悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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 これから新章に突入します。
 以前実施したアンケートの結果から、生存が決まった雫と鈴の救済のためのストーリーです。これは悪魔紅蓮さんの希望によって出来たオリジナルストーリーになります。


第1話 溢れた雫

 鬼の戦艦の操縦室で、入間はコントロールパネルを操作していた手を止め、顎に片手を当てて考えていた。

 操縦席にいるのは入間とユエ…そして、愛子とチマと優花、アスモデウスの5人だ。入間がコントロールパネルから手を離したのを見て、愛子が不安そうに話しかけようとした時、操縦室の自動ドアが開く音がした。

 

「おい、鈴木!」

「あ、天之河君!?」

「ちょっ!急にどうしたのよ、天之河!!?」

「人が話していた最中にこんな所へ逃げ出すなんて、一体どういうつもりだ!?」

「…………………」

「聞いているのか、鈴木!!なんとか言ったら……!!!」

「──これ以上の無礼は慎め、下郎勇者」

 

 愛子と優花の制止を無視し、光輝はコントロールパネルを操作する入間に詰め寄ろうとすると、アスモデウスが光輝の前に立ちはだかる。

 入間を愚弄された怒りから、切れ長な目には激しい怒りが宿っており、光輝はその怒気に当てられて僅かに口を紡ぐ。

 

「じゃ、邪魔しないでくれ!俺は鈴木に話があるんだ!!」

「その言い分は察しがつく。大方、仲間であるヤエガシ・シズクとタニグチ・スズの行方を知りたいのだろう?」

「……なら、貴方はいらない。心配しなくても、入間が見つけてくれる」

「ッ!だとしても、2人は俺の助けを待っている筈なんだ!!だからこそ、俺が…」

「人が死ぬのを見て発狂して、あっちの方の入間に八つ当たりして惨敗した奴に何ができるの?」

 

 ユエが淡々とした口調で会話を閉ざす。

 嘲笑も侮蔑もない、事実だけを口にしていると証明しているように、ユエの表情は変わらない。それが逆に光輝の心をざわつかせるが、光輝は自分の中の感情に気づかないまま、入間に険しい視線を向けた。

 

「鈴木!雫と鈴はどうなったんだ!?もしも、2人に何かあったら──」

「黙れ」

 

 光輝の言葉を遮り、チマは巨大な氷塊を出して光輝を押し潰した。「ブギャッ!?」という声と共に、一瞬で氷塊の下敷きにされる勇者。

 「ち、チマさん!?」と驚く愛子を無視して、チマは「誉めて誉めて」と言うようなキラキラした目を入間に目を向ける。まるで小動物のようなその仕草に、入間は微笑みを浮かべてチマの頭を撫でる。普段のクールビューティーが嘘であるかのようにフニャフニャとした表情を浮かべるチマ。

 

 その時、操縦室のモニターに通知が来ると、鬼の戦艦の各地にいるシア達の顔が映し出された。

 

『入間さん、こっちにはいませんでした』

『こっちも同じだ』

『妾の方もじゃ』

『一応、魔力紙兵隊を飛ばしてみたんだけど……この辺りにはミレディさん達以外の人間はいないみたい』

『リビングとキッチンにもいなかったよー!!』

「…………うーん、やっぱりかぁ」

 

 全長5キロにもなる鬼の戦艦には、入間が改造した際に“気配感知”を応用した侵入者発見センサーが取り付けられているが、そこにはどうしても雫と鈴の反応をとらえられず、細かい所まで探すためにシア達に探しに行ってもらったのだが、それでも二人を見つけられなかったのだ。

 

(正直に言えば、あの二人がどうなろうとどうでもいいんだけど……)

 

 しかし、それを選択すれば愛子は悲しむだろう。勿論、愛子の為とはいえ…入間にも線引きはあるので、それを越えたのであれば入間は“他人”であるクラスメイト達を殺す事も、見捨てることも躊躇わないだろう。

 しかし、あの二人はそれを越えているとは言いがたい。

 

「はぁ、仕方ないなぁ……」

 

 入間は導越の羅針盤を取り出し、雫と鈴の位置を調べ始めた。

 

 この羅針盤は単に望んだ方向を指し示すだけでなく、目的の場所や距離を感覚で知ることが出来るという、ぶっ飛んだアーティファクトだったのだ。

 勿論、破格の能力に見合った対価は必要だ。探し物との距離に比例して消費魔力も増えていくのである。なので、あまり遠くにいないことを願いつつ、先ずは雫の位置を特定する。

 

「──ッ!?」

「入間!?」

「鈴木君ッ!?」

「……大丈夫。思ってたよりも、魔力の消費が多くて………」

 

 しかし、願いに反して入間は使用した瞬間にガンガン魔力が削られていくのを感じた。しかし、その甲斐あってか雫の居場所を特定することには成功し、入間は大いに困惑することになった。 

 

「──八重樫さんが、ミッドチルダに……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 草木の匂いが鼻腔をくすぐり、ゆっくりと瞼を持ち上げる。そこに広がっていたのは、生い茂る草花だった。

 

「……んぅっ……あ、あれ?ここ…何処………?」

 

 少女──八重樫雫は、日光の光を遮るように顔に手を翳しながら体を起こす。辺りを見渡すと、そこは鬼の戦艦ではなく、青々とした芝生の上だったのだ。少し離れたところにベンチも見えることから、おそらくは公園のような場所なのだろう。

 

 少し頭がボンヤリするが、日光に照らされる内に意識がハッキリとして来たのか、雫は意識を失う前の出来事を思い出した。

 

「ッ!そうだ……私、確か………」

 

 突然、謎な招待状が現れて奇妙な空間に呼び込まれ、そこで別の世界にいる入間達と邂逅し、願いを叶えるという大会に出場させられ──敗北した。

 

 雫の対戦相手は【仮面ライダーバロン】という仮面ライダーで、斬月・真になった雫は鳴刀・音叉剣を振るい善戦したのだが、雫の剣はバロンの槍術の前にはまるで歯が立たず、最後にバナナのオーラを纏った一撃を受けて敗北したところで、雫の記憶は途切れていた。 

 

 雫はそこまで思い出したところで、空を見上げた。

 

「…………なっ!?」

 

 それを見て、雫は目を見開く。何故なら、雲ひとつない青空には、月とは全く違う巨大な天体がいくつも浮いていたからだ。

 更に辺りを見渡してみると、そこは中世ヨーロッパ風の世界(トータス)とはかけ離れた高層ビルが立ち並んでいる。

 

「いっ、一体…どうなってるの……?」

 

 雫はあまりの異常事態に、困惑する事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、雫は街へと歩みを進め、ここが何処なのかを調べていた。

 街に設置された看板や店に書かれていた文字は雫がいた地球やトータスの文字とも違う未知の言語だったが、雫はそれを読むことが出来た。おそらく、トータスに召喚される際にクラスメイト全員に付与された“言語理解”によるものだろう。

 

「ミッドチルダ……時空管理局……ファンタジーの次はSFの異世界に来るなんて、私の人生はどうなってるのよ………」

 

 雫は広大な街の中を一人歩きながら、現実逃避気味に呟いた。

 

 魔法を操る術を持つ者──魔導師達によって編成された、あらゆる次元世界を管理する巨大公安組織“時空管理局”に、その組織が第一管理世界と称しているこの世界──ミッドチルダ。それが雫が迷い込んだ世界だった。

 

(こんな世界で油を売ってる場合じゃないのに……!)

 

 雫はこの世界に留まってなどいられない。

 トータスにて暗躍するバダンに行ってしまった親友を取り戻す為に、強くならなければならない。入間に最後の大迷宮である氷雪洞窟への同行を断られた以上…最悪の場合、力不足であったとしても、バダンとの決戦にだけは同行せねばならない。

 でなければ……親友の香織は殺されてしまう。香織が恋をした相手の手によって。

 心の拠り所であった香織に裏切られた雫にとって、香織が死んでしまうなんて事になるのは絶対に嫌だった。だからこそ、一刻も早く戻らなければならない。

 

(でも、戻るっていっても……どうすれば………)

 

 あの規格外を体現したような入間であれば、もしかしたら自分を見つけ出してくれるのかもしれない……そう思った雫だが、自分達は入間に見限られているに等しい状態である事を思い出し、それはどうなんだろうか?と思ってしまう。寧ろ、自分を無視してバダンと戦いを始めてしまうんじゃないかと…………

 

「それ以前に、今の私には行く所も……帰る場所もない……」

 

 そして戻る以前の問題……この世界でどう生活していくのかすら、雫には分からなかった。

 この世界はトータスと違い、王国による衣食住の保証もないし、自分の身分を証明するものも、金銭もない。あるのは自身のステータスプレートと、入間から渡された鳴刀・音叉剣だけ。パッと見だが、現代的な価値観を持つであろうこのミッドチルダでは、衣食住どころか夜営をする事も難しいだろう。まさに詰みだ。

 

「………もう、嫌……なんで、私ばっかり………!」

 

 親友を取り戻す為の戦いに、力が足りないどころか参加すらできない。しかも、これからまともに食事をする事すら出来ないという……自分が置かれている絶望的な状況に、雫は遂に力無くその場で蹲った。通行人がチラチラと自分を見ているが、既に心身ともに限界が近い彼女には、それを気にする余裕もない。

 

「…………あれ、貴女は……?」

「──え?」

 

 そこへ、聞き覚えのある中性的な声が聞こえてきて、雫は顔を上げた。

 そこには、アホ毛を生やした青い髪と澄んだ瞳を持つ少年が、膝を曲げて自分と視線を合わせており……雫は目の前にいる人物の名前を思わず口にしていた。

 

「す、鈴木君!?」

 

 そう。そこに立っていたのは、自分を助けにくる筈がないであろうと思っていた鈴木入間だった。予想外の出来事に雫は思わず声を上げてしまったが、すぐに目の前に立つ男に違和感を感じた。

 確かに見た目は入間そのものだ。しかし、目付きが違う。それに、自分達と接している時に感じるようなピリピリとした威圧感を感じないのだ。

 

 入間と瓜二つなその少年は、ジーっと観察するように自分を見ている。それにも違和感を感じる。すると、目の前にいる少年は、思い出したと言うように声を上げた。

 

「………あっ、そうだ!確か、もう一人の僕と一緒にいた……………八重樫雫さん、でしたよね?」

 

 もう一人の僕、と言う言葉に一瞬だけ混乱した雫だが、すぐに自分の記憶の中から思いあたる節を見つけ出すと、すぐさま答えに辿り着いた。

 

「……もしかして、別の世界の、鈴木君………?」

 

 それは、()()()()()()数時間前まで一緒に行動をしていた相手。その相手の少年は「やっぱり……」と小さく呟くと、膝を伸ばして立ち上がり、顎に手を当てながら深く考え込んだ後、再び雫に視線を合わせた。

 

「あの、八重樫さん。突然で申し訳ないんですが……今から僕がお世話になっている機動六課という所まで、一緒に来てもらえませんか?」

 

 『入間』──別の世界の鈴木入間(仮面ライダーガッチャード)──は、何処か職務的に……そして優しげな声色で、混乱する雫にそう問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミッドチルダにある「古代遺物管理部 機動六課」の本部。ロストロギア関連の危険な任務を扱う古代遺物管理部の機動課第六の部隊で、八神はやて部隊長の指揮のもと、スターズ・ライトニング両分隊が前線部隊として配置されている。

 

 そんな機動六課の課長室で、雫は『入間』と共に、目の前に置かれた執務机と椅子に座る女性が口を開くのを待っていた。

 

「……なるほどな。それでここに連れてきたって訳やな」

「はい。流石に放っておけないと思って……」

 

 茶色いショートカットヘアーに黄色い✕字の髪留めを付けた、雫より少し年上だと思われる女性──八神はやての問いかけに『入間』はコクリと頷いた。

 はやては、『入間』の隣に立つ雫に視線を向けた。

 

「…………それじゃあ、八重樫雫さん」

「ッ!は、はい!!」

「そんなに畏まらんでもええよ。とりあえず、貴女にはこれから、次元漂流者として管理局で保護させてもらいます」

「次元…漂流者……?」

「あっ、まずはそこから説明せなアカンな。えーっと……」

 

 唐突に声をかけられ、雫はやや戸惑ったように声を上げた。『入間』から、これから部隊長に会いに行くことは聞いていたのだが、まさかこのような立派な隊舎を持つ部隊の隊長が自分とさほど変わらない事に驚いたのだ。

 そうして雫は、なんらかの原因で自分達のいた世界から別の世界に移動してしまった者達──“次元漂流者”に自分が該当するのだということ。そして、次元漂流者を返すのも時空管理局の役目である事を、はやてから教えてもらえた。

 

「じゃあ、私は元の世界に戻れるんですか?」

「う~ん……そこなんやけど……」

 

 そこで、はやては言い淀む。

 

「確かに、管理局は今まで数多くの次元世界の存在を観測・発見し続けてるけど……その何百何千もの次元世界の中で、トータスと呼ばれる次元世界は未だに発見できていないんや。以前に貴女がよく知る入間君達がこのミッドチルダに来た事はあったんやけど、あれは管理局でも前例のない出来事やったから………」

「それって、つまり……」

「……申し訳ありません。現状、私達の力では…貴女を元の世界(トータス)へ帰す事は不可能と言わざるを得ません」

「…………そう、ですか……………」

 

 頭を下げて謝罪するはやて。元々、彼女にはなんの責任もない為、雫は彼女達を責める気など微塵もない。しかし、結局帰ることは出来ないのだという事実を突きつけられた雫の心は暗い。

 はやては雫の様子に申し訳なさを感じつつも、腕を組んで雫に向けて口を開いた。

 

「本来なら、次元漂流者は専門機関に預けるのがセオリーなんやけど……その場合、少し問題があってな」

「問題って、どういう意味ですか?」

 

 はやての説明によると、トータスという世界は時空管理局でもかなり異端視されているらしい。

 

 以前入間達が迷い込んだことで存在が知られたトータス。そこでは人間族と魔人族の殆どが魔力を持ち、魔法を使うことができる。以前の騒動が起きた際に、はやては部隊長として本部にトータスの存在も伝えたのだが、それが上層部を大きく騒がせた。

 なにせ、管理局が誇る魔導師は体内に“リンカーコア”という気管を有した者のみがなることができるが、リンカーコアを保有する者の数は少なく、管理局は万年人手不足というのは周知の事実だ。しかし、トータスでは魔力を持つ者にありふれた世界であるという事実は、管理局を騒がせるのには十分すぎる情報だった。入間曰く、魔導師とトータスでは違いがありすぎるし、一部を覗けば魔導師の方が遥かに強いと言っていたのだが……トータスを発見できれば、管理局の人材不足解消に繋がるかもしれないという意見が少なからずあり、中にはその世界を見つけ出して管理すべきという過激派がいるのだ。

 

「じゃあ、私がその本局っていう所へ行ったら危ないんじゃ……!?」

「安心してください。管理世界のルールに当てはまらないあの世界(トータス)を無理に管理する必要はないっていう穏健派は大多数です。ただ、そういう意見を持つ人達がいるってだけな話なんよ」

「そ、そう…ですか……」

「けど、やっぱり管理局みたいに広大な組織である程、そう簡単に一枚岩になりきれないのが現状なんです。だから、トータスから来た貴女をこのまま本局に預けるのは少し危険だと思うんです」

 

 机に肘をつき、はやては神妙な表情で雫を見据えると、フゥと小さく息を吐いてから、再び口を開く。

 

「そこで、八重樫雫さん。トータスが見つかるまでの間…貴女には、私達機動六課の民間協力者になって欲しいんです」

「民間協力者……つまり、ここに所属するって事ですか?」

「せや。この六課で保護してもらえれば、本局から何か言われる事もあらへんし……もしかしたら、偶然トータスが見つかる可能性もある。勿論、元の世界に帰る方法が見つかるまでの間は、ここでの衣食住と身の安全の確保…そして、ある程度の自由を保障する事をお約束します」

「………………………」

 

 確かに、雫にはメリットしかない話だ。というよりも、雫には現状それしか手段がない。雫は回転の早い頭で考え込んだ後、コクリと頷いた。

 

「………わかりました。これから、よろしくお願い致します」

「そんなに畏まらんでも、もっと気軽でええんよ?とにかく、これからよろしくな。雫ちゃん」

「えぇっと、じゃあ……その、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします。八重樫さん」

 

 こうして、雫は民間協力者として、機動六課に身を置く事が決まった。

 そして、この出来事をきっかけに…2人の少女の運命が大きく変わる事となるのを、雫はまだ知らない。




次回予告

入間「機動六課の民間協力者となった八重樫雫。一方で、同じく鬼の戦艦から行方不明となった谷口鈴の前に現れたのは、広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティ。無限の欲望と称された彼は、親友に裏切られた彼女の瞳に何を見る」

第2話「惑いの(ベル)

入間「テイク・オフ!」












 と言うわけで、雫がミッドチルダに迷い込む話でした。
 連載開始した当初は雫や鈴はバッドエンドになるはずでしたが、アンケートの結界により生存することになり、展開に悩んでいた所で悪魔紅蓮さんからいただいた意見を採用することになりました。
 ありふれの筈なのに、リリカルなのはが舞台になってしまったANOTHER TIME。
 果たして雫と鈴の運命は如何に!?
 そして、入間(ジオウ)達の出番はあるのか!?

『入間』「タイトルもガチャし魔す入間くんに……」
入間「変わらないから!!!!」


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