今章では入間軍のあの人が登場し、愛子とティオがヒロイン入りします。それから、海人族のあの娘も登場する予定です。優花をどうするかは未だ検討中なので、アンケート実施します。
24話 ブルックからの旅立ち
「ふふっ、あなた達の痴態、今日こそじっくりねっとり見せてもらうわ!」
上弦の月が時折雲に隠れながらも健気に夜の闇を照らし、今もまた風にさらわれた雲の上から顔を覗かせその輝きを魅せており、その光は地上のとある建物を照らし出す。具体的に言えば、その建物の屋根からロープを垂らし、それにしがみつきながら何処かの特殊部隊員のように華麗な下降を見せる一人の少女を照らし出していた。
スルスルと三階にある角部屋の窓まで降りると、そこで反転し、逆さまになりながら窓の上部よりそっと顔を覗かせる。
「この日のためにクリスタベルさんに教わったクライミング技術その他!まさかこんな場所にいるとは思うまい、ククク。さぁ、どんなアブノーマルなプレイをしているのか、ばっちり確認してあげる!」
ハァハァと興奮したような気持ちの悪い荒い呼吸をしながら室内に目を凝らすこの少女、何を隠そう、ブルックの町“マサカの宿”の看板娘ソーナ・マサカである。明るく元気で、ハキハキした喋りに、くるくると動き回る働き者、美人というわけではないが野に咲く一輪の花のように素朴な可愛さがある看板娘で、町の中にも彼女を狙っている独身男は結構いる。
そんな彼女は現在、彼女に惚れている男連中が見たら一瞬で幻滅するであろうエロオヤジそのものの表情で、持てる技術の全てを駆使してとある客室の“覗き”に全力を費やしていた。
「くっ、やはり暗い。よく見えないわ。もう少し角度をずらして……」
「こう?」
「そうそう、この角度なら……それにしても静かね?もう少し嬌声が聞こえるかと思ったのに……」
「魔法使えば遮音くらいは出来るでしょ?」
「はっ!?その手があったか!くぅう、小賢しい!でも私は諦めない!その痴態だけでもこの眼に焼き付け………………」
繰り返すが、ここは三階の窓の外。ソーナのようにアホなことでもしない限り、間近に声が聞こえることなど有り得ない。ソーナは一瞬で滝のような汗を流すと、ギギギという油を差し忘れた機械の様にぎこちない動きで振り返った。そこには……空中に仁王立ちして、冷めきった表情の入間がいた。
「ち、ちなうんですよ?お客様。これは、その、あの、そう!宿の定期点検です!」
「こんな夜中に?」
「そ、そうなんですよ~。ほら、夜中にちゃちゃっとやってしまえば、昼に補修しているところ見られずに済むじゃないですか。宿屋だからガタが来てると思われるのは、ね?」
「成程、評判は大事だね」
「そ、そうそう! 評判は大事です!」
「ところで話しは変わるけど、この宿で最近覗き魔が出る様だが……そこについてどう思う?」
「そ、それは由々しき事態ですね!の、覗きだなんて、ゆ、許せません、よ?」
「その通り。覗きは許せないね?」
「え、ええ、許せませんとも……」
ソーナは入間と顔を見合わせると「ははは」と笑い始めた。但し、小刻みに震えながら汗をポタポタ垂らしているという何とも追い詰められた様な笑いだったが。
そこで入間は……ソーナの頭にアイアンクロ-をして、ハサミとロープを取り出した。
「──で?ロープ切られて地面に激突するのと、裸にひん剥いて亀甲縛りで宿屋の前に吊るされるの、どっちがいい?」
「ひぃーー、ごめんなさぁ~い」
入間の脅しに、空中でジタバタともがきながらソーナは必死に許しを請う。一般人の女の子には少しやり過ぎなお仕置きかもしれないが、ライセン大迷宮から帰還した次の日に再び宿に泊まった夜から毎晩、あの手この手で覗きをされればいい加減、配慮も薄くなるというものだ。それでもこの宿を利用しているのは、飯が美味いからである。
しかし、ふと入間は下から視線を感じて下を向き、直ぐにソーナに向けて下を指差した。それに吊られたソーナが下を見ると……鬼がいた。満面の笑みだが、眼が笑っていない母親という鬼が。
「ひぃ!!」
ソーナが気がついたことに気がついたのだろう。ゆっくり手を掲げると、おいでおいでをする母親。まるで地獄への誘いだった。
「今回は、尻叩き百発じゃあきかないかもね」
「いやぁああーーー!」
入間がポツリとこぼした言葉に、今までのお仕置きを思い出して悲鳴を上げるソーナ。きっと、翌の朝食時には、お尻をパンパンに腫らした涙目のソーナを見るだろうが、まあ自業自得だ。
因みにその後、男女で部屋を分けた筈なのに入間の部屋にユエとシアがネグリジェ姿で待ち伏せしており、入間になし崩しにベッドインを目的に迫られ、最終的にアメリとミレディを加えて四人部屋で寝ることになってしまったのは余談である。
カランカラン……と、そんな音を立てて冒険者ギルド【ブルック支部】の扉は開き、入ってきたのはここ数日ですっかり有名人となった入間、ユエ、アメリ、シア、ミレディである。ギルド内のカフェには、いつもの如く何組かの冒険者達が思い思いの時を過ごしており、入間達の姿に気がつくと片手を上げて挨拶してくる者もいる。男は相変わらずユエ達に見蕩れ、ついで入間に羨望と嫉妬の視線を向けるが、そこには一緒に召喚された
新たに加わったミレディを連れてクリスタベルの厚意に甘えてブルックに向かい、「また綺麗所が増えてやがる!」的な視線で迎えられながらも、入間達はブルックに滞在してから一週間は経った。
その間にユエとアメリとシア、そしてミレディを手に入れようと決闘騒ぎを起こした者は数知れず。かつて“股間スマッシュ”という世にも恐ろしい所業をなしたユエ本人を直接口説く事は出来ないが、外堀を埋めるように入間から攻略してやろうという輩がそれなりにいたのである。
勿論、入間がそんな面倒事をまともに受けるわけがなく、最終的には「決闘しろ!」の『け』の瞬間に入間のデコピンを御見舞いされてスーパーボールのように壁から壁へ跳ねながら犬◯家に状態にされ、哀れな挑戦者達は地獄を見る事になった。
そんなわけで、この町では、“股間スマッシャー”たるユエと、そんな彼女が心底惚れており、決闘が始まる前に相手を瞬殺する“決闘スマッシャー”たる入間のコンビは有名であり一目置かれる存在だ。いつの間にか“スマッシュ・ラヴァーズ”という身に覚えのないパーティー名が広まり掛けたので、そこで入間はギルドに“バビル”というパーティー名を正式に申請し、今ではそっちのパーティー名が広がっていた。
「おや、今日は全員一緒かい?」
入間達がカウンターに近づくと、いつも通りキャサリンがおり、先に声をかけた。キャサリンの声音に意外さが含まれているのは、この一週間でギルドにやって来たのは大抵、入間一人か女性陣の四人組だったからだ。
「ええ。明日には町を出るので、色々世話になったので一応挨拶をとね。ついでに、目的地関連で依頼があれば受けておこうと思いまして」
世話になったというのは、入間がギルドの一室を無償で借りていたことだ。せっかくの神代魔法なので、もう1つ神代魔法である生成魔法と組み合わせて何か強力かアーティファクトを作れないかと、それなりに広い部屋が欲しかったのでキャサリンに心当たりを聞いたところ、それならギルドの部屋を使っていいと無償で提供してくれたのだ。
なお、ユエとアメリとシアは郊外で重力魔法の鍛錬、ミレディはコズミックステイツウォッチのワープドライブでオスカーの隠れ家まで飛び、オスカーの墓参りをしていた。
「そうかい。行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」
「勘弁してくださいよ。宿屋の変態、服飾店の変態、ユエ達に踏まれたいとか言って町中で突然土下座してくる変態、お姉さまとか連呼しながら四人をストーキングする変態、決闘を申し込んでくる阿呆……まともな人に会った記憶がありませんよ。出会った人の7割が変態で2割が阿呆とか……この町はどうなっているんですか」
苦々しい表情の入間が愚痴をこぼすように語った内容は全て事実だ。ソーナは言わずもがな、クリスタベルは会う度に入間に肉食獣の如き視線を向け舌なめずりをしてくるので、何度寒気を感じたかわからない。
また、ブルックの町には五大派閥が出来ており、日々しのぎを削っている。それぞれ「ユエちゃんに踏まれ隊」、「アメリ様に鞭で打たれ隊」、「シアちゃんの奴隷になり隊」、「ミレディちゃんに罵られ隊」、そして最後が「お姉さまと姉妹になり隊」である。それぞれ、文字通りの願望を抱え、実現を果たした隊員数で優劣を競っているらしく、あまりにぶっ飛んだネーミングと思考の集団に入間達がドン引きしたのは言うまでもない。
町中でいきなり土下座するとユエに向かって「踏んで下さい!」とか、アメリに鞭を差し出して「これで打って下さい!」とか、ミレディに「罵って下さい!」とか絶叫するのだ。もはや恐怖である。
シアに至ってはどういう思考過程を経てそんな結論に至ったのか理解不能だ。亜人族は被差別種族じゃなかったのかとか、お前らが奴隷になってどうするとかツッコミどころは満載だが、深く考えるのが嫌だったので出会えば即刻排除している。
最後は女性のみで結成された集団で、ユエ達四人に付き纏うか、入間の排除行動が主だ。一度は「お姉さまに寄生する害虫が!玉取ったらぁああーー!!」とか叫びながらナイフを片手に突っ込んで来た少女もいる。
流石に町中で少女を殺害したとなると色々面倒そうなので、入間はキ◯肉バスターを御見舞いしてやり、瀕死となった少女に『次は殺します』と書かれた張り紙を貼って放置した。あまりの所業と淡々と書かれた張り紙の内容に、少女達の過激な行動がなりを潜めたのはいい事である。
そんな出来事を思い出し顔をしかめる入間に、キャサリンは苦笑いだ。
「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね」
「嫌な活気ですね」
「で、何処に行くんだい?」
「フューレンですよ」
そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリンは早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始める。
フューレンとは、中立商業都市だ。入間達の次の目的地は【グリューエン大砂漠】にある七大迷宮の一つ【グリューエン大火山】である。その為、大陸の西に向かわなければならないのだが、その途中に【中立商業都市フューレン】があるので、大陸一の商業都市に一度は寄ってみようという話になったのである。なお、【グリューエン大火山】の次は大砂漠を超えた更に西にある海底に沈む大迷宮【メルジーネ海底遺跡】が目的地だ。
「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。丁度空きが後一人分あるよ……どうだい?受けるかい?」
キャサリンにより差し出された依頼書を受け取り内容を確認する。依頼内容は商隊の護衛依頼のようだ。中規模な商隊のようで、15人程の護衛を求めているらしい。入間以外は冒険者登録をしていないので、入間の分でちょうどだ。
「連れを同伴するのはOKなんですか?」
「ああ、問題ないよ。あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。まして、ユエちゃん達も結構な実力者だ。一人分の料金でもう四人も優秀な冒険者を雇えるようなもんだ。断る理由もないさね」
「そうか、う~ん、どうする?」
入間は少し逡巡し、意見を求めるようにユエ達の方を振り返った。
正直な話、配達系の任務でもあればと思っていたのだ。というのも、入間達だけならバイクがあるので、馬車の何倍も早くフューレンに着くことができる。わざわざ護衛任務で他の者と足並みを揃えるのは手間と言える。
「……急ぐ旅じゃない」
「同感だな。たまにはゆっくり見て回るのも良いではないか?」
「そうですねぇ~、たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」
「ミレディちゃんも構わないよ?ユエちゃん達の言うことにも一理あるし」
「……そうだね、急いても仕方ないしたまにはいいか……」
入間は四人の意見に「ふむ」と頷くとキャサリンに依頼を受けることを伝える。
ユエの言う通り、七大迷宮の攻略にはまだまだ時間がかかるだろうし、黒幕とエヒトの動向も予想できないので、急いて事を仕損じては元も子もないというし、シアの言うように冒険者独自のノウハウがあれば今後の旅でも何か役に立つことがあるかもしれない。
「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」
「了解しました」
入間が依頼書を受け取るのを確認すると、キャサリンが後ろのユエ、アメリ、シア、ミレディに目を向けた。
「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ?この子に泣かされたら何時でも家においで。あたしがぶん殴ってやるからね」
「……ん、お世話になった。ありがとう」
「親身になって貰った事、感謝します」
「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難うございました!」
「ホントにお世話になったよ!また来たら遊びにいくね!」
キャサリンの人情味あふれる言葉にユエ達の頬も緩む。
特にシアは嬉しそうだ。この町に来てからというもの自分が亜人族であるということを忘れそうになる。もちろん全員が全員、シアに対して友好的というわけではないが、それでもキャサリンを筆頭にソーナやクリスタベル、ちょっと引いてしまうがファンだという人達はシアを亜人族という点で差別的扱いをしない。土地柄かそれともそう言う人達が自然と流れ着く町なのか、それはわからないが、いずれにしろシアにとっては故郷の樹海に近いくらい温かい場所であった。
「あんたも、こんないい子達泣かせんじゃないよ?精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」
「……言われなくても承知してますよ」
キャサリンの言葉に苦笑いで返す入間。そんな入間に、キャサリンが一通の手紙を差し出し、入間は疑問顔でそれを受け取る。
「これは?」
「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」
バッチリとウインクするキャサリンに、入間は思わず頬が引き攣る。手紙一つでお偉いさんに影響を及ぼせるアンタは一体何者だ?という疑問がありありと表情に浮かんでいる。
「おや、詮索はなしだよ?いい女に秘密はつきものさね」
「……まあ、確かにそうですね。有り難く貰いますよ」
「素直でよろしい!色々あるだろうけど、死なないようにね」
謎多き片田舎の町のギルド職員キャサリン。入間達はそんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出された。
その後、入間達はクリスタベルの場所にも寄った。入間は断固拒否したが、ユエ達女性陣がどうしてもというので仕方なく付き添った……だが、町を出ると聞いた瞬間、クリスタベルは最後のチャンスとばかりに入間に襲いかかる巨漢の化物と化し、恐怖のあまり振葬ろうとする入間を、ユエ、アメリ、シア、ミレディが必死に止めるという衝撃的な出来事があったが……詳しい話は割愛する。
最後の晩と聞き、遂には堂々と風呂場に乱入して部屋に突撃を敢行したソーナちゃんがブチギレた母親に本物の亀甲縛りをされて一晩中宿の正面に吊るされるという事件の話も割愛だ。なぜ、母親が亀甲縛りを知っていたのかという話も割愛する。
そして翌日早朝。そんな愉快?なブルックの町民達を思い出にしながら正面門にやって来た入間達を迎えたのは商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。どうやら入間達が最後のようで、まとめ役らしき人物と14人の冒険者がやって来た入間達を見て一斉にざわついた。
「お、おい、まさか残りの5人って“バビル”なのか!?」
「マジかよ!嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」
「見ろよ俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」
「いや、それはお前がアル中だからだろ?」
ユエ、アメリ、シア、ミレディの登場に喜びを顕にする者、股間を両手で隠し涙目になる者、手の震えを入間達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者など様々な反応だ。入間は何もしてないのに疲れたような表情をしながら近寄ると、商隊のまとめ役らしき人物が声をかけた。
「君達が最後の護衛かね?」
「ええ、依頼書ですよ」
入間は懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。
「私の名は【モットー・ユンケル】。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」
「……もっとユンケル?……中々苦労していそうですね……」
「まぁ、大変だが慣れたものだよ」
日本のとある栄養ドリンクを思い出させる名前に、入間の眼が同情を帯びる。だが何故そんな眼を向けられるのか分からないモットーは首を傾げながら苦笑い気味に返した。
「まぁ、期待は裏切らないと思いますよ。僕は入間。こっちはユエとアメリ、シアとミレディです」
「それは頼もしいな……ところで、この兎人族……売るつもりはないかね?それなりの値段を付けさせてもらうが」
モットーの視線が値踏みするようにシアを見た。兎人族で青みがかった白髪の超がつく美少女だ。商人の性として、珍しい商品に口を出さずにはいられないということか。首輪から奴隷と判断し、即行で所有者たる入間に売買交渉を持ちかけるあたり、きっと優秀な商人なのだろう。
その視線を受けて、シアが「うっ」と嫌そうに唸り入間の背後にそそっと隠れ、ユエ達のモットーを見る視線が厳しくなるが、一般的な認識として樹海の外にいる亜人族とは奴隷であり、珍しい奴隷の売買交渉を申し出るのは商人として当たり前の事なので、モットーが責められるいわれはない。
「ほぉ、随分と懐かれていますな…中々、大事にされているようだ。ならば、私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、いかがです?」
「ま、あなたは優秀な商人のようですし……答えはわかるでしょう?」
シアの様子を興味深そうに見ていたモットーが更に入間に交渉を持ちかけるが、入間の対応はあっさりしたものである。モットーも、実は入間が手放さないだろうとは感じていたが、それでもシアが生み出すであろう利益は魅力的だったので、何か交渉材料はないかと会話を引き伸ばそうとするが、そんな意図も入間は読んでいたのだろう。やはりあっさりしているが、揺るぎない意志を込めた言葉をモットーに告げる。
「例え、どこぞの神が欲しても、僕の仲間は誰一人として渡すつもりはない……理解してもらえましたか?」
「…………えぇ、それはもう。仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願いますよ。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」
入間の発言は相当危険なものだった。下手をすれば聖教教会から異端の烙印を押されかねない発言だ。一応、魔人族は違う神を信仰しているし、歴史的に最高神たる“エヒト”以外にも崇められた神は存在するので、直接、聖教教会にケンカを売る言葉ではないが、それでもギリギリの発言であることに変わりはなく、それ故に、モットーは入間がシアを手放すことはないと心底理解させられた。
入間が、すごすごと商隊の方へ戻るモットーを見ていると、周囲が再びざわついている事に気がついた。
「すげぇ……女一人のために、あそこまで言うか……痺れるぜ!」
「流石、決闘スマッシャーと言ったところか。自分の女に手を出すやつには容赦しない……ふっ、漢だぜ」
「いいわねぇ~、私も一度くらい言われてみたいわ」
「いや、お前、男だろ?誰が、そんなことッあ、すまん、謝るからっやめっアッーー!!」
入間は、愉快?な護衛仲間の愉快な発言に頭痛を感じたように手で頭を抑えた。やっぱりブルックの町の奴らは阿呆ばっかりだと。そんな事を思っていると、背中に何やら『むにゅう♡』と柔らかい感触を感じ、更に腕が背後から回されえ入間を抱きしめてくる。
肩越しに振り返ると、肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいる。
「……特別な意味はないからね?勘違いしないでよ?」
「うふふふ、わかってますよぉ~、うふふふ~」
あくまで身内を捨てるような真似はしないという意味であって、周りで騒いでいるヤツ等のように“自分の女”だからという意味ではないとはっきり告げる入間だったが、シアにはまるで伝わっていなかった。惚れた男から“神にだって渡さない”と宣言されたのだ。どのような意図で為された発言であれ、嬉しいものは嬉しいのだろう。
手っ取り早く交渉を打ち切るための発言が、いろんな意味でやりすぎだった事に、頬を引きつらせる入間。ユエ、アメリ、ミレディがトコトコと傍に寄って行くと、そんなユエとミレディが入間の両袖をクイクイと引っぱっり、アメリがポンと入間の頭に手を置いた。
「?」
「ん……カッコよかったから大丈夫」
「そうだよ~。皆考えは同じなんだから、気にする必要ないよ!」
「…二人の言う通りだな。気にやむ必要はないぞ」
「……慰めありがとう」
入間の心情を察して慰めるユエ達に、入間は苦笑いしながらと両腕でユエとミレディを撫でる。気持ち良さそうに目を細める二人に対抗する様に、アメリが顔を真っ赤にしながらも入間の胸に飛び込み、シアとは反対側の肩に顎を乗せる。
早朝の正門前、多数の人間がいる中で、背中に幸せそうなウサミミ美少女をはりつけ、右手には金髪紅眼の、左手には金髪碧眼のこれまた美少女、そして正面には長身巨乳美女を纏わりつかせる男、鈴木入間。
商隊の女性陣は生暖かい眼差しで、男性陣は死んだ魚のような眼差しでその光景を見つめる。入間に突き刺さる煩わしい視線や言葉は、きっと自業自得である。
今回は原作通りでした。
因みに入間がキャサリンに申請したパーティ名は、魔入りました入間くんのif魔フィアで入間くんが首領をする魔フィア組織の名前です。
感想、評価お待ちしております。
優花をヒロイン入りさせますか?ご意見をお聞かせ下さい
-
入間くんのヒロイン入り
-
原作通り