今回は相変わらずキャラ崩壊やアンチがあります。気に入らなければブラウザバックを推奨します。
静寂が辺りを包む。光輝達は今更だと頭では分かっていても、同じクラスメイトが目の前で何の躊躇い無く人を殺した光景に息を呑み、戸惑った様にただ佇む。そんな彼等の中でも、一番ショックを受けていたのは香織の様だった。
人を殺した事にではない。それは香織自身、覚悟していた事だ。この世界で戦いに身を投じるというのは、そういう事なのだ。迷宮で魔物を相手にしていたのは、あくまで実戦訓練なのだから、殺し合いになった時、敵対した人を殺さなければならない日は必ず来ると覚悟していた。自分が後衛職で治癒師である以上、直接手にかけるのは雫や光輝達だと思っていたから、その時は手を血で汚した友人達を例え僅かでも、一瞬であっても忌避したりしない様にと心に決めていた。
香織がショックを受けたのは、入間に人殺しに対する忌避感や嫌悪感、躊躇いというものが一切無かったからである。息をする様に自然に人を殺した。香織の記憶に刷り込まれた入間は、どの様な険悪なムードでも争いを諫め、他人の為に渦中へ飛び込める様な優しく強い人だった。
その“強さ”とは、決して暴力的な強さを言うのではない。どんな時でも、どんな状況でも“他人を思いやれる”という強さだ。だから無抵抗で戦意を喪失している相手を、何の躊躇いも感慨も無く殺せる事が、自分の知る入間と余りに異なり衝撃だったのだ。
雫は親友だからこそ、香織が強いショックを受けている事が手に取る様に分かった。普段から散々聞かされてきた入間の話から、香織が何にショックを受けているのかも察していた。
雫は涼しい顔をしている入間を見て確かに変わり過ぎだと思ったが、何も知らない自分がそんな文句を言うのはお門違いもいいところだということもわかっていたので結局何をする事も出来ず、ただ香織に寄り添うだけに止めた。
だが当然、偽善者たる勇者の方は黙っている筈が無く、静寂の満ちる空間に押し殺した様な光輝の声が響いた。
「何故、何故殺したんだ。殺す必要があったのか……」
入間はユエ達の方へ歩みを進めながら、自分を鋭い眼光で睨みつける光輝を一瞥すると、ハァとため息を吐きながらファイズエッジの刀身を肩に当て、気怠そうに答えた。
「…人間族の敵にして、
「正義…?正義だと!!ふざけるな!お前がやったのはただの人殺しだ!!」
悪びれもしない入間の台詞に光輝は一瞬で激昂し、未だに身体中が痛を我慢しながら厳しい声をあげる。
しかし、入間は視線を向けることもなくファイズエッジを投げ捨てた。地面に落ちたファイズエッジが粒子になって消失する。
「ちょっと、光輝!鈴木君は私達を助けてくれたのよ?そんな言い方はないでしょう!?」
「だが雫、彼女は既に戦意を喪失していたんだ!殺す必要は無かった!鈴木がした事は許される事じゃない!」
「あのね光輝、いい加減にしなさいよ?大体……」
光輝の物言いに、雫が目を吊り上げて反論する。鈴と恵里はどうしたものかとオロオロするばかりで、香織は難しい表情で考え込んでいる。
そんな彼等に、比喩的な意味で冷水を浴びせる声が響いた。
「……聞いていた通り、本当に下らない連中。皆、もう行こう?」
「同感だね、これ以上ここにいても時間の無駄だ」
「そうですね。上でミュウちゃんを待たせてますし」
「もうバダンはいないみたいだからな。…ミレディ?どうかしたのか」
「……え?えーとね。ちょっと気になることがあってね」
絶対零度と表現したくなる程の冷たい声音で、光輝達を“下らない”と切って捨てたのはユエだ。その声は小さな呟き程度のものだったが、光輝達の喧騒も関係無くやけに明瞭に響いた。一瞬で静寂が辺りを包み、光輝達がユエに視線を向ける。
バビル一行は元々、神代魔法を狙うバダンの連中を倒すために足を運んだけであり、光輝達が生存していようが入間達には関係がない。魔物とダークライダーも倒してカトレアを討った時点で用は済んでいるので、他のメンバーも誰一人として気にした様子もなく部屋を出ていこうとする。
そんな入間達に、やはり光輝が待ったをかけた。
「待ってくれ、こっちの話は終わっていない。鈴木の本音を聞かないと仲間として認められない。それに、君は誰なんだ?助けてくれた事には感謝するけど、初対面の相手にくだらないなんて……失礼だろ?一体、何がくだらないって言うんだい?」
「……」
光輝がまたズレた発言をする。言っている事自体はいつも通り正しいのだが、状況と照らし合わせると「どの立場で物を言っているんだ」としか言い様がない。ここまでくれば、脳に何か異常があると言われても不思議ではない。
ユエは既に光輝に見切りをつけたのか、会話する価値すら無いと思っている様で視線すら合わせない。光輝はそんなユエの態度に少し苛立った様に眉を顰めるが、直ぐにいつも女の子にしているように優しげな微笑みを湛えて再度ユエに話しかけようとした。
このままでは埓があかない処か、仲間達を不愉快にさせてしまう事を察した入間は、面倒そうな表情で溜息を吐きながらも代わりに少しだけ答える事にした。
「……天之川君。いつまでもヒーローごっこが止められない君の相手するだけ時間の無駄だからまともに相手したくないんだけど、こうして絡まれる事こそ時間の無駄だから、少しだけ指摘させてもらうよ」
「指摘だって?俺が、間違っているとでも言う気か?俺は、人として当たり前の事を言っているだけだ!」
入間からゴミを見る様な視線を向けられ、不機嫌そうに反論する光輝に取り合わず、入間は言葉を続けた。
「誤魔化すのは見苦しいよ。元からだけど」
「いきなり何を……」
「君が怒っている理由は主に二つ。一つは、君はこの期に及んで人死にを見るのが嫌だったからだよ。でも、自分達を痛め付けた挙句、仲間達を虐殺したダークライダー達の仲間である彼女を殺した事自体を責めるのは流石にお門違いだと分かっている。だから自分が正しい体を装って、
「ち、違う!勝手な事言うな!お前が無抵抗の人を殺したのは事実だろうが!」
「
「なっ!?何がって、人殺しだぞ!悪いに決まってるだろ!」
「それは殺された人が何の罪も無い一般人だった場合の話でしょう。軍人として戦場に出た以上、敵に殺される覚悟があって当然ですし、彼女も
「俺達が望んでいたことだって?ふざけた事を言うな!!」
「ふざけた事?本気で言っているなら君は猿より低能だね…」
その瞬間、目を細めた入間から溢れだした膨大で濃密な殺気が、周囲に大瀑布の如く降りかかった。
目を見開き、息を呑む光輝達。
「この世界に召喚された日、僕と先生は何度も言った筈だ。戦争っていうのは国家間に起きた闘争、つまり相手は“人”であって、戦争の本質は殺し合いだってね。だけど君達は僕達の話も聞かずに、僕達の反対を押しきってまで戦争に参加する道を選んだ。つまり、あの瞬間から君達は命を掛けて魔人族を皆殺しにしなくちゃならなかったんだ。なのに君達は状況をよく理解もせずに、突然手に入れた力と自分達が称賛される
「ち、違う!俺達は…俺は、知らなかったんだ!人殺しなんてするつもりはなかったんだ!魔人族も“人”だと分かっていれば、こんなことに…がぁっ!?」
光輝の反論は続かなかった。一瞬といって良い程の速度で距離を積めた入間が光輝の首もとを掴み、軽々と持ち上げたからだ。
仲間内で最も速い雫の動きだって目で追える光輝だったが、今の入間の動きはまるで察知出来ず、必死に脱出しようともがく光輝。そんな彼を絶対零度といっても過言ではない程冷めきった目を見据えながら、入間は口を開いた。
「知らなかった?人殺しなんてするつもりはなかった?癇癪起こすのもいい加減にしてくれないかな?僕は沸点が高い方って自負してるけど、だからといってこうも不愉快な事ばっかりされて怒らない訳じゃないよ?」
「お、お前……」
「君達がどんな思いで戦争を志願したのかは興味もないし口出しする気もないけど、一度『人間族の皆を守る』と言った以上、君達には魔人族を一人残らず殺し続けて、その罪を永遠に背負う覚悟が必要不可欠だった。それが出来なかった結果、何人もの人間が死んだんだよ。君達のごっこ遊びに巻き込まれて死んでいった人達や遺族への責任はどうする気?どう許しを乞うつもり?それすら出来ない奴が何を騒いでも、全部子供の癇癪にしか聞こえないよ。みっともないから止めた方がいいよ?」
入間の冷酷な言葉は、話を聞いていた雫達の心を突き刺し抉る。
召喚された日に戦争に参加するといった光輝に追従して雫達も戦争に参加したのは紛れもない事実だ。
だがその時点で、彼等には人を殺す覚悟も、逆に殺される覚悟も絶対に必要だった。だが、入間が指摘した通り『人間族を救った勇者達』という未来を妄想した光輝は事態を楽観視して戦争を志願し、同じ様に調子に乗った香織達もアッサリ追従した。入間はおろか、年長者である愛子の警告すら無視して。雫は戦争の意味を理解しているつもりだったが、本当に事態の深刻さを理解しているなら最初から自分達が人を殺さなければないない事を指摘していればよかったのに、結局それをせずに光輝に追従したのだ。その事から、結局雫は戦争の意味を
だが光輝はこれだけ言われてもまだ自分の過ちを理解していないのか、尚何かを言い募ろうとした。
しかしそれは、うんざりした雰囲気のユエのキツい一言によって阻まれる。
「……戦ったのも勝ったのも、結果的に貴方達を救ってあげたのも私達。恐怖に負けて逃げ出した負け犬に、とやかく言う資格は無い」
「なっ、俺は逃げてなんて……」
実は一行が、ピンポイントであの場所に転移してこられたのは偶然ではなかった。迷宮を移動している時に、下の階層から莫大な魔力の奔流を感じて光輝達だと察し、位置を特定した入間が毎度お馴染みのコズミックステイツのワープドライブで戦場に乱入したというのが真相だ。
そしてその時感じた魔力の奔流こそ、光輝の“覇潰”だった。感じた力の大きさからすれば、少なくともまだメイジに変身していなかったカトレアなら討てたはずだと5人は分かっていた。なのでその後の現場の状況と合わせて、光輝が人殺しを躊躇い、そのためにこの惨劇を招いたのだと看破していたのだ。それが、ユエの言う「恐怖に負けて逃げ出した」という言葉である。
光輝はユエに反論しようとするが、既に言うべき事を言ったユエは全く相手にしようとせず、話す価値も無いと踵を返して歩きだし、イルマの手を引いて皆と共に階層を出ようと歩き出す。
「ま、まって!入間くん!」
「……?」
そこへ、今まで入間と光輝のやり取りを傍観していた香織が入間の元へ駆け寄ってきた。
入間は嫌そうな顔で振り向く。
「入間くん、私も入間くんの旅に付いて行かせてくれないかな?……ううん、絶対付いて行くから、よろしくね?」
「………………」
第一声から前振りなく挨拶でも願望でもなく、ただ決定事項を伝えるという展開に顔を顰める入間に代わって、ユエが進み出た。
「……お前にそんな資格は無い」
「資格って何かな?入間くんをどれだけ想っているかって事?だったら、誰にも負けないよ?」
ユエの言葉に、そう平然と返した香織。あまりにも筋違いな答えに、ユエの香織を見る目がゴミを見るような物に変わる。
だが香織はそんなユエの視線に全く気付かずにスッと視線を逸らして、その揺るぎなくも見た者の胸が締め付けられる程の切なさを宿した眼差しを入間に向け、祈りを捧げる様に両手を胸の前で組み、頬を真っ赤に染めて深く深呼吸し、震えそうになる声を必死に抑えながらはっきりと告げた。
「貴方が好きです」
「……」
普通なら健気な彼女の姿に見惚れてしまいそうだが、これまでの経緯と現状を照らし合わせてみれば空気を読まないにも程がある。
そろそろ本格的に殺意を抱き始めた入間が目の前の女を抹消しようと手に魔力を込めようとした瞬間、再びあの愚か者が口を挟んできた。
「ま、待て!待ってくれ!意味が分からない。香織が鈴木を好き?付いていく?えっ?どういう事なんだ?なんでいきなりそんな話になる?鈴木!お前、いったい香織に何をしたんだ!」
「……正気?」
どうやら光輝は、香織が入間に惚れているという現実を認めないらしい。いきなりではなく、単に光輝が気がついていなかっただけなのだが、光輝の目には突然香織が奇行に走り、その原因は入間にあるという風に見えた様だ。
本当にどこまで都合の良い頭をしているのだと入間は思わず正気を疑うが、今更だったなと深いため息を吐く。馬鹿馬鹿しすぎて、香織への殺意が薄れてきた。
「光輝くん、皆、ごめんね。自分勝手だってわかってるけど……私、どうしても入間くんと行きたいの。だから、パーティは抜ける。本当にごめんなさい」
「嘘だろ?だって、おかしいじゃないか。香織は、ずっと俺の傍にいたし……これからも同じだろ?香織は、俺の幼馴染で……だから……俺と一緒にいるのが当然だ。そうだろ、香織」
「えっと……光輝くん。確かに私達は幼馴染だけど……だからってずっと一緒にいる訳じゃないよ?それこそ、当然だと思うのだけど……」
正論と言えば正論なのだが、入間の返事を聞いてもいない上にメンバーからの承諾も貰っていないのに既に加入が決定している体で話す香織も大概である。香織の言葉に光輝は呆然とし、入間に視線を向ける。
入間は、自分も返事も聞いていないのに同行する事を前提に話している香織に心底苛立っているらしく、軽く殺意すら籠っている目を向けている。その入間の周りには美女、美少女が侍っている。その光景を見て、光輝の目が次第に吊り上がり始めた。あの中に
「香織。目を覚ますんだ。見てくれ、あの男を。女の子を何人も侍らして……しかも兎人族の女の子は奴隷の首輪まで付けさせられている。彼は、女性をコレクションか何かと勘違いしている。最低だ。人だって簡単に殺せるし、強力な武器を持っているのに、仲間である俺達に協力しようともしない。香織、あいつに付いて行っても不幸になるだけだ。だから、ここに残った方がいい。いや、残るんだ。例え恨まれても、君の為に俺は君を止めるぞ。絶対に行かせはしない!」
光輝の余りにも支離滅裂な物言いに、香織は唖然とし、入間達ハビルの光輝を見る目がどんどん冷めた物になっていく。しかしヒートアップしている光輝はもう止まらない。説得の為に向けられていた香織への視線は、何を思ったのか入間の傍らのユエ達に転じられる。
「君達もだ。これ以上、その男の元にいるべきじゃない。俺と一緒に行こう!君達程の実力なら歓迎するよ。共に人々を救うんだ。シア、だったかな?安心してくれ。俺と共に来てくれるなら直ぐに奴隷から解放する。君達も、もうその男と一緒にいなくてもいいんだ」
そんな事を言って爽やかな笑顔を浮かべながら、ユエ達に手を差し伸べる光輝。
そして、光輝に笑顔と共に誘いを受けたユエ達はというと……
「「「「……」」」」
もう、言葉もなかった。光輝から視線を逸らし、両手で腕を摩っている。よく見れば、ユエ達の素肌に鳥肌が立っていた。
そんなユエ達の様子に、手を差し出したまま笑顔が引き攣る光輝。視線を合わせてもらえないどころか、心底気持ち悪そうに入間の影にそそくさと退避する姿に、若干のショックを受ける。
そして、そのショックは怒りへと転化され行動で示された。無謀にも入間を睨みながら聖剣を引き抜いたのだ。光輝は、もう止まらないと言わんばかりに聖剣を地面に突き刺し、入間に向けてビシッと指を差し宣言した。
「鈴木入間!俺と決闘しろ!武器を捨てて素手で勝負だ!俺が勝ったら、二度と香織には近寄らないでもらう!そして、そこの彼女達も全員解放してもらう!」
「……」
「何とか言ったらどうだ!怖気づいたか!」
素手の勝負にしたのは、仮面ライダーに変身されれば自分が不利だと分かっているからに違いない。香織達迷宮組は(一人を除いて)光輝にドン引きし、ユエ達の光輝を見る目は既に路地裏の吐瀉物を見るものと変わらない。
しかし光輝は完全に自分の正義を信じ込んでおり、入間に不幸にされている女の子達や幼馴染を救ってみせると息巻き、ユエ達処か仲間達からも自分の評価が下がりまくっている事に気付いていない。元々の思い込みの強さと猪突猛進さと“嫉妬”が合わさり、完全に暴走している様だ。
そんな光輝の一連の行動は、自分達の非を棚に上げて命の恩人である入間を非難しまくった挙句、自分が片思いしていた女の子が入間に告白したら、その現実を認めたくなくてありもしない事実を頭の中で捏造して入間を責め立てたと思ったらユエ達をナンパして当然のように拒否され、思い通りにならなかった現実に激昂して八つ当たりをしているようにしか見えない。
しかも、ユエ達の意見を一切聞かずに勝手にユエ達を決闘の戦利品扱いしている始末だ。先程入間の事を「女性をコレクションだと思っている最低な奴」と罵倒していた癖に、どの立場で物を言っているんだとしか言いようがない。もう言葉のブーメランとか自分を棚に上げるとかそう言うレベルを越えている。
入間の返事も聞かず、猛然と駆け出す光輝。
その瞬間……
「グギャアアアアアアアッ!!?!?」
“
壁にクモの巣状の亀裂を入れて地面に倒れる光輝。顔面は拳の形に没落し、鼻の骨も折れて8割の歯が砕けており、ボロボロの服と聖鎧と合わさり、お世辞にも勇者とは呼べない無様な姿であった。
「……ハァ、もう少しゆっくり来た方が良かったかもね。そうすれば全員死んでただろうし」
「何がしたかったんだ、コイツは…?」
拳に付着した血を嫌そうに拭きながら、入間は仲間達と共にこの場を後にしようとする。ユエ達も、瀕死の光輝に駆け寄る雫達に見向きもせずに入間に続く。
だがしかし、そこで再びあの女が飛び出してきて、イルマの腕をガシッと掴んだ。
「ま、待ってよ入間くん!わ、私まだ返事を聞いてないんだけど!」
「お断りします。仲間に入るのも認める気はありませんから」
「な、なんで!?入間くんを想う気持ちは誰にも負けないし、私は治癒師だから、皆が怪我したときとかには役に立てるよ!?」
「気持ちの問題じゃない。それに、僕のパーティーには君より優秀な治療薬があるから」
とりつく島もないとはこの事だ。普段の入間ならばもっと誠意を持って対応するのだが、香織のこれまでの行いを振り替えれば誠意を持つ気もなくなってくる。
「大体、何で君はそこまで僕のパーティーに入りたいんですか?」
「そ、それは私が入間君の事を…」
「君が僕に好意を向けるのは好きにしていいですけどね、貴方には“神の使い使徒”として、魔人族から人間族を守る使命があるでしょう?そこはどうするんですか?まさか、途中で放棄する気ですか?」
「そ、それは…」
香織は言葉をつまらせた。入間の言う通り、あの日人間族の為に戦争に参加すると決めた以上、香織達には人間族の為に魔人族を撲滅させる義務がある。なのに香織は、その義務を放棄して入間についていこうとしている。迷宮攻略組が殆んど死亡した上で主力の一人である香織まで抜けてしまえばどうなるかなど一目瞭然なのに、それすら無視して。
「それにね、僕は前々から君を好ましく思っていなかった。君が僕を好きになるのは構わないけど、何時もストーカーみたいにつきまとって、そのお陰で身に覚えのない誹謗中傷をされるし」
入間自身、香織が自分に好意を持つ事自体を責めているわけでない。だが、いくら自分の事が好きだからって自分を影からコソコソとつきまとい、嫌だと言っても執拗にストーカーをする香織の好意をありがたいとは思えない。たとえその好意が刷り込まれた物だと分かっていても、それでストーカーを許すのかと言われれば答えはNOだ。そのせいで、『入間は優しい香織に迷惑をかけるダメな奴』とされた。別にクラスメイト達と仲良くしたい訳でもなかったし、魔界にいたころから『極悪魔』やら『サイコ』だの呼ばれてきたので今更どう呼ばれようと(結構気にしてはいるが)咎めるつもりはないが、本来ストーカーの被害者である自分が加害者扱いされるのは理不尽以外の何物でもない。最終的には、余計な恨みを抱いた檜山が自分の命を狙ってきたのだから。彼女を連れていったとしても、役に立たない処か香織に一目惚れしたハイリヒ王国の王子にまた筋違いな恨みを抱かれるだろうし、教会の連中が『入間は神の使徒を誘拐した罪人だ』とか言って入間に冤罪を吹っ掛けてくる可能性だってある。これ以上、香織に迷惑を掛けられるのは御免である。
「そう言うわけで、僕は君みたいな周りの迷惑も考えない所か自分の使命も果たさずに途中で投げ出す人を受け入れるつもりはないからね。金輪際僕の前に現れないでね」
「ま、まってよ入間くん!」
「しつこいよ?」
なおも話をしようとする香織に、流石に我慢が限界に近くなっていた入間は彼女の目の前で指を鳴らす。すると、香織は糸が切れた人形のように地面に倒れこみ、雫がシグルドに痛め付けられた体を引きずりながら香織のもとに駆け寄った。
「香織!?鈴木君!貴方一体香織になにしたの!?」
「安心しなよ、眠らせただけだから。まぁ結構強めにかけたから、これから半日は起きないだろうけどね」
厳しい声をあげる雫に、入間は冷めた声で返した。
入間が香織に使ったのは“
取り敢えず香織は無事なのだと分かり雫は安堵するが、直ぐに親友の告白を蔑ろにした入間を再び睨み付けるが、入間に絶対零度の視線を返され、直ぐに怯えたように身震いする。
「……君のために言ってあげるけど、この先長生きしたいなら、もう彼等と縁切った方が良いんじゃないの?」
「…え?」
「君さ、よく僕にこう言ってたよね?『光輝と香織に悪気はない』って。なら聞くけど、悪気がなかったらストーカーは許されるとでも?人に迷惑をかけるのは許されるとでも?」
「そ、それは……」
「…幼馴染みを大切に思うのは良いけど、君がやっているのはただ彼等を甘やかして増長させてただけだよ。その結果がこの惨劇だよ。いい加減自分が2人の腰巾着って事を自覚して見切りつけないと、君も近い内に死ぬ事になるよ?」
「うっ……」
何の感情も籠っていない声色でそう言われ、雫は黙り込んでしまった。
返す言葉を見つけられず言い淀む雫の姿に、入間は最早興味もなくなったのか踵を返し、亜由美を止めることなくワームホールに入り込んだ。ユエ達も、光輝達を気にする様子もなく入り込んでいく。
ここでジオウⅡの力を使って死んだ光輝の仲間達を生き返らせる事は出来なくもないが、死んだクラスメイトの連中とはそんな事をしてやる程仲が良いわけでもない。それにそもそもこうなったのは全て、王宮と教会の身勝手と光輝達のヒーローごっこに巻き込まれたとは言え、覚悟も信念も無しに光輝達に追従して戦争を選んだ結果だ。同情の余地もない。
こんな危険地帯に置いていかれては堪らないと鈴と恵里が慌てて自分達も連れていってくれと言おうとしたが、それよりも早くワームホールは縮小し、完全に消えてしまった。
原作ではハジメ達が光輝達を地上まで送ってくれていましたが、光輝達がしてきた事を考えると『そもそも地上まで送ってあけまる必要ないんじゃね?』と思い、このような展開となりました。
感想、評価お待ちしております。