首筋にチョップを叩き込み、反対側から来た屑ヤミーを蹴り飛ばす。

 その時、ダスタードの一体が、デモンサンダーの後ろから飛び掛かってきた。

 

「おりゃぁっ!!!」

 

 しかし、デモンサンダーは肘鉄をいれてダスタードを悶えさせ、背負い投げの要領で、そのダスタードを高く投げ飛ばした。そのダスタードは、デモンサンダーに迫ろうとしたいた戦闘員軍の真ん中に落下し、戦闘員達はダスタードに押し潰されて地面に倒れる。

 

 しかしその時、戦闘にいたショッカー戦闘員が、ダスタードの墜落によって倒れた仲間に背中を押され、武器を手放して倒れ込むように前に押し出された。そのショッカー戦闘員は、咄嗟にバランスを取ろうと手を彷徨わせ……

 

もにゅんっ♡

 

「イ?」

「えっ?」

 

 ショッカー戦闘員と、デモンサンダーの眼が丸くなる。

 何故なら、バランスを崩したショッカー戦闘員の手は、目前でショッカー戦闘員が迫ってくるのを察して振り返ったデモンサンダーの豊満な胸をガッシリと掴んでいたからだ。

 

「ッ!ちょっと!!何すんのよ!!!」///

 

 途端に顔を真っ赤にしたデモンサンダーは、ショッカー戦闘員の腕を払い、プロボクサーも顔負けのストレートを顔面に食らわせ、更に足を振り上げてショッカー戦闘員の股間を強打する。

 歯が砕けるようなストレートを食らい、股間を抑えて悶えるショッカー戦闘員は、続けてデモンサンダーとは別方向から飛んできた銃弾を頭に食らい、悲鳴を上げながらぶっ倒れた。

 

「まったく、何をしてるんだアイツは……」

「おっ?ディケイド。お前、まさか妬いてるのか?」

「アホなことを言うな。それから、先輩には敬語を使え」

「生憎、俺はお前よりも年上だからな♪」

 

 そのショッカー戦闘員にライドブッカーの銃弾を撃ち込んだ士と背中合わせになりながら、マグナムシューター40Xを手にした英寿と軽口を叩き合う。しかし、言葉では呑気に会話しているというのに、二人は迫ってくる戦闘員達を一発も射ち漏らすことなく銃を放ち、戦闘員達はまるで近づくことが出来なかった。

 

「とぉっ!」

 

 ジャケットを脱いだ荘吉は、帽子を手で抑えながら、姿勢を低くして屑ヤミーやマスカレイド・ドーパントの蹴りを回避すると、机に両手を乗せ、両足で2体を蹴り飛ばす。更に向かってくるシミーの攻撃を受け流しながら投げ飛ばし、背後のチャップにハイキックを食らわせる。

 

 トリロバイトマギアを殴って後退させると、一体のギフジュニアが飛び掛かってくるのを眼にして、荘吉は足を振り上げた。

 

「はぁっ!!」

 

 顔面を蹴り飛ばされたギフジュニアは地面に墜落し、荘吉は帽子を抑えながら、クルクルと地面に着地した。

 

「このっ!よって…来ないで!!」

 

 優花は、アーティファクトのナイフを三本投擲し、ノバショッカー戦闘員、トリロバイトマギア、ギフジュニアの体に突き刺して倒れさせる。

 更に戦闘員がやって来るのを見た優花はアーティファクトのナイフとは別にエターナルエッジを手にすると、地面を転がってダスタードが振り下ろした刀を避けてナイフを投擲。ナイフが命中して倒れるダスタードを踏み越えてトリロバイトマギアと眼魔コマンドが剣を振り下ろすと、優花はエターナルエッジとナイフでそれを受け止める。しかし、二人がかりの攻撃を止め続けるのは無理があり、優花はギリギリと押されていってしまう。

 

「……っ!うらぁっ!!!」

 

 そこで、優花はトリロバイトマギアの腹部を蹴り、二人の体制が崩れた隙をついてエターナルエッジを逆手に持ち変えて眼魔コマンドに突き刺す。

 倒れる眼魔コマンドからエターナルエッジを引き抜きながら、優花は体を回転させてトリロバイトマギアの顔面に蹴りを叩き込んだ。

 

「はぁ…はぁ……!私だって、アメリさん達に鍛えてもらってんのよ!!」

 

 頬を伝って顎まで落ちてきた汗を拭いながら啖呵を切った優花は、マスカレイド・ドーパントの顔面を思いっきり殴り付け、鈍い音を響かせながら地面に倒れさせた。

 

「あわっ、あわわわっ!」

 

 愛子は、シミーや眼魔コマンドの振り下ろしてくる剣を、可愛らしい悲鳴を上げながら、逃げ回るように回避していく。

 その時、愛子の背後に現れた屑ヤミーが、愛子の背中に蹴飛ばすと、愛子は堪らずバランスを崩しながら前のめりに倒れる。

 

「あぐっ!?」

 

 その時、偶然にも前にいたトリロバイトマギアの腹部に、愛子の頭が直撃し、トリロバイトマギアは腹部を抑えて倒れると、その上に股がった愛子は頭を抑えながら痛みに耐えていたが、再び屑ヤミーが迫ってくる事に気づいた愛子は、トリロバイトマギアを殴ってから慌ててその場から飛び退く。

 

「こ、来ないでくださぁい!!!」

 

 壁際まで逃げてきた愛子は、飛び掛かる屑ヤミーを横切るように避けながらその背中を押し、壁に激突させて屑ヤミーを気絶させる。その後も、戦闘員達は武器や拳を構えて突撃してくるが、愛子は逃げ回るように回避していく。

 その時、愛子の左右から、槍を持ったグールと、刀を手にしたダスタードが、同時に愛子に飛び掛かった。

 

「ひゃあっ!!?」

 

 愛子は頭を抑えながら咄嗟に屈むと、空振りになったダスタードとグールの武器がお互いの体に炸裂し、二体は火花を散らしながら仰向けに倒れた。 

 

 そうやって、白入間達は一切の傷を負うことなく、次々と戦闘員を蹴散らしていった。

 

 歴代仮面ライダーの戦闘員達は、その殆どが一定の格闘技術があれば生身の人間でも倒せる程度の力しかない。その程度の相手に、このチート軍団が相手では何体来ようが勝てる筈がない。

 しかし、やはり問題は数だ。倒しても倒しても、倒した個体が消えて新しく湯水のごとく沸いて出てくる戦闘員を相手にするのは、正直言って面倒すぎる。最初は大したことはないと思っていた白入間も、百体近い戦闘員を倒したところで、ユエに声をかけた。

 

「しょうがないなぁ……ユエ、頼める?」

「……ん、問題ない。その代わり、後でカプチューさせて♡」

 

 白入間の頼みを察したユエは、妖艶な雰囲気を撒き散らしながら“神罰之焰”の準備を始める。鍛練を怠っていないとはいえ、高度な魔法の行使にはやはり僅かに時間が必要なために集中状態にはいったユエを守るべく、白入間はユエのもとへ向かおうとした、その時だった。

 

パキィイイイイインッ!!!!!!!

 

 地面を伝うように発生した氷山が、戦闘員達を一斉に空に吹き飛ばした。

 白入間達が眼を丸くし、ユエも集中状態を解いてその光景を見ていると、白入間とユエの前にたつように、小さな影が2つ現れた。

 

「ちっ、チマちゃん!?」

「チンク、お前も来たのか?」

 

 そう、その影の正体は、チマとチンクだったのだ。

 予想外の人物の登場に白入間は軽く混乱していると、チマはトコトコと白入間の前に近寄り、ムギュッ♡と白入間の腹部に抱きついた。ますます混乱する白入間に対し、ユエは神罰之焰を中断して、白入間に抱きつくチマを引き剥がした。

 

「何をするんですか?人が折角、恋人との甘い時間を過ごしてたのに……」

「……チマ、良い度胸」

「今や私もイルマ先輩の恋人です。恋人とイチャイチャするのは当然の事では?」

「……ふぅん、どうやら図に乗りすぎてるらしい。少しお灸を据えてあげる」

「ユエさんこそ、心狭いですねぇ……頭を(物理的に)冷やしますか?」

 

 互いに雷龍と氷山を背負いながら、黒い笑みを浮かべて睨みあうユエとチマ。

 そうしている間にも、再び湯水の如く沸いて出てきた戦闘員達が白入間達に襲いかかろうとした瞬間、虚空から出現した無数のナイフが戦闘員達の身体や地面に突き刺さり、凄まじい大爆発を起こした。

 

「浮世英寿。この場所の事やこの状況について、後でちゃんと説明してもらうぞ」

 

 

スクラッシュドライバー!

 

 

 自身のナイフ型固有武装“スティンガー”とIS“ランブルデトネイター”を組み合わせた力で大量の戦闘員を爆撃したチンクは、羽織っている灰色のコートから水色をベースカラーとしたレンチ、プレス機、タンクなどの様々な機器が組み込まれたベルト──“スクラッシュドライバー”を取り出して腰に当てる。ドライバーから帯が伸びて腰に装着されると、ロボットのイラストが描かれた金色のゼリーパウチ型アイテム──“ロボットスクラッシュゼリー”のキャップを回し、スクラッシュドライバーに装填した。

 

 

ロボットゼリー!

 

 

 待機音が鳴り響き、チンクは戦闘員達を指差すように左手を向けると、その手をスナップさせる。

 

「変身!」

 

 その言葉と共に、チンクはスクラッシュドライバーのレンチを象ったレバーを倒す。

 すると、チンクの体を巨大なビーカーのようなものが包み込み、ビーカーの底から黒い液体が注入されながら彼女の全身を覆うほどまで充満し、ビーカーが自然と捻られて包み込みながら弾けると、小柄だったチンクの体が成人女性と同等まで大きくなり、ゼリー飲料の飲み口を象った頭部に金色と黒を基調としたライダースーツを形成する。

 

 

潰れる!流れる!溢れ出る!

 

ロボット・イン・グリス!!

 

ブラァッ!!!

 

 

 頭頂部から溢れ出した金の光沢がある黒いゼリーが顔と上半身に纏わりつき、ロボットアームのイラストが描かれた金色のゼリーパウチ型ショルダーアーマーとクリアブラックの仮面と胸部装甲を形成することで変身が完了する。

 

 金と黒を基調とし、額には一本の角のような突起を生やした赤い複眼を持つクリアブラックの仮面のロボット戦士こそ、チンクが変身するライダー──【仮面ライダーグリス】である!

 

「心の炎…心火だ。心火を燃やして……叩き潰す!」

 

 

ツインブレイカー!

 

 

 決め台詞と共にパイルバンカーを思わせる籠手型の可変武器“ツインブレイカー・アタックモード”を左手に装備したグリスは、勢いそのままに戦闘員達へと突撃する。

 

「はぁッ!!!」

 

 グリスは目前にいたショッカー戦闘員にラリアットをお見舞いし、そのまま首を掴んでショッカー戦闘員の体を軸としてぐるりと回りながら、背後の眼魔コマンドとグールに蹴りを食らわせると、グリスは軸に利用していたショッカー戦闘員を投げ飛ばす。

 そこへ迫ってきたマスカレイド・ドーパントの拳を受け止め、ツインブレイカーのパイル先端を腹部にめり込ませ、その痛みに蹲ったマスカレイド・ドーパントに強烈なエルボーを叩き込む。

 

「ふんっ!!!!!」

 

 屑ヤミーの頭を何度も殴りつけて倒れさせ、続けてノバショッカー戦闘員の腹部を蹴飛ばすと、すぐにツインブレイカーのパイル先端を収納し、2門の砲身を備えた砲撃形態である“ツインブレイカー・ビームモード”に切り替えると、銃口から無数のスティンガーを放って戦闘員達を狙撃。ナイフが突き刺さった瞬間、チンク(グリス)のランブルデトネイターにより、戦闘員達は大爆発を起こした。

 冷静沈着が売りのチンクとは似ても似つかない荒々しいファイトスタイルの前に為す術もない戦闘員達。すると、グリスは取り出した二本のフルボトルを振りながら声を上げた。

 

「打倒!」

 

 

シングル!ツイン!!

 

 

「攻略!!」

 

 

ツインブレイク!!!

 

 

 取り出しであろう薔薇の絵柄と錠前の絵柄が描かれたボトル──“ローズフルボトル”と“ロックフルボトル”のキャップを回し、ツインブレイカーの手前にあるスロットに装填する。

 そして、その場で回転しながらツインブレイカーを振りかざすと、パイル先端から鎖と茨が射出され、無数の戦闘員達を縛りつけるようにがんじがらめに拘束する。

 

「無双!!!」

 

 

スクラップフィニッシュ!!

 

 

「私の前に、ひれ伏せぇええ!!!!!!!」

 

 グリスはその場で高く跳躍しながらスクラッシュドライバーのレンチ型レバーを倒し、右前腕部にヴァリアブルゼリーで巨大なロボットハンドを形成すると、そのまま勢いよく振り落としながら、拘束された戦闘員達を大ダメージを与え…そうして勢いそのままに豪快なアッパーカットを繰り出して、一斉に空へと吹き飛ばす。悲鳴を上げて打ち上げられた戦闘員達は、空中にて大爆発を起こした。

 

「灼熱!発光!!照射!!!誰が私を満たしてくれるというのだぁああああ!!!!!」

 

 戦いとすら呼べない一方的な蹂躙を成したグリスは、腕をブンブンと振り回しながら、天に向かって雄叫びを上げた。

 

「あの子、キャラ変わってない?」

「随分と気性の荒いレディだな……」

「…スクラッシュドライバーの副作用だね。戦えば戦う程、好戦的な気質になっていく。けど、何で言動まで本来のグリス(一海さん)とおんなじになってんのかな……」

「……ん。何処となく、シアの家族に似てる」

「まぁ、これなら戦闘員は問題ない。俺達はやるべき事をやるぞ」

「ッ!そうでした、早く八重樫さん達を助けないと!!」

「いや、時間が無さすぎる。ここはひとまず退くぞ」

「…この程度、何万体来ようと平気ですけど?」

「この事は青入間達にも話さないといけないからな。ここにいる奴等を助けるのは、その後でも問題ない筈だ」

「なら、さっさとズラかるわよ!!!」

 

 白入間達がグリスの蹂躙劇を傍観する中、一体のダスタードがアクロバティックな動きで死角から迫ってくると、グリスはあっさりとダスタードの攻撃を受け止め、鋭い右ストレートを繰り出した。

 

 ダスタードは悲鳴を上げながら殴り飛ばされると、偶然にも背後に合った生体ポッドのうち、リリアーナが囚われたポットに体を激突させると、強化ガラスに罅が入り、次の瞬間には完全にポットが破壊され、液体と共にリリアーナの体が投げ出された。

 

「ッ!リリィ!!」

 

 優花は慌てて落下するリリアーナの元へと駆け寄り、倒れそうになった彼女の体を受け止めた。

 

「ほぉ、やるじゃないか」

「まぁ、俺の協力者なんだから当たり前だろ。チンク、ここは一旦退くぞ!暴れるのはこの後だ!!」

「ッ!良いだろう……!!」

 

 英寿の元まで後退したグリスは、まだまだ戦闘員が残っている姿を見て、新たに消しゴムの絵柄が描かれたフルボトル──“消しゴムフルボトル”を取り出してシャカシャカと振ると、キャップを回した状態でスクラッシュドライバーに装填し、レンチ型レバーを倒した。

 

 

ディスチャージボトル!

 

潰れな~い!

 

ディスチャージクラッシュ!!

 

 

 グリスの掌から溢れだしたゲルが巨大な消しゴムの形を形成し、手の動きに連動して消しゴムを操ると…グリスと英寿の姿がみるみると消えていき、白入間達も急いで集まっていくと、やがて一同は戦闘員達の目の前で瞬く間にその姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  場所は変わり、ライダーコロシアムの会場。

 光輝以降も、ミッドチルダ組やトータス組は着々と試合を進めていき、誰一人欠けることなく第一試合を突破した面々は、観客席に座りながら、スクリーンに映るプレアデスの姿をみていた。

 

『ではでは!白熱の第一回戦も終了したところで、続いて第二回戦の開幕です!!それでは新たな対戦カードは~……この二組だぁ!!!』

 

 その言葉と共に、スクリーンに二組の対戦カードの名前が露になった。

 

仮面ライダーガッチャードサンダー(エリオ・モンディアル)VS仮面ライダーデザスト

 

「次は僕……相手は、淳史さんを倒したあの黒いライダーか……」

 

仮面ライダーガッチャード(鈴木入間)VS仮面ライダーマルス(天之河光輝)

 

「ええっ!?まさかの組み合わせ!!?」

「俺は、鈴木と戦うのか……いや、でも……」

 

 エリオは先程、淳史をフルボッコにしたライダーを思い出しながら……青入間はまさかの対戦相手に驚きながら……そして、光輝はチラリと青入間を一瞥し、何か考え込みながらと…三者三様の反応を見せてバトルフィールドに向かって歩いていく。

 フィールドに辿り着くと、三人の前に二つのオーロラカーテンが出現し、青入間と光輝、エリオは各々の試合を行うための場所へと転移していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、次のバトルステージ……」

 

 オーロラカーテンを潜り抜けたエリオが最初に見た光景は、あちこちに瓦礫が錯乱した荒廃した町並みだった。

 

「(備えるに越したことはないな……)ストラーダ(エックス)!セットアップ!!」

 

 敵は油断ならない相手だと画面越しに察していたエリオは右手首に付けた時計──待機状態のデバイスを起動すると、エリオの服装が金色の光と共に赤い半袖短パンの軍服風の衣装に、白いコートを纏ったバリアジャケットを身に纏った姿となり…デバイスは銀色とメタリックブルーを基調とし、穂先に金色のXの刻印が刻まれ、後ろ部分にカードスロットが取り付けられている槍型のアームドデバイス──“ストラーダX”に変化する。

 そして、ストラーダXを持ったエリオは、自身の対戦相手が何処にいるのかと視線を彷徨わせていると…優れた聴覚力が、何かが地面を引きずる音とアスファルトを踏みしめる音を捉え、エリオはバッと振り返った。

 

「悲しみと喜びがぐちゃぐちゃに混ざり合う、甘くて狂おしい匂いがする……」

「ッ!か、怪人……!!?」

「……お前、何者だ?人間っぽい見た目してるが、人間じゃないだろう?」

「ッ!?何を……!」

「その反応…なるほどな。お前も俺と同じ、()()()()()ってことか」

 

 そこにいたのは、右手に持つ剣の切っ先を引きずる黒い体に赤い顔を持つ怪人──デザスト。

 まさか、対戦相手が怪人だったことに驚きを露にするエリオだが、続いてデザストから発せられた言葉に表情を強張らせる。

 だが、すぐに目付きを鋭くしてストラーダXを構えると、その姿を数秒だけ目にしたデザストは愉快そうに笑い始めた。

 

「ッハハハ!その目、面白れぇ!!あの紛い物のせいでイライラしてたんだ。蓮には及ばなさそうだが、少しは楽しめそうだ……!」

 

 デザストはそう言いながら、手に持つ得物──黒嵐剣漆黒を、腰に巻いた“聖剣ソードライバー”に突き刺し、取り出した漆黒の大型の本──“骸骨忍者伝ワンダーライドブック”の表紙を開いた。

 

 

骸骨忍者伝!

 

かつての宿敵(てき)は今日の戦友(とも)
冥府の術で魑魅魍魎!!

 

 

 ライドブックを閉じて、ソードライバーの右側に装填する。

 狼の遠吠えを思わせる哀しげな待機音が響き渡り、本棚に囲まれた背景の中心に立つデザストの背後に、巨大な骸骨忍者伝ワンダーライドブックが降りてくる。

 そして、デザストは漆黒の柄を掴み、剣を引き抜いた。

 

 

漆黒抜刀!

 

 

「変身」

 

 ドライバーと背後の骸骨忍者伝ワンダーライドブックが開き、どす黒い骸骨が飛び出す。

 デザストが振るった漆黒から深紅の斬撃が飛び出し、ブックから飛び出したどす黒い骸骨がデザストに吸い込まれ、姿が変化する。

 

 

骸の咆哮、忍の残香!黒嵐渦巻く百鬼夜行!!

 

骸骨忍者伝!!!

 

 

 深紅の斬撃が顔に装着した瞬間に複眼となり、デザスト……否、仮面ライダーデザストは漆黒を肩に担ぎ、赤いマフラーを風に靡かせた。

 

 その姿を見たエリオは、怪人がライダーに変身する光景に思わず目を見開くが……すぐに気を取り直し、懐からあるものを取り出して腰に当てた。

 

 

ガッチャードライバー!

 

 

 エリオの腰に巻かれたのは、青入間とデイブレイクが使用するものと同じ“ガッチャードライバー”……しかし、二人が使うものと違い、アルトヴォークの色が黄色であり、電子音声が入間ともう一つの人格──悪入間の声が同時に響くような特殊なものだった。

 

 ドライバーを装着したエリオは、スケボーの姿をしたケミー【スケボーズ】と、侍の姿をしたケミー【アッパレブシドー】のケミーカードを取り出し、黄色いガッチャードライバーに装填した。

 

 

SKEBOWS!

APPAREBUSHIDO!

 

 

 エリオの背後に巨大なカードの幻影が現れ、スケボーズとアッパレブシドーの幻影が飛び出す。

 そして、エリオはストラーダXを上空に放り投げると、青入間の変身ポーズを真似るように両手で円を描き、重ねた手を反転させた後、矢印の先端を形作って正面に突き出した。

 

「変身!」

 

 その言葉と共に、ベルトのアルトヴォークを引いた。

 

 

ガッチャーンコ!

 

アッパレスケボー!!

 

 

 背後のカードが合体し、スケボーズとアッパレブシドーがエリオの周囲を飛び回りながら矢印型のエネルギーの渦となり、上空から降り注いだ莫大な落雷がエリオの体を包み込む。

 エリオの体が漆黒の素体である“ライダケミドール”に変化すると、そこにケミーを錬成したアーマーが次々と装着され、黄色い雷が胸の変換炉に集束し、空中でクルクルと回転していたストラーダXが落雷を浴びた瞬間に二本に増え、ジェット噴射のような勢いで、姿を変えたエリオの背中に✕字を描くように交差して装着された。

 

 そして、デザストの前に姿を現したのは…赤を基調とした武士のような鎧の至るところに黄色い稲妻の模様が施されており、背面には排熱口が配置され、両足元にはスケボー型のシューズが装着されている。頭部にはサングラスを思わせる横長のゴーグルがあり、胸にある雷のエネルギーで満たされた変換炉の真上には開いた扇子があり、仮面の向かい合う矢印型の複眼が青色となった戦士こそ、エリオが変身する戦士───【仮面ライダーガッチャードサンダー】である!!

 

「雷の匂いがするねぇ……お前も剣士か?」

「違う。僕の名前は、エリオ・モンディアル!仮面ライダーガッチャードサンダーで……機動六課の騎士だ!!」

「騎士、かぁ……それなら、俺にお前の強さを見せてみろ。雷の騎士」

「望むところだ!いざ、尋常に……勝負!!」

 

 デザストは黒嵐剣漆黒を構え、ガッチャードサンダーは背中に装備された二本のストラーダXを引き抜いて両手で持つと……二人は互いに武器を構えて同時に走りだし、火花を散らしながら武器をぶつけ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、青入間と光輝が転移したのは、草木が生い茂る草原だった。

 青入間と光輝は互いに十メートルほど距離を取ると、各々ガッチャードライバーと戦極ドライバーを腰に巻いた。

 

「あまり乗り気にはならないけど、僕にも叶えたい願いがあるんです。だから、全力で行かせてもらいます」

 

 そう言いながら、ケミーカードを手にする青入間を、光輝はジッと観察する。

 今でこそ、彼が知る入間は服装を変えているが…やはり目の前にいる青入間は、驚くほど白入間と瓜二つだ(平行世界線上の同一人物なので当たり前だが)。しかし、雰囲気は真逆と言って良いほど違う。

 ポワポワした雰囲気に、人が良さそうな笑み……それは、白入間が光輝達と転移する際にクラスメイト達に刷り込まれた記憶の中の、“無能”と呼ばれてクラス全員から見下されていた頃の入間と重なった。

 

「ああ、望むところだ……だが!」

「え?」

「先に言っておくぞ。シザース(さっきの奴)みたいに卑怯な手なんて使わずに、正々堂々と勝負しろ!!」

「卑怯?あの、なんの事か分かりませんけど……僕は別に、そんなことはしませんよ?」

「そうか、ならいい。正々堂々と勝負をする気があるのなら、こっちも本気で倒すまでだ!!!」

 

 そう言った光輝は、黄金のリンゴロックシードを構える。

 

「変身ッ!」

 

 

ゴールデン!

 

ロック・オン!

 

 

 ロックシードを解錠すると、戦極ドライバーにセットし、錠を閉じた。すると、頭上にクラックが開かれ、黄金の光と共にリンゴの形をしたアームズが光輝へと降下し、カッティングブレードを倒す。

 

 

カモン!ゴールデンアームズ!!

 

黄金の果実!!!

 

 

 仮面ライダーマルスに変身した光輝は、地面に突き刺していた聖剣を引き抜き、ソードブリンガーを収刀したままのアップルリフレクターを握り締める。

 それを見て、青入間はホッパー1とスチームライナーのケミーカードを取り出し、ガッチャードライバーに装填する。

 

 

HOPPER1!

STEAMLINER!

 

 

 二枚のカードを装填すると、青入間は更にエンジンのような形状のアイテム──“ガッチャーイグナイター”を取り出し、ガッチャードライバーに接続した。

 

 

ガッチャーイグナイター!

 

ターボオン!!

 

 

「変身!!」

 

 

ガッチャーンコ!ファイヤー!!

 

スチームホッパー!!アチー!!!

 

 

 背後で合体したカードと共に、体が炎に包まれ、新たなガッチャードの姿が露になる。

 姿はスチームホッパーと酷似しているが、ゴーグル部分は燃えているような造形となり、複眼の色も炎のようなグラデーションになっている。胸の変換炉の炎は蒼白くなり、その炉や両腕からは激しく燃え上がるような炎が溢れ出ている。そして、背中にはガッチャーイグナイターの造形に似たX型のブースター“ファイヤードッカーン”が装着されている【仮面ライダーファイヤーガッチャード・スチームホッパー】となった青入間は、ガッチャートルネードを構えた。

 

「今度こそ、俺は…鈴木入間(お前)に勝つ!!!」

「言葉の意味がよく分からないけど……僕も負ける訳にはいかない!!!」

 

 その言葉と共に、マルスとガッチャードは同時に走りだし、剣を振るう。

 ぶつかり合った刃が火花を散らし、この戦いの火蓋をきって落とした。




・ライダー紹介


▪︎ 仮面ライダーガッチャードサンダー

【容姿】
容姿は仮面ライダーガッチャード・アッパレスケボーと同一だが、装甲には黄色い稲妻が走っている。向かい合う矢印の複眼は蒼色で、胸の変換炉は炎ではなく雷エネルギーで満たされている。背中には、✕の字になるように二振りのストラーダXが装備されている。

【スペック】
パンチ力:6.6t
キック力:10.6t
ジャンプ力:30.8m(ひと跳び)
走力:1.6秒(100m)

【概要】
エリオ・モンディアルがガッチャードライバー(エリオver.)にスケボーズとアッパレブシドーのカードを使用して変身した姿。
入間が変身するガッチャード・アッパレスケボーが用いるガッチャートルネードは使用せず、二振りのストラーダXによる槍術とエリオ自身が持つ魔力変換素質「電気」を操る能力を持つ。エリオがスケボーズとアッパレブシドーと強い絆を結んだ事により、入間が変身したアッパレスケボーよりもスペックが高い。

【使用アイテム】

▪︎ガッチャードライバー(エリオver.)
音声のイメージCVは村瀬歩(入間と悪入間の音声が同時に鳴る)。ジオウ(時の王者の入間)とガッチャード(ガッチャし魔すの入間)が作り出したガッチャードライバーで、アルトヴォークの部分が黄色になっている。ニジゴンがいない為、ワイルドモードに変身する機能はない。

▪︎ケミーライザー(エリオver.)
音声のイメージCVは村瀬歩(入間と悪入間の音声が同時に鳴る)。ガッチャードライバーのベルトに懸吊されており、ケミーキャプチャーの部分が黄色になっている。ケミーカードをセットすることで、ケミー召喚やケミーカードの能力が使用可能となる。

▪︎ストラーダX
クロスウィザードとテンフォートレスがストラーダに力を注いだ事で進化した最新式のアームドデバイス。ストラーダの穂先に金色のXの刻印があり、その後ろ部分にはエクスガッチャリバーのカードスロットが取り付けられている形状をしているのが特徴。スロットにケミーカードを装填することでケミーの力を宿した鎧を纏い、持ち主に仮面ライダー並みの力を与えることができる。しかし、初使用時はガッチャードやヴァルバラドとは違い…エリオ自身への負荷が大きく、活動時間は3分間のみとなってしまった。その原因判明後、クロスウィザードがデバイスマスターのシャーリーこと…シャリオ・フィニーノと共に改めて調整などを施したおかげで、多少なりともフォルムのスペックや能力は半減するものの…活動時間のデミリットを無効にすることに成功する。そして、その力の減少を補うためにヴァルバラドライバーのようにケミーカードを装填する事で、そのケミーの能力が使用可能となる。更にエクスガッチャリバーの変形機構と機能データを組み込んだことで通常の槍状態から、全てのパーツを折り畳んだボード型状態と背面のケミーカード高等読み取り装置を展開したベルトセット状態への変形が可能で仮面ライダースーパーガッチャードサンダーに変身させる変身アイテムとなった。

【必殺技】
▪︎アッパレスケボーフィーバー
雷撃を纏わせた2本のストラーダXを投擲して敵に突き刺した後、そこに強烈なライダーキックを浴びせて敵を穿つパターンと…2本のストラーダXに雷撃を纏わせた後に超回転を起こして竜巻で敵の動きを封じ込め、動けなくなった所を回転斬りでトドメを刺すパターンがある。




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