悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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最初の法は原作通りですが、後半にオリジナルがあります。


32話 襲撃の巨獣

 北に【山脈地帯】、西に【ウルディア湖】を持つ資源豊富な【ウルの町】は現在、つい昨夜までは存在しなかった“外壁”に囲まれて、異様な雰囲気に包まれていた。

 

 この外壁は入間とアメリが即行で作ったものだ。ライドストライカーで、“変化(チェルーシル)”を使って外壁を作りしながら町の外周を走行して作成したのである。

 尤も、壁の高さは6m位で限界なのでそれほど高くはなく、大型の魔物ならよじ登ることは容易だろう。万一に備えてないよりはマシだろう程度の気持ちで作成したので問題はない。そもそも、壁に取り付かせるつもりなど入間にはないのだから。

 

 町の住人達には、既に数万単位の魔物の大群が迫っている事が伝えられている。魔物の移動速度を考えると夕方になる前位には先陣が到着するだろうと。

 当然、住人はパニックになった。町長を始めとする町の顔役たちに罵詈雑言を浴びせる者、泣いて崩れ落ちる者、隣にいる者と抱きしめ合う者、我先にと逃げ出そうとした者同士でぶつかり、罵り合って喧嘩を始める者。明日には、故郷が滅び、留まれば自分達の命も奪われると知って冷静でいられる者などそうはいない。彼等の行動も仕方の無い事だ。

 だが、そんな彼等に心を取り戻させた者が愛子だ。

 高台から声を張り上げる“豊穣の女神”に恐れるものなど無いと言わんばかりの凛とした姿と、元から高かった知名度により、人々は一先ずの冷静さを取り戻した。身の程知らずな光輝達より、よっぽど勇者らしい活躍だった。

 

 冷静さを取り戻した人々は、二つに分かれた。

 即ち、故郷は捨てられない、場合によっては町と運命を共にするという居残り組と、当初の予定通り、救援が駆けつけるまで逃げ延びる避難組だ。

 居残り組の中でも、女子供だけは避難させるという者も多くいる。愛子の魔物を撃退するという言葉を信じて、手伝える事は何かないだろうかと居残りを決意した男手と万一に備えて避難する妻子等だ。深夜をとうに過ぎた時間にも拘らず、町は煌々とした光に包まれ、いたる所で抱きしめ合い別れに涙する人々の姿が見られた。

 

 避難組は、夜が明ける前には荷物を纏めて町を出た。現在は日も高く上がり、せっせと戦いの準備をしている者と仮眠をとっている者とに分かれている。居残り組の多くは“豊穣の女神”一行が何とかしてくれると信じてはいるが、それでも自分達の町は自分達で守るのだ!出来る事をするのだ!という気概に満ちていた。

 

 バビル一行は、すっかり人が少なくなり、それでもいつも以上の活気があるような気がする町を背後に、入間は即席の城壁に腰掛けて、どこを見るわけでもなくその眼差しを遠くに向けていた。

 そこへ愛子と生徒達、ティオ、ウィルがやって来た。愛子達の接近に気がついているだろうに、振り返らない入間に愛子が声をかける。

 

「鈴木君、準備はどうですか?何か、必要なものはありますか?」

「いりません」

 

 視線すら向けること無く簡潔に答える入間。愛子はそんは入間の態度に気にすること無く、苦悩が滲み出ている言葉で入間に話しかけた。

 

「鈴木君。黒ローブの男のことですが……」

「正体を確かめたいから、見つけても殺さないでくれと?」

「……はい。どうしても確かめなければなりません。その……鈴木君には、無茶なことばかりを……」

「……先生、僕は貴女達を山脈までの同行を許可して、これから無関係の人間のためにたった数人で万単位の魔物と戦争するんですよ?その上この騒動を起こした首謀者を生かせと言いたいんですか?いくらなんでも我儘が過ぎるのでは?」

「…それは、分かっているのですが……」

 

 愛子の要求を一蹴する入間。愛子も、ここに至るまで散々入間に迷惑を掛け続けている自覚があったので、入間に反論することなど出きる筈もなく、つくづく自分は無力だなぁと内心溜息をつくのだった。

 愛子の話が終わったのを見計らって、今度はティオが前に進み出て入間に声をかけた。

 

「ふむ、よいかな。妾もご主……ゴホンッ!お主に話が……というより頼みがあるのじゃが、聞いてもらえるかの?」

「?…………………………………………………………ああ、ティオか」

「お、お主、まさか妾の存在を忘れておったんじゃ……はぁはぁ、こういうのもあるのじゃな……」

 

 聞き覚えなのない声に、思わず肩越しに振り返った入間は、黒地にさりげなく金の刺繍が入っている着物に酷似した衣服を大きく着崩して、白く滑らかな肩と魅惑的な双丘の谷間、そして膝上まで捲れた裾から覗く脚線美を惜しげもなく晒した黒髪金眼の美女に、一瞬訝しそうな目を向けた後、「ああそういえば」と思い出したように名前を呼んだ。

 明らかに存在そのものを忘却されていたティオは、怒るどころかむしろ、頬を染めて若干息を荒げている。彼女の言う“こういうの”とは何なのか、聞かない方が身のためだろう。

 

「んっ、んっ!えっとじゃな、お主は、この戦いが終わったらウィル坊を送り届けて、また旅に出るのじゃろ?」

「そうだけど?」

「うむ、頼みというのはそれでな……妾も同行させてほし…」

「やだよ」

「……ハァハァ。よ、予想通りの即答。流石、ご主……コホンッ!もちろん、タダでとは言わん!これよりお主を“ご主人様”と呼び、妾の全てを捧げよう!身も心も全てじゃ!どうzy」

「帰れ。寧ろ土に還れ。それか死ね」

 

 両手を広げ、恍惚の表情で入間の奴隷宣言をするティオに、入間は汚物を見るような眼差しでばっさりと切り捨てた。それにまたゾクゾクしたように体を震わせるティオ。頬が薔薇色に染まっている。どこからどう見ても変態だった。周囲の者達もドン引きしており、竜人族に強い憧れと敬意を持っていたユエの表情は、全ての感情が抜け落ちたような能面顔になっている。

 

「そんな……酷いのじゃ……妾をこんな体にしたのはご主人様じゃろうに……責任とって欲しいのじゃ!」

 

 全員の視線が「えっ!?」というように入間を見る。流石にとんでもない濡れ衣を着せられそうなのに放置する訳にもいかず、きっちり向き直ると青筋を浮かべながらティオを睨む入間。どういうことかと視線で問う。

 

「あぅ、またそんな汚物を見るような目で……ハァハァ……ごくりっ……その、ほら、妾強いじゃろ?」

 

 入間の視線にまた体を震わせながら、入間の奴隷宣言という突飛な発想にたどり着いた思考過程を説明し始めるティオ。

 

「里でも、妾は一、二を争うくらいでな、特に耐久力は群を抜いておった。じゃから、他者に組み伏せられることも、痛みらしい痛みを感じることも、今の今までなかったのじゃ……それがじゃ、ご主人様と戦って、初めてボッコボッコにされた挙句、組み伏せられ、痛みと敗北を一度に味わったのじゃ。そう、あの体の芯まで響く拳と蹴り!怒涛の攻撃の連続!体中が痛みで満たされて……ハァハァ」

「……つまり、入間が新しい扉を開いちゃった?」

「その通りじゃ!妾の体はもう、ご主人様なしではダメなのじゃ!」

「……キモい」

 

 ユエが嫌なものを見たと表情を歪ませながら、既に尊敬の欠片もない声音で要約すると、ティオが同意の声を張り上げる。思わず、本音を漏らす入間。完全にドン引きしていた。

 

「それにのう……」

 

 ティオが、突然、今までの変態じみた様子とは異なり、両手をムッチリした自分のお尻に当てて恥じらうようにモジモジし始める。

 

「……妾の初めても奪われてしもうたし」

 

 その言葉に、全員の顔がバッと音を立てて入間に向けられた。入間は頬を引き攣らせながら「そんな事していない」と首を振る。

 

「妾、自分より強い男しか伴侶として認めないと決めておったのじゃ……じゃが、里にはそんな相手おらんしの……敗北して、組み伏せられて……初めてじゃったのに……いきなりお尻でなんて……しかもあんなに激しく……もうお嫁に行けないのじゃ……じゃからご主人様よ。責任とって欲しいのじゃ」

 

 お尻を抑えながら潤んだ瞳を入間に向けるティオ。愛子達は事の真相を知っているにもかかわらず、責めるような目で入間を睨んでいた。バビルのメンバーですら、「あれはちょっと」という表情で視線を逸らしている。迫り来る大群を前に、入間は四面楚歌の状況に追い込まれた。

 

「君さ、役目があるから里から出てきたんじゃないの?その役目を放棄する気?」

 

 仲間達にまで視線を逸らされてしまい、苦し紛れに“竜人族の調査”とやらはどうしたと返す入間。

 

「うむ。問題ない。ご主人様の傍にいる方が絶対効率いいからの。まさに、一石二鳥じゃ……ほら、旅中では色々あるじゃろ?イラっとしたときは妾で発散していいんじゃよ?ちょっと強めでもいいんじゃよ?ご主人様にとっていい事づくしじゃろ?」

「生理的に無理」

 

 ティオが縋り、入間がばっさり切り捨てる。それに女子生徒達が蛆虫を見る目を入間に向け、男子生徒は複雑ながら異世界の女性と縁のある入間に嫉妬し、その視線に入間が生徒達に殺意を抱き、愛子が不純異性交遊について滔滔と説教を始め、何故かウィルが尊敬の眼差しを入間に向ける。

 大群が迫っているにもかかわらず、そんなカオスな状況が繰り広げられ、入間がウンザリし始めたとき、遂にそれは来た。

 

「!……来たか」

 

 突然、入間のポケットにはいっているス魔ホの着信音が鳴り、入間はそれを取り出して画面を覗く。肉眼で捉えられる位置にはまだ来ていないが、入間のス魔ホにはコダマスイカアームズから送られた映像がはっきりと見えていた。

 

 それは、大地を埋め尽くす魔物の群れだ。ブルタールのような人型の魔物の他に、体長3~4mはありそうな黒い狼型の魔物、足が六本生えているトカゲ型の魔物、背中に剣山を生やしたパイソン型の魔物、四本の鎌をもったカマキリ型の魔物、体のいたるところから無数の触手を生やした巨大な蜘蛛型の魔物、2本角を生やした真っ白な大蛇など実にバリエーション豊かな魔物が、大地を鳴動させ土埃を巻き上げながら猛烈な勢いで進軍している。その数は、山で確認した時よりも更に増えているようだ。5万あるいは6万に届こうかという大群である。

 更に、大群の上空には飛行型の魔物もいる。敢えて例えるならプテラノドンだろうか。何十体というプテラノドンモドキの中に一際大きな個体がいる、その個体の上には薄らと人影のようなものも見えた。おそらく、件の黒ローブの男。愛子は信じたくないという風だったが、間違いなく清水幸利だ。

 

「来ましたよ。予定よりかなり早いけど、到達まで30分ってところだ。数は五万強。複数の魔物の混成だ」

 

 魔物の数を聞き、更に増加していることに顔を青ざめさせる愛子達。不安そうに顔を見合わせる彼女達に、入間は壁の上に飛び上がりながら肩越しに不敵な笑みを見せた。

 

「そんな顔する必要ありませんよ、先生。虫が数万増えたくらい何の問題もない。予定通り、万一に備えて戦える者は壁際で待機させてくださいな。まぁ、出番はないと思うけど」

「わかりました……君をここに立たせた先生が言う事ではないかもしれませんが……どうか無事で……」

 

 愛子はそう言うと、町中に知らせを運ぶべく駆け戻っていった。

 優花達も愛子に続いて踵を返し駆け戻ろうとするが、数歩進んだところで優花が立ち止まった。何かに迷う様に難しい表情をして俯き気味に突っ立っている。

 優花が一緒に来ていない事に気が付いた奈々が淳史達にも声を掛けて立ち止まった。そして訝しそうな表情をしながら、優花の名前を呼ぶ。

 しかし優花は奈々達の呼び掛けに応じず、何かを振り切る様にグッと表情に力を入れると顔を上げ、踵を返し駆けだした。そう、魔物の群れの方へ視線を向けている入間の方へ。

 

「あ、あのさ!鈴木!」

 

 少し言葉に詰まりながらも大きな声で入間に呼びかける優花。入間は「……何?」と呟きながら肩越しに優花へ視線を向けた。ユエ達も、何事かと振り返っている。

 無言で用件を問う入間の視線に、優花は少なからずたじろぐ様な様子を見せたが……直後には、何故かキッと眦を吊り上げて入間を睨む様な眼差しで、

 

「あ、ありがとね!あの時助けてくれて!」

「……はぁ?」

 

 と言った。なんだか表情といい口調といい声量といい、傍から見ると喧嘩を売っている様にも見えるのだが、その言葉から分かる通り優花渾身のお礼だったらしい。

 見に覚えのない話に一瞬訝しげな表情をする入間だが、ああそういえばあの時こんな奴いたっけ…と奈落に落ちる前の出来事を思い出した。

 

「あの、えっと、その……それで……無駄にしないから!鈴木にとってはどうでもいい事かもしれないけど、それでも無駄にしないから!」

 

 更に優花はそう叫んだ。見れば、少し離れた場所にいて優花の言葉を聞いていた淳史達も、入間を真っ直ぐに見ながら深く頷いている。優花と気持ちは同じだという事だろう。

 

 その言葉を聞いた入間は外壁から飛び降り、ツカツカと優花に歩み寄り、目前で止まる。それに動揺する優花だったが……

 

「──少しでも僕を不愉快にさせたら殺すって言ったよね?そんな死にたいの?」

「ウッ!!?」

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 突然、入間が彼女の胸ぐらを掴みんで自分の近くに引き寄せた。突然の事に優花は苦しそうに呻き、他の五人もギョッとなって入間を止めようとするが、直後に入間から発せられた激しい威圧感に、優花も淳史達も全員顔を青くして震え上がった。

 入間は乱暴に優花の胸ぐらを離して尻餅をつかせると、殺意すら籠っている目で睨んで優花達を震え上がらせると、口を開いた。

 

「大体君達、何で魔物の大群に背を向けるのさ?君達は“神の使徒”として、人間を守る義務がある筈だ。なのに、何で戦争反対派の僕が戦争して、あのバカルテットに賛同して戦争に志願した君達が守られる側なのさ?立場が逆じゃないの?」

「そ、それは……」

 

 侮蔑の含んだ入間の言葉に、優花は言葉をつまらせた。

 入間の言う通り、優花達は召喚されたの日に“神の使徒”として戦争に志願したのだから、本来入間達バビルが立っている場所は優花達が立たなくてはならないのだ。

 そもそも、自分から人間族を守るために戦争に志願した優花達には、最後まで戦争する事を反対していた入間と愛子に助けて貰う資格などないのだ。戦うのが怖くなった、死にたくないなんて言い訳は通用しない。戦争で殉職するなんてよくある話であるし、この世界の連中の為に命を懸ける事を決めたのは他ならぬ優花達なのだ。

 

「そもそも、僕は君達を最初から助けたつもりなんて無いし、仲良くしたいなんてこれっぽっちも思っていない。今まで好き放題僕の事を“無能”と蔑んで忌み嫌い続けて、その上あの誤爆を保身の為に僕の自業自得で片付けた癖に、今更友好関係を結べるとでも思ってるの?」

 

 元々、愛子を含めて優花達は入間とは赤の他人以外の何者でもない。勿論、彼女達の中では入間はクラスメイトであるという記憶が刷り込まれているのは分かっているので、そこにはキチンと配慮はする。だが愛子は兎も角、優花達はあのストーカー女に付き纏われたなんてふざけた理由で自分を蔑んでいたのだ、好感を持てる筈がない。更には、例の誤爆事件を、人殺しが当たり前である戦争に志願しておきながら、自分達が人殺しになりたくなかったから死人に口なしと入間の自業自得にした。

 これだけの事をしたと言うのに、再開してみれば「俺、お前に何かした?」とでも言わんばかりに上から目線で接してきた彼女達には何度殺意を抱いたか分からない。殺さなかった自分の自制心を自画自賛したい程だ。

 

「大方、さっきの言葉も保身のためでしょ?もしも僕と敵対した時、ここで少しでも好感度上げておけば殺されないと思ったから、そんな所かな?」

「ッ!!?それは…それだけは違ッ」

「何が違うのさ?僕が君達を結果的に生かした事を無駄にしないとか言いながら無駄にしまくってるんだけど?愛ちゃん護衛隊?君達はいつ先生を護衛してたんだ?僕の事を散々“能無し(無能)”って蔑んでたみたいだけど、僕からしたら君達の方がよっぽど“役立たず(無能)”だよ」

 

 必死に取り繕おうとする優花の言葉を一蹴し、入間は冷酷に吐き捨てた。

 

 護衛とは、ただ対象と一緒に行動してれば良いと言う単純な仕事ではない。護衛対象を守るために命を懸けて、それこそ自ら肉壁になる覚悟が必要な危険な仕事だ。ましてや愛子は国の重要人物、命を狙う輩がいてもおかしくないのだから、並の護衛よりも覚悟が必要だと言えるだろう。

 だが、優花達からはそんな覚悟も見えなければ、護衛の仕事を全うしている様子もなかった。何せ再開して直後の入間の軽~い威嚇に怯えて腰を抜かし、ティオとの戦いの時も吠えられた程度で戦意喪失し、今は魔物の大群が迫っていると言うのに率先して戦いもせずに愛子と一緒に安全圏で傍観している始末だ。

 

「最後に言っておく。僕が今まで君達を殺さなかったのは、単純に君達を殺したら先生が悲しむからだ。でも僕にも我慢の限界はある。なんなら、今ここで君達を裸にひん剥いて今向かって来てる魔物の撒き餌にするぞ?それが嫌なら、今すぐどっか行け。存在自体が不愉快だ」

 

 そう言うと、入間は最早優花達など見向きもせず、再び外壁の上に飛び上がった。

 

 優花達は入間の余りにも冷たい言葉に呆然と立ちつくしていたが、やがて微かに魔物達の足音が聞こえ始めてくると、慌てたように踵を返して愛子の後を追いかけた。

 優花は、立ち去る途中で足を止めて外壁に腰掛ける入間の方を振り返ると、そこには先程までの怒気が嘘のように消え失せ、仲間達と笑顔で話し合っている入間の姿を見て、優花はズキリと痛む胸を抑えながら再び走り出した。

 

 ウィルは、ティオに何かを語りかけると、入間に頭を下げて愛子達を追いかけていった。疑問顔を向ける入間にティオが苦笑いしながら答える。

 

「今回の出来事を妾が力を尽くして見事乗り切ったのなら、冒険者達の事、少なくともウィル坊は許すという話じゃ……そういうわけで助太刀させてもらうからの。何、魔力なら大分回復しておるし竜化せんでも妾の炎と風は中々のものじゃぞ?」

 

 竜人族は教会などから半端者と呼ばれるように、亜人族に分類されながらも魔物と同様に魔力を直接操ることができる。その為、天才であるユエのように全属性無詠唱無魔法陣というわけにはいかないが、適性のある属性に関しては、ユエと同様に無詠唱で行使できるらしい。

 自己主張の激しい胸を殊更強調しながら胸を張るティオに、入間は無言で魔晶石の指輪を投げてよこした。疑問顔のティオだったが、それが神結晶を加工した魔力タンクと理解すると大きく目を見開き、入間に震える声と潤む瞳を向けた。

 

「ご主人様……戦いの前にプロポーズとは……妾、もちろん、返事は……」

「んな訳ないでしょ。貸してあげるから、せいぜい砲台の役目を果たせって意味だよ。あとで絶対に返せ。っていうか今の、ユエとボケが被ってなかった?」

「……なるほど、これが黒歴史」

 

 思考パターンが変態と同じであることに嫌そうな顔で肩を落とすユエ。入間の否定を華麗にスルーして指輪をニヨニヨしながら眺めるティオを極力無視していると、遂に、肉眼でも魔物の大群を捉えることができるようになった。“壁際”に続々と弓や魔法陣を携えた者達が集まってくる。大地が地響きを伝え始め、遠くに砂埃と魔物の咆哮が聞こえ始めると、そこかしこで神に祈りを捧げる者や、今にも死にそうな顔で生唾を飲み込む者が増え始めた。

 

 だが、バビル一行は何も感じていなかった。『量より質』という言葉があるように、例え数が多くても個々の強さは入間達と天と地では足りない程の開きがあるのだ。

 入間はジクウドライバーを腰に巻き、楕円形のウォッチ──“ジオウⅡライドウォッチ”を取り出す。アメリはジクウドライバー、シアはゲーマドライバー、アスモデウスは黒と黄緑で彩られたドライバー──“ビヨンドライバー”を腰に巻く。それに続き、ユエとミレディがドライバーを出現させた。

 

 

ジオウ!(ツー)

 

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

 

ゲイツ!

 

 

マイティアクションエーックス!

 

 

アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!

 

 

ウォズ! アクション!

 

 

 入間は起動させたジオウⅡウォッチの側面のダイヤル“スプリットリューザー”を動かし、ピクトウィンドウをスライドすることで金のD'9サイドと銀のD'3サイドに分割され、ジクウドライバーの左右のスロットにセットする。

 背後に2つの時計のエンブレムが出現し、入間は変身の構えをとる。

 

 ユエはウィザードライバーを操作して手の向きを変え、フレイムウィザードリングのカバーを下ろして仮面の形に変える。

 

 アメリはゲイツウォッチをドライバーにセットして拳でロックを解除すると、背後にデジタル時計のエンブレムが出現し、アメリは両腕を交差させて抱えるようにドライバーを手に持った。

 

 シアはマイティアクションXガシャットを起動させ、背後のモニターからピンク色の光が展開されると同時に周りに茶色の四角いブロックが出現し、右手に持っているガシャットを回転させて左手に持ち替えた。

 

 ミレディは眼魂のスイッチを押し、ゴーストドライバーのカバーを開いて眼魂をセットしてカバーを閉じると、ベルトからオレゴーストがミレディの周囲を躍り回る。

 

 アスモデウスは、右手に持った入間やアメリの物とは少し形状が異なるウォッチ──“ウォズミライドウォッチ”を起動させ、腰に巻いた“ビヨンドライバー”にセットし、ウォズミライドウォッチのボタンを押してそのカバーを開くと、右腕を大きく一周させる。

 

 そして、六人は同時にあの言葉を叫んだ。

 

「「「「「「(大)変身ッ!」」」」」」

 

 

ライダータイム!

 

仮面ライダー!ライダー!

ジオウ・ジオウ・ジオウ!(ツー)ッ!!

 

 

 ドライバーを回転させた入間はマゼンタの光に包まれ、『ライダー』の文字が仮面に張り付く。

 頭部の針やバンドなどの時計のモチーフが2つ分になっており、肩部や首回りに金色が追加されている。

 顔の時計の針が反転した2つの10時(10時と2時)の姿をした【仮面ライダージオウ(ツー)へと変身した入間は、“ジカンギレード”と“サイキョーギレード”を装備した。

 

 

フレイム!プリーズッ!

 

ヒー!ヒー!ヒーヒーヒィー!

 

 

 ユエはベルトに翳した腕を横に伸ばすと、腕の先に現れた魔法陣がユエの身体を通過すると、ユエは仮面ライダーウィザードに変身した。

 

 

ライダータイム!

 

仮面ライダー!ゲイツ!!

 

 

 アメリはドライバーを回転させたと同時に赤い光に包まれ、『らいだー』の文字が仮面に張り付き、仮面ライダーゲイツへと変身した。

 

 

ガシャットッ!ガッチャーンッ!

 

レベルアーップ!

 

マイティジャーンプ!マイティキーック!マイティマイティアクション!エーックス!

 

 

 シアはガシャットをベルトに装填してレバーを開くと、ベルトから放射されたエフェクトがシアの身体を通過し、シアは仮面ライダーエグゼイドへと変身を遂げた。

 

 

カイガン!オレ!

 

レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!

 

 

 ゴーストドライバーのレバーを引き押ししたミレディの体が光に包まれてトランジェント体に変身し、オレゴーストが被さったことで、ミレディは仮面ライダーゴーストへの変身が完了する。

 

 

投影!フューチャータイム!

 

スゴイ!ジダイ!ミライ!仮面ライダーウォズ!ウォズ!

 

 

 アスモデウスは右手でビヨンドライバーのハンドルを前に向けることでミライドウォッチからデータが「投影」され、シアンとグリーンの光がアスモデウスを包む。

 

 アスモデウスは、スマートウォッチをモチーフとした銀色と黄緑色のボディにジオウと同じでカタカナの『ライダー』だが独特の形状をしている複眼の【仮面ライダーウォズ】に変身した。

 

 姿を変えたジオウⅡは、変身の光景と音声によって全員の視線が自分に集まったことを確認すると、すぅと息を吸い天まで届けと言わんばかりに声を張り上げた。

 

「聞け!ウルの町の勇敢なる者達よ!私達の勝利は既に確定している!」

 

 いきなり何を言い出すのだと、隣り合う者同士で顔を見合わせる住人達。ジオウⅡは、彼等の混乱を尻目に言葉を続ける。

 

「なぜなら、私達には女神が付いているからだ!そう、皆も知っている“豊穣の女神”愛子様だ!」

 

 その言葉に、皆が口々に愛子様?豊穣の女神様?とざわつき始めた。後方で人々の誘導を手伝っていた愛子がギョッとしたようにジオウⅡを見た。

 

「我らの傍に愛子様がいる限り、敗北はありえない!愛子様こそ!我ら人類の味方にして“豊穣”と“勝利”をもたらす、天が遣わした現人神である!私は、愛子様の剣にして盾、彼女の皆を守りたいという思いに応えやって来た!見よ!これが、愛子様により教え導かれた私の力である!」

 

 ジオウⅡはそう言うと、ジカンギレードのライドウォッチ装填スロットにギレードキャリバーをセットし、サイキョーギレードを上部に接続することで“サイキョージカンギレード”を完成させる。

 

 

サイキョーフィニッシュタイム!

 

 

 音声が鳴り響くと、サイキョージカンギレードの刀身が巨大な黄金の光に包まれて、ピンクで『ジオウサイキョウ』と書かれた黄金の光剣が形成された。町の人々が注目する中、些か先行しているプテラノドンモドキの魔物に狙いを定めたジオウⅡは、魔物達に向けてサイキョージカンギレードを横凪に振るう。

 

 

キングギリギリスラッシュ!!

 

 

 黄金に光輝く光刃が空を駆け抜け、数キロ離れた数十体のプテラノドンモドキを木っ端微塵に切り裂いて爆発させ、余波だけで周囲の数体の翼を粉砕して地へと堕とした。

 ジオウⅡはそのままサイキョージカンギレードを振るい、空の魔物を駆逐していく。そうしていると、慌てたように後方に下がろうとしている比較的巨大なプテラノドンモドキをその上に乗っている黒ローブごと余波で吹き飛ばした。黒ローブは宙に吹き飛ばされて、ジタバタしながら落ちていった。恐らくあれが清水だろう。

 このままぶった斬ってやろうと思ったジオウⅡだが、これから自分達が大暴れするのだから、ここで優先して殺さずとも直ぐに死ぬだろうと思い、深追いはしなかった。

 

 空の魔物を駆逐し終わったジオウⅡは、悠然と振り返った。そこには、唖然として口を開きっぱなしにしている人々の姿があった。

 

「愛子様、万歳!」

 

 ジオウⅡが、最後の締めに愛子を讃える言葉を張り上げた。すると、次の瞬間……

 

「「「「「「愛子様、万歳!愛子様、万歳!愛子様、万歳!愛子様、万歳!」」」」」」

「「「「「「女神様、万歳!女神様、万歳!女神様、万歳!女神様、万歳!」」」」」」

 

 ウルの町に、今までの様な二つ名としてではない、本当の女神が誕生した。どうやら、不安や恐怖も吹き飛んだようで、町の人々は皆一様に、希望に目を輝かせ愛子を女神として讃える雄叫びを上げた。遠くで愛子が顔を真っ赤にしてぷるぷると震えている。その瞳は真っ直ぐにジオウⅡに向けられており、小さな口が「ど・う・い・う・こ・と・で・す・か!」と動いている。

 ジオウⅡはしれっとして再び魔物の大群に向き直った。入間がここまで愛子を前面に押し出したのは、3つの理由がある。

 

 一つは、この先、入間の活躍により教会や国が動いたとき、彼等が入間に害をなそうとすれば、愛子は確実に彼等とぶつかるだろうが、その時、“豊穣の女神”の発言権は強い方がいいというものだ。

 町の危急を()()()の力で乗り切ったとなれば、市井の人々は勝手に噂を広め、“豊穣の女神”の名はますます人々の心を掴むはずだ。その時は、単に国にとって有用な人材というだけでなく、人々自身が支持する女神として、国や教会も下手な手出しはしにくくなり、より強い発言権を得ることになるだろう。

 二つ目は単純に、大きな力を見せても人々に恐怖や敵意を持たれにくくするためだ。一個人が振るう力であっても、それが自分達の支持する女神様のもたらしたものと思えば、不思議と恐怖は安心に、敵意は好意に変わるものである。教会などから追われるようになっても、協力的な人がいる……といいなというものだ。

 三つ目としては単純に、自分を矢面に立たせたのだから諸共に矢面に立って見せろという意思表示である。

 

 もっとも一番の理由は、単に町の住民にパニックになって下手なことをされたくなかっただけなので、咄嗟に思いついた程度の手である。後で愛子に色々言われそうだが、愛子自身にもメリットはあるし、彼女自身の選択の結果でもあるので大目に見てもらうか……事が終わればトンズラすればいい。

 

 ジオウⅡは、背後から町の人々の魔物の咆哮にも負けない愛子コールと、愛子自身の突き刺さるような視線をヒシヒシと感じながら、サイキョウジカンギレードをジカンギレードとサイキョーギレードに分離させると、ティオに視線を向けた。

 

「ティオ、初撃は君に任せる。後は僕達が好きに暴れれば問題ない」

「承知したのじゃ」

 

 ジオウの言葉に頷いたティオは、突きだした両腕の先からは周囲の空気すら焦がしながら黒い極光が放った。あの竜化状態で放たれたブレスだ。どうやら人間形態でも放てるらしい。黒き炎は射線上の一切を刹那の間に消滅させ大群の後方にまで貫通した。ティオは、そのまま腕を水平に薙ぎ払っていき、それに合わせて真横へ移動する黒い砲撃は触れるものの一切を消滅させていく。

 砲撃が止んだ後には、抉れた大地以外何も残ってはいない。代わりに、その一撃で相当消耗したのだろう。ティオは肩で息をし体をフラつかせた。しかし、すぐさま指にはまった指輪に一つキスを落とすと再びスっと背筋を伸ばす。入間から受け取った魔晶石の指輪にストックされた魔力を取り出したのだ。ブレスの一撃によりティオが担当する範囲の魔物の先陣はあらかた消滅し、多少の余裕が出来たティオは魔力消費の比較的少ない魔法を行使する。

 

「吹き荒べ頂きの風 燃え盛れ紅蓮の奔流 “嵐焔風塵”」

 

 少しでも魔力消費を抑えるため、敢えて詠唱し集中力を高め、火炎の竜巻を発生させる。

 その規模は地球における竜巻の等級で表すならF4クラス。直径数十メートルの渦巻く炎が魔物の群へと爆進し、周囲の魔物達をまとめて巻き上げた。宙へと放り出され足掻くすべを持たない魔物達は、そのまま火炎に自ら飛び込むように巻き込まれ、紅蓮の竜巻から放り出された時にはただの灰燼に変わり果て灰色の雪のように舞い散るのだった。そのまま全てを灰燼と帰す竜巻は、存分に戦場を蹂躙していった。

 

「……よし、なんかイケる気がする!」

 

 そう言ってジオウⅡは外壁から飛び降りて、数を減らした魔物達に向かって突撃する。

 魔物達の攻撃も固有魔法も、ジオウⅡは持ち前の身体能力で僅かに身体をそらすだけで回避し、頃合いを見計らって、ジオウⅡはジカンギレードに“キバエンペラーフォームライドウォッチ”を装填し、サイキョーギレードのフェイスの文字を側面のスイッチ操作して『ジオウサイキョウー』に切り替える。

 

 

フィニッシュタイム!

 

エンペラーフォーム!ギリギリスラッシュ!

 

 

ジオウサイキョウー!覇王斬り!

 

 

「ハァッ!!」

 

 三日月の形をした紅の斬撃と、時計の基盤を模した虹色の斬撃が飛び、数千単位の魔物を一撃で斬殺し、その時に起きた爆発の余波で数百体の魔物が絶命する。

 それと同時に、他のライダー達も魔物達を殲滅するための行動に移った。

 

 

コネクト!プリーズッ!

 

 

 ウィザードはコネクトの魔法を使い、出現させた赤い魔法陣から、二台のバイクを召喚した。

 

 1台は、銀と金を基調とし、頭部にはウィザードの顔を模したような意匠のウィザード専用バイク──“マシンウィンガー”が。

 もう1台は、全体的に黒いボディに、頭部にユニコーンを思わせるような意匠のゴースト専用バイク──“マシンゴーストライカー”が、魔法陣から現れた。

 ウィザードとゴーストはバイクに跨がり、エンジンをつける。

 

 ブォオオン!

 ブォンブォンブォオオンッ!!

 

「さー、行くよ~!ユエちゃん、ミレディさんに着いてきなさ~い!」

「……着いてくるのは貴女」

 

 ハイテンションにマシンゴーストライカーを発進させるゴースト(ミレディ)に対抗するように、ウィザード(ユエ)もマシンウィンガーを発進させる。

 襲い来る魔物を、ウィザードとゴーストはバイクで轢き殺し、群れで連携して向かってくる魔物達は、二人が放つ重力魔法“禍天”によって押し潰され、瞬く間に地面の赤いシミとなる。

 そして、次の行動に移ったのはゴーストだ。

 

「おいで!キャプテ~ン、ゴースト!」

 

 ゴーストの言葉に反応するように、空中に巨大なゴーストの紋章が現れると、そこから両腕が付いた幽霊船──“キャプテンゴースト”が出現し、キャプテンゴーストは船首についた主砲“セイリングキャノン”から、追尾機能を持ったエネルギー弾を発射し、次々と魔物を爆殺していく。

 すると、ゴーストは魔物を足場にして、マシンゴーストライカーをキャプテンゴーストの背後まで飛ばす。

 その時、キャプテンゴーストが変形を始め、重力に従って落下するマシンゴーストライカーと合体することで、キャプテンゴーストはイグアナ型巨大ユニット“イグアナゴーストライカー”に変形した。

 変形を終えたイグアナゴーストライカーは、その強靭な脚力を活かして魔物達に突撃し、鋭い爪と牙で切り裂いて行く。やがて、ゴーストはイグアナゴーストライカーから空に跳び、イグアナゴーストライカーは長い舌を伸ばして魔物の一体を絡めとり、首を振るってその魔物を魔物の群れに投擲し、魔物の群れをボーリングのように吹っ飛ばした。

 

「行っくよ~!」

 

 空中で滞空してイグアナゴーストライカーに指示を出すと、ゴーストドライバーのレバーを4回引く。

 

 

ダイカイガン!オオメダマ!

 

 

「てりゃああああああ!!」

 

 ゴーストドライバーから巨大なゴーストアイコン型エネルギー体を生成し、ゴーストはそれを魔物達に向かって蹴り飛ばした。

 エネルギー体が魔物達に直撃して大爆発を起こし、100体近い魔物を駆逐していった。その間にもイグアナゴーストライカーはゴーストと別行動をして、次々と魔物の軍勢を蹴散らしていった。

 

 マシンウィンガーを走らせながら魔物を圧殺しているウィザードは、そんなゴーストの様子をチラリと見ると、マシンウィンガーに乗ったまま指輪を付け替える。

 

「……来い、ドラゴン」

 

 

ドラゴライズッ!プリーズッ!

 

 

 ウィザードがその魔法を発動させると、空中に現れた巨大な魔法陣から金と銀で彩られたメカニックな風貌の(ドラゴン)──【ウィザードラゴン】が現れた。

 本来は、“アンダーワールド”と呼ばれる世界でしか存在出来ないが、魔法がありふれたこの世界ならば、ウィザードラゴンを呼び出すことは可能なのだ。

 

 ウィザードは暫く空を飛びながら火炎弾を吐いて魔物達を狩るドラゴンと並走し、ゴーストと同じ様にバイクを持ち上げて空中に飛ぶ。すると、マシンウィンガーが空中で変形を始めてウィザードラゴンの背中に合体し、マシンウィンガーはウィザードラゴンの巨大な羽となった。

 ウィザードラゴン改め【ウィンガーウィザードラゴン】は雄叫びをあげ、口から火炎を放って魔物を焼き殺し、鋭い爪で直接魔物を引き裂いたり爪で砕いた岩石を飛ばして魔物達を下敷きにする。その背中の上では、ハリケーンスタイルに変身したウィザードがガンモードのウィザーソードガンから風を纏った高速の弾丸を放ち、直撃した魔物達は頭を破裂させながら絶命していった。

 

「ひょえ~、ユエさんもミレディも半端無いですね~…。それでは、私達も行きましょう!」

「アスモデウス、どちらが魔物を多く狩れるか、勝負してみるか?」

「ほぉ、それは面白そうですね。会長」

 

 

クローズマグマ!

 

 

ドラゴナイトハンター!ゼーット!

 

 

シノビ! アクション!

 

 

 ゲイツは“クローズマグマライドウォッチ”、シアは“ドラゴナイトハンターZガシャット”、ウォズは“シノビミライドウォッチ”をベルトに装填し、パワーアップを果たすと同時に外壁から飛び降り、魔物達の殲滅に向かった。

 

 

アーマータイム!

 

極熱筋肉!マグマーッ!

 

 

 ゲイツは【仮面ライダークローズマグマ】を模したメタリックブラックにオレンジの配色に仮面に『まぐま』と書かれた【クローズマグマアーマー】に変身すると、マグマを纏った拳で襲い来る魔物達を殴り、投げ、再び殴るの連続攻撃を喰らわせて行き、マグマを操るクローズマグマの能力により、魔物達は見るも無惨な焼死体となっていく。

 知能の低さ故か洗脳された影響なのか、魔物達は数に物を言わせてゲイツに襲い掛かろうとするのを見て、ゲイツはウォッチのボタンを押してベルトを回転させる。

 

 

フィニッシュタイム!

 

ボルケニックタイムバースト!

 

 

 全身に紅炎を纏ったゲイツは、そのまま魔物達に紅炎を纏った拳のラッシュを打ち込み、ラッシュと共に龍の形をしたマグマ弾を連射して、周囲の魔物を千単位で消滅させていった。

 

「大・大・大・大・大変身!ですぅ!」

 

 

ガシャットッ!ガッチャーンッ!

 

レベルアーップ!

 

ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナーイト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!ゼーット!

 

 

 出現したハンターゲーマーを纏い【ハンターアクションゲーマーレベル5】へと変身したエグゼイドは、背面の翼“ゲイルドラゴウイング”を展開して空を飛ぶと、空中から左腕の電磁キャノンから圧縮金属を放ち、射線状の魔物を纏めて撃破すると、ドラゴナイトハンターガシャットをキメワザスロットホルダーに装填し、“ドラゴナイトファング”、“ドラゴナイトブレード”、“ドラゴナイトガン”にエネルギーが迸る。

 

 

ガシャットッ!キメワザ!

 

DIRAGO KNIGHT CRITICAL STRIKE!

 

 

 音声と同時にピンク・青・黄色の三色の光線を放ち、それが一つとなったレーザーが炸裂し、数千単位の魔物達はチリも残さずに消え失せた。

 

 

投影!フューチャータイム!

 

誰じゃ?俺じゃ?忍者! 

フューチャーリングシノビ!シノビ!

 

 

 【仮面ライダーシノビ】を模した姿に、複眼には「シノビ」とカタカナで描かれている。

 アンテナ・胸部装甲・両肩の紋章には手裏剣の意匠を持ち、腹部から下半身にかけて紫色の布らしき特殊装備が存在し、首元には紫色のマフラーを巻いている【フューチャーリングシノビ】に変身したウォズは、専用武器“ジカンデスピア・カマモード”を装備すると、なんと影の中に潜ったのだ。

 影に潜ったウォズは、そのまま知性のない魔物達に気付かれぬまま背後を取り、シノビの機動力とスピードを活かして瞬く間に魔物達を切り捨てると、ウォズはドライバーを操作して必殺技を発動する。

 

 

ビヨンドザタイム!

 

忍法・時間縛りの術!

 

 

「“分け身の術”!」

 

 音声と共に、影から飛び出したウォズは空中で無数の分身を出現させると、分身達と共にカマモードのジカンデスピアを振るい無数の紫色の斬撃を飛ばす。紫の斬撃は全て魔物達を何十体も切り裂いていき、数千単位の魔物を駆逐していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして圧倒的な力で蹂躙され、戦闘を開始してから10分もしないうちに6万に近い魔物達の数は既に数百匹にまで減らされていた。

 一部の魔物達は、圧倒的な強者達を前にした事で洗脳が解けたのか、大多数の魔物達は既にウルの町に背を向けて逃走を始めており、実質的にウルの町へ向かっているのは未だに洗脳が解けない魔物の群れのリーダーとその手下達だけだが、それでも既に数は500を下回っており、全滅するのは時間の問題でしかなかった。

 しかし、

 

「ッ!皆、一旦退くんだ!!」

「逃げてくださいッ!!」

「「「「ッ!?」」」」

 

 突如、ジオウⅡとエグゼイドが、仮面の下で血相を変えて残りの魔物達にトドメをさそうとする仲間達に呼び掛けた。それに困惑する仲間達だが、二人の言うことならばと素直に従って一旦退避しようと動く。

 

ズドォオオオンッ!!

 

ドォン!ドンドンドォオオオンッ!

 

「うわぁ!!」

「キャッ!」

「グアッ!!」

「ひょわあっ!?」

「あぁ!?」

「ぬぅっ!?」

 

 その瞬間、北の方角から巨大な何かが凄まじいスピードで突撃してきて、生き残りを魔物郡を数百体踏み潰したかと思うと、その存在がジオウⅡ達に向けて無数の巨大な炎弾を放ったのだ。

 まるで流星群のように降り注ぐ炎弾が地面に墜落する度に爆発を起こし、ジオウⅡ達は思わず吹き飛ばされてしまう。そしてウィンガーウィザードラゴンとイグアナゴーストライカーにも炎弾が直撃し、ウィザードラゴンとイグアナゴーストライカーは消失し、ウィザードとゴーストも地面に落下しながら地面を転がった。

 

「無事か!?ご主人様よ!」

 

 そう叫びながらジオウⅡ達の元にに駆け寄ったのはティオだ。

 

「…ご主人様なんて呼び方を許した覚えはないけど、問題ないよ……」

「そ、そうか。してご主人様よ……。あれは一体……」

 

 ティオは現れたその巨大な存在を見上げ、戦慄の表情を浮かべた。ティオは500年以上を生きる竜人であり、ユエやミレディと違って迷宮の中で永い時を過ごしていた訳ではないので、この世界に関する知識はバビルのメンバーよりも深い。だが、目の前の圧倒的な巨体を誇る化物など、彼女の知識にはなかった。

 

 その化物の姿は、例えるなら炎に包まれたティラノサウルスの化石だ。だが全長はティラノサウルスを遥かに越えており、40mはあるだろう。更に頭部は落花生の殻のように裂けて内部に髑髏が納められたような禍々しい姿をしており、放たれる威圧感も奈落の魔物の比ではない。

 その正体は、かつて地下帝国バダンを従える存在の真の姿であり、【列車戦隊トッキュウジャー】と【キョウリュウレッド】【仮面ライダー電王】達に倒された怪物、骸骨恐竜であった。

 

『グゥオオオオオオオオッ!!!』

 

 骸骨恐竜は、知性を感じられない禍々しい雄叫びをあげると、頭部を花弁のように開けて四方八方にエネルギー火球を放った。

 

「にょわーーーっ!」

「はわ、はわわわわ!」

 

 再び降り注ぐ炎弾の流星群。一発一発が最上級魔法の倍以上の火力を備えており、地面に着弾する度に爆発を起こす。流石のバビルの面々もこれを無防備に喰らえば大ダメージは免れないと、慌てて回避する。

 すると骸骨恐竜の動きが止まったかと思うと、骸骨の眼の部分に禍々しいエネルギーが凝縮されていく。それに本能的な危険を感じ取ったジオウⅡは咄嗟に光線を回避しようと足を動かそうとするが、後方の【ウルの町】に視線を向けると、足を止めた。

 

「(ッ!僕達が避けたら町が…!)皆、防御に専念するんだ!」

「んっ、任せて!」

「分かった!」

「はいですぅ!」

「OK!」

「はい!」

「しょ、承知したのじゃ!」

 

 ここで避けるのは簡単だが、それだと空振りになった光線がウルの町に誤爆してしまう。それを察したウィザード達も、回避ではなく骸骨恐竜の攻撃を防ぐ為に動く。

 その間にも骸骨恐竜はエネルギーの充填を終え、3つの眼の窪みから禍々しい極太の光線を放った。

 

「「“保護繭(グラン・ココン)”!!」」

「“炎の滝盾(フレイム・ウォール)”!!」

 

 

ディフェーンド!プリーズ!

 

 

 ジオウⅡとゲイツは魔術を発動させ、繭の形をした結界を張り、ウォズは地面から炎を燃え上がらせ、ウィザードは巨大な赤い魔法陣の障壁を出現させ、ゴーストとティオも“聖絶”を発動させ、骸骨恐竜の怪光線の進行を止めた。

 かつてガブティラやトッキュウオーすら退けた骸骨恐竜のその力は並ではなく、人類最高レベルの実力を誇る彼等でも障壁を張って防ぐのが精一杯だ。勿論、ジオウ達が本気の状態ならばこれを防いで反撃するなど容易いかもしれないが、ジオウⅡ達もまさかここで骸骨恐竜が乱入してくるとは思わず、各々の最強フォームへの変身が出来なかったのだ。

 

「いい加減にしやがれですぅ!」

 

 そこで、敵の好きにさせてたまるかとエグゼイドがゲイルドラゴウイングを展開し、右腕の電磁ブレードから光刃を骸骨恐竜の頭に向けて放った。

 それに気付いた骸骨恐竜は怪光線を止め、開いた頭蓋骨を閉じる。その直後にエグゼイドの光刃が骸骨恐竜の頭蓋骨に直撃するが、エグゼイドの攻撃は一ミリもダメージを与えることが出来なかった。

 

「そんな…ッ!?」

『ガァアアアアアアアッ!!!』

「きゃあッ!?」

「シア!!」

 

 そして骸骨恐竜は身体を回転させ、長い尾で空中のエグゼイドを叩き落とし、地面へ墜落したエグゼイドはレベル2に戻ってしまった。

 

『オォオオオオオオオッ!!!』

 

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

 

 ジオウⅡ達とティオがエグゼイドの元に集まった瞬間、骸骨恐竜は禍々しい雄叫びを上げ、再び無数の怨念のエネルギーが込められた火炎弾を放ち、火炎弾は全てジオウⅡ達にピンポイントに降り注いだ。

 

 

ドゴォオオオオオオオオオンッ!!

 

 

「鈴木君ッ!!」

 

 再び降り注ぐ炎弾の流星群が爆発を起こし、爆炎と砂塵がジオウⅡ達を包み込んだ。外壁の向こう、ウルの町から、その光景を見た愛子が入間の名を叫んだ。

 

「……これでライダーは始末した。後は“豊穣の女神”とウル町で任務は終わりだ…」

 

 その光景を遠目で見ていた怪人がいた。

 怪人は黒いローブを着た人物を引き摺りながら歩きだし、銀色のオーロラの向こうに消えていく。

 

 ウルの町に、魔の手が迫る。

 

 

 

 

 




・怪人紹介

【骸骨恐竜】
『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』に登場した、バダン帝国を従えるバダン総統の真の姿。
今回現れた個体にはバダン総統の意識は存在せず、姿と能力が同じなだけの別個体。



優花のお礼に対する入間くんの対応ですが、作者としては原作を読んでいて今まで無能と蔑んでいた事や誤爆事件を保身のためにハジメの自業自得にしていたのだから先ずは謝罪すべきなのに、あのシーンを読んで「順序が違うだろ」と言いたくなり、あの対応となりました。優花ファンの方は申し訳ございません。
本作で優花は入間のヒロインとなっているので、救済はする予定です。

次回はオリジナル展開となります。愛子と優花達、そしてウルの町の運命や何処に…?

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