悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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ミレディ・ゴーレムまで一気に進ませます。


20話 イライラ迷宮散策中

 シアが軽く発狂してから数十分後。

 たったそれだけの時間で、ライセンの大迷宮は想像以上に厄介な場所だった事を思い知らされた。

 

 先ず、魔法も魔術も真面に使えない。谷底より遥かに強力な分解作用が働いている為だ。魔法特化のユエにとっては相当負担の掛かる場所である。何せ、上級以上の魔法は使用できず、中級以下でも射程が極端に短い。5mも効果を出せれば御の字という状況だ。何とか瞬間的に魔力を高めれば実戦でも使えるレベルではあるが、今までの様に強力な魔法で一撃とは行かなくなった。

 また、魔晶石シリーズに蓄えた魔力の減りも馬鹿に出来ないし、変身すれば威力は上がるが常に魔力を消費し続けることになるので、考えて使わなければならない。それだけ消費が激しいのだ。魔法に関しては天才的なユエだからこそ中級魔法が放てるのであって、大抵の者は役立たずになってしまうだろう。

 

 ユエ以上の魔力量を誇る入間も魔術が殆ど使えず、自慢も弓矢も生成に倍以上の魔力を必要とし、矢の必中率は変わらずとも距離があればある程威力が大幅に削がれてしまう。こうなれば最早ライダーの力に一任するしかないだろう。

 

 よって、この大迷宮では身体強化が重要になってくる。入間達の中では、まさにアメリのシアの独壇場となる領域なのだ。

 で、その片割れのウサミミはというと……

 

「殺ルですよぉ……!絶対、隠れ家を見つけて滅茶苦茶に荒らして殺ルですよぉ!」

 

 ガシャコンブレイカー(ツヴァイ)を担ぎ、据わった目で獲物を探す様に周囲を見渡していた。それはもう深く深~くキレていて、言葉のイントネーションも所々おかしい事になっている。その理由はミレディ・ライセンの意地の悪さを考えれば容易に想像がつくだろう。

 シアの気持ちが良く分かる様で、なんとも言えない入間とユエとアメリ。凄まじく興奮している人が傍にいると、逆に冷静になれるという事がある。三人の心理状態が正にそんな感じだ。

 現在、それなりに歩みを進めてきた入間達だが、ここに至るまでに実に様々なトラップや例のウザイ言葉の彫刻に遭遇してきており、シアがマジギレしてなければ、入間は兎も角ユエとアメリがキレていただろう。

 遂には「フヒヒ」と奇怪な笑い声を発するようになったシアを横目に、入間はここに至るまでの道程を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シアが最初のウザイ石板を破壊し尽くしたあと、入間達は道なりに通路を進み、とある広大な空間に出た。

 

 そこは階段や通路、奥へと続く入口が何の規則性もなくごちゃごちゃにつながり合っており、まるでレゴブロックを無造作に組み合わせてできたような場所だった。一階から伸びる階段が三階の通路に繋がっているかと思えばその三階の通路は緩やかなスロープとなって一階の通路に繋がっていたり、二階から伸びる階段の先が何もない唯の壁だったり、本当にめちゃくちゃだった。

 

「これはまた、ある意味迷宮らしいと言えばらしい場所だな」

「……ん、迷いそう」

「ふん、流石は腹の奥底まで腐ったヤツの迷宮ですぅ。このめちゃくちゃ具合がヤツの心を表しているんですよぉ!」

「……シア気持ちは分かるから、そろそろ落ち着け」

 

 未だ怒り心頭のシア。それにアメリが呆れ半分同情半分の視線を向け、入間は「さて、どう進んだものか」と思案する。

 

「……入間。考えても仕方ない」

「まぁ、そうだね。取り敢えず進むしかないか」

「ん……」

 

 ユエの言葉に頷く入間。入間は早速、入口に一番近い場所にある右脇の通路に適当に傷をつけて目印とし、進んでみる事にした。

 通路は幅2m程で、レンガ造りの建築物の様に無数のブロックが組み合わさって出来ていた。やはり壁そのものが薄ら発光しているので視界には困らない。緑光石とは異なる鉱物の様で薄青い光を放っている。

 そうして長い通路を進んでいると突然、

 

ガコンッ

 

「「「「ん?」」」」

 

 という音を響かせて入間の足が床のブロックの一つを踏み抜いた。そのブロックだけ入間の体重により沈んでいる。入間達が思わず一斉にその足元を見た。

 その瞬間、

 

シャァアアアッ!!

 

 そんな刃が滑る様な音を響かせながら、左右の壁のブロックとブロックの隙間から高速回転・振動する円形でノコギリ状の巨大な刃が飛び出してきた。右の壁からは首の高さで、左の壁からは腰の高さで前方から薙ぐ様に迫ってくる。

 

「回避!」

 

 入間は咄嗟にそう叫ぶと、マトリッ◯スの主人公の様に後ろに倒れ込みながら二本の凶悪な刃を回避し、元々背が小さいユエもしゃがむだけで回避した。

 その時、シアが「はわわ、はわわわわ」と慌てながら倒れこんで回避しようとするが、シアのウサミミに左側のノコギリが迫っていることに気付いた入間は、チッと舌打ちした後に倒れこんだまま身体を回転させ、身体強化を施した脚で左側の壁を蹴りつけると、ビキビキッ!と音を立てて壁に出来た亀裂がノコギリまで迫り、入間はバランスを悪くしたノコギリを反対の脚で蹴って破壊した。また、アメリは右側から迫るノコギリに一切動じず、寧ろ身体強化を施した腕で、まるで瓦割りのようにノコギリを叩き割った。

 

 体勢を立て直した入間達は第二陣を警戒してしばらく注意深く辺りを見回すが、どうやら今ので終わりかと安堵した途端、彼は猛烈な悪寒を感じた。なんと、彼らがいる場所の頭上からギロチンの如く無数の刃が、先程の刃と同じく高速振動しながら射出されたのだ。

 しかし、入間とアメリは冷静だった。先程は癖で避けてしまっていた入間だが、よく考えればこうすれば簡単だと思い直したのだ。同じ轍は踏まない。

 

 

『『フィニッシュタイム!』』

 

ファイズ!ギリギリスラッシュッ!

 

カイザ!ザックリカッティングッ!

 

 

 入間がジカンギレードに“ファイズライドウォッチ”を、アメリがジカンザックスに“カイザライドウォッチ”を装填して獲物を振るい、赤と黄色の斬撃が×字になって飛び、分子構造を破壊された刃は全て灰となった。

 

「……完全な物理トラップか。感知できないわけだ」

 

 入間がまんまとトラップに掛かった理由は、魔法のトラップに集中していたからだ。今までの迷宮のトラップと言えばほとんどが魔法を利用したもので、魔法のトラップなら、入間は尽く看破できる。それ故に、魔力の気配がしなければ大丈夫という先入観を持ってしまっていたのだ。要は、己の力を過信したということである。

 

「はぅ~、し、死ぬかと思いましたぁ~」

「……シア、もう少し気を引き閉めときな。この程度で参ってるようじゃこの先やってけないよ?」

「うぅ~、面目ないですぅ~…」

「……お漏らしウサギ。死にかけたのは未熟な証拠」

「おもっ、おもらっ、撤回して下さいユエさん!いくらなんでも不名誉すぎますぅ!」

 

 シアの「○○ウサギ」シリーズに新たに加わった称号の不名誉さに、シアが我慢出来ず猛抗議する。この短時間で既に二度も死にかけたというのに意外に元気だ。やはり、シアの最大の強みは打たれ強さなのだろう。本人は断固として認めないだろうが。

 しかし、先程のトラップは唯の人間を殺すには明らかにオーバーキルというべき威力が込められていた。並みの防具では歯牙にもかけずに両断されていただろう。入間やアメリの様に埒外の化物や、チート素材を用いた武器防具でも持っていなければ回避以外に生存の道はない。

 

「でもまぁ、あの程度なら僕達は問題ないか」

「そうだな。問題は……」

 

 シアとユエの喧嘩?を尻目に、そんな風に話す入間とアメリ。入間達の衣服には“エターナルローブ”を加工して作られている。加工したせいで本家(エターナル)が使うものには若干劣るが、それでも並大抵の物理攻撃は完全に無効化してくれる。それに入間には“危機回避”があるし、アメリがこんな単純なトラップで死ぬ筈がないし、ユエには“自動再生”がある。となると……必然的にヤバイのはシアだけである。その事に気がついているのかいないのか分からないが、シアのストレスが天元突破するであろう事だけは確かだった。

 

「あれ?入間さん、何でそんな哀れんだ目で私を……」

「強く生きてね、シア……」

「え、ええ?なんですか、いきなり。何か凄く嫌な予感がするんですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして入間達はトラップに注意しながら更に奥へと進む。

 今のところ魔物は一切出てきていない。魔物のいない迷宮とも考えられるが、それは楽観が過ぎるというものだろう。それこそトラップという形でいきなり現れてもおかしくない。

 入間達は、通路の先にある空間に出た。その部屋には三つの奥へと続く道がある。取り敢えず壁に傷を付けてマーキングだけしておき、入間達は階下へと続く階段がある一番左の通路を選んだ。

 

「うぅ~、何だか嫌な予感がしますぅ。こう、私のウサミミにビンビンと来るんですよぉ」

 

 階段の中程まで進んだ頃、突然、シアがそんなことを言い出した。言葉通り、シアのウサミミがピンッと立ち、忙しなく右に左にと動いている。

 

「……シア、君ね。そういうこと言うと、大抵直後に何か『ガコン』…そら見た事かっ!」

「わ、私のせいじゃないですぅッ!?」

「!?……フラグウサギッ!」

「貴様ら遊んでるのか!?」

 

 入間とシアが話している最中に嫌な音が響いたかと思うと、いきなり階段から段差が消えた。かなり傾斜のキツイ下り階段だったのだが、その階段の段差が引っ込みスロープになったのだ。しかもご丁寧に地面に空いた小さな無数の穴からタールのようなよく滑る液体が一気に溢れ出してきた。

 

「くッ!」

 

 

グレイトフル!

 

 

 すかさずアメリが“ゴーストグレイトフル魂ライドウォッチ”を起動させると、ウォッチから8体のパーカーゴーストが飛び出し、一人に付き二体ずつ入間達を引き上げて浮遊した。

 

「た、助かったですぅ…」

「……ん」

「ありがとうございます、アメリさん…」

「なに、気にするな」

 

 そんなやり取りをしながら、四人はパーカーゴーストに運んで貰いながら元々進んでいた方向へ下っていく。

 そのまま四人は長いスロープを抜けて広い空間に出ると、何気なく下を見て……盛大に後悔した。

 

カサカサカサ、ワシャワシャワシャ、キィキィ、カサカサカサ

 

 そんな音を立てながら夥しい数の蠍が蠢いていたのだ。

 嘗ての蠍擬きの様な脅威は感じないのだが、生理的嫌悪感はこちらの方が圧倒的に上だ。即座に浮遊しなければ蠍の海に飛び込んでいたかと思うと、全身に鳥肌が立つ思いである

 思わず黙り込んだ入間達は、何気なく天井に視線を転じる。すると、何やら発光する文字がある事に気がついた。既に察しはついているが、つい読んでしまう。

 

〝彼等に致死性の毒はありません〟

〝でも麻痺はします〟

〝存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!〟

 

 態々リン鉱石の比重を高くしてあるのか、薄暗い空間でやたらと目立つその。ここに落ちた者はきっと、蠍に全身を這い回られながら、麻痺する体を必死に動かして、藁にもすがる思いで天に手を伸ばすだろう。そして発見するのだ。このふざけた言葉を。

 

「「「「……」」」」

 

 また違う意味で黙り込んでいた入間達だったが、相手するなと自分に言い聞かせつつ、何とか気を取り直すと周囲を観察した。

 

「……皆、あそこ」

「ん?」

 

 すると、ユエが何かに気がついたように下方のとある場所を指差した。そこにはぽっかりと横穴が空いていた。

 

「横穴か……。どうする?このまま落ちてきたところを登るか、あそこに行ってみるか」

「わ、私は、入間さんの決定に従います……」

「……同じく」

「異論無しだ。イルマ、()()()()()()()()としても罠だらけなのは変わらんのだろう?なら行き当たりばったりで行くしかないだろう…」

「確かに……よし、横穴に行ってみようか」

「ん……ん!?」

「はい!?」

 

 ユエとシア何気なく言われてつい流しそうになってたが二人の会話に思わず二度見した。二人の驚いた顔に、入間とアメリも意外そうな顔になる。

 

「?どうした、鳩が豆鉄砲食らった様な顔をして」

「どうしたじゃありませんよっ!入間さんも“未来視”使えるんですか!?」

「あれ?言ってなかった?(仮面ライダージオウ)は時間に干渉できるライダーなんだ。だから僕もある程度は時間干渉能力を持ってるんだ」

「……初耳」

「まあ、今回は使ってもその先が安全だって保証はないからね。時間を浪費してウロウロするより、脚で探すのがいい」

 

 明かされた入間の能力に驚くユエとシアに、何でもないような入間とアメリ。パーカーゴーストがそんな四人を抱えながら移動し、四人は横穴へと辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある通路ので入口は、何故か壁になっていた。普通に考えれば唯の行き止まりと見るべきだろう。だが、実はその壁の部分はほんの数分前まで普通に奥の部屋へと続いていたのだ。

 静寂が漂う中、出入り口の前に青いゲートが開いたかと思うと、そこから四人の男女が現れた。

 

「ふぃ~…間一髪」

「今のは少し焦ったな……」

「……ん、潰されるのは困る」

「いやいや、困るとかそんなレベルの話じゃないですからね? 普通に死ぬところでしたからね?」

 

 そう、入間、ユエ、アメリ、シアの四人である。サソリ部屋の横穴からしばらく迷宮を彷徨よい、たどり着いた部屋で天井がまるごと落ちてくるという悪辣で定番なトラップが発動し潰されかけたのである。

 逃げ場はなく、奥の通路までは距離がありすぎて間に合いそうになかったが、咄嗟に入間がコズミックステイツウォッチのワープドライブを発動させた事で、難を逃れたのだ。

 

 入間達は安堵した表情で冷や汗を拭うと、作り置きしてあった弁当を取り出して簡易的なエネルギー補給をする。そうして気合を入れ直し前を向いた。

 そして再び、というか何時ものウザイ文を発見した。

 

〝ぷぷー、焦ってやんの~、ダサ~い〟

 

「あ、焦ってませんよ!断じて焦ってなどいません!ださくないですぅ!」

 

 どうやらこのウザイ文は何処にでもあるらしい。入間の視線を辿り、ウザイ文を見つけたシアが「ガルルゥ!」という唸り声が聞こえそうな様子で文字に向かって反論する。シアのミレディに対する敵愾心は天元突破しているらしくウザイ文が見つかる度にいちいち反応している。もしミレディが生きていたら「いいカモが来た!」とほくそ笑んでいることだろう。

 

「いいから、先に進むよ」

「……思うツボ」

「ほら、全員気持ちは同じだ」

「うぅ、はいですぅ」

 

 その後も、進む通路、たどり着く部屋の尽くで罠が待ち受けていた。突如、全方位から飛来する毒矢、硫酸らしき、物を溶かす液体がたっぷり入った落とし穴、アリジゴクのように床が砂状化し、その中央にワーム型の魔物が待ち受ける部屋、そしてウザイ文にシアを筆頭にしたメンバーのストレスはマッハだった。

 それでも全てのトラップを突破し、この迷宮に入って一番大きな通路に出た。幅は6~7mといったところだろう。結構急なスロープ状の通路で緩やかに右に曲がっている。おそらく螺旋状に下っていく通路なのだろう。

 

 入間達は警戒する。こんな如何にもな通路で何のトラップも作動しないなど有り得ない。

 

 そして、その考えは正しかった。もう嫌というほど聞いてきた「ガコンッ!」という何かが作動する音が響く。既にスイッチを押そうが押すまいが関係なく発動している気がする。

 今度はどんなトラップだ?と周囲を警戒する入間達の耳にそれは聞こえてきた。

 

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

 

 明らかに何か重たいものが転がってくる音である。

 

「「「「……」」」」

 

 四人が無言で顔を見合わせ、同時に頭上を見上げた。スロープの上方はカーブになっているため見えない。異音は次第に大きくなり、そして……カーブの奥から通路と同じ大きさの巨大な大岩が転がって来た。岩で出来た大玉である。全くもって定番のトラップだ。きっと、必死に逃げた先には、またあのウザイ文があるに違いない。

 ユエとシアが踵を返し脱兎の如く逃げ出そうとする。しかし、少し進んで直ぐに立ち止まった。入間とアメリが付いて来ないからだ。

 

「……ん、入間?アメリ?」

「お二人とも!早くしないと潰されますよ!」

 

 二人が呼び掛けるが、二人とも引く気配ななく、やがて入間はジカンギレード、アメリはジカンザックスを装備し、向かい合わせになるように武器を構える。

 

「悪いが、やられっぱなしは性に合わないんでな!!」

「少し発散しますよ……」

 

 

『『ゼロタイム!』』

 

ギリギリ斬り!

 

ザックリ割り!

 

 

 その言葉と音声と同時に武器が振り抜かれ、凄まじい衝撃波の如き斬撃が大岩に直撃し、轟音を響かせながら木っ端微塵に粉砕した。

 二人は武器を下ろすと、「やってやったぜ!」と言わんばかりの表情でユエとシアの方へ振り返った。入間とアメリも、感知できない上に作動させなくても作動するトラップとその後のウザイ文にストレスが溜まっていたようだ。

 

「入間さ~ん!アメリさ~ん!流石ですぅ!カッコイイですぅ!すっごくスッキリしましたぁ!」

「……ん、すっきり」

「…フフン」

「お前達、ここは大迷宮だぞ?まあ構わんが……」

 

 二人に称賛に胸を張る入間とそれにやや呆れるアメリだが、それは聞き覚えのある音によって遮られた。

 

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

 

 笑顔のまま固まる入間。同じく笑顔で固まるシアと無表情ながら頬が引き攣っているユエ。ギギギと油を差し忘れた機械のようにぎこちなく背後を振り向いた入間とアメリの目に映ったのは……黒光りする金属製の大玉だった。

 

「あ、あの入間さん。気のせいでなければ、あれ、何か変な液体撒き散らしながら転がってくるような……」

「……溶けてる」

「……酸だな。完全に」

 

 そう、こともあろうに金属製の大玉は表面に空いた無数の小さな穴から液体を撒き散らしながら迫ってきており、その液体が付着した場所がシュワーという実にヤバイ音を響かせながら溶けているようなのである。

 

「よし、逃げよう!」

 

 入間がそれを確認し一度息を吐いて笑顔のまま再度皆を見ると、笑顔をスっと消して叫びながら、いきなりスプリンターも真っ青な見事な踏切でスロープを駆け下りていった。他の三人も、一瞬だけ顔を見合わせるとクルリと踵を返し入間を追って一気に駆け出した。

 背後からは、溶解液を撒き散らす金属球が凄まじい音を響かせながら徐々に速度を上げて迫ってきた。

 

「いやぁあああ!!轢かれた上に溶けるなんて絶対に嫌ですぅ~!」

「……ん、とにかく走って」

 

 通路内をシアの泣き言が木霊するが、必死に逃げながらも、しっかり文句は言っており、ユエが呆れたような目線を向けていた。

 すると、アメリが美しいフォームで疾走しながら、何かを思い出したかのように入間に向かって口を開いた。

 

「なぁ、イルマ!コズミックのワープドライブでアレを何処かに飛ばせば良いのではないか?」

「………あ」

 

 その言葉に、入間は立ち止まって間の抜けた声を上げた。

 その間にも大玉が目前まで迫っていたが、入間がコズミックステイツウォッチで大玉に向けてワープドライブを発動すると、水色のゲートが液体ごと大玉を飲み込んで消えた。

 

「……逃げていたのが馬鹿馬鹿しくなってきたな」

「………ん」

「はい…ところで入間さん。あの大玉どこにやったんですか?」

「適当に……オルクスの何処か」

 

 この時、オルクス大迷宮を攻略中だった光輝達が、突如現れた酸を撒き散らす大玉のせいで窮地に陥ったのは余談である。

 

 そうこうして進んでいる内に通路の終わりが見えた。入間が確認すると、どうやら相当大きな空間が広がっているようだが、部屋の床がずっと遠くの部分しか見えないのだ。おそらく、部屋の天井付近に入間達が歩いている通路の出口があるのだろう。

 入間達が通路の先の部屋に進むと、出口の真下へと落下したが、先んじてアメリがパーカーゴーストを呼び出して浮遊して貰った事で慌てることなく出口に向かうが、ふと出口の真下を見て、全員頬をひきつらせた。

 出口の真下には、明らかにヤバそうな液体で満たされたプールのようになっていた。

 

「あのまま大玉でここまで誘導して、そのままこのプールに浸からせる算段だったのか」

「……多分、そうだった」

「あのまま大玉がここに落ちたら飛沫で僕らにもかかってたかもしれないからね…ワープさせたのは正解だったか」

「大迷宮はこんなのばっかりですぅ~……」

 

 そんな風に会話しながらも、パーカーゴースト達に運んで貰って溶解液のプールを越え、地面に着地した。

 

 その部屋は長方形型の奥行きがある大きな部屋だった。壁の両サイドには無数の窪みがあり騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長2mほどの像が並び立っている。部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。祭壇の上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。

 

「いかにもな扉だね。ミレディの住処に到着かな?それなら万々歳なんだけど……この周りの騎士甲冑に嫌な予感がするのは僕だけかな?」

「……大丈夫、お約束は守られる」

「それって襲われるってことですよね?全然大丈夫じゃないですよ?」

「どのみち、安全な迷宮なんてないのだ。今更だろう?」

 

 そんなことを話しながら入間達が部屋の中央まで進んだとき、毎度お馴染みのあの音がした。

 

ガコン!

 

 ピタリと立ち止まる入間達は内心「やっぱりなぁ~」と思いつつ周囲を見ると、騎士達の兜の隙間から見えている眼の部分がギンッと光り輝いた。そして、ガシャガシャと金属の擦れ合う音を立てながら窪みから騎士達が抜け出てきた。その数、総勢50体。

 騎士達はスっと腰を落とすと盾を前面に掲げつつ大剣を突きの型で構えた。窪みの位置的に現れた時点で既に包囲が完成している。

 

「ははっ、ホントにお約束だね…。動く前に壊しておけばよかったかな?」

「言っても仕方がない。戦うぞ」

「んっ」

「か、数多くないですか?いや、やりますけども…」

 

 そう言いながら、入間とアメリは腰にジクウドライバーを巻いた。

 ユエもこの迷宮内では、変身したとしても自分が一番火力不足であることを理解していたが、足でまといになるつもりは毛頭なかった。自分の真実を確かめるためにこの旅に出て、入間のパートナーたるもの、この程度の悪環境如きで後れを取るわけにはいかないのだ。

 一方でシアは、少々腰が引け気味だ。影響なく力を発揮できるとは言え、実質的な戦闘経験はかなり不足していた。まともな魔物戦は谷底の魔物との僅か5日程度のことだし、ユエとアメリとの模擬戦を合わせても2週間ちょっとの戦闘経験しかなかった。元来温厚な部族出身だったことからも、戦闘に対して及び腰になるのも無理はないだろう。むしろ立ち向かおうと踏ん張っている時点ででかなり根性があると言えるだろう。

 

「シア」

「は、はいぃ!な、何でしょう?入間さん」

 

 緊張に声が裏返っているシアに、入間が普段より柔らかい声音で声を掛けた。

 

「君は強い。自信を持ちなよ。だからこんな鉄人形に撒ける筈がないし、ピンチの時は必ず助けるさ」

「……ん、弟子の面倒は見る」

 

 入間とユエにそう言ってもらい、シアは嬉しさのあまり思わず涙目になった。自分が付いて来たことが迷惑になっていないかと、少し不安になっていた彼女だが、杞憂だったようだ。ならば、未熟者は未熟者なりに出来ることを精一杯やらねばならないと、彼女は全身に身体強化を施し、力強く地面を踏みしめた。

 

「ふふ、入間さんが少しデレてくれました。やる気が湧いてきましたよ!ユエさん、アメリさん、下克上する日も近いかもしれません」

「「「……調子に乗るな」」」

 

 入間とユエおアメリの三人に呆れた眼差しを向けられるも、テンションの上がってきたシアは聞いていない。真っ直ぐ前に顔を向けて騎士達を睨みつけている。

 そんな気の抜けた空気の中で、四人はそれぞれ変身の仕草をとる。

 

 

ジオウ!

 

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

 

ゲイツ!

 

 

マイティアクションエーックス!

 

 

 入間はジオウウォッチをジクウドライバーに装填し、左手を顔の近くまで持っていくと、手首を捻り、ジクウドライバーを回転させた。

 ユエはウィザードライバーを操作して手の向きを変え、フレイムウィザードリングのカバーを下ろし、それをベルトにかざす。

 アメリはジクウドライバーに“ゲイツライドウォッチ”をセットして握り拳でロックを解除し、交差した両手で抱え込む様にドライバーを持ち腕を広げながら回転させる。

 シアは“マイティアクションXガシャット”のスイッチを押すと、背後にモニターが現れてピンク色の光が展開されると同時に周りに茶色の四角いブロックが出現し、右手に持っているガシャットを回転させて左手に持ち替えた。

 そして、四人は最初から示し合わせたかのように、あの言葉を叫んだ。

 

「「「「(大)変身ッ!!」」」」

 

 

ライダータイム!

 

仮面ライダー!ジオウ!!

 

 

フレイム!プリーズッ!

 

ヒー!ヒー!ヒーヒーヒィー!

 

 

ライダータイム!

 

仮面ライダー!ゲイツ!!

 

 

ガシャットッ!ガッチャーンッ!

 

レベルアーップ!

 

マイティジャーンプ!マイティキーック!マイティマイティアクション!エーックス!

 

 

 入間は時計バンド型のエネルギーに包まれて文字が顔に張り付いたことでジオウに、ユエは赤い魔法陣を潜り抜けてウィザード・フレイムスタイルに変身する。

 

 アメリは赤い光に包まれ、背後のデジタル時計から飛び出した字が仮面に張り付き、ラバー製のミリタリー系デジタル腕時計をモチーフにパーソナルカラーは鎧は黒でスーツは赤。顔面には黄色の『らいだー』の文字があしらわれている【仮面ライダーゲイツ】へと変身し、ジカンザックスを手にする。

 

 シアはゲーマドライバーの左側にあるスロットに装填し、レバーを開き、周囲に現れたパネルの内の一つを手を前に伸ばしてパネルを正面で選択し、ネオンピンクカラーの逆立った髪の毛にゴーグルから覗くオレンジの瞳、胸にはゲームのコントローラーの様な装備に背中に大きな仮面を背負った戦士【仮面ライダーエグゼイド・アクションゲーマーレベル2】に変身し、ガシャコンブレイカーⅡを大槌モードに変形させた。

 

 四人が仮面ライダーに変身した瞬間、ゴーレム騎士達は一斉に侵入者達を切り裂かんと襲いかかった。

 

 ゴーレム騎士達の動きはその巨体に似合わず俊敏だった。ガシャンガシャンと騒音を立てながら急速に迫るその姿は、装備している武器や眼光と相まって凄まじい迫力である。

 そんなゴーレム騎士達に向かって、先手を取ったのはジオウだ。ジオウはゴーレム騎士に向かって走り出すと、ゴーレムの剣劇を余裕綽々と避け、その隙を狙ってジカンギレードを振るい、ゴーレム騎士達の武器を持つ腕をバターでも切るかのように切断する。

 武器を失ったゴーレム達に、ジオウはベルトを回転させて止めの一撃をお見舞いする。

 

 

フィニッシュタイム!タイムブレーク!

 

 

 マゼンタのエネルギーを纏った回し蹴りが炸裂し、ゴーレム達は成す術もなく爆破されるが、その爆炎の中から数体のゴーレム騎士達が突撃し、ジオウに剣を振り下ろすが、そこは既にシア・ハウリア(仮面ライダーエグゼイド)のキルゾーンだ。

 

「でぇやぁああ!!」

 

ドォガァアアアン!

 

 エグゼイドの機動力に全力で身体強化を加えたエグゼイドによって打ち下ろされたガシャコンブレイカーⅡは凄まじい衝撃音を響かせながら一体のゴーレム騎士をペシャンコに押し潰した。一応騎士も頭上に盾を構えていたのだが、その防御ごと圧壊されたのである。

 地面にまで亀裂を生じさせ、めり込んでいるガシャコンブレイカーⅡ。渾身の一撃を放ち死に体となっていると判断したのか、盾を構えて衝撃に耐えていた傍らの騎士が大きく大剣を振りかぶりエグゼイドを両断せんと踏み込む。

 エグゼイドはそれをしっかり横目で確認しており、柄を捻ってガシャコンブレイカーⅡの頭の角度を調整すると、ベルト側面のホルダーから一本のガシャットを取り出して、ガシャコンブレイカーⅡに装填する。

 

 

ガシャットッ!キメワザ!

 

GEKITOTSU CRITICAL FINISH!

 

 

 機械音が鳴り、地面にめり込んでいたガシャコンブレイカーⅡが赤いロボットアームのようなエネルギー体に包まれ、ロケットブースターの性能を活かし、エグゼイドはガシャコンブレイカーⅡをゴフルクラブのように振り上げると、エネルギー体がロケットパンチの如く撃ち放たれ、直撃を受けた騎士は体をくの字に折り曲げてぶっ飛んでいき、後ろから迫って来ていた騎士達を盛大に巻き込んで地面に叩きつけられた。騎士の胴体は、原型を止めない程拉げており身動きが取れなくなっている。

 エグゼイドはドライバーからマイティアクションXガシャットを引き抜いて息を吹き掛けると、ガシャコンブレイカーⅡに装填すると、ガシャコンブレイカーⅡを振りかぶる。

 

 

ガシャットッ!キメワザ!

 

MIGHTY CRITICAL FINISH!

 

 

「りゃああああああッ!!」

 

ドォガァアアアアアアンッ!!!

 

 ピンクのエネルギーを纏ったガシャコンブレイカーⅡを振り下ろして地面に叩きつけると、ピンクのエネルギーと衝撃波が地面を伝いゴーレム騎士達に到達した瞬間、ゴーレム騎士達は地雷でも踏んだかのように地面が爆発し、巻き込まれたゴーレム騎士達も木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

 仮面で隠れているシアの口元に笑みが浮かぶ。戦いに快楽を覚えたからではない。自分がきちんと戦えている事に喜びを覚えているのだ。自分はちゃんと入間達の旅に付いて行けるのだと実感しているのだ。その瞬間、ほんの少しだけ気が抜ける。

 

 だが戦場でその緩みは致命的だった。気がつけば視界いっぱいに騎士の盾が迫っており、なんとゴーレム騎士の一体が自分の盾をシアに向かって投げつけたのである。流石ゴーレムというべきか、途轍もない勢いで飛ばされたそれは変身したシアにとって致命傷になる様なものではないが、脳震盪位は確実に起こす威力だ。そうなれば、一気に畳み込まれるだろう事は容易に想像できる。

 まさか盾を投げつけるなどといった本職の騎士でもしなさそうな泥臭い戦い方をゴーレム騎士がするとは思いもしなかったシア。最早「しまった!」と思う余裕も無い。せめて襲い来るであろう衝撃に耐えるべく覚悟を決める。

 だが、盾がシアに衝突する寸前で銃撃が飛来し盾に衝突して破壊しその破片を撒き散らす。破片はエグゼイドの頭部のすぐ脇を通過し、背後のゴーレム騎士に突き刺さる。

 

「……油断大敵。お仕置き三倍」

「ふぇ!?今のユエさんが?す、すみません、ありがとうございます!ってお仕置き三倍!?」

「ん……気を抜いちゃダメ」

「うっ、はい!頑張りますぅ!」

 

 ハリケーンスタイルにフォームチェンジしたユエ(ウィザード)に「メッ!」という感じで叱られてしまい、自分が少し浮かれて油断してしまった事を自覚するシア(エグゼイド)。反省しながら気を引き締めなおす。改めて迫って来たゴーレム騎士を倒そうとして、後方から飛んできたゲリラ豪雨の様な銃撃が、密かにエグゼイドの背後を取ろうとしていたゴーレム騎士をドパンッと銃撃して破壊したのを確認した。

 変身したことで魔力が爆発的に上がっているユエ(ウィザード)は、ウィザーソードガンから風を纏わせた銀の弾丸を無数に撃ち放ち、質量も込めた魔力の量からは比較できない破壊力を秘めた銃弾を放つ。必殺技や魔法の範囲にも入らないので魔力の消費も少なく、更に銃弾が全て風を纏っていることで速度が上昇している弾丸は、まるでエグゼイドを避けるように空中で起動を変えながら、ゴーレム騎士達に決して小さくないダメージを与えている。

 

 ユエが自分の背中を守ってくれていると理解し心の内が温かくなるシア。師匠の前で無様は見せられないと、より一層気合を入れた。

 その後も、暴れるシアの死角に回ろうとする騎士がいれば同じ様に弾丸が飛び、

 

 シア(エグゼイド)の爆発的な近接攻撃力と、その死角を補う様に放たれるユエ(ウィザード)の変幻自在の銃撃。騎士達は二人のコンビネーションを破る事が出来ず、いい様に翻弄されながら次々と駆逐されていった。

 

「流石だな……。私も負けていられんな」

 

 そんな素晴らしい連携を披露するユエ(ウィザード)シア(エグゼイド)を横目にゲイツは呟くと、ゴーレム騎士が振り下ろした大剣を右手で受け止めて握り壊すと、ゴーレムの鳩尾に蹴りを浴びせ、一撃で破壊する。

 更に後ろから複数のゴーレム騎士が向かってくるのを確認すると、ゲイツはジカンザックスに“アクセルライドウォッチ”を装填する。

 

 

フィニッシュタイム!

 

アクセル!ザックリカッティング!

 

 

 赤いオーラを纏ったジカンザックスを周囲にA字型になるように三度振るい、“エースラッシャー”に酷似した技によってゴーレム騎士の上半身と下半身を分断すると、ゴーレム騎士達は一撃で爆破された。

 

 そうやって、不用意に部屋そのものに傷を与えないようにしながら次々とゴーレム騎士達を屠っていった。

 だが……

 

「……?」

 

 ゴーレム騎士達の襲撃をかわし反撃しながら、ジオウは仮面の下で訝しそうに眉を寄せた。というのも、先程から相当な数のゴーレム騎士を破壊しているはずなのだが、迫り来る彼等の密度が全く変わらないのだ。

 その疑問は他のメンバーも感じたらしい。そして、よくよく戦場を観察してみれば、最初に倒したゴーレム騎士の姿が何処にもない事に気がついた。

 

「……再生した?」

「みたいだな」

「そんな!?キリがないですよぉ!」

 

 そう、ゴーレム騎士達は破壊された後も眼光と同じ光を一瞬全身に宿すと瞬く間に再生して再び戦列に加わっていたのである。

 エグゼイドが迫り来るゴーレム騎士達を薙ぎ払いながら狼狽えた声を出した。どれだけ倒しても意味がないと来ればそんな声も出したくなるだろう。だが、それに反してジオウ達は冷静なまま特に焦った様子もなく思考を巡らしながらゴーレム騎士達を蹴散らしている。この辺りは経験の差というやつだろう。

 

「……入間、ゴーレムなら核があるはず」

 

 ユエ(ウィザード)の言う通り、ゴーレムは体内に核を持っているのが通常であり、その核が動力源となる。核は魔物の魔石を加工して作られている。オスカーのお掃除ゴーレムの設計書にもそう記されてあった。ウィザードはその核を壊そうと言っているのだ。

 

「それがな、こいつら核を持ってないらしいんだ」

「……確か?」

「確かに、そんな反応はない。ゴーレム自体から微量の魔力は感知できるが……」

「け、結局どうするんですかぁ! このままじゃジリ貧ですよぉ!」

 

 シアがいよいよ焦った声を上げる。

 その打開策を見出だしたのはゲイツ(アメリ)だった。

 

「問題ない。入間、1()0()()で終わらせるぞ。お前も手伝え」

「え?……ああそう言うことか」

 

 一瞬疑問符を浮かべた入間だったが、直ぐに意図を理解したのか、ウィザードとエグゼイドを下がらせると、ジオウとゲイツの二人はライドウォッチを取り出して起動させた。

 

 

ディ・ディ・ディ・ディケーイドッ!

 

ファイズ!

 

 

ファイズ・アクセルフォーム!

 

 

 ジオウは“ディケイドライドウォッチ”と“ファイズライドウォッチ”を、ゲイツは“ファイズアクセルフォームライドウォッチ”をジクウドライバーに装填して、ベルトを回転させる。

 

 

『『アーマータイム!』』

 

 

KAMEN RIDE!ワーオッ!

ディケイド!ディケイド!ディーケーイードーッ!

 

ファイナルフォームターイム!ファ・ファ・ファ・ファイズ!

 

 

Start up!ファイズアクセール!

 

 

 ジオウはディケイドアーマーに仮面ライダーファイズの力を上乗せした【ディケイドアーマーファイズフォーム】に、ゲイツは両肩に“ファイズアクセル”の装備に『あくせる』の文字が入った【ファイズアクセルフォームアーマー】に変身すると、ジオウはディケイドウォッチを押し、ゲイツはベルトを回転させ、必殺技を発動する。

 

 

ファ・ファ・ファ・ファイズ!ファイナルアタックタイムブレーク!

 

 

フィニッシュタイム!アクセルフォーム!

 

エクシード!タイムバースト!

 

 

 必殺の音声が鳴り響くと同時に、二人のファイズ(ジオウとゲイツ)は姿を消した。それにウィザードとエグゼイドが一瞬動揺する間にも、赤い円錐上の光がゴーレム騎士達をロックオンしていき、瞬く間に50体全てのゴーレムをロックオンすると、次々と何かがゴーレムに攻撃を加えていく。

 

 

『『Time out 』』

 

 

 ジオウとゲイツが再び姿を現した瞬間、ゴーレム達は次々と青い炎に包まれていき、ボロボロと灰となって崩れ落ちる。

 こうして、50を越える騎士達はたった二人の手によって、僅か10秒で全滅させられたのであった。

 

「…フゥ、終わった」

「まぁ、ざっとこんなものだ」

「ひえ~…灰になっちゃいましたよ。入間さんもそうですけど、アメリさんも大概ですね~」

「……流石アメリ。…私も負けられない」

 

 そうして、変身を解いた四人は祭壇を超え扉に辿り着く。

 

「ユエ、扉はどうだ?」

「ん……やっぱり封印されてる」

「あぅ、やっぱりですか」

「ユエ。封印の解除、任せていい?」

「ん……任せて」

 

 ユエは二つ返事で了承し祭壇に置かれている黄色の水晶を手に取った。その水晶は正双四角錐をしており、よく見れば幾つもの小さな立体ブロックが組み合わさって出来ている様だ。

 

 ユエは背後の扉を振り返る。其処には三つの窪みがあった。ユエは少し考える素振りを見せると、正双四角錐を分解し始めた。分解し各ブロックを組み立て直す事で、扉の窪みにハマる新たな立方体を作ろうと考えたのだ。

 分解しながら、ユエは扉の窪みを観察する。そして、よく観察しなければ見つからないくらい薄く文字が彫ってある事に気がついた。それは……

 

〝解っけるかなぁ~、解っけるかなぁ~〟

〝早くしないと死んじゃうよぉ~〟

〝まぁ、解けなくても仕方ないよぉ!私と違って君は凡人なんだから!〟

〝大丈夫!頭が悪くても生きて……いけないねぇ!ざんねぇ~ん!プギャアー!〟

 

 何時ものウザイ文だった。めちゃくちゃイラっとするユエはいつも以上に無表情となり、扉を殴りつけたい衝動を堪えながらパズルの解読に集中する。

 それから五分程して、

 

「……開いた」

「よし、行こう」

「ああ」

「はいっ!」

 

 部屋の中は、遠目に確認した通り何もない四角い部屋だった。てっきり、ミレディ・ライセンの部屋とまではいかなくとも、何かしらの手掛かりがあるのでは?と考えていたので少し拍子抜けする。

 

「これは、あれかな?これみよがしに封印しておいて、実は何もありませんでしたってオチか?」

「……ありえる」

「うぅ、ミレディめぇ。何処までもバカにしてぇ!」

「なあ、もし隠れ家にミレディの遺骨が残ってたら粉々に叩き壊しても構わんよな?」

 

 一番あり得る可能性を浮かべていると、突如もううんざりする程聞いているあの音が響き渡った。

 

ガコン!

 

「「「「!!」」」」

 

 仕掛けが作動する音と共に部屋全体がガタンッと揺れ動き、入間達の体に横向きのGがかかる。

 

「この部屋自体が移動してるのか!?」

「……そうみたッ!?」

「うきゃ!?」

「ぬぅッ!?」

 

 入間が推測を口にすると同時に、今度は真上からGがかかる。急激な変化にユエが舌を噛んだのか涙目で口を抑えてぷるぷるしている。シアは転倒してカエルの様なポーズで這いつくばっている。

 

 部屋はその後も何度か方向を変えて移動しているようで、約40秒程してから慣性の法則を完全に無視するようにピタリと止まった。入間は途中からジカンギレードを地面に突き立ててしがみつくことで体を固定していたので急停止による衝撃にも耐えたが、シアは耐えられずゴロゴロと転がり部屋の壁に後頭部を強打した。方向転換する度に、あっちへそっちへゴロゴロと悲鳴を上げながら転がり続けていたので顔色が悪い。相当酔ったようで、後頭部の激痛と酔いで完全にダウンしている。因みにユエとアメリは最初の方で入間の体に抱きついていたので問題ない。

 

「…ようやく止まったか。皆、大丈夫?」

「何とかな……」

「……ん、平気」

「わ、私も大丈うえぇ……」

「あーもう、シア酔ってるじゃん…。ほら、待ってあげるから落ち着きなよ」

「す、すみません……うっぷ」

 

 入間は青い顔で今にも吐きそうなシアの背中を擦ってやり、不機嫌そうなユエとアメリの視線を感じながらもシアの吐き気が収まってきたのを確認し、入間達は立ち上がった。周囲を観察するが特に変化はなく、先ほどの移動を考えると、入ってきた時の扉を開ければ別の場所ということだろう。周囲を確認しても、やっぱり何もないようなので扉へと向かった。

 

「さて、何が出るのかな…?」

「……操ってた奴?」

「かもね。ミレディは死んでいるはずだし、一体誰があのゴーレムを動かしていたんだか…」

「何が出ても関係ない。この怒りの捌け口が見つかるならそれでいい」

「アメリさんの言う通りで…うぇっぷ!」

 

 扉の先は、ミレディの住処か、ゴーレム操者か、あるいは別の罠か…。

 四人とも「何でも来い」と覚悟を決めて浮かべて扉を開くとそこには…

 

「…ねぇ、何か見覚えない?この部屋…」

「…ああ、特にあの石板…」

「最初の部屋、みたいですね…?」

 

 扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。その部屋は中央に石板が立っており左側に通路があった。見覚えがあるのも当然だ。なぜならその部屋はシアの言う通り最初に入ったウザイ文が彫り込まれた石板のある部屋だったのだ。

 よく似た部屋ではないことは、扉を開いて開いて数秒後に元の部屋の床に浮き出た文字が証明していた。

 

〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟

〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟

〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち?どんな気持ちなの?ねぇ、ねぇ〟

 

「「「「……………」」」」

 

 入間達の顔から表情がストンと抜け落ち、額に血管が浮かび上がって来た。四人とも無言で文字を見つめていると、更に文字が浮き出始めた。

 

〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟

〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟

〝嬉しい?嬉しいよね?お礼なんていいよぉ!好きでやってるだけだからぁ!〟

〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟

〝ひょっとして作ちゃった?苦労しちゃった?残念!プギャァー〟

 

「ハ、ハハハハハハ……」

「フフフフ……」

「フヒ、フヒヒヒ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「───ミレディィイイイイイイイイッ!!!」」」

 

 アメリ、ユエ、シアが壊れたように笑っていたと思うと、迷宮全体に届けと言わんばかりの怒りの絶叫が響き渡った。最初の通路を抜けてミレディの言葉通り、前に見たのとは大幅に変わった階段や回廊の位置、構造に更に怨嗟の声を上げたのも言うまでもないことだ。

 

「………壊そうかな、この迷宮」

 

 唯一叫ばなかった入間も、ゴーレム騎士で発散したイライラが再び溜まり始めたのか、虚空を見ながらそう呟いた。ここに神代魔法と村雨良の手掛かりがなければ、【エターナル】なり【ブラックホールフォーム】なりで確実にこの迷宮を破壊していただろう。

 

 その後、何とか精神を立て直して再び迷宮攻略に乗り出した入間達だったが、やはり順風満帆とは行かず、特にシアが地味なトラップ(金たらい、トリモチ、変な匂いのする液体ぶっかけetc)の尽くにはまり、精神的にヤバくない?というほどキレッキレッになったりと、厄介な事に変わりはなかった。

 

 そうして、冒頭の光景に繋がるわけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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