悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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 お久し振りです。
 仕事が忙しかったのと、悪魔紅蓮さんと話の内容で連絡を取りあっていて、とてつもなく時間が掛かってしまいたした。

 今回はどちらかというと、ガッチャし魔す!入間くんStrikerS 再度のお話。そして、ありふれの噛ませ犬No.1こと光輝にひどいアンチがあります。何でも許せる方向けです。


ep.4 炎と雷

「始まったな…」

 

 スクリーンに映る、草原で剣をぶつけ合うガッチャードとマルスの姿を眺めていた黒アメリは、組ませた両腕にシアをも超える巨乳を乗せながら、ポツリと呟いた。

 

「まさか、青い方のイルマ様とあの勇者がぶつかるとは…これも因果という奴ですかね」

「まぁ、アオイルくんの性格はイルくんみたいに苛烈じゃないし、あの勇者(笑)も前とは違って仮面ライダーになってるから、武器の性能のスペックだけなら間違いなく強くなってるけど……」

「それで青イルマに勝てるかと言われれば、のぅ……」

「まぁ……」

 

 アスモデウス、ミレディ、ティオ、アメリの順で口を開いた後…入間、ユエ、チマを除いたバビルの面々は、まるで最初から示し合わせたように口を揃えて言った。 

 

「「「「「「無理(だな/だね~/ですねぇ/じゃな)」」」」」」

「言い切ったな……」

 

 光輝の敗北を確信している様子のバビルの面々に、ガッチャード(青入間)の勝利を疑われていない嬉しさ半分、薄情すぎやしないかと…赤アメリを筆頭に、ミッドチルダ組は頬をひきつらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーガッチャードVS仮面ライダーマルス

 

 草原の真ん中で、金属が何度もぶつかり合う音が響き渡る。

 仮面ライダーマルスが振るう聖剣を、ファイヤーガッチャードはガッチャートルネードで応戦していく。

 

(剣の技量じゃあ、向こうが上か……)

 

 ファイヤーガッチャードは、マルスとの数回の打ち合いでそれを悟る。

 

 愛用の武器を造る切っ掛けとなった師(バチコ)と出会う前から(ジガンギレード)を使ってきて、現在では多種多様な武器の扱いの鍛練を積んできた白入間(オールラウンダー)と違い……ガッチャード(青入間)の使う武器はガッチャートルネード、ガッチャージガンに比重が大きい。時には“エクスガッチャリバー”も使うには使っているのだが、やはりどうしても剣の扱いには慣れていない。

 紛いなりにも雫の実家である剣術道場で剣を学んできた光輝(マルス)に、素人の領域を出ない腕前の青入間(ガッチャード)は、単純な剣術勝負には負けていた。

 

(けど、シグナムさん程じゃない!!!)

 

 しかし、技量が劣るならば経験値で補えばいい。

 機動六課で知らぬ間に好敵手認定をされ、何度も模擬戦に付き合わされている桃色の髪の剣士には数段劣ると…ファイヤーガッチャードはマルスが振り下ろした聖剣を止め、それを弾いていく。しかし、技術の粗さ故に自分から攻撃には移そうとしないため、結果的に互角の勝負を繰り広げていた。

 

 やがて一度強く武器をぶつけ合い、ファイヤーガッチャードとマルスは距離を取る。

 

「“光刃”!!」

「はっ!!」

 

 マルスは聖剣を振るって黄金の斬撃を飛ばし、ファイヤーガッチャードはガッチャートルネードから矢を飛ばし、ぶつかり合った技が互いの中間点で爆発を起こす。しかし、剣の動きと詠唱が必要なマルスと違い…連続発射が可能なファイヤーガッチャードでは手数はファイヤーガッチャードの方が上であり、無数のエネルギー矢がマルスに迫るが、マルスは左手に構えるアップルリフレクターで防いだ。

 

「ス、スゴい…!俺が、あの鈴木と互角に張り合えている……!!ハ、ハハハッ!これだ、この力があれば!!俺は………!!!」

 

 今までとは比べ物にならない程の力に、マルスは聖剣を持つ握力を強めながらそう呟いた。

 だが実際…イナゴ体への変身や【炎の馬】への変身がオミットされているとはいえ、アーマードライダーの中でもハイスペックなマルスの力は、“勇者”である光輝のパワーの底上げに確かな貢献を果たしており、今の光輝は覇潰を使っている時以上の力を得ていた。

 

「青い方!お前がもしも、まだ本気を出してないならそれを使え!!それを超えて、俺は今度こそ…()()()に勝つ!!!」

 

 聖剣の切っ先を向けながら啖呵を切るマルス。本気になって目の前にいるファイヤーガッチャード(青入間)を倒さねば、ジオウ(白入間)を倒すことなど不可能だと分かっているからこそ……マルスにとって、この場でガッチャードを倒すことには大きな意味がある。

 自分が強くなっている“(マルス)”自体が“勝とうとしている相手”から与えられた力なのだが……既に戦極ドライバーと金のリンゴロックシードは自分のものだと思っているのか、光輝はそれに気づかなかった。

 

「本気、かぁ……それなら!」

 

 その瞬間、ファイヤーガッチャードがガッチャートルネードを地面に突き刺すと…背中のファイヤードッカーンから炎が噴き出し、その姿が一瞬にして消える。

 

「ッ!消え……「ハアッ!!」…ぐはっ!?」

 

 マルスが仮面の下で目を見開いた瞬間には、目前に現れたファイヤーガッチャードの拳が、マルスの顔面に炸裂した。

 

「な、何だ…!?今、何が起き……」

 

ドォオン、ドォン、ドォオオオオンッ!!!!!!!!!

 

「………ウァアアアアアアアアアアアアッ!!!!!?????」

 

 優れた動体視力を持つ自分ですら見きれなかった攻撃に混乱する暇もなく、マルスの周囲から次々と爆発が起こり、その度に四方八方から打撃を受けたマルスは、何回も地面を転がった。

 

「ぐっ!は、速すぎる……!!それなら、“限界突破”!!!」

 

 木に激突してバウンドを止めたマルスは、奥の手である“限界突破”を発動する。しかし、いくらマルスに変身した状態で基礎ステータスを三倍に上げたといっても、速度に特化したファイヤーガッチャードには追い付くことは不可能といって良いだろう。

 

「(いくら速くても、広範囲の攻撃なら避けられない!)行くぞ!!“天落──」

「……フッ!」

「なっ!?」

「タァッ!!フッ、フッ!!!」

「あがっ!?ぐふっ!!?こ、この………」

 

 範囲攻撃魔法“天落流雨”を発動させようとしたマルスは、その直前で目の前に現れたファイヤーガッチャードの攻撃よって中断され、その隙を突いたファイヤーガッチャードががら空きのマルスの腹部に数発のパンチを浴びせると、マルスはアップルリフレクターを叩き付けて距離を取った……次の瞬間、再び目の前にファイヤーガッチャードが現れた。

 

「ダァアッ!!!ハアッ!!!!!」

「ぐぅあああッ!!?ガハッ、あああ……!!??」

 

 そして、顔面とボディに炎を纏った強烈なパンチを叩き込まれたマルスは地面を転がって倒れるが……すぐに起き上がり、聖剣を握り締めた。

 

「(何故だ!?アイツは…目の前にいるアイツは、昔のアイツと同じ筈なのに……!俺は、俺は世界を救う“勇者”なのに…!!)クソッ!?なんで…なんで……なんでだぁッ!!??」

 

 苛立たし気に起き上がったマルスは、動きを止めたファイヤーガッチャードを見る。

 見慣れたジオウの姿とはまるで違う姿。しかし、マルス(光輝)の目には、ファイヤーガッチャードのその姿に、別の姿が重なって見えていた。かつて、オルクスの大迷宮で再会し…自分達を壊滅に追い込んだ連中を圧倒して自分との差を突きつけられ、思い通りにならない現実を否定したくて挑んだ決闘では、為す術も…更には何をされたのかも理解することもできずに一蹴された男の姿に……

 

「そうだ、俺は“勇者”だ…!“勇者”である俺が、ここで負ける訳には………」

「フッ!!!おりゃああああああっ!!!!!」

「ッ!!!!!?????」

 

 次の瞬間、声が聞こえてきた上へと顔を上げると、そこにはいつの間にか目と鼻の先と言わんばかりの近い距離まで詰めてきたファイヤーガッチャードの姿があり…マルスの装甲をガッチリ掴むと、そのまま目にも止まらぬ速度で突き進み、数百メートル先にあった岩壁にマルスの体を叩き付けた。

 

ドシャアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!

 

「ガハッ!!!!!!!???????」

 

 壁の岩を粉砕しながら地に沈むマルス。ファイヤーガッチャードはそんなマルスを掴み上げると、更に追加のパンチを食らわせた。

 

「タアッ!!!ヤアッ!!!!」

「ガッ、アアッ!?い、いい加減にしろ……ッ!!??」

 

 マルスがアップルリフレクターで攻撃を防ぎ、反撃で聖剣を振り下ろそうとするが…その刹那には姿が消え、上空に気配を感じて上を見上げる。すると、そこには三メートルほど上空まで跳躍してきたファイヤーガッチャードが拳を構えている姿。マルスは咄嗟に迎え撃とうとした瞬間、ファイヤーガッチャードの背中のファイヤードッカーンが火を噴いた。

 

「ダァアアアアアッ!!!!!!!!!」

 

ズドシャアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!

 

「グァアアアアアアアアアアアアッ!!?!??!!??」

 

 爆発的な速度で振り下ろされた拳が、マルスの頭を地面に叩き付け、巨大なクレーターを作り出す。ダメージを負いながら起き上がったマルスは聖剣を振るおうとするが、ファイヤーガッチャードはその一撃をなんなく受け流し、鳩尾に炎を纏ったカウンターの拳を叩きつけた。

 

「ぐっ、まだだ…!俺は、もっと強くなってアイツに……鈴木に勝たなくちゃ、いけないんだ!?今度こそ、俺が勝つんだ……!“勇者”の俺が、誰よりも正しいと証明する為にも!!だから、もっと強く!!!もっと!!!!もっと!!!!!」

 

 地面に拳を叩きつけ、負ける訳にはいかないと気合いをいれて立ち上がったマルスは、戦極ドライバーのカッティングブレードを3回倒した。

 

 

カモン!ゴールデンスパーキング!!

 

 

 金のリンゴロックシードのエネルギーが聖剣に伝達し、刀身が黄金の光に包まれると…マルスは聖剣を掲げ、今までにない速度で詠唱を唱えた。

 

「神意よ!全ての邪悪を滅ぼし、光をもたらしたまえ!!神の息吹よ!!全ての暗雲を吹き払い、 この世を聖浄で満たしたまえ!!!神の慈悲よ!!!この一撃を以て、全ての罪科を許したまえ!!!!“神威”ぃいいッ!!!!!」

 

 詠唱と共に、莫大な光がマルスの持つ聖剣に宿り、勢いよく振り下ろされると同時に、黄金の巨大砲撃が放たれる。地面を抉りながら迫り来る光の奔流を見て、ファイヤーガッチャードは高速で思考を巡らせる。

 

(範囲が広い…この姿なら避けられるけど、距離が空きすぎる……それなら!避けるんじゃなくて、()()()()()()()!!)

 

 ファイヤーガッチャードは、自慢の速度をあえて使わず…地面に突き刺していたガッチャートルネードを回収し、なんとそのまま“神威”に向かって走り出したのだ。

 

(勝った!!!!!)

 

 自殺行為にしか見えない行動を見て、マルスは仮面の下で口角を吊り上げる。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!」

 

 その高揚感を乗せ、聖剣へ更に魔力を込める。そして、その光の奔流がファイヤーガッチャードに直撃した瞬間、マルスは仮面の下で目を見開いた。

 

「ふっ!!!」

 

 ファイヤーガッチャードは、両手持ちにしたガッチャートルネードで、マルスが放った光の奔流を受け止めたのだ。ファイヤードッカーンの凄まじい推進力を利用してその場に踏みとどまり、マルスの必殺技を真正面から受け止めてみせたファイヤーガッチャードは、やがて片足を軸にして回転し始める。

 

「うぅおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」

 

 ファイヤーガッチャードが気合いをいれた雄叫びを上げると、ガッチャートルネードの刃に受け止められた光の奔流が軌道を変え、回転に合わせ、その矛先を光輝へと向けたのだ。

 

「はあぁっ!!!!!!!!!!!」

 

 一回転と同時に振り抜かれたガッチャートルネードから、絡め取られた光の奔流が、それを放ったマルス自身に向かって飛び出した。

 

「ッ!!!!!!!!!!??????????」

 

 砲撃の軌道を無理やり変えて打ち返してくるという滅茶苦茶な戦法に、マルスは目を見開きつつも、咄嗟の判断でアップルリフレクターを前に出し、その砲撃を防ぐ。しかし、金のリンゴロックシードの力をプラスされ、更には“限界突破”の魔力も全力で注がれた“神威”には、今まで繰り出した光輝のどの技よりも高い破壊力を誇っており、マルスは吹き飛ばされまいと足に力を込める。

 

ピシッ

 

 しばらく足に力を込めて踏ん張っていると、アップルリフレクターから嫌な音が聞こえてくる。マルスがその音に身を強張らせた瞬間、アップルリフレクターの表面で、凄まじい程の大爆発が起こった。

 

「ぐぁあああああああああああああああっ!!!!!?????」

 

 その爆発の余波に飛ばされ、マルスは悲鳴を上げながら地面に転がりながら倒れると、バラバラガシャンッ!という、金属片があちらこちらに散らばったような音を耳にして、顔を上げる。

 それは、マルスが手にしていたアップルリフレクターとソードブリンガーが、粉々になった破片を撒き散らしている光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『な、なんというデタラメな技だ……!まさか、相手の放った光線を剣で受け止め…そのままの威力で跳ね返すなんて……信じられん!?』

「いやはや、入間君にはつくづく驚かされるよ……」

「やっぱり、いつ見ても入間さんの“返し”はスッゴーい!ねぇねぇティア、見てたでしょ今の!!」

「…はぁ、スバル。アンタの恋人(入間さん)の大活躍に興奮すんのは分かるけど……少しは落ち着きなさいよ」

「なんと非常識な……お前達が慕う者は、いつもあぁなのか?」

「そう!あれが入間さんの魅力だよ!!」

「あぁ……常に滅茶苦茶で、予想なんて当てにならない。それがアイツだ」

「流石はイルマ様!あの様なピンチを瞬く間にチャンスに変えてしまうとは、実にまいりました!!」

「イルマち、カッコいいぞぉー!!!」

「ったく、どいつもこいつも騒がしいったらありゃしねぇ。まっ、何にせよ……これなら入間の勝ちは決まりだな」

「うん。入間さんなら負ける筈はないし、これならきっと勝てるね!!!」

「でも、倒すだけならまだしも……あの人の武器、壊れちゃったわよね?大丈夫なのかしら、色々と………」

 

 その光景を観客席からモニター越しにて観戦していた面々の中で、ミッドチルダ組の面々が“神威”を打ち返したファイヤーガッチャードに対する様々な反応を示す。一方、ティアナはマルスの武器が聖剣だけとなっている事に心配そうな声を上げるのに反して、スクリーンに映るマルスはすぐに聖剣を手に取って起き上がるのを見る辺り、体力的に問題はないようだ。

 

「あー……盾で防御できたのはいいけど、それが武器を破壊するレベルだったとはねぇ。イルくんのベルトで強化されたのが逆に仇になっちゃったか~………」

「残るは聖剣一本ですかぁ。あの勇者もここらで根性見せられませんかねぇ~」

「思ってもないことを言うなハウリア。武器の破壊を除けば、こうなることは分かりきっていただろう」

「えっ、分かってたの?そうなのティオりん?」

「お主もそう言っておったではないか、クララ……まぁ、勇者の坊やはハルツィナ樹海の辺りからどこか不安定だったからのぅ。こうなるのも仕方ないと言える」

「だとしても、格上を相手にロクに使いこなしてもいない力に思い上がるなど愚の骨頂も良いところだ。おまけに、相手は目の敵にしているイルマと同一の存在であるが…性格は真逆の人畜無害だからと侮っているのだから始末に負えん。これがもしも実戦なら、奴は確実に死んでいただろう」

 

 バビルの面々は、マルスの見るに耐えないバトルファイトに揃って呆れたようなコメントを溢す。

 

「………しかし、やはり妙だな。何故あのアマノガワ・コウキという男は青いイルマ様……いや、()()()()を倒すことに拘るのか……」

「お前もそう思ったか。どうにも、奴は()()()()()()()()()()()()()()()()事に執着しているように思える」

『彼らには何か因縁ありとは思っていたが、どうやら私達が思うよりも深そうだね』

「しかし、因縁というよりかは…天之河光輝君が一方的に白い入間君を敵視しているようにみえるが……」

 

 そこで、白アズは顎に手をあてながら考え込むと、トーレとベルトさん、スカリエッティもそう頷く。その呟きに、スバル達もマルスの異様な姿に同じ疑問を抱いていたのか、光輝と直接面識のあるバビルの面々に尋ねるような視線を向ける。

 その視線を受け、ティオは開いた扇子で口許を隠し、金色の目を細めながら口を開いた。

 

「ふむ。そうじゃな…強いて言うなら、勇者の坊やは()()()()()()()()()()()()()のじゃ」

「自分の正義を、信じすぎた……?けど、それの何がダメなんだよ?」

 

 自分の信じた正義のために戦う。先代クローズ(万丈龍我)からそれを教わり、クローズの力を手に入れたノーヴェは、それとは真逆のようにも聞こえる台詞に、スカリエッティやトーレ、異口同音の機動六課の面々もティオの言葉に首をかしげる。

 

 機動六課の部隊長【八神はやて】の家族にして、“夜天の魔導書”の主の守護騎士にして百年以上の時を生きる騎士【ヴォルケンリッター】以上の時を生きてきた竜人の姫は、溜め息を吐きながら答えた。

 

「当たり前じゃ。この世界は勧善懲悪で片付けられる様な甘いものではない。“正義”とは価値観の違いでしかない。それを信じるとは即ち、“エゴに囚われる”事と紙一重なのじゃよ。そして、そんな正義(エゴ)に反する“悪”を、“正義”は許そうとしない。なんとも難儀なものじゃよ…あの男は外聞は正しい事を行っているかもしれんが、物事を正すには過程が重要である事を全く理解しておらん。見つけた間違いを端から順に裁いても、より多くの間違いが生まれるだけじゃというのに……」

 

 それを聞いて、ミッドチルダ組は複雑な表情を浮かべる。彼らは、敵対する者を容赦なく殺すことができるティオ達バビルの理念を受け入れることなど、決してないだろう。だが、実際に彼女達を見て、バビルはただの冷血な存在でないと分かり合うことが出来た。

 

 パタン、と扇子を閉じて、スバルとティアナを見つめると、微笑を浮かべる。その妖艶な雰囲気を纏う笑みに、いつもの変態的な姿しか知らなかったミッドチルダ組は驚いたような表情を浮かべる。

 

「各々の“野望”の為に力を振るう我等が言っても説得力はないと思うが……時空管理局に属するそなた等に一つだけ忠告しておこう。個人の正義を掲げるのは自由じゃが、組織には“大義”はあっても“正義”はないと覚えておくといい。万の人がいれば万の正義が存在する。一つの正義なんてありはせぬし、組織が掲げる正義(そんなもの)を信じてしまえば、人にとって都合の良い“人形”に成り果てるぞ」

 

 そう言って、もう話は終わりだというように、ティオは再びスクリーンに目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自身の最大の技が跳ね返され、(アップルリフレクター)(ソードブリンガー)を失ったマルスは、破壊されずに残っていた愛剣を杖の代わりにして立ち上がる。

 

(どうしてだ!?俺は、俺は()()()()()()()!なのに、どうして勝てない!!?こんなのおかしい!!あっていいはずがない!!!)

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に、自分が追い詰められているという現実。

 その現実を嫌でも突きつけられたマルス(光輝)は、暗く淀んだ感情が沸き上がる胸を押さえつける。この感情は、()()()()()()()()()()()()()()()()()と無意識にその感情から眼をそらすと、足に力を込めて飛び出した。

 

「この俺が、負けるはずがあるかぁああああああああっ!!!!!!!」

「ッ!!!」

 

 癇癪を起こしたように叫びだしたマルスは、全身から純白の光を放ち、それを身に纏うことで、限界突破ではね上がっていたマルスのスペックが更に底上げされた。“限界突破”の最終派生“覇潰”だ。その圧倒的なパワーをもって、マルスはファイヤーガッチャードに向けて聖剣を振り下ろす。

 しかし、既に光輝の剣筋を見切り始めているファイヤーガッチャードは、既に体を僅かにそらす程度の動きでそれを回避できるようになった。反撃にも移れることはないのだが…マルスの様子が先程と違い、あらゆる感情が混ざりあった危うい物であることを察したファイヤーガッチャードは、反撃するべきかどうか悩んでいた。

 

「クソッ!この卑怯者め!!」

「え……?」

「そんなベルトの力で強くなって!()()()()()()()()()癖に、道具の力で強くなって!!恥ずかしくはないのか!!?」

「……………ッ」

「俺は世界を救うために努力してきた。誰よりも剣を振るってきた!一番に正しいのは、この俺だ!!お前のような…お前のような()()()()()()()()()()()()()()()に、“勇者”である俺が負けるわけがないんだぁ!!!」

 

 やがて、青入間(ガッチャード)白入間(ジオウ)の判別がつかなくなってきたのか、まるでファイヤーガッチャードをジオウに見立てているように叫びながら聖剣を振るうマルス。白入間と光輝の間に起きた出来事を知らないファイヤーガッチャードは、やがて剣の洗練さを失いつつあるマルスの振るう聖剣を躱しながら、必死に考える。

 

 何故、光輝が自分と重ねている白入間をここまで敵視しているのかは全く理解できないが、それなりに事情があることは理解している。白入間達バビルが露骨なまでに光輝を嫌悪しているのが良い証拠だ。数多くの戦闘を経験している青入間とて、こんな情緒不安定な相手を前に戦ったことなど一度もない。故に、こんな状況の時にはどうしたら良いのかなんてまるで分からない。何度も振るわれる聖剣を受けることはないが、攻めに移るべきがどうかを躊躇ってしまっていた。

 

「俺はお前を倒す!!!正しいのは“勇者”である俺で、“卑怯者”のお前の方がまちがってるんだぁあああああああっ!!!!!」

「ふっ!(もう滅茶苦茶だけど、距離を取らないと!!)」

 

 聖剣の一撃を避け、ファイヤードッカーンの速度を用いて距離を取って回避する。立ち上がったファイヤーガッチャードが聖剣を振りかざすマルスを目にしてどうすれば良いのか悩んだ時、脳裏に声が聞こえてきた。

 

『ごちゃごちゃ考えるな。弓使いなら……ここぞで、決めろ』

 

 それは、青入間と白入間(2人の入間)が心から敬愛する師の教え。

 それを思い出したファイヤーガッチャードはガッチャートルネードを握り締め、ガッチャードライバーからホッパー1のカードを取り出した。

 

「ホッパー1、やれる?」

『ホッパァッ!』

 

 親友(ホッパー1)の返事を聞いて、強く頷き返したファイヤーガッチャードは、そのカードをガッチャートルネードに装填する。

 

ケミーセット!

 

 

「足を止めるなんて、隙を見せたな!“光刃”!!」

 

 マルスが光を纏わせた聖剣を振りかざしながら突撃してくる瞬間、ファイヤーガッチャードは、ガッチャートルネードを両手で握り締め、マルスが振るう聖剣の一撃を受け止める。

 

ガキィンッ!!!!!

 

「くっ!?」

「お前なんかに!お前みたいな最低な奴なんかにぃ!!“勇者”である俺が、負けるはずがない!!!だから、消えろぉお!!!!俺の正義を証明する為にぃい!!!!!」

「……軽い」

「は?」

「……………貴方の剣は、軽すぎる!」

「何…?」

 

 ステータスを五倍に強化された豪腕をもって振り下ろされた聖剣には、流石のファイヤーガッチャードも足に力を込めて踏み留まり、マルスは更に剣に込める力を強くしようとした時、ファイヤーガッチャードの言葉によって力を緩めた。

 その隙をついて聖剣を押し返したファイヤーガッチャードは、後退したマルスにガッチャートルネードを突きつけながら口を開いた。

 

「僕は、ある剣士と何度も戦ってきたから判るんだ。あの人(シグナムさん)(レヴァンティン)からは、シグナムさんの魂と思いが込められてた。言葉に表せないくらい、とても重くて強かった……けど、君が込める剣からは何の思いも感じない!!」

「なっ!?ふざけたことを言うな!俺は鈴木を倒して、俺の正しさを証明して、“勇者”として世界を救うために……!!」

「ライダーの力は何かを証明するものじゃない!誰かのことを…守るための力だ!!シグナムさんだけじゃない……アズくん達も、なのはさん達やスバルちゃん達だって、皆誰かを守るために戦ってきた!!!誰かの幸せを祈って、戦っていたんだ!それは、()()()()()()だって同じだった……!!」

 

 魔界で絆を結んだケミー達や悪魔の友人達に、英寿達のような頼もしい先輩達、そして機動六課やスカリエッティ達ミッドチルダで出会った人々の信念や、胸に抱いていた思いを脳裏に焼き付けながらそう語るファイヤーガッチャード(青入間)は、もう一人の自分(白入間)の事を思い返す。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()白入間と違い…たとえ、異世界の者だろうと決して見捨てようとしない青入間は、殺意を向けてきた相手を容赦なく殺すことが出来る白入間のやり方を受け入れることが出来なかった。

 

 だが、黒クララや士から聞かされた白入間の過去を聞いて、青入間は彼がただ残酷なだけの人間でない事を理解していた。

 

 幼少期に両親から金儲けのために修羅場に連れ回され続けていた青入間は、人間界で生活をしていた頃にホッパー1とスチームライナーと出会った事で…ほんの少しだけ、孤独を癒してもらうことが出来た。だが、白入間にはそれがなかった。いや、それどころか、実の両親からも化け物と拒絶されてきた。青入間には、その辛さや孤独感を理解することは出来ないかもしれない。

 だけど、だからこそ白入間は、アスモデウスやクララ、アメリ、チマのように自分を認めてくれた仲間達や、そんな仲間達と出会うことが出来た魔界…そしてトータスという異世界で出会ったユエ達や愛子、優花のように()()()()()()()()()()()()()()()を守るためにならば……たとえ、その手を血で染めてしまうことになったとしても…たとえ、世界の全てを敵に回す覚悟もある“強さ”があることも、判るようになった。

 

「けど、貴方にはそれがない。貴方は一体、何のために剣を振るうんですか?」

「何のためって、それは勿論……!」

「世界を救うためなら、もう一人の僕を倒す必要なんてないはずです。仮に鈴木入間(ぼくたち)を倒したとして、それに何の意味があるんですか?」

「ッ、それは……」

 

 マルスは答えられなかった。

 光輝が、トータスの人々を弄ぶエヒト神や、トータスの支配を目論むバダンを倒す事を目的としているなら、青入間(ファイヤーガッチャード)の言う通り、バビルの旅の目的が一致している光輝が、白入間に勝つ事に大した意味はない。

 人を見捨てようとしない光輝と、時には人を見捨てることもある白入間の方針の違いでぶつかる事はあったとしても、人々を助けたいと言うなら光輝が自分でやれば良いと言う話であり、バビルの不利益に繋がらない限り、光輝の善行を邪魔をしようとする者はバビルには誰一人としていない。

 だとすれば、光輝が“入間に勝つ”と言うことに固執する意味は……

 

「貴方は一体、何のために剣を振るうんですか?もう一人の僕に勝って、自分の正しさを証明する為ですか?自分の強さを証明して、その先に何があるんですか?」

「…うるさい……」

「貴方は、()()()()()()()()()んですか?」

「うるさい……!」

「僕も、もう一人の僕も…アズくんやシグナムさん達も弱い。でも、本当に守りたいものがあるから……僕達は何処までも強くなれるんだ!!!」

「ッ、うるさい!!うるさい、黙れぇえっ!!!」

 

 自分の矮小さを、自分の中の見たくなかった部分を赤裸々にされそうになる感覚を覚えたマルス(光輝)は怒りのままに叫びながら、全身を覆う純白の光を聖剣へと徐々に集束させていく。

 

「俺は!俺はお前達とは違う!!この力を、世界を救うためだけに……俺はこの“勇者”の力を使う!!!()()()()()()()()()()()()()んだ!!!!だから俺は、お前なんかに負けるわけにはいかないんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 マルスは五倍に膨れ上がったステータスを全開にし、型も何もない踏み込みでファイヤーガッチャードに向かって走り出す。

 

「僕は負けない…!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 狙いをマルスに定めながら、ファイヤーガッチャードはガッチャートルネードのレバー式錬金術射出装置「アルケミードロワー」を何度も引くことで、抽出錬成機「ガッチャースピン」に装填されたケミーカードが高速回転する。カードからケミーカードにいるホッパー1の能力が分離、抽出されていき……そのエネルギーがガッチャートルネードに充填されていく。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」

 

 五倍に強化された“勇者”のスペックと黄金の果実の力を纏わせた聖剣が光り輝き、黄金の閃光と化したマルスがファイヤーガッチャードへと肉薄する。

 並の仮面ライダーですら圧倒できるであろうその速度を前にしても、ファイヤーガッチャードは動じない。その速度を目でとらえ、マルスが聖剣を振り上げた瞬間、アルケミードロワーを引き絞る。

 

「ばちっ、こんっ!!!」

 

 

トルネードアロー!!

 

 

「「「「「「「ホッパァアアアアアアアーーーーッ!!!!!」」」」」」」

 

 ファイヤーガッチャードがアルケミードロワーから手を離した瞬間、ガッチャートルネードからホッパー1を模した小型のバッタ型エネルギーの群れが飛び出し、マルスを覆い尽くすかのように襲い掛かった。

 

「ぐあっ!?くっ、こんな…ものぉお……!!!」

 

 マルスは攻撃の中断を余儀なくされ、聖剣を盾がわりにして踏み留まる。しかし、ガッチャートルネードから放たれるバッタ型エネルギーの数は、軽く見積もっても三桁を超えており…まるでホースから出てくる水のように振りかかるその猛攻に、マルスは踏み留まるだけで精一杯だ。

 

「ッ!ふ、防ぎきれ……ぐがっ!?がっ!ぐはっ!!?」

 

 しかし、それも限界を迎え…マルスは矢継ぎ早に装甲に傷をつけていく無数のバッタ型エネルギーの前に防御態勢を崩され、為す術なくその身を蹂躙されていく。

 

「これで決める!!!」

 

 ファイヤーガッチャードはガッチャートルネードを地面に突き刺し、ガッチャードライバーのアルトヴォークを押し込んだ。

 

 その瞬間、背中のファイヤードッカーンから、“ガッチャーアンカー”と呼ばれる無数の鎖が飛び出し、地面に突き刺さってその体を固定する。ファイヤードッカーンから莫大な炎が噴き出し、その炎が細く青白く変化していくと、ファイヤーガッチャードは、アルトヴォークを引いた。

 

「ハアッ!!!!!」

 

 

スチームホッパー!!

 

バーニングフィーバー!!!
 

 

 

 その瞬間、ファイヤーガッチャードの姿が消える。

 ガッチャーアンカーの拘束で自身の出力を最高まで高め、鎖を引きちぎった事でその速度を解放したファイヤーガッチャードは、一瞬でマルスの前に現れ、右足を突きだした。

 

「ッ!!!!!!!!!!??????????」

「はぁああああああああああッ!!!!!!!」

 

 優れた動体視力が、目の前に現れたファイヤーガッチャードを捉えた瞬間、ファイヤーガッチャードの蹴りがマルスの鳩尾に炸裂。超速の摩擦熱で、マルスの装甲に罅が入っていく。

 

「うぁああああああっ!!!???」

「はぁああああああああああッ!!!!!!!!!!」

「俺は、俺はまだ!負けない!!こんな所で、負ける筈が……!!!」

「はぁああああああああああッ!!!!!!!!!!」

「俺は…!?俺はぁあ!!??」

「たぁああッ!!!!!!!!!!!」

 

 摩擦熱に身を焼かれながら、現実を否定するように呻くマルスだが、音速の壁を超えたキックに身を焼かれていく。

 

「俺は“勇者”なんだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 断末魔にも似たような悲鳴を上げながら、マルスは草原から数百キロメートル離れた地点で大爆発を起こした。

 

『WINNER! GOTCHARD!!』

 

 勝者を告げるアナウンスが響き渡る中、ファイヤーガッチャードはゆっくりと立ち上がりながら、静かに視線を後ろに向ける。

 

「お、俺は…まだ……やれ、る……!俺が…おれ、が………!!」

 

 全身に火傷を負った光輝は、地を這うようにうつ伏せの状態で手を彷徨わせるが……やがて力無く倒れ、意識を失った。その手の先には、粉々になった破片を撒き散らす聖剣と、使い物にならなくなるまで破壊された戦極ドライバーと金のリンゴロックシードがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーガッチャードサンダーVS仮面ライダーデザスト

 

「はぁあああああああっ!!!!!」

「ぐっ!?」

 

 高く跳躍して飛び掛かってきた仮面ライダーデザストが、右手に持つ黒嵐剣漆黒を勢いよく上段に振り下ろすと…仮面ライダーガッチャードサンダーは、二振りのストラーダXを交差させることでその一撃を受け止める。押し返そうにも、デザストの力があまりにも強すぎるため、ガッチャードサンダーはただ耐えることしかできなかった。

 

「オラッ!」

「ッ!?」

「ぜぇやぁッ!!」

「うあぁっ!!?」

 

 しかし、いつまでもそれが続く筈もなく、デザストはガッチャードサンダーの胸部に蹴りを入れて体勢を崩すと、素早い身のこなしで漆黒を勢いよく袈裟斬りに振るい、ガッチャードサンダーを切り裂く。

 ボディから火花を散らし、ガッチャードサンダーはダメージを負いながら後退する。対するデザストは、その隙を突いて再びガッチャードサンダーに接近しながら漆黒を振り上げる。

 

『SONIC MOVE』

 

「ッ!あぁ……?」

 

 その瞬間、ガッチャードサンダーの姿が消える。

 空振りになった剣が地面を穿ち、デザストが訝しそうに顔を上げた瞬間、デザストの背後にガッチャードサンダーの姿が現れた。瞬間高速移動魔法“ソニックムーブ”でデザストの背後に回ったガッチャードサンダーは、ストラーダXを振りかぶる。

 

「……匂うんだよ、お前!!!」

「ッ!!??」

「ハアッ!!!!」

「わぁああああああっ!!!???」

 

 その直後、漆黒を構えながら振り返ったデザストが、ガッチャードサンダーがストラーダXを振り下ろすよりも速く、振り上げた漆黒でガッチャードサンダーの装甲を斬り裂き、更にその場で回転しながらの横一閃でガッチャードサンダーの鎧に遠心力を加えた斬撃を刻み込んだ。

 

「この程度か?それじゃあ、拍子抜けだなぁッ!!!!!」

 

 火花を散らしながら地面に倒れたガッチャードサンダーに突撃し、デザストはトドメを刺す勢いそのままに漆黒を振り下ろす。

 

「ッ!!!」

「ッ!?」

「たあっ!!!!」

「うぉっ!!?」

 

 しかし、ガッチャードサンダーはその直前で漆黒の刃を片手で掴み取り、もう片方の手に持ったストラーダXを突きだした。

 腹部から火花を散らしながら後退するデザストに対し、ガッチャードサンダーはすぐに立ち上がって2本のストラーダXを強く握り締め、今度はこちらの番だと言うように閃光のごとく突撃する。しかし、デザストは視認すら難しいその攻撃を、地面を蹴って高く跳び上がり、ガッチャードサンダーの真横を通り抜けるようにして、回避する。

 

「はぁっ!!!」

「ぐっ!?」

 

 体を空中で回転させ、遠心力を乗せた斬撃を放つ。火花を散らし、地面を転がるガッチャードサンダーだが、すぐに起き上がって二本の槍を構えた。

 

「(コイツ、強い…!)なんとかアイツの剣に対抗しないと……!!」

「おいおい!余所見すんなよ!!」

「ッ!!!!!」

 

 デザストの技量は明らかに自分よりも…いや、自分の上司であるシグナムよりも上だと察したガッチャードサンダーが打開策を思案しようとするが、その隙をついたデザストは体を縦に回転させながら漆黒を振り下ろす。ガッチャードサンダーは再びストラーダXを交差させて受け止めようとするが、勢いが強すぎて膝をつく。

 

「ぐっ、うぅ…うううう……ッ!!!???」

「ホラホラホラ!!もっと頑張れよぉッ!!!」

「ッ!負けぇ、る…!!もんかぁっ!!!」

 

 ギリギリと剣に力を込めて押しきろうとするデザスト。しかし、ガッチャードサンダーは根性でそれを押し返した。

 

「おっと!」

「ストラーダ!!!!!」

 

『SONIC MOVE』

 

 デザストは、漆黒を振り払われる反動を利用して背面回転ジャンプで華麗に着地する。だがガッチャードサンダーは、そんな彼に反撃の暇など与えないと言わんばかりにストラーダXを構えると同時に高速移動魔法を発動し、黄色い閃光となってデザストに迫る。

 

「ハハッ!確かに速ぇな。でもぉ……!!」

 

 驚異的な速度を眼にしても、デザストは一切動じない。

 なにせ、ガッチャードサンダーは馬鹿正直に真っ直ぐ此方に突撃していくのだ。速度はあるが、“クロックアップ”のように規格外の速度でもないため、デザストのような強者には通用しない。

 

 その場で踏み留まり、漆黒を構えるデザスト。ガッチャードサンダーが目前まで迫ってストラーダXを突きだそうとした瞬間、デザストは瞬間的にはガッチャードサンダーを上回る速度で剣を振り上げた。その軌道上にいたガッチャードサンダーは、避ける暇もなく装甲を傷つけられる……

 

「ふっ!」

「何ッ!?」

 

 事はなかった。

 剣が直撃する瞬間、猪突猛進といった言葉がピッタリの勢いで真っ直ぐに迫っていたガッチャードサンダーが、速度を衰えさせぬまま体を回転させ、漆黒の斬撃を直前で避けたのだ。

 

「はぁっ!!」

「グッ!?」

 

 そして、その隙を突いたガッチャードサンダーは体を回転させた勢いをつけてストラーダXを振るい、デザストの体を切り裂いた。

 

「ハァアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」

「おっと!」

「やっ!ふっ!!はっ!!!たあっ!!!!それっ!!!!!」

「はいはいはい!!はいはいはいはい!!!」

 

 ガッチャードサンダーは、そのまま二本の槍を使い、神速の乱れ突きを放つ。対するデザストは漆黒でストラーダXの連撃をいなし、着々と弾いていく。攻撃の速度はガッチャードサンダーの方が上ではあるが、戦闘経験値とパワーではデザストに部がある。

 槍の動きが速すぎて、デザストはガッチャードサンダーの攻撃を止めることは出来ないが、ガッチャードサンダーはデザストの剣一本での防御を二本の槍で駆使しても突破することが出来なかった。

 

「オラッ!!!」

「ぐっ!?」

 

 その時、デザストは体を回転させるように跳び、ガッチャードサンダーのストラーダXに蹴りを入れた。突然の衝撃に思わず体勢を崩すガッチャードサンダー。

 

「そぉらよっ!!!!!!!」

「うっ!!!???」

 

 デザストはそんなガッチャードサンダーに飛び掛かり、体を回転させながら、上段から漆黒を振り下ろした。先程よりも重みのある剣に、流石のガッチャードサンダーも受け止めることが出来ず、そのまま背中から倒れこむ。

 

「あぁ~!ガッカリだなぁ……お前の力は結局、そんなもんか?」

「……そんなこと、無い!!」

「ッ!」

 

 デザストの挑発を突っぱねて、ガッチャードサンダーはストラーダXを振るいデザストの胸部を切り裂く。火花を散らして後退したデザストはすぐに体勢を立て直すと、漆黒を構え直しながらガッチャードサンダーとほぼ同時に走り出し、凄まじい剣戟戦を開始する。

 

「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!!」

「オラオラオラオラオラオラオラァアアアアアッ!!!!!!!!!!!」

 

 ガッチャードサンダーの稲妻を纏った神速の突きがデザストの装甲を削り、デザストの荒々しくも洗練された剣術と体術がガッチャードサンダーに的確なダメージを与える。

 

「ッハハハ!いいねぇ!!楽しくなってきたぜっ!!!」

「ッ!!!!!」

 

 闘いに高陽を覚えて歓喜の声を上げるデザストだが、ガッチャードサンダーは応戦していくのに精一杯で、答える余裕すらない。

 

 それも当然だ。

 

 ガッチャードサンダー(エリオ)は機動六課最年少であるが、ティアナから「フェイトさんの秘蔵っ子」と呼ばれ、シグナムをして高く評価される才能豊かな少年である。だが、デザストは『セイバーの世界』で数多の剣士を葬り、何度も苦しめてきた歴戦の戦士であり、仮面ライダーになった事で【仮面ライダーアークゼロ】すら超える力を手に入れたのだ。いくらエリオが才能に溢れた優秀な魔導師で、デザストと同じく仮面ライダーの力を手に入れても、それだけではデザストには敵わないのだ。

 

 しかし、ガッチャードサンダー(エリオ)は一人で戦ってきたのではない。

 

『スッケボォー!!!』

『あ~っぱれぇ!!!』

 

 ガッチャードライバーから飛び出した2枚のケミーカード(スケボーズとアッパレブシドー)は、それぞれガッチャードサンダーの持つストラーダXに取り付けられているカードスロットに自分から挿入していった。

 

「ッ!スケボーズ……うん、一緒に戦おう!!」

 

 それに気づいたガッチャードサンダーは、ストラーダXから雷の斬撃を飛ばしてデザストを後退させると、スケボーズが入り込んだ方のストラーダXの持ち手にあるトリガーを引く。

 

 

SKEBOWS THRUST

 

 

「ハァ~ッ!!!たあっ!!!!」

 

 その瞬間、ガッチャードサンダーの周囲にスケボーズを模したエネルギー体が複数出現すると、ストラーダXが突き出された動きに合わせて、エネルギー体のスケボーズ達が一斉にデザストに向かって突撃した。

 

「よっ!おっと!!ハハッ!!!」

 

 デザストは、次々と襲い来るスケボーズ型のエネルギー体を漆黒で弾き、僅かな動作で回避していく。

 そして、全てのエネルギー体を捌き終えたデザストがガッチャードサンダーに眼を向けると、まるで桃○白(タオ○イパイ)のように、投擲したストラーダXに足をのせたガッチャードサンダーが、自身に向かって猛スピードで向かってくる光景があり、それを見たデザストは僅かに動きを止めた。

 

「行くよ!アッパレブシドー!!」

 

 

APPAREBUSHIDO THRUST

 

 

 その瞬間、ガッチャードサンダーが手にしていたもう一本のストラーダXの穂先が雷に包まれ、日本刀のような鋭い片刃のごとき形となると、足場にしているストラーダXがスケボーズを模したエネルギーに包まれ、ガッチャードサンダーは槍を振りかぶる。

 

「雷槍一閃!!!スケボーズランデブー!!!!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!?????」

 

 雷を纏うストラーダXの刃と、スケボーズを模したエネルギーに包まれたストラーダXの一撃が寸分違わず炸裂し、デザストはボディから大量の火花と爆発を起こしながら勢いよく吹き飛ばされ、ガッチャードサンダーから遠く離れた地点まで地面を転がる。

 やがて仰向けに倒れると、デザストは突如として笑い始めた。

 

「ッ、ハハハ……!ハハハハッ、ハァハハハハハッ!!!!!」

 

 笑いながら起き上がったデザストは凄まじい速度で走り出し、ガッチャードサンダーに漆黒を巧みに振るいながら突きを繰り出すが…ガッチャードサンダーはすんでのところで2本のストラーダXを交差させ、その渾身の突きを受け止めた。

 

「ッ!?」

「一つだけ聞かせろ、雷の騎士。お前は何の為に“強さ”を追い求める?何がお前を、そこまで突き動かす?」

 

 鍔迫り合いのような体勢になり、デザストは自身の突きを全力で耐えるガッチャードサンダーにズイッと顔を寄せ、問いを投げ掛けた。

 この少年は確かに才能に恵まれているが、才能だけを頼りにする無能ではなく、相応の修羅場と経験を積んだからこそ得ているものだと……しかも、10歳と言う幼さでだ。無論、互いにライバルと認め合う風の剣士【緋道蓮】には遠く及ばないが、自身のお眼鏡に叶うには十分であった。

 

 それ故の質問に、ガッチャードサンダーはデザストの剣をストラーダXで受け止めながら、真っ直ぐな視線を向けた状態で口を開いた。

 

「僕は人を助けるために戦うんだ!生きる意味なんてないと思ってた僕に、数え切れない大切な物をくれた入間さんやフェイトさん達みたいに……今度は僕が、あの人達みたいな沢山の人を救える騎士になる!!それが、僕が“仮面ライダー”として戦う理由だ!!!」

「………はっ!あの人達みたいに、ねぇッ!!」

 

 剣を振り上げて互いに距離をとると、デザストはガッチャードサンダーを指差す。

 

「だがなぁ、それじゃあダメなんだよ。他人の背中ばかり見てるようじゃあ、お前は一生強くなんかなれねぇぞ?」

「なっ!それは、どういう……」

「…さあな!そんなもんは、自分で考えな!!」

 

 デザストは漆黒を振り上げ、上段から振り下ろす。それを片方のストラーダXで受け止めたガッチャードサンダーは、すぐにもう片方のストラーダXを突き出すが……デザストはそれを片手で掴んで受け止めた。

 

「なら、逆にお前は何のために戦うんだ!?それだけの力を…仮面ライダーの力を、お前は誰のために使ってるんだ!!?」

「あぁ?そんなもん、“俺自身”が楽しむために決まってんだろ!」

 

 掴んだストラーダXを引き、引き寄せられたガッチャードサンダーの鳩尾に膝蹴りをいれる。思わず片方のストラーダXを手放して地面を転がるガッチャードサンダーに、デザストは両腕を広げながら答えた。

 

「俺もお前と同じ、造られた紛い物の命だ。感情も、人生も……なんの意味もなく、何も残せない……だがなぁッ!!」

 

 再び走り出したデザストは、ガッチャードサンダーに漆黒を振り下ろす。再びそれを槍で受け止めるガッチャードサンダーだが……今のデザストの漆黒には先程よりも桁違いの重さがあり、思わず膝をついた。

 

「今、この瞬間…強い奴等と斬り合う時間だけは本物なんだよ!!!生と死が混じり合い、刃と刃が交じり合う時間が……俺が生きている意味そのもの!!!!これが、俺の“物語”だ!!!!!

「……ッ!」

「だから、もっともっと感じさせろっ!!!!!!!」

「ガッ!!!???」

 

 デザストの漆黒がガッチャードサンダーの防御を押しきり、ガッチャードサンダーは火花を散らしながら何回も地面を転がっていく。

 

「これで終わりだ、雷の騎士!お前が自分の存在に意味を見出だしたって言うんなら……それを全力で証明しろ!!お前の強さの真髄、俺に全部見せてみろ!!!」

 

 デザストは漆黒をソードライバーに挿し込み、装填されている骸骨忍者伝ワンダーライドブックを押し込む。

 

 

必殺読黒(どくろ)

 

漆黒抜刀!!

 

 

 ソードライバーから漆黒を引き抜き、その切っ先を左側の足元の地面に当てると、デザストは意識を集中させる。

 

 

骸骨忍者伝必殺斬り!!!

 

 

 剣を勢いよく振り上げると火花が散り、デザストの体を紫と緑の竜巻が包み込む。

 離れた地点にいるガッチャードサンダーですら、強く踏み留まらなければ紙屑のように吹き飛ばされてしまいそうな強烈な風を纏うデザスト。

 

「ッ!だったら、僕は……!!僕の全存在を懸けて、お前を倒す!!!」

 

 ガッチャードサンダーは、両手に持つストラーダXを地面に突き刺すと、ガッチャードライバーの黄色いアルトヴォークを押し込む。

 パッションアタノールから莫大な稲妻が迸り、二本のストラーダXを地面から引き抜く。そうして二本の槍を構え、ガッチャードサンダーの周囲に雷鳴が轟く。

 

 

アッパレスケボー!フィーバー!!

 

 

 そして、二人は同時に地を蹴って飛び出した。

 

「カラミティ・ストライク!!!!!!!」

「紫電、一閃!!!!!!!」

 

 紫と緑の暴風と化したデザストと、一条の雷光となったガッチャードサンダーが中間地点でぶつかり合い……周囲全体を震撼させるような大爆発を起こした。

 

 やがて爆煙が収まっていくと、そこには自身の武器を振り抜いた状態で背中合わせに立っているガッチャードサンダーとデザストの姿があった。

 

「ッ!!!!!?????」

 

 次の瞬間、ガッチャードサンダーの装甲から無数の火花が飛び散り、全身から煙を吹き上げながら膝をついた。

 

 竜巻の様に体を回転させて連撃を放つ“カラミティ・ストライク”の斬撃に、ガッチャードサンダー渾身の“紫電一閃”の威力が削がれ、逆に神速の斬撃を幾度も食らってしまったのだ。戦闘はまだ続けられそうだが、受けたダメージは決して無視できるものではなかった。

 

「…ッ、ハハ、ハハハハハッ!やっぱり、お前は面白い……!!」

 

 だが、両足でしっかりと立つデザストも、全くの無傷ではなかった。

 ライトニング部隊副隊長【シグナム】直伝の“紫電一閃”は、技を教えたシグナムが魔力変換資質『炎』による炎の魔力を乗せた斬撃に対し、魔力変換資質『電気』を持つエリオの“紫電一閃”は雷を纏った突進攻撃となる。それ故に、先程のような柔軟な動きができないと察したデザストは、“カラミティ・ストライク”で攻撃の勢いを殺してから斬撃を何度も叩き込んだ。

 だが、ガッチャードサンダーの突貫力はデザストの想像以上に強く……“カラミティ・ストライク”でも完全に威力は殺せず、交差する一瞬だけ、脇腹に槍の穂先が突き刺さったのだ。

 

 デザストは、多少よろめきながらもこちらを見据えてくるガッチャードサンダーに視線を転じると、ソードライバーからライドブックを引き抜いて変身を解除した。

 

「どうせなら最後まで戦いたかったが……気が変わった。これからもっともっと強くなってから、本当の決着をつける。それまで死ぬなよ、雷の騎士」

「なっ、待て……!」

 

 ガッチャードサンダーが制止の言葉を掛けるより先に、デザストは紫色の風に包まれ…その場から姿を消していった。

 

『あぁっ!ちょっとぉ、勝手にいなくならないでくださいよ~!?はぁ……しょうがない。ここは特例で……』

 

 空中に映ったモニターから、プレアデスが勝手に何処かへと消えていったデザストに文句を言うが…既にいなくなっては仕方ないと、試合の勝敗を宣言した。

 

『WINNER! GOTCHARD THUNDER!!』

 

「……あのまま戦ってたら、僕が負けてた。結局、敵わなかったのか………」

 

 勝ちを譲られたような気がして、ガッチャードサンダーは変身を解除すると…元の場所に戻ったスタジアムの中心で、エリオは一本に戻ったストラーダXを強く握り締める。

 

「エリオくん!」

「……入間さ、あ……!?」

 

 そこへ、光輝との試合を終えた青入間がエリオの元へと駆け寄った。

 その姿を見て気が抜けたのか、エリオはその場にボスッと尻餅をついた。

 

「ッ!だ、大丈夫!?」

「いえ、このくらいはなんでも……けど、すみません。ご迷惑を掛けて……」

「…別にそんなことないよ。最後の方だけ見てたけど、エリオくんも本当にスゴかった。君にとっては少し納得がいかない結果かもしれない、でも……頑張ってるんだって気持ちは、ちゃんと伝わってきたよ」

 

 青入間が疲労困憊のエリオに肩を貸して立ち上がらせると、観客席から観戦をしていた白アズ達も階段を降りて、青入間とエリオの元へと駆けつける。

 

「皆…!」

「入間さん、エリオ!お疲れ様!!」

「お見事でした、イルマ様!このアスモデウス・アリス、言葉にできぬほど感激いたしました!!」

「確かにな。二人とも、見事な健闘だった」

「イルマち!エリち!めっちゃくちゃカッコよかった!!」

「いやぁ~!さすがは僕の孫とその愛弟子!!最高にスッゴくキマってたよ~~♪もぉ、お爺ちゃんはそんな立派な君達が誇らしくって、嬉くって……そんでもって可愛いくってたまんないなぁ~~!!!」

「あ、あはは……ありがとう」

「入間さんもそうだけど、エリオもヤるじゃない。アイツ、見るからにヤバそうな奴だったのに撤退させるまで追い込んだんだものね」

『あぁ、エリオ。君も実に熱く…素晴らしいFightをしていたね。私も驚いたよ!』

「……でも、入間さんはともかく、僕は完全にアイツに負けてました。ちっともスゴくなんか……」

 

 白アズ達とスバル、ティアナ、ベルトさんが称賛の言葉を送ってくれるが、照れ臭そうな青入間とは対照的にエリオの表情は暗い。全力を出して技を放ったのにそれを打ち破られ、その結果に納得ができないというのに勝ちと判定されたのだから、無理もない。

 そんなエリオに、デイブレイクはポンと頭に手を乗せた。 

 

「……そう気落ちするな。たかが10歳の子供が、歴戦の戦士相手に無双できる筈がないだろう?」

「そう、ですけど…このままじゃあ、ダメだと思うんです。もっと強くならないと……」

「そう思えてるなら十分だ。だが、お前はどうも強くなるのに必死すぎる所がある。焦って無理をしたら取り返しのつかないことになるのは、なのはから教えてもらっただろ?」

「でも!僕達は次元世界の平和を守るためにも、これから激化する戦いのために……」

「……あ~っ!いつまでもウジウジしてんじゃねぇよ!!」

 

 普段から人を誉めることが少ないデイブレイクの励ましの言葉に、エリオは苦笑しているが……まだ吹っ切れた訳ではなさそうだ。それを見て、ノーヴェは髪をかき乱しながらエリオに詰め寄る。

 

「いいか!?アタシ達だってなぁ、昔は自分達(ナンバーズ)は無敵だって思ってたよ!けどな、アタシ達も少しは色んな奴と戦って…考え方をアタシ等なりに改めてんだ!!アタシ等にそれを教えたうちの一人のお前が、そんな情けねぇ顔すんじゃねぇ!!!」

「ノーヴェさん…!でも、僕は全力の攻撃も通じなくて…見逃してもらうなんて情けない結果しか……」

「いいや、ノーヴェの言う通りだ。寧ろ、そいつと互角に渡り合えた事を誇りに思うべきだろう。映像を見る限り、奴は今の私たちですら勝てるかどうか分からん相手だ。そんな相手を撤退させるまで追い詰めた、と考えればな……それに、情けないなどと思っているのはお前だけだ」

「勝ちたかった、結果に納得出来なかったという君の気持ちはよく分かるよ。だが、君はまだ若く、未熟だ。私達の中で、君の事を情けないだなんて思っている者は一人もいないさ。今の君に必要なのは、今回の結果を受け入れ…それを反芻することだよ」

「トーレさん……ジェイルさん……」

 

 ノーヴェ、トーレ、スカリエッティの激励の言葉に、エリオは少しだけ気力を取り戻したように顔を上げると…エリオに肩を貸していた青入間は、ニッコリと微笑みながら口を開いた。

 

「これからも、僕達は君と一緒に戦っていく。だから、皆で一緒に強くなろうよ。仲間の力が合わされば、仮面ライダーは“無敵”だから!」

「入間さん……!はいっ!!」

 

 憧れの人からの言葉に、エリオは満面の笑みを見せる。そんな微笑ましい光景に、白アズ達やスカリエッティ組。さらには観客席から動かずにいた黒アメリ達バビル一行も優しげな表情を浮かべていると、そんな空気に水を差すような声が聞こえてきた。

 

「鈴木ぃ……!」

「「「「「「「「『「「「「ッ!」」」」』」」」」」」」」

 

 青入間達が眼を向けると、そこには先程までファイヤーガッチャードの必殺技を受けて瀕死の重傷を負っていた光輝が、ボロボロの体を起き上がらせ…自分をこんな目に遭わせたエリオを支えている青入間へと、まるで長年探し続けた親の仇を見つけたかのような明確な殺意と憎悪などの様々な悪意が込められた目で、すぐにでも射殺さんばかりに睨み付ける。

 実は、ファイヤーガッチャード(青入間)が必殺技を直撃させる際、その優しさ故に敢えて急所を外してから技を放ったのだ。その結果、確かに重傷を負っていた光輝だが、そのチート的なステータスと回復力、そして怒りのパワーにより、一時的に動けるところまで回復したようだ。

 

「よくも、よくも…俺の聖剣とベルトを……!!こんなのありえない…!俺が負けるなんてありえない……!!お前が、何か卑怯な手を使ったんだ!!!」

「ひ、卑怯って…!僕は、そんな事……!!た、確かに剣やベルトを壊したのは、僕のせいかも知れないけど………」

「この無礼者め!イルマ様は正々堂々と実力で貴様に勝利したのだ。たかが剣の一本やベルトが破壊されたからとて騒ぐな!!イルマ様より貴様が遥かに弱かっただけだ!!!」

「ちょっ!アリスさん、そんな言い方しないでくださいよ!?あ、あの…!大事な剣とベルトが壊されて怒る気持ちは分かるけど、一旦落ち着いて……それに、入間さんはやり過ぎてたかもだけど、卑怯な手なんて使っては……」

「嘘だ!俺は“勇者”なんだ!!そんな俺が……ソイツに負けるなんてありえない!あっていい筈がないんだ!!正しいのは俺で、間違っているのは全部そこにいる卑怯者の方なんだ!!!」

「おい、貴様。試合の映像を見ていても思ったが、何故そこまでイルマを目の敵にする?貴様が気に入らないのは白いイルマのはずだ。青いイルマには関係がない!恨み言を吐きたいのなら本人に言え!!」

「そうよ!それに、さっきからアンタ…勇者とか正しいとか、意味わかんないことばっか言ってんじゃないわよ!?アンタが実力で入間さんに負けたのはホントなんだから、いい加減ないちゃもんつけてんじゃないわよ!!」

「まっかちゃんとティアティアの言う通り!男らしくないよ、そーいうの!!」

「いいや、違う!ソイツは特別なものなんて何もなくて、授業中にいつも寝てばっかりで、ヘラヘラとその場凌ぎの態度でクラスの皆から“無能”って呼ばれていた奴なんだ!!そんなやる気も実力もない奴が、俺に勝つなんてありえない!!!」

「む、無能!?入間さんが…!!??」

「テメェ!さっきから聞いてれば、負けんのが悔しくてありもしねぇ事を喚き散らしてるだけじゃねぇか!!」

「自分の敗北を人のせいにする気か!!!」

「ッ!鈴木なんかを庇うなんて……鈴木!!お前、彼女達を洗脳かなんかしたんだろう!?そうじゃなきゃ、そこにいる女の子達がお前なんかを庇う筈がない!!!」

「せ、洗脳!?ちょっと待ってください!僕は皆を操ってなんか……!!」

「待つんだ、入間君!今の彼に何を言っても無駄だ……彼はティオ君の言う通り、自分の正しさを疑っていない。つまり、他人の意見には耳を貸そうとしていないんだ」

『なんてHystericな少年だ……!?』

「うるさい…!うるさいうるさい!!今度こそ、正々堂々と勝負しろぉおおっ!!!」

 

 青入間達は必死に光輝を宥めようもするも、ご都合解釈も八つ当たりも危険なレベルまで暴走した光輝は拳を振りあげながら、青入間に向かって猪の如く猛スピードで突撃していく。あまりにも急な事態と一般人を軽く凌駕するスピードに、青入間達の反応が遅れ、光輝が青入間の前に到達しようとした瞬間──

 

「………ふんっ!!!!!」

「ぐぎゃあぁあああぁああっ!!!!!?????」

 

 デイブレイクが光輝の前に立ち塞がり、強烈なパンチを顔面に食らわせた。魔術で身体強化を施したデイブレイクの豪腕に、光輝は鼻の骨が曲がって鼻血を流しながら倒れる。

 デイブレイクは、お世辞にも勇者とは呼べない醜くなった顔の光輝を冷めた眼で見下ろすと、フンッと鼻を鳴らしながら…つまらなそうに吐き捨てた。

 

「……哀れだな」

「ッ!なん、だとぉ……!?」

「お前は自分がこうあるべきだと言う勝手な妄想に囚われ、思い通りにならなかった現実に喚き散らしているだけの……ただの“悪ガキ”だ」

「ッ!ふ、ふざけるなっ!!俺の何処が……!!!」

「お前の事情は知らないが、白い方じゃなく……何の関係もない青い方に八つ当たりしてたのがその証拠だろ?」

「違う!アイツは…アイツは許されない悪で、卑怯者で……!!」

「……そんな事しか言えないんじゃあ、お前は青い方はおろか……白い方にも一生勝てないだろうな」

「ッ!!!!!!!???????」

 

 デイブレイクの言葉に、光輝は思わず目を見開くが……すぐに怒りに満ちた表情をしながら歯を食いしばると、ヘドロのように濁った瞳でデイブレイクを睨みながら口を開く。

 

「俺は、俺は勝つんだ!!!鈴木よりも強くなって、世界を救って………」

「お前の言葉には熱がない。自分が愉悦に浸りたいだけの理由でしか、戦おうとしていない。その程度のお前には、たとえ勇者だろうと…仮面ライダーだろうと、どんな力を手に入れても……何も成すことはできないだろう」

「違う…!そんなぁ、そんな訳があるか!?俺は、世界を救う“勇者”だぞ!!?その俺が、あの“無能の鈴木”に負ける訳が……!!」

「それこそ違うな。お前はどちらの入間の事も、自分の事も分かっていない。お前はあの二人の足元にも及ばない………“虫けら”だ」

「ッ!!!“勇者”である俺が、“虫けら”だとぉお!?ふざけるなぁあっ!!!!!そこまで言うなら……まずはお前から倒してやるぅううううううう!!!!!!!」

「ハァ……(コイツ、ホントにめんどくさいな。あの時のなのは以上じゃねぇか……)…ッ!おっと!!」

「なっ!おい、待て!!逃げる気……ッ!!!???」

 

 頭を抱えようとした時、コートを翻してその場から飛び退いたデイブレイクを追いかけようとした光輝の足元から黒い靄のようなものが噴き出し、その姿が不気味な目を持つ魔物のような姿へ変貌すると…まるで質量をもつかのように光輝に絡みつく。青入間達が、思わずその光景に目を丸くしていると、背後からおぞましい殺気を感じて震え上がった。

 その殺気の発信源に一同が目を向け……代表して、青入間が声を上げた。

 

「お、お爺ちゃん……!?」

 

 そう。その殺気を放っていたのは、青入間の祖父であるサリバンだったのだ。

 サリバンは、足元から魔力で構成させた漆黒の靄で光輝を拘束すると、ユラリと光輝の体を持ち上げる。そして、青入間達の横を通り過ぎつつ、その場にいる誰もが震え上がるような膨大な殺気を放ちながら、目を細め…光輝に向けてゆっくりと口を開いた。

 

「君、さっきから聞いていれば…僕の自慢の()()に随分な言葉を言ってくれるね」

「鈴木の祖父、だとぉ!?ハッ!きっとアンタもあんな奴の祖父なら、俺のじいちゃんと違って……碌でもない奴なんだろぉ!!」

「少し黙ろうか?」

「ッ!?」

 

 光輝の言葉は、そこで止まった。普段は孫バカで穏和なサリバンが、普段では考えられないような殺意に満ちた目で光輝を睨んだからだ。

 

「自分の信じたい事しか信じず、気に入らないものには当たり散らす事しか出来ない君みたいな輩に、僕の自慢の()()を愚弄するのは…とても許せないんだよねぇ。君には少し、僕による “凄惨たる教育 ”が必要なのかも…しれないなぁ……!!!」

「あ、あぁ……あ…あ……あ…………」

 

 魔界の英傑“三傑”の一人であり、“最も魔王に近い男”と呼ばれた悪魔の殺気は、それこそ光輝が対峙したシザースとは比べるのも烏滸がましい程に桁違いだった。当然、それを受けた光輝の精神が持つ筈はなく、光輝はバッタリと意識を手放してしまった。

 それを見たサリバンは殺気を消し、靄を消す。地面にビタンッと音を立てて倒れた光輝は、ひっくり返ったヒキガエルのような体勢でブクブクと泡を吐き、失禁しながら気絶しており…あまりにも不様な姿に、青入間達はドン引きや憐れみ、心配の視線を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、観客席に座ってその光景を見届けていたバビル一行は、気絶して失禁するという光輝の醜態にドン引きしたような表情を浮かべていた。

 

「ひょえ~…とんでもない殺気ですねぇ。まあ、向こうの世界のお義祖父様がそれだけ怒ってたって事ですよねぇ」

「いやぁ、でもあれは流石に怒るでしょ。ミレディさんだって庇う気無くすし」

「当たり前だ。あんな醜態をさらす醜男を、庇う方がどうかしている」

「うーん……キラキラ君、ビビりんぼさん?」

「貴様は深く考えるな、あほクララ……だが、一つだけ気になるな。何故、アイツはいつまで経ってもタマイ・アツシのように転送されないんだ?」

「確かにそうじゃな。八重樫雫もリリアーナ王女達も戻って来ないというのに、何故あやつだけがそのままなのじゃ?」

 

 彼女達は、サリバンの桁外れの殺気を感じても別に動じない。サリバンの強さは分かってはいるが、数えきれない程の殺意や血にまみれた戦いを経験していた彼等は…サリバンの殺気には“本気”がないことを悟っていた。

 寧ろ、黒アズとティオが口にした…姿を消さずにそのまま気絶している光輝に疑問符を浮かべている程だった。

 

「それは多分、彼にはもうそれをする必要も価値もないからだね」

 

 その時、後ろから声が聞こえてきてバビル一行が振り向くと…そこには、ライダーコロシアムの内情を探っていた白入間とユエ。そして何故か姿が見えなかったチマ、愛子、優花、チンクに…優花の背中の上でぐったりと気絶している行方不明になっていた筈のリリアーナの姿があった。

 

「あ!イルマさん、ユエさん!!お帰りなさいですぅ!!!」

「……ん。ただいま」

「クロケル…アイコにユウカまで、イルマと一緒にいたのか?」

「イルマさんへの愛の力です!!」

「何を言っているんだお前は……しかし、これは一体どういう状況なんだ?浮世英寿達が何処かに行ってしまったかと思えば、何故あの天之河光輝とかいう男が泡を吹いて気絶しているんだ?」

 

 表情を明るくさせ、入間達を迎え入れるシア達。何故か愛子と優花も一緒にいたことに首をかしげる黒アメリ。一方で、説明を求めたのに何の説明もされていないまま姿を消してしまった英寿、士、デモンサンダー、壮吉の四人に頭を抱えていたチンクは、スタジアム内で泡を吹いて倒れている光輝を青入間達が囲んでいる光景に訳が分からず困惑していると…優花の背中でぐったりしていたリリアーナの目蓋がふるふると開かれた。

 

「……んっ。こ、ここは……?」

「ッ!リリィ!!起きたのね!!!」

「リリアーナさん……よかった、無事で……」

 

 愛子と優花がリリアーナが目を覚ましたことに安堵の息を漏らしている中、黒アメリ達は行方不明者の一人であったリリアーナが発見されたことに目を鋭くして、白入間に問い掛けた。

 

「イルマ。お前は一体、何を見つけたんだ?」

「……消えたライダー達の行方と、敵と目的…ですね」

「へぇ…なら、俺にも教えてくれない?」

 

 その時、その場にいる誰もが聞き覚えのない声が聞こえてきた。

 

 バビル一行と愛子達が振りむいてみると、そこには金髪の若い男性と、濃い青色の鬼のような姿をした怪人が立っていた。

 

 その青年と怪人の姿を見て、仮面ライダーの知識が豊富な白入間が声を上げた。

 

「貴方は、野上幸太郎さん!?」

「えっ?だ、誰ですか?」

「もしかして、この人も……」

「そう、俺もライダー……仮面ライダー電王。で、そう言うアンタ達こそ………誰?」

 

 その青年──【野上幸太郎】が尋ねると、その隣に立っていた青い鬼の怪人──【テディ】が幸太郎に向き直り、口を開いた。

 

「幸太郎。彼は鈴木入間君、仮面ライダージオウだ。そして、ここにいる彼女達も…その仲間の仮面ライダーだ」

「ッ!仮面ライダー!?」

 

 テディの説明を聞き、幸太郎は僅かに驚いたようにユエ達を見た。仮面ライダーの中にも女性は一定数存在しているが、ユエやチマのような少女が変身しているのは今初めて知ったからだ。

 その意図を察したのか、ユエやチマが不機嫌そうな顔をするが、幸太郎はその目線を無視して一応の納得を見せると、白入間に話し掛けた。

 

「それより、アンタ達はこの大会について色々と探ってたんだろ?俺達にも、詳しい話を聞かせてくれないか?」

 

 幸太郎の言葉に、白入間は少しの間だけ思案した後、仲間達の方を振り返る。そして、仲間達の同意を得て、コクリと頷いた。




 実は、前回のマルスVSシザース戦を含め、今回のお話は殆んど悪魔紅蓮さんの提案のお話です。

 その内、この小説の番外編というかアフターストーリーを執筆してみようと考えています。

 感想、評価お待ちしております。

本作での香織の末路はどうなってほしいと思いますか?

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