仮面ライダーG6に仮面ライダーG7……めっちゃカッコいいですよね…
ヘルズギーツが召喚された怪人達が全滅した頃、ジオウ達とヘルズギーツの戦いは苛烈を極めていた。
「あぁあああああああっ!!!!」
ヘルズギーツはヘルズギーツバスターから壊滅的なエネルギーが込められた光弾を発射する。着弾と同時に、凄まじい爆音が周囲に響き渡る。
「はぁあああああっ!!!」
「っ!?」
その時、爆炎の飛び出したミラクルガッチャードが、両足の煙突から青白い炎を吹き上がらせながら飛び出す。そして、そのまま超速の蹴りを炸裂させた。
「ぐっ!?」
あまりの重さに、ヘルズギーツは火花を散らして後退すると、ヘルズギーツの耳に電子音声が響いた。
ヘルズギーツが視線を向けると、そこには“バリズンソード”を手にしたガッチャードシャイニングデイブレイクが、エネルギー噴射で凄まじい勢いでヘルズギーツに迫る。
ヘルズギーツは手にしたヘルスギーツバスターの刀身で受け止めるが、バリズンソードのエネルギー噴射による推進力に押され、地面を抉りながら後退する。
「はぁっ!」
「ふっ!であっ!!」
ガッチャードシャイニングデイブレイクは地に足をつけると同時に再びバリズンソードを振り下ろすが、ヘルズギーツはすぐさまヘルズギーツバスターで応戦する。
赤黒い斬撃が飛び、ガッチャードシャイニングデイブレイクは跳躍して回避すると、その背後から接近していたゴーカイレッドがゴーカイガンの引き金を引く。
「あぁああああっ!!!」
火花を散らして後退するヘルズギーツ。ゴーカイレッドはゴーカイサーベルを構えると、ヘルズギーツと剣戦を開始する。
「スバル!士さんから話は聞いてるよ!」
「……ッ!もうアタシには、何も残ってない!仲間も故郷も!だから全部消してやるんだ!!」
「そんなの……逃げてるだけじゃない!!」
「あがぁっ!!?」
ゴーカイサーベルの一閃を受けて切り飛ばされるヘルズギーツ。しかし、すぐに体勢を立て直すと、デザイアドライバーにレジェンドライダーのレイズバックルを装填する。
ヘルズギーツの右手に“メテオギャラクシー”が装備され、ヘルズギーツは一番奥のマーズレバーを押し込み、指紋データ受信センサーのフィンガーマウントパネルに左手人差し指の指紋を照合する。
右手に火星を模した球体を発生し、ヘルズギーツは赤い閃光となってゴーカイレッドに接近すると、燃え盛る惑星の拳を突き刺した。
「うぐぁっ!!?」
「なのは!!」
殴り飛ばされたゴーカイレッドを見て、ガッチャードシャイニングデイブレイクはバリズンソードを投げ捨てると、即座に跳躍してゴーカイレッドを受け止める。
ガッチャードシャイニングデイブレイクが着地すると、ヘルズギーツはメテオギャラクシーから環状の衛星を象ったエネルギーを発生させエネルギーリングを放出させ、それをガッチャードシャイニングデイブレイクに向けて投擲する。
その時、ジオウはゴーカイレッド達の前に出て、右手を突きだした。
「はぁっ!!」
「ッ!うぅ、ぐぁああああああああっ!!!!?」
放たれた衝撃波がエネルギーリングを消失させ、そのままヘルズギーツに襲い掛かる。ヘルズギーツはギーツテールヘルズで自身の体をドームのように展開させて防ごうとするが、黄金の波動はそれをものともせずにヘルズギーツを吹き飛ばした。
「ぐぅっ!貴様ぁ……!」
起き上がるヘルズギーツ。しかし、その差は歴然だ。奪った力は取り返され、更にはヘルズギーツの力をの大きさに体が着いていけず、戦う度に体力が消耗しているのだ。それでも、ヘルズギーツは体に鞭を打ってヘルズギーツバスターを構える。
ジオウはサイキョージカンギレードを手にしながら、ヘルズギーツの挙動から彼女の状態を正確に読み取った。
「……急激な力の増減に体が悲鳴を上げてる。そのまま戦い続ければ、死にますよ?」
「「「ッ!?」」」
共闘している三人の視線が自分に集まるのを無視して、ジオウは「さてどうするか…」と考えていると、
「ッ!関係ない!!もう世界を滅ぼすこともどうでも良い!!お前達だけでも……お前達を殺せれば、それで良い!!」
その言葉と共に、ヘルズギーツから赤黒いエネルギーが溢れ出す。オーマフォームに進化したことを差し引いても、最後の虚勢のような──痛々しくもある──その姿に、ジオウは何も感じずに剣を構えようとした時、隣から自分と同じ声が聞こえてきた。
「貴方の気持ちは分かりました……!だけど!だからこそ貴方を放っておけない!!復讐したって、貴方も誰も救われない!!」
「だから何!?復讐をしようがしまいが、もう皆は帰ってこない!!だからもうアタシはどうなってもいい!!」
悲鳴にも似た雄叫びと共に、ヘルズギーツが斬りかかってくる。ジオウとミラクルガッチャードは左右に跳んでそれを回避する。
しかし、その後ろにいたガッチャードシャイニングデイブレイクは避けず、振り下ろされたヘルズギーツバスターを、交差させた両腕で受け止めた。
「ッ!!」
仮面の下で目を見開くヘルズギーツ。ガッチャードシャイニングデイブレイクは、ヘルズギーツバスターの刃でスーツからポタポタと赤黒い液体が流れるのを感じながら、ヘルズギーツは声を荒げた。
「プレアデス……いや、スバル・ナカジマ!大切な物を奪われ、苦しみ続けた果てに死を望むお前の気持ちは分かる!俺だって、昔はそうだった……!」
そう語る彼の脳裏に浮かぶのは、かつての戦いの日々。
グリオンの刺客に手も足も出せずに敗北を繰り返し、真綿でジワジワと首を絞めるように大切な仲間や家族を殺されていき、死に場所を求めて亡霊のように戦い続ける日々。
「だから……俺はお前を死なせたくない!!」
「貴方の悲しみも、憎しみも、僕達が全部受け止めます!!」
「待ってて……今度は必ず助けるから!!」
ミラクルガッチャードも、ゴーカイレッドも、己の武器を構えて声を張り上げる。敵を倒すのではなく、目の前にいる一人ぼっちの女を救おうという確固たる意思をもって。
「……」
そんな彼らの姿を見て、
だが、プレアデスは平行世界のスバルとはいえ、彼女と彼等は初対面の筈なのに、もう一人の自分とその仲間達は、彼女の為にここまで必死になれる姿が、ジオウには力を継承した
(力だけなら圧倒的に僕が上なんだろうけど……敵う気がしないや)
変わることのない
「黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ!!全部、消えてなくなってしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
ギーツテールヘルズを展開させたヘルズギーツの体から赤黒い靄が溢れだしたかと思うと、その体が瞬く間に大きくなっていき、一瞬にして全長30mはある体躯へと変貌した。
「デカっ」
「うぁああああっ!!!」
ジオウが短く呟いた瞬間、ヘルズギーツは体と共に巨大になったヘルズギーツバスターから破壊の光弾を放つ。
ジオウとガッチャード達は四方に分かれてその光弾を回避すると、ヘルズギーツはヘルズギーツバスターの刃をガッチャードシャイニングデイブレイクに向けて振り下ろす。
振り下ろされた刃が砂塵を巻き上げ、刃の姿を隠す。しかし、ガッチャードシャイニングデイブレイクは背中の加速装置から青白い炎を噴き上げながらヘルズギーツバスターの刀身の上を駆け抜ける。
「はぁっ!!」
「……ッ、あぁっ!!」
超速から繰り出される爆炎を纏う拳が直撃し、ヘルズギーツは大地を揺らしながら後退する。しかし、体格差ゆえにダメージは少なく、ヘルズギーツはドライバーに装着されているヘルズギーツレイズバックルのレバーを操作する。
ヘルズギーツの足に赤黒いエネルギーが蓄積されヘルズギーツは目下にいたジオウにその巨大な足を振り下ろそうとする。自分と同等はありそうな巨大な足を前に、ジオウは右手をかざした。
「ふっ!」
「っ!?」
ジオウの声と共に、ヘルズギーツの足が止まる。ジオウが右手から放った念動力によって、動きを止められているのだ。
「せいやぁあああああっ!!!」
「うぁああああぁっ!!!!?」
サイキョージカンギレードから光の刃を発生させ、それを振り抜く。巨大な刃に体を切り裂かれたヘルズギーツは、火花を散らしながら吹き飛ばされた。
「行くよ、ギガントライナー!!」
『ギガントライナァーーーッ!!!』
「ッ!!」
その時、警笛と共に巨大な何かが突撃してくる。ヘルズギーツが顔を向けると、そこにはSLの三倍近い巨大な体躯をしたギガントライナーが、先頭車両の上にミラクルガッチャードを乗せ、此方に向かって爆走していた。
ヘルズギーツは、すぐにそれを撃ち落としてやろうとヘルズギーツバスターを構えた時、自身の頭上から凄まじい魔力を感知した。
弾かれたようにヘルズギーツが顔を上に上げると、そこには桃色の光を蓄積させる魔杖を構えた赤い海賊の姿があった。
「ッ、なのは…さん……!!」
呆然としたヘルズギーツが呟く。
周囲から、この場にいた全員が使った魔力を流れ星のように集束していき、カートリッジを消費しながら、魔力を固めていくゴーカイレッドの姿を見て、ヘルズギーツはヘルズギーツバックルのスロットルレバーを操作する。
ギーツテールヘルズが扇のように展開され、一本一本の先端に赤黒い波動が溢れ出す。ゴーカイレッドのもつレイジングハートの先端に、桃色の光が収縮していくと、ヘルズギーツはそれが解き放たれるよりも早く、蓄積したエネルギーを解き放った。
「消えろぉおおおおおおおっ!!!!!」
ギーツテールヘルズの先端から、9つの赤い光線が発射され、その光線が一つに集束することで、一本の巨大な光線となってゴーカイレッドを飲み込もうと迫る。対して、ゴーカイレッドは振り上げたレイジングハートを振り下ろしながら、集めた魔力を解き放つ。
「スターライト…ブレイカーーーーッ!!!」
レイジングハートの先端から、ピンク色の魔力の光が溢れだし、ゴーカイガレオンの姿を象りながら、赤黒い砲撃とぶつかり合う。
大地を揺るがし、空間が激震する程の大爆発が巻き怒り、ヘルズギーツはその爆発に巨体を押されて後退する。
「私は、こんな所で……ッ!!」
体制を整えようとしたヘルズギーツは、警笛を耳にして、ハッと後ろを振り返る。そこには、先頭車両にジオウ、ミラクルガッチャード、ガッチャードシャイニングデイブレイクを乗せたギガントライナーが、煙を噴き上げながら爆走していた。
ヘルズギーツは、ヘルズギーツバスターから破壊光弾を乱射し、ギガントライナーを撃ち落とそうとする。空へと駆け上がったギガントライナーは、車両を砕かれながらもヘルズギーツを目指して突き進む。
「行こう!もう一人僕!デイブレイクさん!」
ミラクルガッチャードはその言葉と共に、ガッチャードライバーに装着されたニジゴンの頭部を三回叩き、アルトヴォークを操作する。
ゴン!
ミラクルガッチャードがギガントライナーの飛び上がると、破壊されたギガントライナーの車両の瓦礫がミラクルガッチャードの身体に集まると、巨大なミラクルガッチャードが姿を現した。
「プレアデス……お前の憎しみも、悲しみも、俺達が解放させる!」
ガッチャードシャイニングデイブレイクが、ベルトのアルトヴォークを押し込むと、待機音と共にデイブレイクザ・サンの無限の力が身体から溢れだし、ガッチャードシャイニングデイブレイクの身体が炎に包まれる。
「なんか、イケる気がする!!」
ジオウはサイキョージカンギレードを投げ捨て、ジクウドライバーに装填されたオーマジオウライドウォッチのライドオンスターターを押し、ドライバーのロックを外して、一回転させる。
ヘルズギーツの周囲に、巨大な「キック」という形をした黄金のエネルギーが現れ、無数の文字がヘルズギーツを取り囲む。
ジオウとガッチャードシャイニングデイブレイクがギガントライナーの頭の上から飛び出すと、巨大化したミラクルガッチャードとギガントライナーの足が一体化した。
ヘルズギーツギーツの周囲を取り囲んでいた「キック」の文字が一つに束ねられてジオウの足裏に収まると、巨大化したミラクルガッチャード、爆炎を纏うガッチャードシャイニングデイブレイク、そして黄金の光を纏うジオウは、ヘルズギーツに向けて急降下した。
三人の蹴りが、ヘルズギーツの巨大な体を貫く。二つの穴と、巨大な穴を身体に空けられたヘルズギーツは身体からバチバチと電気が走りながら、巨大な体をボロボロと崩壊させていく。
「あぁあああああああああああああああああああああああああああっ!!」
断末魔のような悲鳴を上げながら、ヘルズギーツは大爆発を起こす。同時に、破壊されたライダーコロシアムの施設から、黄色い光が幾つも飛び出し、彼方此方へと四散していった。
「これは……?」
「囚われていた仮面ライダー達が、元いた世界に戻っているんですよ」
そこへ、戦いを終えたギーツの元に赤い光が飛来し、ギーツはそれをキャッチした。
「……やれやれ、とんだ災難だったな」
ギーツⅨレイズバックルを見ながら、ギーツは溜め息を吐いた。
戦いが終わり、一同はある場所に向かっていた。
本来なら入間達も元の世界に変えるべきだったのが、その前にやらなければならない事があったからだ。
「ぐぅ……あぁッ!」
彼等が集まった場所にいたのは、デザイアドライバーを破壊され、ボロボロの姿になったプレアデスの姿があった。
白入間は靴で槌を踏みしめる音を鳴らしながらプレアデスに歩み寄ると、その彼女のすぐそばに転がっていたヘルズギーツレイズバックルに視線を下ろす。手を伸ばすプレアデスがそれを掴むより早く、白入間はヘルズギーツバックルを拾い上げた。
そして、プレアデスを見下ろすと、興味がなさそうな口調で告げた。
「……キックを放つ時、魂魄魔法と昇華魔法を使った。本来は他者の体内魔力を吹き飛ばすための物だけど、君をドーピングさせていたあの力にも適応されたみたいだね」
「返せ……!」
プレアデスの言葉を無視して、白入間はヘルズギーツバックルを宝物庫の中に仕舞う。射殺さんばかりの視線を無視して歩きだした白入間の代わりに前に出てきたデイブレイクが、膝をついてプレアデスを見据えた。
「……」
デイブレイクはなにも言わない。憎悪の目を向けてくるプレアデスを静かに見つめている。
歯を食い縛りながらデイブレイクを睨み付けていたプレアデスは、その隻眼に見つめられる内に、ボロボロと涙を溢し始めた。
「何で……私を殺さなかったの……?もう、私には何もないのに……このまま死ねれば良かったのに……」
その表情には、仮面ライダーに対しての憎しみも何もない、ただひたすら、生きることを諦めた事による絶望だけがあった。
デイブレイクは、真っ直ぐにプレアデスの目を見つめながら、何処か憂いを帯びた目で、ポツリと口を開いた。
「……どんなに嘆いても、苦しんでも…やり直したくても……過去は変えられないんだ。だから、前を向いて歩いていくしかないんだ」
「ッ!そんな綺麗事、聞きたくない!!もう、どうすることもできないんだ!!どんな風に言っても、皆は戻ってこない……ッ!?」
その時、デイブレイクはプレアデスの肩を引き、彼女を抱き締めた。突然の事にプレアデスは目を見開くが、やがてその温もりを感じていく内に、その瞳から涙が零れた。
「うぅ……うぅ……うわぁああああああああっ!!!」
プレアデスは──『スバル』は、デイブレイクの胸元に顔を押し付け、子どものように泣き喚いた。
そんな二人の姿に、青入間達は嬉しそうに、もしくは感動した面立ちを浮かべていると、白入間は踵を返して歩き始め、ユエ達バビルの面々もそれについて行くと、愛子と優花も慌ててその後ろをついていく。
「す、鈴木君?どこへ行くのですか…?」
「……やることは終わったから、帰ります」
「帰るって、どうやるのよ?」
優花からの至極当然の問い掛けに、白入間は無言で手を虚空に向ける。すると、手を向けた先に、銀色に揺らめくオーロラが出現する。
以前の白入間には世界観を移動する術はなかったが、プレアデスが各世界の仮面ライダーを呼び込んだこの空間は今は非常に不安定であり、用意に
(それにしても……)
白入間はチラリ、と自身の手の中にあるオーマジオウライドウォッチを見下ろす。
このライドウォッチを手に入れたことで、白入間のステータスは大幅に上がった。オーロラカーテンの世界移動を一時的に行えるのは、時空が不安定なのと、このウォッチの恩恵でもある。
しかし、白入間は何故こんなものが手に入ったのかが分からなかった。
あの時──クワガタオージャーがヘルズギーツにテガソードを突き刺し、彼女の体に内包された力が元の持ち主へと戻っていく時に、白入間はこれを手に入れた。
(オーマフォームになった後もヘルズギーツはレジェンドライダーのレイズバックルを使ってたし、あの現象はレイズバックルにしないで無理矢理奪った力だけが戻ったってことなんだろうけど……)
だとしたら、このウォッチはどうやって生み出されたのだろう?
白入間はあの中でただ一人、空間魔法を使うことで力の強奪を回避した。ならば、ヘルズギーツから溢れだした力がオーマジオウの力に変化するなどあり得ない。オーマジオウから強奪したのか?と考えたが、プレアデスの力を見る限り、その可能性は限りなくゼロに近い。
(いや、もしかして……)
白入間の脳裏に、ある考えたが思い浮かぶ。
その時、オーロラカーテンに向かってあるく自分達を追いかける気配がして、バビルのメンバーが振り返ると、そこには自分達を追いかけてきた青入間達の姿があった。
「…何かあったの?」
「いや、何もないよ……でも、ありがとう」
頭を下げる青入間に、白入間は首をかしげる。
「何の事かな?」
「彼女の事だよ。あの時、彼女が死なないように…殺さないようにしてくれたんだよ?」
そこまで言われて、白入間も思い出す。ヘルズギーツがユエ達の力を奪って自滅しそうになっていた時の事を言ってるのだ。
「あの時かぁ……君の勘違い、とかじゃないの?」
試すような白入間の言葉に、青入間は首を振った。
「ううん。君が本当に彼女を殺す気だったのなら、君は
そう言って、頭を下げる
彼は言うなれば、変わり果てる前の自分なのだ。“全部拾いたい”という野心を燃えていたかつての自分。どんな相手でも──それこそ、敵すらも救おうとする真っ直ぐな彼の生き様に、その強い意思を持つ瞳に……
(憧れを感じたんだろうね……)
白入間は、今の自分の生き方を後悔していない。これから先も、必要とあれば遠慮なく切り捨てるだろうし、殺していくだろう。それが“大切”を守るためであるのなら、白入間はそれを確実に行える。
だからこそ、
それに比べて、今の自分はどうなのだろう?
(とっくの昔に受け入れたと思ったのになぁ……)
白入間は、それを悟らせないように空を見上げる。その時、柔らかい温もりが右手を包んだ。
その感触に、視線を下に下げると、そこには紅い瞳を真っ直ぐに向けながら、自分の手を握る最愛の吸血姫の姿があった。いきなり手を握った意図が読めず、どうかしたの?と視線で問い掛ける。
「……大丈夫」
自分にしか聞こえないような小さな声で、ユエは小さく微笑んだ。
「……私達は、誰でもない
ユエの言葉に、白入間は僅かに目を見開くと、やはりユエには敵わないと苦笑した。
しかし、いつの間にか心は軽くなっていた。
白入間は感謝の意味を込めて、ユエの頬に手を当て指で優しくその頬を撫でると、ユエは気持ち良さそうに白入間の手に頬擦りした。
「おい、イルマ……人の話の最中にそれはないのではないか?」
「イルマ先輩!私も撫で撫でしてください!!」
「もぅ、入間さんもユエさんも、少しは自重しましょうよぉ」
「やれやれ~。常識のないリーダーだねぇ」
「ミレディよ、お主も人の事は言えぬぞ」
頬をピクピクさせるアメリ、キラキラした目で挙手するチマ、呆れたような表情を浮かべるシアとミレディに、ツッコミをいれるティオ。
愛子は頬を膨らませ、優花は小声で「鈴木のばぁ~か、ばぁ~か」と小さく呟いている。アスモデウスは「流石はイルマ様!」と謎の関心をしており、クララは「イルマちとユエユエはラブラブだねぇ~」と笑っている。
そんな仲間達に、白入間は思わず笑ってしまう。
「え、えっと……」
すると、自分と同じ声が聞こえてくるのでそこに視線を向けると、そこには困惑した表情の青入間。お礼を言ったら突然目の前でイチャイチャし始めたのだから、それは当然だろう。自重する気はさらさらないが。
白入間は咳払いをしつつ、青入間に右手を差し出した。
「なら、いつかその恩を返して貰うよ。逃げようとしたら、地の果てまで取り立てにいくからね?」
「あはは……出来れば、安くして欲しいかな……」
苦笑しつつ、青入間は彼と固い握手を交わした。士はその光景をトイカメラで撮影すると、デモンサンダーを連れて何処かへと歩き出し…英寿もまた、スカリエッティ、トーレ、チンク、ノーヴェと共に別方向へと歩き出すと、彼等はオーロラカーテンの向こうへと消えていった。
そして白入間達はオーロラカーテンに向かって歩きだそうたした時、幸太郎に「なぁ」と呼び止められた。何の用かと振り返ると、幸太郎は神妙な面立ちで、白入間に問い掛けた。
「──君は、
「……?」
質問の意味が読めず、白入間は首をかしげる。ユエ達も、何を言ってるのかと言うように幸太郎を見つめていると、警笛と共に、空に巨大な電車──デンライナーが現れた。
「幸太郎、そろそろ時間だ」
「……そうか。青い方は、俺達がデンライナーでミッドチルダに送り返すよ」
「っ!本当ですか!?」
幸太郎の言葉に、青入間達はパァッと表情を明るくする。実は、【ナインテイル】の力で帰ることも出来るが、別の方法で安全に帰れるのなら、その手を取らない手はない。
白入間達はそんな彼等の姿を一瞥すると、今度こそオーロラカーテンの中へと入り込んで行った。
幸太郎の言葉に、僅かな違和感を覚えながら。
オーロラカーテンを潜った後、入間達の視界に広がったのは鬼の戦艦のブリーフィングルームだった。たった数時間の出来事なのに、何故かとても長い時間をかけたような感覚に、一同はようやく帰ってこられたというように安堵の息を吐いた。
「あぁ~!くたびれましたよぉ!やっぱり我が家が一番ですぅ~!」
「全くじゃな。と言っても、ここは別に妾達の家とは言い難いがのぅ」
「……ん。でもこの短い間に、二回も異世界に迷い込むなんて、本当に不思議」
「これもそれも、イル君についていった運命だねぇ」
「僕がわざとトラブルを招くか、僕が疫病神みたいな言い方しないでよ」
「まぁ、無関係と言うには、お前の周りではトラブルばかり起きるがな」
アメリの言葉を否定できず、入間は明後日の方向に視線をそらす。
「おい、鈴木!!」
その時、その場に似つかわしくない怒気を含んだ声が聞こえてきた事で、入間達の機嫌は一気に急降下する。
視線を向けてみると、その場には案の定、天之河光輝の姿があった。光輝は、入間達が不機嫌になっている事にも気付かず、光輝は険しい表情をしながら入間に積めよった。
「何の用なのかな?」
「ッ!ふざけた事を言うな!お前の仕業なのは間違いない!!」
「あ、ああああ天之河君、落ち着いてください!いったい、何がったのですか!?」
今にも掴みかかろうとしている光輝の前に、両手を広げた愛子が割り込んだ。このままでは光輝が殺されかねない。
そして、次の光輝の言葉に、愛子のみならず、入間達も間を丸くする事となった。
「雫と鈴が、何処にもいないんだぞ!どうせ、お前が何かしたんだろう!!」
「……………えぇ?」
これにて、コラボ回は終了となります。
まさか、一章を終えるのに役一年もかかるとは……自分の計画性のなさに呆れてしまいます。
次章は雫と鈴の救済を目的としたオリジナルストーリーが始まります。
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