悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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ついにあの人の登場です。
今回も入間くんのキャラ崩壊やキャラ改編があるので、苦手な方はブラウザバッグを推奨します。


11話 赤い悪魔との再開と蹂躙劇

 ライセン大峡谷の悪路を、ライドストライカーが疾走する。

 有り得ない速度に目を瞑ってギュッと入間にしがみついていたシアも、しばらくして慣れてきたのか次第に興奮して来たようで、入間がカーブを曲がったり、大きめの岩を破壊する度にきゃっきゃっと騒いでいる。

 

 入間は道中、ライドストライカーの事やユエが魔法を使える理由、入間の武器がアーティファクトの様な物だと簡潔に説明した。

 すると、シアは目を見開いて驚愕を表にした。

 

「え、それじゃあ、お二人も魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」

「そんなところだね」

「……ん」

 

 暫く呆然としていたシアだったが、突然何かを堪える様に入間の肩に顔を埋め、何故か泣きべそをかき始めた。

 

「……いきなりどうしたの?騒いだり落ち込んだり泣きだしたり……腕の良い医者紹介しようか?」

「……手遅れ?」

「手遅れって何ですか手遅れって!私は至って正常ですしお医者さんも必要ありません!……ただ、一人じゃなかったんだな、と思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」

「「……」」

 

 どうやら魔物と同じ性質や能力を有するという事、この世界で自分が余りに特異な存在である事に孤独を感じていた様だ。

 家族だと言って16年もの間危険を背負ってくれた一族、シアの為に故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族に囲まれていた以上、きっと多くの愛情を感じていた筈だ。それでも、いやだからこそ、余計孤独を感じていたのかもしれない。

 

 シアの言葉に、ユエは思うところがあるのか考え込む様に押し黙ってしまった。

 入間には何となく、今ユエが感じているものが分かった。恐らくユエは、自分とシアの境遇を重ねているのではないだろうか。共に、魔力の直接操作や固有魔術という異質な力を持ち、その時代において“同類”というべき存在は持たなかった。

 だが、ユエとシアでは決定的な違いがある。ユエには愛してくれる家族が居なかったのに対して、シアにはいるという事だ。それがユエに、嫉妬とまではいかないまでも複雑な心情を抱かせているのだろう。しかも、シアから見れば結局、その“同類”とすら出会う事が出来たのだ。中々に恵まれた境遇とも言える。

 

 そんなユエの頭を、入間はポンポンと撫でた。

 14歳で悪魔(サリバン)の孫となり、そしてかけがえのない親友や友達(クラスメイト)に恵まれた入間に、特異な存在として女王という孤高の存在に祭り上げられたユエの孤独を本当の意味では理解できない。それ故、かけるべき言葉も持ち合わせなかった。出来る事は、“今は”一人でない事を示す事だけだ。

 

 入間の不器用ながらも心の籠った気遣いの気持ちが伝わったのか、ユエは無意識に入っていた体の力を抜いて、ゴロゴロと喉を鳴らしながら主人に甘える猫の様に入間に背中を預けた。

 

「あの~、私の事忘れてませんか?ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは?私、コロっと堕ちゃいますよ?チョロインですよ?なのに、折角のチャンスをスルーして、何でいきなり二人の世界を作っているんですか! 寂しいです!私も仲間に入れて下さい!大体、お二人は……」

「「黙れ残念ウサギ」」

「……はい……ぐすっ……」

 

 泣きべそかいていたシアが、いきなり耳元で騒ぎ始めたので、思わず罵倒を飛ばす入間とユエ。

 しかし、泣いている女の子を放置して二人の世界を作っているのも十分酷い話である。その上、逆ギレされて怒られてと、何とも不憫なシアであった。ただ、シアの売りはその打たれ強さ。内心では既に「まずは名前を呼ばせますよぉ~せっかく見つけたお仲間です。逃しませんからねぇ~!」と新たな目標に向けて闘志を燃やしていた。

 そうしてしばらく、シアが騒いでユエに怒鳴られるという事を繰り返していると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。どうやら相当な数の魔物が騒いでいる様だ。

 

「!入間さん!もう直ぐ皆がいる場所です!あの魔物の声……ち、近いです!父様達がいる場所に近いです!」

「把握している、しっかり掴まっていな」

 

 入間がライドストライカーを一気に加速させると、壁や地面が物凄い勢いで後ろへ流れていく。

 ライドストライカーが最高速度で走る事15秒。ドリフトしながら最後の大岩を迂回した先には……

 

「みんな~、助けを呼んできま……って、あの人は!!」

「……赤い人?」

「……やっぱり」

 

 今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達を守るように魔物達を駆逐する、赤い髪の美女(悪魔)がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【ライセン大峡谷】に、獣の悲鳴が木霊する。体長は3~5m程で、鋭い牙と爪、モーニングスターの様な先端が膨らみ棘が付いている長い尻尾を持つ飛行型の魔物【ハイベリア】は、峡谷を彷徨いていた兎人族達で思う存分腹を満たそうとしていたのだが、その中に混じっていた、自分と同じように空を飛ぶ()()()()()()()()()()に、次々と駆逐されていった。

 蝙蝠のような翼を羽ばたかせ、赤い髪を靡かせるその美女は、手に持った機械的な赤い斧を振るい、二体のハイベリアの胴体と首を無き別れにする。その時、最後の一体となったハイベリアが後ろから美女に迫って接近するが、それを見越していた美女は冷静に対処しようとする。

 その時、彼女の耳に聞きなれた音声が届いた。

 

 

ゼロタイム!!スレスレ撃ち!

 

 

「!?」

 

 音声と共に、峡谷に六発の破裂音が響く。

 同時に、『ジュウ』という形状のマゼンタの光弾が空を飛び、ハイベリアに着弾する。

 爆音が響き、ハイベリアの血肉が降り注いだ。

 

「今のは……!」

 

 それから程なくして、彼女の尖った耳に、バイクのエンジンの音が聞こえた。

 音の聞こえる方へ視線を向けた美女の目に飛び込んできたのは、自分も所有する乗り物に乗って超高速でこちらに向かって来る三人の人影であり、その内の1人を捉えた美女は先程までの冷血な印象をもたらす表情から一転してパアッ!と花が咲いたような笑顔となった。

 

「アメリさ~ん!」

 

 自分に向けて笑顔で手を振るその少年──鈴木入間。その姿を見た

 

「イルマ!!」

 

 そう、彼女の名は【アザゼル・アメリ】。入間の一つ上の先輩であり、悪魔学校(バビルス)の生徒会長を務める女悪魔であり、【仮面ライダーゲイツ】の変身者でもある。

 

 アメリは地面に着地したと同時に入間に飛び付き、その小柄な体を抱き締める。だが、大柄なアメリと小柄な入間ではかなりの身長差があり、アメリが抱き付いた事で、入間はシアよりも豊満なアメリの胸に思いっきり顔を埋めてしまったのだ。

 

「わぷっ!?あ、アメリさん!は、離れて…その、胸が…///」

「ッ!!?あ、ああ!!す、すまないイルマ!!感極まってしまって…つい…////」

 

 入間の言葉に、アメリは自分がしていた事をようやく自覚し、顔を茹で蛸よりも真っ赤にして、入間から飛び退いた。背後ではユエが体から黒いオーラを放ち、その背中から暗雲を纏った黄金の龍のようなものが出現し始める。

 やがて落ち着きを取り戻すと、入間はアメリに訪ねる。

 

「そ、それでアメリさん。なんで貴方がここにいるんですか?それに、なんでハウリア達と?」

「ん?あぁ。実はな……」

 

 アメリの話によれば、入間が行方不明となってしばらくした後に、アメリと【アスモデウス・アリス】、【ウァラク・クララ】の前に、門矢士が現れたらしい。

 そして世界の異変やライダーワールドの影響や、入間がこの世界に召喚された事を知ったアメリ、アスモデウス、クララの三人は、門矢士の力でこの世界へと赴いて入間と共に戦うことを選んだらしい。

 だが、相当時空が乱れているのかオーロラカーテンを抜けるだけでも困難だったらしく、世界の壁を越えられはしたが、それぞれバラバラの場所に転移してしまったらしく、アメリはこのライセン大峡谷に飛ばされたということだ。飛べば楽に峡谷を越える事も出来たのだが、2日も峡谷を彷徨っていたのは入間の手掛かりを探すためだそうだ。

 因みに、ハウリア達を助けていたのは偶然だ。峡谷を進む中でハウリア達と遭遇し、そのままハイベリアに襲われて戦闘になったらしい。

 

「それで、イルマ。お前はどうしていたんだ?それにその女子の事も……説明してくれ」

「はい。それなんですが……」

 

 アメリが質問をしてきたことで、入間は自分がこの世界に召喚されてからの事を話した。勿論、狂った神や解放者、そして唯一の謎である村雨良の事も交えて。

 話を聞き終えたアメリは、納得したといわんばかりに顎に手を当てて頷いた。

 

「成る程な…。狂った神に解放者と村雨良(仮面ライダーゼクロス)、そして大迷宮の神代魔法か……。そして、これからお前が向かう先に、その大迷宮の内の一つがあるかもしれないということか。それで、そっちの女子は?」

「ああ、彼女はユエ。僕の旅仲間で、仮面ライダーウィザードで、実力は折り紙つきです」

「……ん。よろしく」

 

 自己紹介しながら入間の隣に立つユエ。

 アメリはしばしそんなユエ見つめていると……

 

(……宿敵(ライバル)!)

(……ムウッ!)

 

 一瞬で、ユエとアメリは互いをライバル認定した。

 アメリは入間に問い詰めたいことがあったが、それよりもユエの挑戦的な瞳を向けられたことで、先ずはそれと向き合うのが先だとユエを睨み返す。ユエの背後にさっきの龍、アメリの背後には赤い鎧を纏った戦士がスタ○ドのように現れた。

 入間はそんな二人の様子に気圧されつつも、恐る恐るアメリに声をかける。

 

「あ、アメリさん。貴方はこれからどうしますか?ついてきてくれれば心強いんですが、巻き込む気はありません。嫌なら断っても構いませんよ」

「ん?あ、あぁ、そうだな。…確かに、私としてもこの世界の人間達を助ける気などないが、そのエヒトとかいうのは私も気に食わんし、魔界を含めた他の世界が危機ならば、見過ごすことは出来ん。イルマ、お前の旅、私も同行させてもらおう!」

「本当ですか!?ありがとうございます、アメリさん!!」

「ッ!き、ききき、気にするなッ!!////」

「……ムゥ」

 

 アメリの答えを聞き、入間は心底喜ぶ。彼女が仲間になってくれるのなら百人力ならぬ千人力だ。入間は嬉しさから彼女手を握ると、アメリは沸騰したように顔を赤くし、ユエは面白くなさそうに頬を膨らませた。

 

 そんな風に話していると、先程までシアと話していた濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の兎人族が入間に話し掛けてきた。

 

「入間殿で宜しいか?私は【カム・ハウリア】。シアの父であり、ハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか……。しかも、脱出までご助力くださるとか。父として、族長として、深く感謝致します」

 

 そう言って、カムと名乗ったハウリア族の族長は深々と頭を下げた。後ろには同じ様に頭を下げるハウリア族一同がいる。

 

「礼は受け取っておくよ。だけど樹海の案内と引き換えだ、それは忘れないように。それより、随分簡単に信用するんだね。亜人は人間族にはいい感情を持っていないだろうに……」

 

 シアの存在で忘れそうになるが、亜人族は被差別種族である。実際峡谷に追い詰められたのも人間族のせいだ。にも関わらず、同じ人間族である入間に頭を下げ、しかも入間の助力を受け入れるているのだ。それしか方法が無いとは言え、あまりにあっさりしているというか、嫌悪感の様なものが全く見えない事に入間は疑問を抱いた。

 カムは、それに苦笑いで返した。

 

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」

 

 その言葉に入間は感心半分呆れ半分だった。

 一人の為に一族ごと故郷を出て行く位だから情の深い一族だとは思っていたが、初対面の人間族相手にあっさり信頼を向けるとは警戒心が薄すぎるというより、人がいいにも程があるというものだろう。

 

 それはさておき、何時までもグズグズしていては魔物が集まってきて面倒になるので、入間は出発を促し、ウサミミ42人をぞろぞろ引き連れて峡谷を歩いていく。

 当然、数多の魔物が絶好の獲物だとこぞって襲ってくるのだが、接近した時点で入間とユエ、そして新たに加わったアメリの攻撃でその身体を粉砕され、誰一人として獲物にありつける魔物はいなかった。

 ライセン大峡谷の凶悪な魔物が為すすべなく絶命していく光景に、兎人族達は唖然として、次いで、それを成し遂げている人物である入間に対して畏敬の念を向けていた。尤も、小さな子供達は総じてそのつぶらな瞳をキラキラさせて圧倒的な力を振るう入間をヒーローだとでも言うように見つめている。

 

「ふふふ、入間さん。チビッコ達が見つめていますよ~、手でも振ってあげたらどうですか?」

 

 子供に純粋な眼差しを向けられても何の反応も無い入間に、シアが実にウザイ表情で「うりうり~」とちょっかいを掛ける。鬱陶しく思った入間は、「黙れ」と言わんばかりにシアの頭を乱暴に撫でた。

 

「あわわわわわわわっ!?」

 

 撫でるというより擦る様なそれに、シアはぐわんぐわんと頭を揺らして目を回す。

 道中何度も見られた光景に、カムは苦笑いを、ユエは呆れを乗せた眼差しを向ける。

 

「はっはっは、シアは随分と入間殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアももうそんな年頃か、父様は少し寂しいよ。だが、入間殿なら安心か……」

 

 目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。周りの兎人族達も「たすけてぇ~」と悲鳴を上げるシアに生暖かい眼差しを向けている。

 

「この状況で出てくる感想がそれ?」

「天然というか、何というか……」

「……ズレてる」

 

 アメリとユエの言う通り、どうやら兎人族は少し常識的にズレているというか、天然が入っている種族らしい。

 

 そうこうしている内に、一行は遂に【ライセン大峡谷】から脱出できる場所に辿り着いた。入間とアメリが視力を強化して見る限り、中々に立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は50m程進む度に反対側に折り返すタイプだ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。【ライセン大峡谷】の出口から、徒歩で半日くらいの場所が【ハルツィナ樹海】になっている様だ。

 そうして入間が何となしに遠くを見ていると、シアが不安そうに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだいるでしょうか?」

「どうだろうね。もう全滅したと思って帰ってる可能性も高いけど……」

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……、入間さん……どうするのですか?」

「どうするって、何を?」

 

 質問の意図が分からず問い返す入間に、意を決した様にシアが尋ねる。周囲の兎人族も聞き耳ならぬ聞きウサミミを立てているようだ。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。入間さんと同じ。……敵対できますか?」

「シア、君は未来が見えていたんじゃないの?」

「はい、見ました。帝国兵と相対する入間さんを……」

「だったら何が疑問なのさ?」

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るという事は、人間族と敵対する事と言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

 

 シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きで入間を見ている。小さな子供達はよく分からないとった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人達と入間を交互に忙しなく見ている。

 

 しかし入間は、そんなシリアスな雰囲気などまるで気にした様子もなくあっさり言ってのけた。

 

「それがどうかしたの?」

「えっ?」

 

 疑問顔を浮かべるシアに、入間は特に気負った様子もなく世間話でもする様に話を続けた。

 

「だから、人間族と敵対する事の何か問題なのかって言っているんだよ」

「そ、それは、だって同族じゃないですか……」

「君達だって、同族に追い出されているではないか」

「それは、まぁ、そうなんですが……」

「大体、前提が間違っているぞ」

「前提?」

 

 更に首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 そんなハウリア達に、入間は人差し指を立ててこう告げた。

 

「同じ種族だろうと、結局は赤の他人(他所の世界の住人)だ。それに、兵士(戦いに生きる者)なら死と隣り合わせなのは当然の事だ。なら死んだとしてもその兵士達が弱いのが悪いし、僕も抵抗なんて欠片もない」

 

 さも当然の様に言う入間に、絶句しつつも納得するシア。

 “未来視”で帝国と相対する入間を見たといっても、未来というものは絶対ではないから実際はどうなるか分からない。見えた未来の確度は高いが、万一、帝国側につかれては今度こそ死より辛い(奴隷)生活が待っている。表には出さないが“自分のせいで”という負い目があるシアは、どうしても確認せずにはいられなかったのだ。

 

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

 カムが快活に笑う。下手に正義感を持ち出されるよりも信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

 

 そうして一行は、階段に差し掛かった。入間を先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、殆ど飲まず食わずだった筈のハウリア族だが、その足取りは軽い。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではない様だ。

 そして遂に階段を上りきり、入間達は【ライセン大峡谷】からの脱出を果たす。

 登りきった崖の上には……

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~。こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 30人の帝国兵が屯していた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏い、剣や槍、盾を携えていた。入間達を見るなり驚いた表情を見せたが、それも一瞬の事。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもする様に兎人族を見渡した。

 

「小隊長!白髪の兎人もいますよ!隊長が欲しがってましたよね?」

「おお、ますますツイてるな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ?こちとら何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

「ったく、全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

「ひゃっほ~、流石、小隊長!話がわかる!」

 

 帝国兵は、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けている。兎人族は、その視線にただ怯えて震えるばかりだ。

 帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、兎人族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、漸く入間の存在に気がついた。

 

「あぁ?お前誰だ?兎人族……じゃあねぇよな?」

 

 入間は帝国兵の態度から彼らの処遇を考えながら、一応会話に応じる。だが、普段の敬語は一つも使わなかった。

 

「ああ、一応は人間だね」

「はぁ~?なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か?情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂が逞しいねぇ。まぁいいや、そいつら皆国で引き取るから、置いていけ?」

 

 勝手に推測し勝手に結論づけた小隊長は、さも自分の言う事を聞いて当たり前、断られる事など有り得ないと信じきった様子で、そう入間に命令した。

 

 当然、入間が従う筈も無い。

 

「やだね」

「……今、何て言った?」

「断ると言ったんだ。僕は彼等と契約関係にある。お前達吐瀉物には一人として渡すつもりはない。諦めて国へ帰れ」

 

 聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

「分かるさ。お前達が地べたに捨てられたゴミと変わらない連中だって事はね。早く退いてくれない?先を急ぎたいんだ」

 

 入間の言葉にスっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気で入間を睨んでいる。

 その時、小隊長が剣呑な雰囲気に背中を押されたのか、入間の後ろのユエとアメリに気がついた。他から隔絶した美貌の少女達に一瞬呆けるものの、入間の服の裾を握っている事から余程近しい存在なのだろうと当たりをつけ、再び下卑た悪い笑みを浮かべた。

 

「あぁ~成程、よぉ~く分かった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだって事がな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃん達えらい別嬪じゃねぇか。テメェの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」

「……あ?」

 

 その言葉が彼らの運命を決した。

 ユエとアメリは無表情でありながら誰でも分かるほど嫌悪感を丸出しにし、このクズ野郎共を消し炭にしようとする。

 だがそれを制止した入間が、既にゴキブリを見る目と大差のない目を向けながらも、僅かに残っている慈悲の心から小隊長に口を開く。

 

「……最後通告だ。死にたくないなら今すぐ消えろ」

 

 その言葉に、小隊長はイラついた様に言葉を荒げる。それがただの自殺行為だとは知らずに……

 

「あぁ!?まだ状況が理解できてねぇのか!てめぇは、震えながら許しをこッ───」

 

ザシュッ!!

 

 小隊長の言葉よりも先に、入間の腕が小隊長の左側の胸、つまり心臓を貫いた。貫通した手には心臓が握られており、入間はそれを握り潰して腕を引き抜くと、既に亡骸となった小隊長はうつ伏せに倒れて絶命した。

 

 何が起きたのかも分からず呆然と倒れた小隊長を見る兵士達だったが、それはこの男の前ではしてはいけない行為だった。

 入間が撃ち放った“風刃(シェイバー)”の嵐が、30人いた兵士達は一人を残して全員サイコロステーキのようにバラバラになって肉片が崩れ落ちた。

 

 惨劇を目の当たりにした兵士(生き残り)は、ようやく生き残ってるのは自分しかいない事を悟り、恐怖と絶望で顔を歪ませた。

 

「ひ、ひぃぃっ!!い、嫌だ!し、死にたくない!た、頼む!助けてくれ!」

 

 顔中涙と鼻水塗れになり、腰が抜かして這いずるように後退る兵士。

 入間は心底汚いものを見る目で兵士の前に立つと、ジカンギレードを喉元に突きつけて質問した。

 

「おい害虫。僕の質問に答えて貰おうか。コイツ等以外にも兎人族がいた筈だが、どうした?」

「……こ、答えたら殺さないか?」

「質問に質問で返すな。別にそんなに重要な質問じゃない。自分の立場も分からないなら……こうだ」

「ぎ、ぎゃあああああああああああッ!!!?」

 

 入間はジカンギレードを召喚して兵士の右足を切り落とす。切断面から血液が溢れだし、兵士は激痛から恥も外聞もなく泣き喚く。

 

「話します!話しますから!…多分、全部移送済みだと思う!人数は絞ったから…」

 

 “人数を絞った”とは、つまり老人など売れそうにない兎人族は殺したということだろう。兵士の言葉に、悲痛な表情を浮かべる兎人族達。

 入間はそれにチラリと目を向けるが、直ぐに兵士に目を向け、その目に殺意を宿した。

 

「た、頼みます!言われた通り話したんです!命だけは助けてください!足りなきゃ帝国に関する事でも話しますから!」

「お前はそうやって命乞いをする亜人の声に耳を傾けたのか?仮にも兵士なら、弱肉強食の摂理くらい学べ」

 

 その殺意に気がついた兵士の命乞いにも耳を貸さず、入間の手刀が兵士の首を跳ねた。

 ゴロゴロと生首が転がり、切断面から吹き出した血が入間の顔や服に飛び散る。入間は血で濡れた手を少しの間眺めていたが、やがて溜め息を吐くと同時にどこからか取り出したタオルで返り血を拭う。

 

 そんな入間の行動と姿に、ハウリア達は完全に引いている様子で、その瞳には若干の恐怖が宿っていた。それはシアも同じだったのか、おずおずと入間に尋ねた。

 

「あ、あのっ、……今の人は、見逃してあげてもよかったのでは?」

 

 その言葉を受けて、分かりやすく溜息を吐く入間に「うっ」と唸るシア。

 自分達の同胞を殺し、奴隷にしようとした相手にも慈悲を持つようで、兎人族とはとことん温厚というか平和主義らしい。入間が言葉を発しようとしたが、その機先を制する様にユエとアメリが反論した。

 

「……一度剣を抜いた者が、結果相手の方が強かったからと言って見逃してもらおうなんて都合が良すぎ」

「そ、それは……」

「そもそも入間は貴様等を守るために奴等を殺した。何もせず傍観していただけの貴様等に、そんな目を入間に向ける権利はない」

「……」

 

 二人は静かに怒っている様だ。守られておきながら、入間に向ける視線に負の感情を宿すなど許さないと言わんばかりである。当然といえば当然なので、兎人族達もバツが悪そうな表情をしている。

 

「ふむ。入間殿、申し訳ない。別に、貴方に含むところがある訳では無いのだ。ただ、こういう争いに我等は慣れておらんのでな……少々、驚いただけなのだ」

「入間さん、すみません」

「……別に、気にしないよ」

 

 シアとカムが代表して謝罪するが、入間はそれだけ言って視線を外すだけだった。

 

 やがて入間は無傷の馬車や馬の所へ行き、兎人族達を手招きする。樹海まで徒歩で半日くらいかかりそうなので、折角の馬と馬車を有効活用しようという訳だ。

 入間とアメリがライドストライカーを起動して馬車に連結させると、直接馬に乗る者と分けて一行は樹海へと進路をとった。

 

 

 一方、首を斬り落とされた帝国兵の死骸はそのまま野晒しにされた。やがて死臭に誘われてライセン大峡谷から様々な魔物が這い上がって来て、跡形もなく全ての死骸を食べ尽くしてしまったのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 




アメリとの再開でした。
アスモデウスとクララの再開は、もう少し先になります。


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ミレディが変身するライダーを検討中なので、アンケートを実施します。

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