悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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タイトルは仮面ライダーWで『少女…A/パパは仮面ライダー』のオマージュです。


38話 幼女…M/パパは悪魔で仮面ライダー

 アメリから連絡をもらった入間とユエとミレディの三人は、情報の場所に急行していた。ミュウがオークションに出される以上、命の心配はないだろうが精神的な負担は相当なもののはずだ。奪還は早いに越したことはない。

 

 目的の場所に到着すると、その入口には二人の黒服に身を包んだ巨漢が待ち構えていた。入間は騒ぎを起こしてまたミュウが移送されては堪らないと思い、裏路地に移動すると“変化”を使って地下へと侵入した。

 ユエとミレディと共に、気配を消して素早く移動していく。

 

 やがて、地下深くに無数の牢獄を見つけた。入口に監視が一人おり居眠りをしている。その監視の前を素通りして行くと、中には、人間の子供達が十人ほどいて、冷たい石畳の上で身を寄せ合って蹲っていた。十中八九、今日のオークションで売りに出される子供達だろう。

 基本的に、人間族のほとんどは聖教教会の信者であることから、そのような人間を奴隷や売り物にすることは禁じられている。人間族でもそのような売買の対象となるのは犯罪者だけだ。彼等は神を裏切った者として奴隷扱いや売り物とすることが許されるのである。そして、眼前で震えている子供達がそろってそのような境遇に落とされべき犯罪者とは到底思えない。そもそも、正規の手続きで奴隷にされる人間は表のオークションに出されるのだ。ここにいる時点で、違法に捕らえられ、売り物にされていることは確定だろう。

 

 入間は、突然入ってきた人影に怯える子供達と鉄格子越しに屈んで視線を合わせると、静かな声音で尋ねた。

 

「ここに、海人族の女の子はこなかった?」

 

 てっきり自分達の順番だと怯えていた子供達は、予想外の質問に戸惑ったように顔を見合わせる。牢屋の中にはミュウの姿はなかった。そのため、入間は他にも牢屋があるのか、それとも既に連れ出された後なのか、子供達に尋ねてみたのだ。

 

 しばらく沈黙していた子供達だが、入間の隣りにユエとミレディがしゃがみ込み優しげな瞳で「……大丈夫」と呟くと、少し安心したのか、一人の7~8歳くらいの少年がおずおずと入間の質問に答えた。

 

「えっと、海人族の子なら少し前に連れて行かれたよ……お兄さん達は誰なの?」

 

 やはり、既に連れて行かれたあとかと内心舌打ちした入間は、不安そうな少年に向かって簡潔に返した。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。君達を助けに来た」

「えっ!?助けてくれるの!」

 

 最初の方はよくわからなかったが、入間の言葉に驚愕と喜色を浮かべて、つい大声を出してしまう少年。その声は薄暗い地下牢によく響き渡った。慌てて口を両手で抑える少年だったが、監視にはばっちり聞こえていたようで「何騒いでんだ!」と目を覚ましてドタドタと地下牢に入ってきた。

 そして、入間達を見つけて、一瞬硬直するものの「てめぇら何者だ!」と叫びながら短剣を抜いて襲いかかる。それを見て、子供達は、刺されて倒れる三人の姿を幻視し悲鳴を上げた。

 

 だが、そんな事はありえない。

 入間は男の短剣を首を傾けるだけで避けると、男の顔面に鉄拳を御見舞いする。頭を破壊され、男は目玉や脳髄を撒き散らしながら絶命する。

 

「監視ならまず警笛鳴らすべきでしょ」

 

 呆れた表情でそんな事を言いながら文字通り監視を瞬殺した入間に、子供達は目を丸くして驚いている。そんな視線にもお構いなしに、入間は魔術で鉄格子を分解してしまう。子供達の目には、一瞬で鉄格子を消し去ってしまったように見えたため更に驚いてポカンと口を開いたまま硬直してしまった。

 

「ユエ、悪いけどこの子達を頼める?ミュウの迎えには僕とミレディが行く。僕達が行った方がミュウも喜ぶだろうし」

「ん……任せて」

「多分、もうすぐ保安署の連中も駆けつけるよ。その人達に預ければ大丈夫だよ。イルワ支部長が色々手を回してくれるだろうし……細かい事はあの人に丸投げすればいっか」

 

 ユエが若干、同情するような眼差しで遠くを見た。それはギルド支部がある方角だった。実は、ここに来る前に、適当に捕まえた冒険者にイルワ宛の念話石を届けてもらい、事の次第をイルワに説明しておいたのだ。ステータスプレートの“金”はこういうとき非常に役に立つ。入間の色を見た瞬間の平冒険者のしゃちほこばった態度といったら……まるで日本人がハリウッドスターに街中で声を掛けられたようだった。敬礼までして快く頼みを聞いてくれたのだ。

 因みに、イルワの方から念話石を起動することは出来ないので、彼は一方的に入間から巨大裏組織と喧嘩しているという報告と事後処理もろもろ宜しくという話を聞かされ、執務室で真っ白になっていたりする。

 

 入間とミレディは再び、地下牢から魔術で上階への通路を作ると子供達をユエに任せてオークション会場へ急ごうとした。と、その時、先ほどの少年が二人を呼び止める。

 

「兄ちゃん!姉ちゃん!助けてくれてありがとう!あの子も絶対助けてやってくれよ!すっげー怯えてたんだ。俺、なんも出来なくて……」

 

 どうやら、この少年、亜人族とか関係なく、ミュウを励まそうとしていたらしい。自分も捕まっていたというのに中々根性のある少年だ。自分の無力に悔しそうに俯く少年の頭を、入間はわしゃわしゃと撫で回した。

 

「わっ、な、なに?」

「君、中々見所あるね。逆境に立たされても他人を思いやれるのは、君が強い男である証拠だよ。…その悔しさをバネにして、もっと強くなるんだよ」

 

 それだけ言うと、入間はさっさと踵を返して、ミレディと共に地下牢を出て行った。呆然と両手で撫でられた頭を抑えていた少年は、次の瞬間には目をキラキラさせて少し男らしい顔つきでグッと握り拳を握った。

 ユエはそんな少年に微笑ましげな眼差しを向けると、子供達を連れて地上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オークション会場は、一種の異様な雰囲気に包まれていた。

 

 会場の客は凡そ100程。その誰もが奇妙な仮面をつけており、物音一つ立てずにただ目当ての商品が出てくる旅に番号札を静かに上げるのだ。素性をバラしたくないが為に、声を出す事も躊躇われるのだろう。

 そんな細心の注意を払っている筈の彼等ですら、その商品が出てきた瞬間思わず驚愕の声を漏らした。

 

 出てきたのは2m四方の水槽に入れられた海人族の幼女ミュウだった。

 

 衣服は剥ぎ取られ裸で入れられており、水槽の隅で膝を抱えて縮こまっている。海人族は水中でも呼吸が出来るので、本物の海人族であると証明する為に入れられているのだろう。一度逃げ出したせいか、今度は手足に金属製の枷をはめられている。小さな手足には酷く痛々しい光景だ。

 

 多くの視線に晒され怯えるミュウを尻目に競りは進んでいく。もの凄い勢いで値段が上がっていく様だ。一度は人目に付いたというのに、彼等は海人族を買って隠し通せると思っているのだろうか。もしかすると、昼間の騒ぎをまだ知らないのかもしれない。

 

 ざわつく会場にますます縮こまるミュウは、その手に持っていた羽の耳飾りをギュッと握り締めた。それは、入間が師匠である【バルバドス・バチコ】からプレゼントされた、入間の大切な物だ。ミュウと別れる際、入間はミュウを宥めることに忙しくて保安署に連れて言っていた時に耳飾りが取られていたことに気付かず、ユエとミレディに指摘されて今ようやく気付いていたりする。

 

 その入間の耳飾りが、ミュウの小さな拠り所だった。

 母親と引き離され、辛く長い旅を強いられ、暗く澱んだ牢屋に入れられて、汚水に身を浸し、必死に逃げて、もうダメだと思ったその時、温かいものに包まれた。

 何だかいい匂いがすると目を覚ますと、目の前には青い衣服を纏った青い髪の青年がいる。驚いてジッと見つめていると、何故か逸らしてなるものかとでも言う様に相手も見つめ返してきた。ミュウも何だか意地になって同じ様に見つめ返していると、鼻腔を擽る美味しそうな匂いに気が逸れた。

 その後は聞かれるままに名前を答え、次に綺麗な青い光が迸ったかと思うと、温かいお湯に入れられ、金髪のお姉さんに体を丸洗いされた。温かなお風呂も優しく洗ってくれる感触もとても気持ちよくて、気がつけばミレディと名乗るお姉さんを“お姉ちゃん”と呼び完全に気を許していた。

 膝の上に抱っこされ、食べさせてもらった串焼きの美味しさを、ミュウはきっと一生忘れないだろう。夢中になってあ~んされるままに食べていると、いつの間にかいなくなっていた入間と名乗る少年が帰ってきた。

 少し警戒心が湧き上がったが、可愛らしい服を取り出すと丁寧に着せてくれて、温かい風を吹かせながら何度も髪を梳かれている内に気持ちよくなってすっかり警戒心も消えてしまった。

 

 だから、保安署という所に預けられてお別れしなければならないと聞かされた時には、とてもとても悲しかった。

 母親と引き離され、ずっと孤独と恐怖に耐えてきたミュウにとって、遠く離れた場所で出会った優しいお兄ちゃんとお姉ちゃんと離れ、再び一人になることは耐え難かったのだ。

 故に、ミュウは全力で抗議した。

 入間の特徴的な髪を引っ張ってやったし、頬を何度も叩いたし、耳に付けていた羽だって取ってやったのだ。「返して欲しくばミュウと一緒にいるがいい!」と。

 

 しかし、ミュウが一緒にいたかったお兄ちゃんとお姉ちゃんは、結局ミュウを置いて行ってしまった。

 

 ミュウは、身を縮こまらせながら考えた。

 

 やっぱり、痛いことしたから置いていかれたのだろうか?羽を取ったから怒らせてしまったのだろうか? 自分は、お兄ちゃんとお姉ちゃんに嫌われてしまったのだろうか?

 

 そう思うと、悲しくて悲しくて、ホロリと涙が出てくる。もう一度会えたら、痛くした事をゴメンなさいするから、羽も返すから、そうしたら今度こそ……どうか一緒にいて欲しい。

 

(お兄ちゃん……お姉ちゃん……)

 

 ミュウが心の中でそう呟いた時、不意に大きな音と共に水槽に衝撃が走った。「ひぅ!」と怯えた様に眉を八の字にして周囲を見渡すミュウ。すると、すぐ近くにタキシードを着て仮面をつけた男がしきりに何か怒鳴りつけながら水槽を蹴っている様だと気が付く。

 どうやら更に値段を釣り上げる為に泳ぐ姿でも客に見せたかったらしく、一向に動かないミュウに痺れを切らして水槽を蹴り飛ばしているらしい。

 

 しかしますます怯えるミュウは、寧ろ更に縮こまり動かなくなる。入間の耳飾りを握り締めたままギュウと体を縮めて、襲い来る衝撃音と水槽の揺れにひたすら耐える。

 

 フリートホーフの構成員の一人で裏オークションの司会をしているこの男は、余りに動かないミュウに、もしや病気なのではと疑われて値段を下げられるのを恐れて、係の人間に棒を持ってこさせた。それで直接突いて動かそうというのだろう。ざわつく客に焦りを浮かべて思わず悪態をつく。

 

「全く、辛気臭いガキですね。人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ。半端者の能無しの如きが!」

 

 そう言って、司会の男が脚立に登り上から棒をミュウ目掛けて突き降ろそうとした。その光景にミュウはギュウと目を瞑り、衝撃に備える。

 

 が、やってくる筈の衝撃の代わりに届いたのは……聞きたかった人の声だった。

 

 

 

 

「ならお前達は吐瀉物まみれの屑がお似合いだ」

 

 

 

 

 次の瞬間、天井より舞い降りた人影が司会の男の頭を踏みつけると、そのまま脚立ごと猛烈な勢いで床に押し潰した。ビシャアア!と司会の男から破裂した様に血が飛び散る。正に圧殺という有様だった。

 

 衝撃的な登場をした人影──入間は、潰れて一瞬で絶命した男の事など目もくれず、水槽を殴りつけた。バリンッ!という破砕音と共に水槽が壊され中の水が流れ出す。

 

「ひゃう!」

 

 流れの勢いで、ミュウも外へと放り出された。思わず悲鳴を上げるミュウだったが、直後ふわりと温かいものに受け止められて瞑っていた目を恐る恐る開ける。

 そこには会いたいと思っていた人が、声が聞こえた瞬間どうしようもなく期待し思い浮かべた人が……確かにいた。自分を抱きとめてくれていた。ミュウは目をパチクリとし、初めて会った時の様にジーっと入間を見つめる。

 

「久し振り……でもないか」

 

 確りとミュウの目を見てそんな事を言う入間に、ミュウはやはりジーっと見つめたまま、ポツリと囁く様に尋ねる。

 

「……お兄ちゃん?」

「お兄ちゃんだよ。ミュウに会いたくなって来ちゃったよ…。よく我慢したね、君は強い子だ」

 

 入間が微笑みながらそう返すと、ミュウはまん丸の瞳をジワッと潤ませる。

 そして……

 

「お兄ちゃん!!」

 

 入間の首元にギュウ~ッと抱きついてひっぐひっぐと嗚咽を漏らし始めた。入間は穏やかな表情でミュウの背中をポンポンと叩くと、手早く毛布でくるんでやった。

 

 すると、再会した二人に水を差す様にドタドタと黒服を着た男達が入間とミュウを取り囲んだ。客席は、どうせ逃げられる筈がないとでも思っているのか、ざわついてはいるものの未だ逃げ出す様子は無い。

 

「おいクソガキ、フリートホーフに手を出すとは相当頭が悪い様だな。その商品を置いていくなら、苦しまずに殺してやるぞ?」

 

 既にフリートホーフの本拠地が壊滅していることなど知りもしない二十人近くの屈強そうな男に囲まれて、ミュウは首元から顔を離し不安そうに入間を見上げた。

 

「お兄ちゃん……」

「心配したくていいよ、ミュウ。この悪~い人達はお兄ちゃんが懲らしめてあげるから、少し寝ててね」

 

 入間はミュウの耳元に顔を近づけてそう呟くと、ミュウの額に手を当てて“睡眠(スイーピー)”を掛けた。途端、ミュウは安心しきった様な寝顔で入間の肩に頭を預けた。

 

「てめぇ、何無視してんだ、アァ!?」

 

 完全に無視された形の黒服は額に青筋を浮かべて、商品に傷をつけるな!ガキは殺せ!と大声で命じた。

 

スパパパパパパパパンッ!!

 

 その瞬間、リーダー格と思われる黒服がサイコロステーキのように細切れになり、血と内臓を床に撒き散らした。

 

 誰もが「えっ?」と事態を理解できない様に目を丸くして血の池に沈む黒服を見つめる。

 

 その隙に、入間は更に手刀を振るい風の刃を飛ばす。誰もが何をされているのかわからず硬直している間に次々と黒服達は細切れにされていき、彼等が正気を取り戻す頃には12体のサイコロステーキのような死体が出来上がった。

 

「い、いやぁああああああっ!人でなしよぉ!」

「こ、殺されるっ!アイツは悪魔だ!」

 

 その時になって漸く、目の前の青年を尋常ならざる相手だと悟ったのか黒服たちは後退り、客達は悲鳴を上げて我先にと出口に殺到し始めた。

 

「悪魔ね……。僕にとっては最高の誉め言葉だから、否定はしないさ」

 

 たが、入間は容赦などしない。逃げ惑う客達を心底汚いものを見るような目で一瞥した入間は、取り出した羽に魔力を込めて愛用の弓矢に変形させ、天井に向けて玄を引き絞る。

 

「──だけど、お前達の所業は悪魔にも劣る」

 

 その瞬間、入間は漆黒の矢を天井に向けて放つと、空中で矢が無数に増えて出口に辿り着いた観客を一本も外すことなく貫いた。更に、貫かれた観客達は貫通した矢に吸収される様に体が圧縮されていき、同時に血と内蔵で出来た花火を咲かせた。その光景に、残った観客達は一斉に腰を抜かし、あるものは失禁してしまっている。

 

 この技は、重力魔法を手にした入間が習得したオリジナルの技であり、重力魔法を付与した矢を放ち、貫いた相手を()()に押し潰して圧殺するというえげつない技だ。

 

「お、お前、何者なんだ!何が、何で……こんなっ!」

 

 混乱し恐怖に戦きながらも、必死に虚勢を張って声を荒げる黒服の一人。奥から更に十人ほどやってきたがホールの惨状をみて尻込みしている。

 

 その時、空中に現れた魔力で出来た漆黒の球体が残りの構成員達を押し潰し、オークション会場の構成員は一人残らず絶命した。

 その時、入間は「ようやく来たか…」と呟きながら上を向くと、同時に上からある人物が入間の直ぐ側に自由落下してきた。

 

「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!世界が愛する超絶天才美少女魔法使い!ミレディちゃぁ~~~~ん!さん・じょう!」

 

 どこぞの電撃カブトムシライダーを思わせる台詞を叫びながら片足を曲げて左手を腰に当てて右手を横ピースでウインクして登場した人物は、勿論、他の構成員達の殲滅をしていたミレディであった。

 入間は人を圧殺しながら決めポーズするミレディに呆れつつも歩み寄って眠ったままのミュウをミレディに差し出し、ミレディははたと我に返りミュウを抱きかかえた。

 

「イルくん、ミュウちゃんは大丈夫?」

「魔術で寝かせてるだけだよ。…ミレディ、これからここで少し暴れるから、ミュウを頼んだよ」

「わかったよ。ミュウちゃんの事は任せて」

 

 そう言って、ミレディは重力魔法で飛んでホールの天井まで上がって行き、いつの間にか空いていた穴に飛び込んでそのまま建物の外まで空いた穴を通って地上へと出た。

 それを見送った入間は、出口に施した細工によって逃げ場を失った客達にゴミでも見るような目を向けると、ジクウドライバーを巻いて二つのウォッチを装填すると、ドライバーを回転させた。

 

 

ジオウ! スカル!

 

 

「変身」

 

 

アーマータイム!

 

SCULL!スカルーッ!

 

 

 Sを連想させる傷模様がある骸骨を模した銀色の仮面と『スカル』という顔の文字、そして右肩に『S』という文字のあるガイアメモリを模した装甲を纏った姿──【仮面ライダージオウ・スカルアーマー】に変身した入間は、切れ込みの入った白い帽子を深く被ると、左手の人差し指で客達を指差した。

 

「子供はどの世界でも最高の宝物。この世で最も罪深いのは、その宝を傷つける者の事だ──

 

 

 

 

───さぁ、お前達の罪を…数えろ

 

 その死刑宣告(言葉)と共にジオウは高く飛ぶと、ドライバーを回転させる。

 右肩の装甲から骸骨の形をした巨大なエネルギー体が生成され、ジオウは前にそびえるそのエネルギー体を、思いっきり蹴飛ばした。

 

 

フィニッシュタイム!スカル!

 

MAXIMUM タイムブレーク!

 

 

「はあああああああっっ!!!」

 

チュドォオオオオオオオンッ!!!!

 

「「「「「ギャアアアアアアアアッ!!!!!」」」」」

 

 ジオウが蹴り飛ばした骸骨の怨霊が、狼に追い立てられた羊の群れの如く怯えて固まっていた客達に食らい付く。

 

 客達の断末魔が爆発にかき消され、爆炎から焼けただれた肉片や内臓がボトボトバラバラと飛び散り、会場には血液の雨が降り注いだ。

 

「フゥ………こんなものか。さて、ミレディと合流するとしようか」

 

 そんな地獄そのものとしか言えない光景を作り出したジオウは、辺りをキョロキョロと見回して他に生存者がいないことを確認すると、ベルトからウォッチを取り外して変身を解除、入間の姿に戻ると、彼等の亡骸に視線すら向けず、ギルドに向かってのんびりと歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倒壊した建物二十二棟、半壊した建物四十四棟、消滅した建物五棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員に生存者は無し、死亡が確認された顧客百十九名……で?何か言い訳はあるかい?」

「喧嘩売られたから買いましたが、何か?」

「はぁ~~~~~~~~~」

 

 冒険者ギルドの応接室で、報告書片手にジト目で入間を睨むイルワだったが、出された茶菓子を膝に載せた海人族の幼女と分け合いながらモリモリ食べている姿と反省の欠片もない言葉に激しく脱力する。片手が自然と胃の辺りを撫でさすり、傍らの秘書長ドットが、さり気なく胃薬を渡した。

 

「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」

「元々それが貴方達行政の仕事でしょう。今回は偶然、組織が僕らに手を出したから相手しただけ。要は貴方達の不甲斐なかった結果。甘んじて受け入れなさい」

「……耳が痛いね。それに唯相手にしただけで、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい?ホント、洒落にならないね」 

 

 苦笑いするイルワは、何だか二十年くらい一気に年をとった様だ。それを見てイルワで遊ぶ気が済んだのか、入間はイルワに提案してみる。

 

「一応見せしめを兼ねて盛大にやったんです。貴方も僕達“バビル”の名前使っても構いませんよ?何なら、貴方お抱えの“金”って事にすれば……相当抑止力になるんじゃないですか?」

「おや、いいのかい?それは凄く助かるのだけど……そういう利用される様なのは嫌うタイプだろう?」

 

 入間の言葉に意外そうな表情を見せるイルワ。だが、その瞳は「えっ?マジで?是非!」と雄弁に物語っている。入間は苦笑いしながら、肩を竦めた。

 

「まあ、僕としても味方は増やしておきたいのだね。貴方のお抱えって事にすれば、多少なりとも面倒は減りますから」

 

 その提案はイルワからしても好ましいものだったので、入間からの提案を有り難く受け取る。

 

 ちなみに、その後フリートホーフの崩壊に乗じて勢力を伸ばそうと画策した他二つの組織だったが、イルワの「なまはげが来るぞ~」と言わんばかりの効果的なバビルの名の使い方のおかげで大きな混乱が起こることはなかった。この件で、入間は“フューレン支部長の懐刀”とか“蒼い死神”とか“幼女キラー”とか色々二つ名が付くことになったが……入間の知ったことではない。ないったらないのだ。

 

 大暴れしたバビルの処遇については、イルワが関係各所を奔走してくれたおかげと、意外にも治安を守るはずの保安局が、正当防衛的な理由で不問としてくれたので特に問題はなかった。どうやら保安局としても、一度預かった子供を保安署を爆破されて奪われたというのが相当頭に来ていたようだ。

 また、日頃自分達を馬鹿にするように違法行為を続ける裏組織は腹に据えかねていたようで、挨拶に来た還暦を超えているであろう局長は実に男臭い笑みを浮かべて入間達バビルにサムズアップして帰っていった。心なし、足取りが「ランラン、ルンルン」といった感じに軽かったのがその心情を表している。

 

「それで、そのミュウ君についてだけど……」

 

 イルワがはむはむとクッキーを両手で持ってリスの様に食べているミュウに視線を向ける。ミュウはその視線にビクッとなると、また入間達と引き離されるのではないかと不安そうに入間達バビルを見上げた。ティオに視線がいかないのは子供が有害なものを見ないようにするのは年長者の役目ということだ。

 

「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」

 

 誘拐された海人族の子を公的機関に預けなくていいのかと首を傾げる入間に、イルワが説明するところによると、入間の“金”と今回の暴れっぷりの原因がミュウの保護だったという点から、任せてもいいということになったらしい。

 

「イルくん、一緒に連れていって上げられないかな?危険なのはわかってるけど、私が絶対に守るから……お願い」

「私からもお願いします。絶対にこの子を守ってみせます。だから……」

 

 ミレディとシアが入間に頭を下げる。二人はどうしても、ミュウが家に帰るまで一緒にいたいようだ。他のメンバーは入間の判断に任せるようで沈黙したまま入間を見つめている。

 

「お兄ちゃん……一緒……め?」

 

 自分の膝の上から上目遣いで「め?」とか反則である。というより、ミュウを取り返すと決めた時点で、本人が望むなら連れて行ってもいいかと考えていたので、結論は既に出ている。

 

「まぁ、最初からそうするつもりで助けたからね。ここまで情を抱かせておいて、今更さよならなんて真似はしませんよ」

「イルくん!」

「入間さん!」

「お兄ちゃん!」

 

 満面の笑みで喜びを表にするミレディとシアとミュウ。【海上の都市エリセン】に行く前に【大火山】の大迷宮を攻略しなければならないが、「まぁ、何とかするさ」と内心覚悟を決めてミュウの同行を許す。

 

「ところでミュウ。そのお兄ちゃんってのは止めてくれないかな?普通に入間でいいよ。何というかむず痒いんだよね、その呼び方」

 

 喜びを表に抱きついてくるミュウに、照れ隠し半分にそんな事を要求する入間。

 

 入間の要求に、ミュウはしばらく首をかしげると、やがて何かに納得したように頷き……入間どころかその場の全員の予想を斜め上に行く答えを出した。

 

「……パパ」

「………………ん?ごめんね、ミュウ。よく聞こえなかったんだ。もう一度お願い」

「パパ」

「……そ、それはあれ?海人族の言葉で“お兄ちゃん”とか“入間”っていう意味?」

「ううん。パパはパパなの」

「……うん、ちょ~~っと待とうか」

 

 入間が目元を手で押さえ揉みほぐしている内に、シアがおずおずとミュウに何故“パパ”なのか聞いてみる。すると……

 

「ミュウね、パパいないの……ミュウが生まれる前に神様のところにいっちゃったの……キーちゃんにもルーちゃんにもミーちゃんにもいるのにミュウにはいないの……だからお兄ちゃんがパパなの」

「何となくわかったけど、何が“だから”なの!?ミュウ。お願いだからパパは勘弁してくれない?僕まだ16なんだよ!?」

「やっ、パパなの!」

「わかった。もうお兄ちゃんでいい!贅沢はいわないからパパは止めて!」

「やっーー!!パパはミュウのパパなのー!」

 

 その後、あの手この手でミュウの“パパ”を撤回させようと試みるが、ミュウ的にお兄ちゃんよりしっくり来たようで意外なほどの強情さを見せて、結局、撤回には至らなかった。

 こうなったらもうエリセンに送り届けた時に母親に説得してもらうしかないと、奈落を出てから一番ダメージを受けたような表情で引き下がる入間。

 

 すると、横でそれを聞いていたミレディがズイッと前に出て、フンスッと無い胸を張った。

 

「そう言うことならミュウちゃん!今日からミレディさんの事を『ママ』って呼んで良いからね☆」

「ミレディ、何言ってるの!?」

「……」

 

 自信満々のミレディにツッコミを入れる入間と、「抜け駆けは許さんぞ!」的な目でミレディを睨むユエ達女性陣。そしてその光景に思わず苦笑するアスモデウス、イルワ、トッド。

 そんな周りを他所に、ミュウはミレディをしばらくジーっと眺めた後、入間の膝から降りてミレディに近寄ると、ミレディの貧乳をペタペタと撫で回す。そして……

 

「はぁ~~~……」

 

 残念そうな顔で、それはそれは深~~いため息をついて小さく「ママじゃない…」と呟いた。幼女から「てめぇに母性なんか欠片もねぇだろ」的な言われたと思ったミレディは、まるでメドゥーサの目を見てしまったかのように石となって固まり、ピシッと何かがひび割れる様な音がした。

 

 そんなミレディに苦笑いしながらも、バビル一行はイルワとの話し合いを終え宿に戻る。

 しかしミレディは未だに貧乳ショックから立ち直れず石になったままであり、ミレディを除いた女性陣が、誰がミュウに“ママ”と呼ばせるかで紛争が勃発した。取り敢えず、入間はミュウの教育に悪すぎるティオだけは縛り付けて床に転がしておいた。当然、興奮していたが……

 結局、“ママ”は本物のママしかダメらしく、ミレディを含めた女性陣も一応ティオも“お姉ちゃん”、アスモデウスは“お兄ちゃん”で落ち着いた。

 

 そして夜、ミュウたっての希望で全員で川の字になって眠る事になり、ミュウが入間と誰の間で寝るかで再び激しい戦いが勃発し、精神的に疲れきった入間が強引にミュウを間にしてユエを抱きしめ、そのことでアメリ、シア、ミレディが不満をたらたらと流すという出来事があったが、なんとか眠りに付き激動の一日を終えることが出来た。

 

 翌日、イルワや保安局の人間、そしてクデタ伯爵家の見送りを受けた入間の肩には、ちょこんと座るミュウの姿があった。幼女を肩車して落ちない様に足を支えてあげる入間の姿と、そんな入間の頭にひしっと抱き着くミュウの姿は、割と父娘だった。

 この日、確かに、悪魔の孫は16歳でパパとなったのだ。

 

 これより、子連れ悪魔の旅が始まる!

 

 

 

 

 

 




スキ魔

入間「ところで、ミュウのママってどんな人なの?」

ミュウ「ママはすっごく優しいの!いっつも、『あらあら、うふふ』してるの!」

入間「…おっとりしてるって事?」

ミュウ「みゅー!あと、ご飯が美味しくて、すっごくきれいで、おっぱいが大きくて、ふわっふわなの!きっと、パパもママのこと、好きになるの!」

ユエ「ところがぎっちょん!入間パパは胸の大きさに拘らない!」

入間「子供相手に何を言ってるの君は」

ユエ「ミュウ、ユエママはいかが?魔法チートな最強吸血姫ママはいかが!?」

入間「無視?ねえ無視?」

ミュウ「…ママは、魔法が使えなくてもママなので……ごめんなさい」

ユエ「ッ!?マ、ママに…魔法は、いらない…?絶望した!!」

アメリ「み、ミュウ!ならばアメリママはどうだ!?胸の大きさと包容力ならば自信あるぞ!?」

ミュウ「ミュウのママは、人を『貴様』って呼んだり、壁をキックで壊したりしないので……ごめんなさい」

アメリ「ガハァッ!!」バタンッ!

シア「フッ、ミュウちゃん。ここに全ての条件を揃えている、シアママがいますよ!」

ミュウ「ミュウのママは…『シャオラッ!』って叫んだり、素手で岩を砕かないので……」

シア「どチクショウですぅ!シャオラッ!」

ティオ「ミュウよ。遠慮なく、妾の事を──」

ミュウ「ありえないの!」

ティオ「よ、幼女の拒絶!プライスレスッ!!」

ミレディ「……(|||´Д`)」チーン

アズ「……お前達、ミュウの母親と張り合いすぎだ」

入間「アハハ……。そういえば、居候のお姉ちゃんってのは?」

ミュウ「んみゅ!お姉ちゃんはね、すっごくかわいくて、頭に角があってカッコいいの!それでとっても元気で、ミュウといーっぱい遊んでくれるの!それと、ポケットからいろーんな玩具を出して遊んでくれるの!きっと、パパもお姉ちゃんと仲良しになるの!」

入間・アズ「「……ん!?」」

入間「……あ、アズくん。ミュウの言ってるお姉ちゃんってもしかして…」

アズ「…いや、まさか……」

ミュウ「んみゅ?」





・ライダー紹介

【仮面ライダージオウ・スカルアーマー】
“スカルライドウォッチ”を用いて変身した姿。仮面は仮面ライダースカルを模した銀色でインジケーションアイは『スカル』と表記されていて、右肩にスカルメモリを模した装甲を纏っており、白い帽子が追加される。
オリジナルと同様で、変身している間は体が死に、あらゆる感覚が遮断される。また、“スカルマグナム”を装備する事も可能。



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