悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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今回はご都合主義や独自設定、駄文などが今まで以上にあると思います。毎度の事ですが、気に入らない方はブラウザバックを推奨します。


23話 新たな目的と新たな仲間

 ビッグマシンと超銀河王を撃破したジオウ達は、ブロックを足場にして変身を解いた。

 

「ハァ、ハァ……」

「ゼェ…ゼェ……なんとか、倒せましたねェ……」

「お疲れさま。ユエもシアも頑張ったみたいだね。はい、神水」

「……ん、ありがとう」

「あ、ありがとうございます。入間さん」

「……ムゥ」

 

 魔力の大半を使い膝から崩れ落ちるユエと、かつて無い程の激戦に気が抜けてヘナヘナと座り込むシア。そんな二人に神水を渡しながら労りの言葉を掛ける入間と、それを見て少し不機嫌そうに眺めながらも特に何も言わないアメリ。

 そんな四人に突如、声が掛けられた。

 

「あのぉ~、いい雰囲気で悪いんだけどぉ~、そろそろヤバイんで、ちょっといいかなぁ~?」

「「「「ッ!!?」」」」

 

 物凄く聞き覚えのある声に入間達ハッと試練の事を思いだして、咄嗟に声がした方から飛び退いて距離を置く。すると、そこにはボロボロになって地面に倒れるミレディ・ゴーレムがあった。

 

「ちょっと、ちょっと、大丈夫だってぇ~。爆発に巻き込まれてもうこのゴーレムは持たないから、試練は特別にアンタ達の勝ち!!」

「……いいの?」

「どの道、再開してももう魔力は残ってないからね~、そこの二人は兎も角、君と赤髪ちゃんには勝てなさそうだし。それに、もう数分ともたないから…」

 

 どうやら最後の爆発に巻き込まれ、ミレディ・ゴーレムは余計な損害を負ってこれ以上の戦闘は無理だと判断したようだ。まあ実際、再開したとしてもユエとシアは兎も角、入間とアメリには余力が残ってるので、【エボル・ブラックホールフォーム】なりで跡形もなく消せばいいだけだったので、結局このゴーレムを態々破壊する手間が省けただけだった。

 ミレディ・ゴーレムはもう数分と持たないという言葉を証明するようにピクリとも動かず、眼に宿った光は儚げに明滅を繰り返している。今にも消えてしまいそうだ。どうやら、数分しかもたないというのは本当らしい。

 

「それで、何か用ですか?神殺しの強要ですか」 

「言わないよ、言う必要もないからね……。話したい、というより忠告だね。訪れた迷宮で、必ず私達全員の神代魔法を手に入れること、君の理想のために必要だろうから……」

 

 入間の機先を制するような言葉に、何となく苦笑いめいた雰囲気を出すミレディ・ゴーレムは力が尽きかけているのか、次第に言葉が不鮮明に、途切れ途切れになってゆく。だが、そんなことは気にした様子もなく入間が疑問を口にする。

 

「なら、残り5つの迷宮の場所を教えてくれませんか?ハイリヒ(腐れ傀儡)王国の書庫を漁ってみましたが、失伝していて場所が分からなかった」

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……長い時が経ったんだね……うん、場所……場所はね……」

 

 いよいよミレディ・ゴーレムの声が力を失い始める。どこか感傷的な響きすら含まれた声に、ユエやシアが神妙な表情をする。長い時を、使命、あるいは願いのために意志が宿る器を入れ替えてまで生きた者への敬意を瞳に宿した。

 ミレディは、ポツリポツリと残りの七大迷宮の所在を語っていく。中には驚くような場所にあるようだ。

 

「以上だよ……頑張ってね」

「……随分としおらしいね。あのウザったい口調やらセリフはどうしたのさ?」

 

 入間の言う通り、今のミレディは、迷宮内のウザイ文を用意したり、あの人の神経を逆なでする口調とは無縁の誠実さや真面目さを感じさせた。戦闘前に入間の目的を聞いたときに垣間見せた、おそらく彼女の素顔が出ているのだろう。消滅を前にして取り繕う必要がなくなったということなのかもしれない。

 

「あはは、ごめんね~。でもさ……あのクソ野郎共って……ホントに嫌なヤツらでさ……嫌らしいことばっかりしてくるんだよね……だから、少しでも……慣れておいて欲しくてね……」

 

 いつしか、ミレディ・ゴーレムの体は燐光のような青白い光に包まれていた。その光が蛍火の如く、淡い小さな光となって天へと登っていく。死した魂が天へと召されていくようだ。とても神秘的な光景である。

 その時、おもむろにユエがミレディ・ゴーレムの傍へと寄って行った。既に、ほとんど光を失っている眼をジッと見つめる。

 

「何かな?」

 

 囁くようなミレディの声。それに同じく、囁くようにユエが一言、消えゆく偉大な“解放者”に言葉を贈った。

 

「……お疲れ様。よく頑張りました」

「……」

 

 それは労いの言葉だった。たった一人、深い闇の底で希望を待ち続けた偉大な存在への、今を生きる者からのささやかな贈り物。本来なら、遥かに年下の者からの言葉としては不適切かもしれない。だが、やはり、これ以外の言葉をユエは思いつかなかった。

 ミレディにとっても意外な言葉だったのだろう。言葉もなく呆然とした雰囲気を漂わせている。やがて、穏やかな声でミレディがポツリと呟く。

 

「……ありがとね」

「……ん」

「……さて、時間の……ようだね……君達のこれからが……自由な意志の下に……あらんことを……」

 

 オスカーと同じ言葉を贈り、ミレディは淡い光となって天へと消えていった。

 辺りを静寂が包み、余韻に浸るようにユエとシアが光の軌跡を追って天を見上げる。

 

「……最初は、性根が捻じ曲がった最悪の人だと思っていたんですけどね。ただ一生懸命なだけだったんですね」

「……ん」

 

 どこかしんみりとした雰囲気で言葉を交わすユエとシア。だが、入間とアメリはうんざりした様子で二人に話しかけた。

 

「はぁ、もういいだろ?さっさと先に行こうよ」

「だな。それにあの女の意地の悪さ、きっと素だと思うがな」

「ちょっと、入間さん、アメリさん。そんな死人にムチ打つようなことを。ヒドイですよ。まったく空気読めないのはお二人の方ですよ」

「……入間とアメリ、KY?」

「ユエまで……はぁ」

「気にするなイルマ、きっとコイツら絶対に後悔するぞ」

 

 そんな雑談をしていると、いつの間にか壁の一角が光を放っていることに気がついた入間達。気を取り直して、その場所に向かう。上方の壁にあるので浮遊ブロックを足場に跳んでいこうと、ブロックの一つに四人で跳び乗った。と、その途端、足場の浮遊ブロックがスィーと動き出し、光る壁まで入間達を運んでいく。

 

「わわっ、勝手に動いてますよ、これ。便利ですねぇ」

「……サービス?」

 

 勝手に入間達を運んでくれる浮遊ブロックにシアは驚き、ユエは首をかしげる。入間は苦笑いし、アメリは嫌そうな表情だ。

 

 10秒もかからず光る壁の前まで進むと、その手前5m程の場所でピタリと動きを止めた。すると、光る壁は、まるで見計らったようなタイミングで発光を薄れさせていき、スっと音も立てずに発光部分の壁だけが手前に抜き取られた。奥には光沢のある白い壁で出来た通路が続いている。

 浮遊ブロックは、そのまま通路を滑るように移動していく。どうやら、ミレディ・ライセンの住処まで乗せて行ってくれるようだ。そうして進んだ先には、オルクス大迷宮にあったオスカーの住処へと続く扉に刻まれていた七つの文様と同じものが描かれた壁があった。入間達が近づくと、やはりタイミングよく壁が横にスライドし奥へと誘う。浮遊ブロックは止まることなく壁の向こう側へと進んでいった。

 くぐり抜けた壁の向こうには……

 

「やっほー、さっきぶり!ミレディちゃんだよ!」

 

 ちっこいミレディ・ゴーレムがいた。

 巨体版と異なり人間らしいデザインで、華奢なボディに乳白色の長いローブを身に纏い、ニコちゃんマークの白い仮面を付けている。

 

「「……」」

「…そもそも、ここでミレディが死んだら、誰がこの部屋まで僕達を案内するの?ここの設備を動かしてるのはミレディなのに」

「それに、一度の攻略でミレディが死ぬなら、一度の試練で最終試練がなくなるという事だぞ?ゴーレムが破壊されても、ミレディ自身は無事と考えるのが妥当だろう」

「あちゃー!バレちゃってたか!流石だね!!」

 

 言葉もないユエとシアに、入間とアメリが淡々と説明する。

 それを聞きながら黙り込んで顔を俯かせるユエとシアに、ミレディが非常に軽い感じで話しかける。

 

「あれぇ?あれぇ?テンション低いよぉ~?もっと驚いてもいいんだよぉ~?あっ、それとも驚きすぎても言葉が出ないとか?だったら、ドッキリ大成功ぉ~だね☆」

 

 ちっこいミレディ・ゴーレムは語尾にキラッ!と星が瞬かせながら入間達の眼前までやってくる。未だユエとシアの表情は俯き、垂れ下がった髪に隠れてわからない。もっとも、先の展開は読めるので、入間とアメリは一歩距離をとった。

 ユエがシアがぼそりと呟くように質問する。

 

「……さっきのは?」

「ん~?さっき?あぁ、もしかして消えちゃったと思った?ないな~い!そんなことあるわけないよぉ~!」

「でも、光が昇って消えていきましたよね?」

「ふふふ、中々よかったでしょう?あの“演出”!やだ、ミレディちゃん役者の才能まであるなんて!恐ろしい子!」

 

 テンション上がりまくりのミニ・ミレディ。そんなミニ・ミレディを前にして、ユエは手を前に突き出し、シアはガシャコンブレイカーⅡを構えた。流石に、あれ?やりすぎた?と動きを止めるミニ・ミレディ。

 

「え、え~と……」

 

 ゆらゆら揺れながら迫ってくるユエとシアに、ミニ・ミレディは頭をカクカクと動かし言葉に迷う素振りを見せると意を決したように言った。

 

「テヘ、ペロ☆」

「……死ね」

「死んで下さい」

「ま、待って!ちょっと待って!このボディは貧弱なのぉ!これ壊れたら本気でマズイからぁ!落ち着いてぇ!謝るからぁ!」

 

 しばらくの間、ドタバタ、ドカンバキッ、いやぁーなど悲鳴やら破壊音が聞こえていたが、入間とアメリは一切を無視して、部屋の観察に努めた。部屋自体は全てが白く、中央の床に刻まれた魔法陣以外には何もなかった。唯一、壁の一部に扉らしきものがあり、おそらくそこがミニ・ミレディの住処になっているのだろうと推測する。

 二人はおもむろに魔法陣に歩み寄ると勝手に調べ始め、それを見たミニ・ミレディが慌てて入間のもとへやって来る。後ろからは無表情の吸血姫とウサミミがドドドドッと音を立てながら迫って来ている。

 

「君達ぃ~勝手にいじっちゃダメよぉ。ていうか、お仲間でしょ!無視してないで止めようよぉ!」

 

 そんな文句を言いながらミニ・ミレディは入間の背後に回り、二人の悪鬼に対する盾にしようとする。

 

「……入間どいて、そいつ殺せない」

「退いて下さい。入間さん。そいつは殺ります。今、ここで」

「殺ったら神代魔法手に入んないでしょ?二人とも落ち着きなよ……」

 

 入間は、若干呆れた表情でユエとシアに軽い注意をする。背後のミニ・ミレディが「そうだ、そうだ、真面目にやれぇ!」とか囃し立てるのに若干呆れながらもミニ・ミレディを猫のようにつまみ上げる。最後の試練で鬱憤は晴れたし、彼女の態度にも慣れてきた。今はやるべき事をやるだけだ。

 

「ほら、2人に殺されたくなかったら神代魔法を授けてくださいよ。ゴーレムは破壊してないけど、貴女僕達の攻略を認めたんでしょう?」

「それはそうだね……。おめでとー!君達が記念すべきミレディちゃんの大迷宮攻略者第一号だよ~!!」

 

 入間に促され、取り敢えず溜飲を下げたのかユエとシアも落ち着きを取り戻し、これ以上ふざけると本気で壊されかねないと理解したのかミニ・ミレディもようやく魔法陣を起動させ始めた。

 

 魔法陣の中に入る入間達。今回はミレディ本人が試練を攻略を認めたので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。入間とユエは経験済みなので無反応だったが、アメリとシアは初めての経験にビクンッと体を跳ねさせた。

 ものの数秒で刻み込みは終了し、あっさりと入間達はミレディ・ライセンの神代魔法を手に入れる。

 

「……やっぱり、重力操作の魔法か」

「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、ウサギちゃんは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」

 

 ミニ・ミレディの言う通り、シアは重力魔法の知識等を刻まれてもまともに使える気がしなかった。ユエが、生成魔法をきちんと使えないのと同じく、適性がないのだろう。

 

「まぁ、ウサギちゃんは体重の増減くらいなら使えるんじゃないかな。君と金髪ちゃんと赤髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」

 

 ミニ・ミレディの幾分真面目な解説に、元々重力操作が使える入間とアメリはフムフムと納得し、ユエは頷き、シアは打ちひしがれた。せっかくの神代魔法を適性なしと断じられ、使えたとしても体重を増減出来るだけ。ガッカリ感が凄まじい。また。重くするなど論外だが、軽くできるのも問題だ。油断すると体型がやばい事になりそうである。むしろデメリットを背負ったんじゃないかと、シアは意気消沈した。

 

「それから、ここの迷宮の証をもらおうか?ハルツィナ樹海に挑むには証が四つも必要なんでしょ?」

「あ~、先に樹海に行ったんだ。あそこは特別だからね~、ハイ」

 

 そう言いながら、ミニ・ミレディは入間にいくつかの資材が入っている“宝物庫”の指輪と迷宮の攻略である指輪、そして2つのライドウォッチを渡した。ライセンの指輪は、上下の楕円を一本の杭が貫いているデザインだ。やけに素直に取り出したところを見ると、元々渡す気だったのかもしれない。

 入間はそれらを受け取った後、最後に渡されたライドウォッチを確認する。1つは『1979』と記載された“スカイライダーライドウォッチ”、もう1つは『1980』と記載された“スーパー1ライドウォッチ”だ。 

 

「ライドウォッチ…。これと同じものが、オスカーの迷宮にも3つありましたけど……解放者がそれぞれ持ってるんですか?」

「うん。良くんがこの世界(トータス)から元の世界に帰る直前にね、この2つを含めて10個のウォッチを私達を託したんだよ。良くん自身もいつの間にか持ってたらしくて、これがなんかのかもよく分かってなかったみたいだけどさ。君は似たようなもの持ってるし、多分君のでしょ?」

 

 どうやらミレディ自身にも、このウォッチの入手経路は分からないらしい。だが10個ということは、残り五つは他の迷宮にあると考えるのが妥当だろう。このウォッチになんの意図があるのかは分からないが、集めておいて損はない。

 一段落すると、入間は先程から考えていた事を、思い切ってミレディに聞いてみることにした。

 

「ミレディ・ライセン。僕達と来ない?」

「……えっ!?」

「「「ハァッ!?」」」

 

 突然の提案に、ミレディだけでなくユエ、アメリ、シアも驚愕する。入間は自分から誰かを仲間にするなんてしたことがなかったし、ミレディのこれまでの所業を考えれば、海のように心の広い入間は兎も角ユエ達、特にシアには堪えきれないのではないかと。

 

「な、何言ってるのさ?私はこの迷宮にいなくちゃいけないし、それに君……」

「僕の目的には、君の力が必要だと思うんだ。だから来ない?」

「新しい目的?」

 

 ミレディの言葉を遮り、入間は腕を組みながら、ビッグマシンを倒したと同時にした決意を口にする。

 

僕はエヒトを殺すことにした。だから、君は神殺し(ソレ)に協力してほしい」

「ッ!……君、神殺しする気ないんじゃなかったの?」

「無かったよ。()()()()()()()()()()()()()()

 

 入間の言葉に、訳が分からないと言わんばかりに首を傾げるミレディ、ユエ、アメリ、シアを見て、入間は説明不足であった事を自覚する。そこで入間は、先ずはミレディに超銀河王の存在や、自分がこの世界に来て大迷宮を攻略するにまで至った敬意を説明する。

 全てを聞き終えたミレディは、ニコちゃんマークのお面の表情を難しい顔に変えながら唸るように声を上げた。

 

「……世界の均衡、かぁ。私の知らないところでそんな事が起こってたんだね……。それで、何で君は超銀河王(アイツ)が迷宮に乱入したからクソ野郎を殺す気になったの?」

「…前々から少し考えててね。僕がこの世界に召喚されたのは時空の乱れの影響だけじゃなくて、()()()()()()による物だと思ったんですよ。オルクスに現れたドラスや、今回の超銀河王の存在を考えると、ある可能性が浮かびましてね」

「……つまり、この事件の黒幕はお前を抹殺する為にエヒトにお前をこの世界に召喚させた、とういうことか…?」

 

 アメリがまさかという様に推測し、入間は頷く。

 実際、入間はこの世界に来た時から、いくら黒幕が魔界から来たとは言え、何故自分がエヒトの召喚で入間が別の世界の住人である光輝達と共に呼ばれたのかという疑問はあった。だがそれも、超銀河王の存在と言葉で解け、同時に三つの事実が判明した。

 

 1つ、世界の近郊を崩した存在とエヒトは手を組んでいる可能性がある事。

 2つ、その黒幕は次々とライダーの怪人を復活させ、怪人による秘密組織を設立してその頂点に君臨している事。

 3つ、入間はこの世界を救うために召喚されたのではなく、エヒトと黒幕にとって邪魔な存在と見なされたから、仲間と切り離して始末するつもりで召喚されたということ。

 

「記憶に関しては“オマケ”なのか、それとも世界の均衡が崩れた影響なのかは分からないけどね……」

「……確かに、そう考えればお前が別の世界にいた人間達と一緒に召喚されたことにも合点がいく」

「そう。だからこそ、彼女が味方になってくれるとありがたいんだよ。実力に関しても、もう目で見たし」

 

 そこまで言われて、全員が入間の意図を察した。

 確かに、ミレディは仮面ライダーに変身したわけでもないのにビッグマシンの動きを止められる程の実力者だ。ユエ自身、かつてドラス相手に生身で魔法を撃っても1ミリもダメージを与えられなかった経験から、悔しそうにしながらもそれを認める。

 

「…というわけで、僕は平行世界の未来を守る為に、エヒトとその同盟者を殺す旅をする。解放者であり、似非神の死を望む貴女とは利害が一致してませんか?こっちとしても、貴女が味方なら心強いと思いますし」

「………私、は…」

 

 入間の勧誘に、ミレディは先程までのウザイ様子など見受けられない、試練の直前に入間に質問をした時とも違う雰囲気で言い淀みんでおり、その様子を、ミレディの同行に反対の傾向に合ったユエ達も何も言わずに見つめていた。

 やがて、ミレディは口を開いた。

 

「私は、世界も皆も救えなかった。未来に誰かに託すことしかできなかった。……だから、待ち続けた…。人々の為に、(クソ野郎)に全力を振るう事が、私の望みだった……君に着いていけば、その望みは叶うの…?」

「僕に着いてくることが、貴女の望みに繋がるのかはまだ分かりません。でも、これだけは言える。……僕は必ず、黒幕とエヒト(似非神)を殺す。“友達()と楽しく過ごす”、その理想を守るために

 

 その時、入間の懐にある何かが少しずつ発行し始め、入間も他の面々も驚いたように発光している入間のポケットに目を向ける

 入間はその光る何か…ライドウォッチを取り出して、それをしばらく眺めていると、ミニ・ミレディの前まで歩み寄った。

 

「僕達と一緒に行くか、ここで新たな攻略者を待ち続けるか……決めるのは、貴女自身ですから」

 

 そう言いながら、入間は懐で光っているソレを──“ゴーストライドウォッチ”を取り出して、ミニ・ミレディに差し出した。

 ミニ・ミレディはそれを受け取ると、ライドオンスターターが押されて、ウォッチが起動した。

 

 

ゴースト!

 

 

 音声と共に、オレンジ色の光がミニ・ミレディを包み、やがてミニ・ミレディを中心に部屋全体包む程の眩い光が放たれ、入間達は思わず腕で顔を覆って失明を防ぐ。

 10秒程して、光がゆっくりと収まっていき、入間達は腕を下ろして光源であるミレディに目を向ける。

 

 そこにいたのは、小さなゴーレムではなく、一人の少女だった。

 歳の頃は15~16程度。ユエと似た様な金髪をポニーテールに束ね、豪奢でありながら動きやすさを重視した様なドレスを纏っている。

 腰には怪物の顔を模したようなベルト──“ゴーストドライバー”を巻いているその少女──ミレディは、信じられないといった表情で自身の顔を触る。

 

「嘘……この体……」

「……どうやら、ゴーストウォッチがライダーの力以外にもサービスしてくれたみたいですね」

 

 あり得ないと言わんばかりの表情のミレディに、入間は内心驚愕しながらも、心の何処かで納得する。

 仮面ライダーゴーストは幽霊、そして死者が生者として蘇ったライダーだ。ゴーストの力を受け継いだ事で、幽霊(ゴースト)と大差がないミレディは生者として蘇った、ということなのだろう。多分。

 取り敢えず気を取り直し、入間は真っ直ぐにミレディを見据えて、手を差し出した。

 

「さて、改めて──ミレディ・ライセン。僕と一緒に、世界を変えてみない?

 

 奇しくもそれは、かつてミレディがオスカーにかけた言葉と同じだった。

 それを聞いたミレディは、少しだけ目を丸くするが、直ぐにウザいくらいの底抜けに明るい笑顔で……その手を取った。

 

「──もっちろん!着いていくよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ミレディは旅の支度をするために居住区で荷物を纏めていた。

 その荷物は、神代魔法を駆使して作り上げた在りし日のベル(大切な友達)を再現した写真や、オスカーや村雨良といった解放者達の写真だった。

 ミレディは自分達が写っている写真を手に取り、そっと撫でた。

 

「本当に‥‥現れたんだ‥‥私達の試練を乗り越えた者が‥‥…あれから‥‥どのくらい経ったのかな?千年?二千年?あはは、分かんないや‥‥」

 

 ようやく、待ち望んでいた時が訪れようとしていた。

 

「皆‥‥とうとう動き出したよ。私たちの止まっていた時間が」

 

 虚空に向けて、一人で話していく内に、ミレディの手に持っている写真に、ポタポタと水滴が落ちた。

 

「夢でも、幻でもないよ」

 

 それは、涙だった。ゴーレム(以前)の体では流すことの出来なかった(ソレ)を止めどなく流しながら、ミレディは今は亡き仲間達に語り続けた。

 

「私達の歩んだ道は‥‥確かに、未来に繋がっていたよ」

 

 その時、ミレディは背後に何かの気配を感じて、後ろを振り向いた。そこには……

 

 そこには、大切な仲間(解放者)達の姿があった。

 

 もしかしたら、幻覚だったのかもしれない。

 だが、ミレディにとってはそれは紛れもなくオスカー達本人だった。

 

「皆……もう少し待っててね…。彼等と一緒に……必ず成し遂げるから…私達の宿願を……!!」

 

 ミレディの言葉に、オスカー達は優しく微笑んだ。

 すると、6人の影に隠れていた人物が、ゆっくりとミレディに歩み寄ってその全容を露にし、ミレディは大きく目を見開いた。

 

 その人物は、灰色の短髪に赤いジャケットを羽織った高齢の男性だった。何処か威圧感のある顔立ちでありがらもその表情は柔らかく、その男性は真っ直ぐにミレディを見ていた。

 

「……フフッ。老けたね、良くん…」

 

 ミレディは涙を流しながら笑顔で呟くと、その男性がフッと微笑むと同時に、ミレディにはその男性の姿が、カミキリ虫を模した緑目の赤い戦士に変わったように見えていた。

 ゴシゴシと涙を拭いて再び顔を上げると、そこには既に彼等の姿はなかった。だがミレディは、虚空に笑顔を向けたまま語りかけた。

 

「──それじゃあ…皆、いってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──どうやら、超銀河王は失敗したようだな』

『時間を止める程度で図に乗るからだ。愚かな奴め…』

 

──トータスの何処かに存在する、薄暗い空間。

 この世のものとは思えない異形の怪物達が屯する中でも、5人の異形がテーブルを囲み、会議を行っている。彼等こそ、ライセン大迷宮の最後の試練に乱入者(超銀河王)を差し向けた張本人達だ。

 

レム・カンナギ(ヤツ)は前々から、我々に対して反抗的だった。厄介払いにはなったが…ビッグマシンが破壊されたのは痛い。()()()()()とはいえ、製作に時間が掛かるのだからな』

『オマケに“解放者”であるミレディ・ライセンが鈴木入間の仲間に加わってしまった。奴等の戦力が増した上に、【ライセン大迷宮】の神代魔法は手に入らなくなってしまった……鈴木入間め…!』

 

 黒い鎧を纏う左手がクローになった異形と、重厚な盾を鎧を纏う異形は忌々しげに呟く。今回の出来事は、彼等の目的を何一つとして達成できずに終わり、その怒りと鬱憤を原因である入間に向ける。

 そんな中、一人の異形が静かに椅子から立ち上がった。

 

『……奴等に関しては一時放置する。我々はこれから【ウルの町】と、【オルクス大迷宮】に【グリューエン大火山】にも向かわねばならん。鈴木入間(そちら)にまで手が回せん』

 

 銀色の鎧を纏う異形の言葉に、白いコスチュームを着た異形が、ワインの入ったグラスを手にしながら銀色の異形を見据え、口を開いた。

 

『【ウルの町】……“豊穣の女神”か?小娘一人のために、我等が出向く必要があるのか?』

()()()の要望だ。()()()()が復活するその日までは、関係に亀裂を入れる訳にはいかん……』

「それなら、ウルの町(そっち)は君達に任せるわ。僕は迷宮攻略の方をやらせてもらうわ」

 

 そういいながら席を立ったのは、限りなく人間に近い見た目をした人物だった。

 緑色の髪を片方オールバックにし、左右アンバランスの角を携えた細面の存在は、そのまま踵を返して部屋を後にする。会議の最中に勝手に抜け出すなど言語道断というべきなのだが、四人の異形は何も言わず、彼等も席を立って別々の部屋に向かって歩き出した。

 

 そして、部屋を出て暫く廊下を歩いていた緑髪の男性は一度立ち止まると、ふと虚空に目を向け、愉しそうに笑い、誰に向ける訳でもなく一人で語りだした。

 

「再開は暫くお預けや。でも、きっと直ぐに会えるで。その時が楽しみやわ───イルマくん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 町と町、或いは村々をつなぐ街道を一台の馬車と数頭の馬がパッカパッカとリズミカルな足音と共にのんびりと進んでいた。勿論、その馬上には人が乗っている。冒険者風の出で立ちをした男が三人と女が一人だ。馬車の方には御者台に15~16歳の女の子と筋肉ムキムキの化物(漢女)が乗っていた。

 

「ソーナちゃぁ~ん、もうすぐ泉があるからそこで少し休憩にするわよぉ~」

「了解です、クリスタベルさん」

 

 クリスタベルと呼ばれた漢女は、何を隠そうブルックの町でユエとアメリとシアが世話になった服飾店の店長である。そしてそのクリスタベルと隣に座る少女は“マサカの宿”の看板娘である【ソーナ・マサカ】。何やら常に驚愕してそうな名前だが、ちょっと好奇心と脳内の桃色成分が多いだけの普通の少女だ。

 

 この2人は現在冒険者の護衛を付けながら、隣町からブルックへの帰還中なのである。クリスタベルはその巨漢からも分かる通り鬼の様に強いので、服飾関係の素材を自分で取りに行く事が多い。今回も仕入れ等の為に一時町を出たのだ。それに便乗したのがソーナである。隣町の親戚が大怪我を負ったと聞き、宿を離れられない両親に代わって見舞いの品を届けに行ったのだ。冒険者達は元々ブルックの町の冒険者で任務帰りなので、ついでに護衛しているのである。

 ブルックの町まであと一日といったところ。クリスタベル達は、街道の傍にある泉でお昼休憩を取る事にした。

 

 泉に到着したクリスタベル達が、馬に水を飲ませながら自分達も泉の畔で昼食の準備を始め、ソーナが水を汲みに泉の傍までやって来た。そして、いざ水を汲もうと入れ物を泉に浸けたその瞬間、

 

ゴポッ!ゴポゴポッゴバッ!!

 

 と音を立てながら突如、泉の中央が泡立ち一気に水が噴き出始めた。

 

「きゃあ!」

「ソーナちゃん!」

 

 悲鳴を上げて尻餅をつくソーナに、クリスタベルが一瞬で駆け寄り庇うように抱き上げ他の冒険者達のもとへ戻る。その間にも、噴き上げる水は激しさを増していき、遂には高さ10m以上はありそうな水柱となった。

 この泉は街道沿いの休憩場所としてはよく知られた場所で、こんな現象は一度として報告されていない。それ故に、クリスタベルやソーナ、冒険者達も驚愕に口をポカンと開き、降り注ぐ雨の如き水滴も気にせず巨大な水柱を見上げた。

 

「あぁあああああああああッ!!!」

「んっーーーー!!!」

「ぬぉおおおおおおおおおっ!!?」

「ひょえぇえええええええっ!!!」

「ひょわぁあああああああッ!!!」

 

 噴き上がる水の勢いそのままに、五人の人がやけに煩い悲鳴を上げながら飛び出してきた。思わず「なにぃー!」と叫びながらギャグ漫画みたいに目が飛び出るクリスタベル達。飛び出してきた五人は悲鳴を上げながら10m近くまで吹き飛ばされると、そのまま、クリスタベル達の対岸側にドボンッ!と音を立てながら落下した。

 

「「「「「「……」」」」」」

「な、何なの一体……」

 

 言葉もない冒険者達とクリスタベル。ソーナの呟きが皆の気持ちを代弁していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう〜、酷い目にあった……。皆、大丈夫?」

「……ん、大丈夫」

「イルマ…私は早速ミレディを仲間にする事に疑問を抱いているぞ……」

「同感ですぅ……うっぷ」

「ご、ごめ~ん。でも私が迷宮から出るなんて想定してなかったからあれしかなくて~……」

 

 びしょ濡れになりながらも何とか水面に上がった入間、ユエ、アメリ、シア、そしてミレディの五人は、それぞれの安否を確認し合いながら、入間達はミレディにジト目を向けた。

 

 ミレディの支度が終わり、いざ新たな仲間を加えて迷宮を出ようとした入間達。そこでミレディがいつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴んでグイっと下に引っ張った途端、その耳に嫌というほど聞いてきた、ガコン!というトラップの作動音が聞こえてきた。

 そしてその音が響き渡った瞬間、轟音と共に四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。正面ではなく斜め方向へ鉄砲水の様に吹き出す大量の水は瞬く間に部屋の中を激流で満たすと共に、部屋の中央にある魔法陣を中心にぽっかりと空いた穴に向かって水洗便所のように一気に流されたという事だ。

 幸いにも、水中で入間が咄嗟に“保護繭(グラン・ココン)”で全員を確保し、そのまま流れに乗せられてここまで流れ着いたという事である。

 

 その時、恐る恐るといった風に近付いてくる気配を感じ、入間達はそちらに視線を向ける。

 

「一体何が……って、あ!あの時のアブノーマルなお客さん!?」

 

 水柱から現れた人間達の正体を確かめようとし、それが入間達である事に初めに気付いたのは、あの時泊まった宿の看板娘ソーナだ。そして「あら?貴女達確か……」と体をくねらせながらユエとアメリとシアを記憶から呼び起こすクリスタベル。そして「何だ何だ?」と野次馬の様に集って来る冒険者達。

 

「何だが、見覚えがある奴等がいるな…」

「……ん、驚き」

 

 そんな事を話していると、クリスタベルが入間達の下へやって来た。入間とミレディは近寄ってくる人物に未知の恐怖を感じて震え上がるが、隣でシアが「あっ、店長さん」と知り合いらしい振る舞いを見せるので「三人の知り合いなのか…」と思い話に応じる事にする。

 

 結果、自分達のいる場所がブルックの町から一日程の場所にあると判明し、入間達も町に寄って行く事にした。クリスタベルの馬車に便乗させてくれるというのでその厚意に甘える事にする。道中色々話をしながら、暖かな日差しの中を馬の足音をBGMに進んでいく。

 

 新たな仲間と共に二つ目の大迷宮の攻略を成し遂げ、解放者の一人を仲間に加えた入間。馬車の荷台に腰を降ろし燦々と輝く太陽を眩しげに見つめながら、入間はこれから待ち受ける戦いに思い馳せ、不適な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 




これにて第2章は完結です。
次回からはウルの町編となります。

感想、評価お待ちしております。

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  • 入間くんのヒロイン入り
  • 原作通り
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