悪魔の孫は時の王者となって世界最強   作:MTHR

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4話、投稿です。


4話 奈落の底

「ウエェ…、気持ち悪い……」

「大丈夫か~イル坊。酔いを止める魔術使う?」

「だ、大丈夫…」

 

 少し青い顔で口を抑える入間と、入間の頭をポンポンと叩くアリクレッド。

 周りは薄暗いが緑光石の発光の恩恵でうっすらとだが周りに何があるかを認識できる。視線の先には幅5m程の川も確認できる。

 

 入間がこの空間に辿り着いたのは、簡単に言えば入間の判断ミスだった。

 落下途中の崖の壁に穴が開いており、そこから鉄砲水の如く水が噴き出していたのだ。ちょっとした滝である。その様な滝が無数にあって、入間は“保護繭(グラン・ココン)”を球状に展開して身を守ったのだが、それがよくなかった。滝の水によってウォータースライダーのように流され、流れの勢いに目を回しながらも最後は岩肌からせり出ていた横穴に流されてここまで来たのだ。

 

 取り敢えず、と呟きながら入間が指を鳴らすと、入間の体がポンッ!と煙に包まれ、煙が晴れると、入間は悪魔学校(バビルス)の制服に青い髪をした普段の姿に戻っていた。

 

「ん~……やっぱりこの服が一番いい」

 

 着なれた服に着替えた入間はぐ~っと腕を伸ばしながら辺りを見回す。

 入間が進む通路は、正しく洞窟といった感じだ。

 低層の四角い通路ではなく岩や壁があちこちからせり出し通路自体も複雑にうねっている。二十階層の最後の部屋に似ているが、大きさは比較にならない。複雑で障害物だらけでも通路の幅は優に二十メートルはある。狭い所でも10mはあるのだから相当な大きさだ。隠れる場所も豊富にあり、入間は“ラファイア”で火を灯して灯りをつけ、アリクレッドは「ドッキドキトレジャァ~♪」と歌いながら進んでいった。

 

 そうやってどれくらい歩いただろうか。遂に初めての分かれ道に辿り着いた。巨大な四辻である。入間はどの道に進むべきか迷った。

 

「分かれ道…どれにすればいいと思う?……アリさん?」

 

 ここは相棒と相談して決めようと入間がアリクレッドに目をやると、先程までハイテンションだったアリクレッドが壁を凝視しているのが目に入った。

 

「…アリさん?」

「……イル坊、ちょっとあの辺りを掘り進んでくれねぇか?気になるものがあってな」

「?よく分かんないけど……“変化(チェルーシル)”」

 

 相棒の意図が分からず困惑する入間だったが取り敢えず壁に手を当て、物体をイメージ通りに変化させる魔術を使う。

 すると、壁がみるみると形を変えていき、人間が一人余裕で入れる程の大きさの洞穴が完成し、入間はその洞穴の中には入っていく。

 

「あった。魔力の反応はこれだな……」

「わー、キレ~イ…」

 

 “変化(チェルーシル)”で掘り進めた先で、入間とアリクレッドはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石を発見する。周りの石壁に同化するように埋まっており、下方へ向けて水滴を滴らせている神秘的で美しい石だ。アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた感じが一番しっくりくる表現だろう。

 なんとなく、入間は鉱石の下に溜まっている水を掬って口にする。途端、何やら力が湧いてくる感覚を覚え、入間は片眉を上げた。

 

 入間とアリクレッドは知らない話だが、この石は“神結晶”と呼ばれる歴史上でも最大級の秘宝で、既に遺失物と認識されている伝説の鉱物だったりする。大地に流れる魔力が千年という長い時をかけて偶然できた魔力溜りにより、その魔力そのものが結晶化したものだ。直径30センチから40センチ位の大きさで、結晶化した後更に数百年もの時間をかけて内包する魔力が飽和状態になると、液体となって溢れ出す。その液体を“神水”と呼び、これを飲んだ者はどんな怪我も病も治るという。

 欠損部位を再生する程の力は無いが、飲み続ける限り寿命が尽きないと言われており、その為不死の霊薬とも言われている。神代の物語に神水を使って人々を癒すエヒト(似非)神の姿が語られているという。

 入間は鉱石の周りを“変化”させて神結晶を取り出すと、洞穴の外から気配を感じた。

 

 興味が湧いた入間は洞穴の外に出ると、そこに白い毛玉がピョンピョンと跳ねていた。

 長い耳があり、見た目は完全に兎だった。しかし、その大きさは中型犬くらであり、後ろ足がやたらと大きく発達している。そして何より赤黒い線がまるで血管の様に幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓の様に脈打っていて物凄く不気味である。

 兎は入間に感づいたのか、赤い目で入間を見据え、戦闘体制を取った。

 

「さっそく戦闘かぁ…少し気合い入れようかな」

 

 入間はそう言いながら“ジクウドライバー”を腰に当て、ベルトとして装置する。

 懐から“ジオウライドウォッチ”を取り出し、ウェイクベゼルを回してライドオンスターターを押した。

 

 

ジオウ!

 

 

 ジオウウォッチをベルトの右側にセットしてベルトのロックを外すと、入間の後ろに半透明の大きな時計のエフェクトが現れる。

 入間は右手を腰に添え、左腕を反時計回りに回してから手首を捻り、あの言葉を叫んだ。

 

「変身!!」

 

 その言葉と共にジクウドライバーを回転させると、ベルトを中心に世界が回転する。

 

 

ライダータイム!

 

仮面ライダー!ジオウ!!

 

 

 時計の針が10時10分を指し、時計の文字盤に『ライダー』の文字が出現。

 直後、入間の周りを無数の金属製腕時計のバンドの輪の様なエフェクトが回転しスーツを装着。そして背後の『ライダー』の文字が文字盤から飛び出して顔にセットされることで、変身が完了する。

 

 銀の鎧と黒のスーツ。10時10分を指している時計を模した仮面の額には『カメン』の文字のライダーズクレストがあり、複眼にあたる部分はマゼンタの『ライダー』の文字になっている。

 そう、入間は時の王者にして最強の仮面ライダー、【仮面ライダージオウ】へと変身したのだ。

 

 ジオウの変身に驚愕していた兎だったが、直ぐに兎は助走をつけるかのように跳びはね、その異常に発達している脚で強力な蹴りをお見舞いしようとする。しかし、ジオウは右手で兎の脚を掴むと、手に力を込めてグシャッと兎の脚を握り潰し、そのまま顔面を殴ったことで、血や脳髄を撒き散らしながら兎は絶命した。

 

 すると次に、これまた白い毛並みに兎と同じように赤黒い線があり、二本の尻尾を持った大型犬くらいの大きさの狼が現れた。更にどこから現れたのか一体目が飛びかかった瞬間、別の岩陰から更に二体の二尾狼が飛び出し、固有魔法らしき赤い電撃を放ってきた。

 だが、赤い雷撃はジオウの身を守る鎧には傷一つ付けることが出来ず、腕の一振りでうち消され、反撃といわんばかりにジオウが右足にマゼンタのエネルギーを込めた回し蹴りをお見舞いし、二尾狼3匹は一撃で撲殺されてしまった。

 

「はぁ……ん?」

 

 戦いを楽しむ趣向は無いが、あまりの呆気なさにジオウは溜め息を吐くが、新たに現れた気配に視線を向ける。

 その魔物は4mはあろう巨躯に白い毛皮に赤黒い線が幾本も体を走っている熊だった。足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えている。

 爪熊が剛腕を振るうと、ゴウッと風がうなる音が聞こえると同時に強烈な風の刃がジオウの左側面に襲い掛かる。

 

 

ガキィイン!

 

「次から次へと……」

 

 それに対して、“風刃(シェイバー)”を放ってそれを相殺したジオウは面倒そうにそう呟きながら、右腕のホルダーにセットされているライドウォッチを一つ取り出し、ベゼルを回してボタンを押した。

 

 

ビルド!

 

 

 “ビルドライドウォッチ”をジクウドライバーの左側に装填すると、ベルトのロックを解除して一回転させる。

 

 

アーマータイム!

 

ベストマッチ!ビ・ル・ドーッ!

 

 

 音声と共に半透明のフルボトルと共にアーマーが現れ、ビルドのポーズをとると鎧が四散し、ジオウに装置される。

 

 ビルド・ラビットタンクフォームを模した鎧に両肩は赤と青のフルボトルを模したようなデザインをしており、複眼には『ビルド』という文字が描かれている。

 【仮面ライダージオウ・ビルドアーマー】への変身が完了すると、ジオウは“ドリルクラッシャークラッシャー”と呼ばれる大型ドリルを装備し、装填したライドウォッチのボタンを押す。

 

 

フィニッシュタイム!ビルド!

 

 

 ベルトを一回転させる。

 

 

ボルテックタイムブレーク!

 

 

 音声と共に、白いグラフのような物が爪熊を拘束し、ジオウはグラフの上を滑走しながら爪熊に突撃し、ドリルクラッシャークラッシャーでその体を貫いた。

 易々と体を貫かれた爪熊は、胴体にポッカリと空いた穴から内臓を撒き散らしながら絶命した。

 

 戦いともよべないあっけない終わり方に、ジオウは今日で何度目かわからない溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つからないなぁ…」

「こっちもだぜ~」

 

 爪熊を倒してから一時間半、入間とアリクレッドは手分けして、上階へと続く探していたが、階下への道は発見したが、上階への道を見つけられずにいた。ここが迷宮で階層状になっているのなら上階への道も必ずある筈なのだが、どうしても見つからないのだ。

 

「イル坊、ここまで来たら分かると思うが…」

「出たいなら進むしかない、ってことだよね……」

 

 どうやら、この階層からは戻ることは許されず、前に進むしか出来ないらしい。入間としては、ここで多少時間を潰してから【フォーゼアーマー】で地上まで飛んで旅に出るつもりだったのだが、どうやら少し見通しが甘かったようだ。

 

 仕方ないかと割りきった入間は、階下への階段がある場所へ向かった。

 その階段は階段というより凸凹した坂道と言った方が正しいかもしれない程雑な作りであり、その先は緑光石が無いのか真っ暗な闇に閉ざされ、まるで巨大な怪物の顎門の様に不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

 

ライダータイム!

 

仮面ライダー!ジオウ!!

 

 

「さて、何があるのか」

 

 ジオウに変身した入間は、躊躇いなく迷宮の奥へと歩みを進めていった。

 そうして暫く進んで分かったのが、どうやらこの階層には緑光石が存在しないらしい。その階層はとにかく暗い。地下迷宮である以上それが当たり前なのだが、今まで潜った事のある階層は全て緑光石が存在し、薄暗くとも先を視認出来ない程ではなかった。

 ジオウは物陰に隠れるでもなく堂々と進んでいると、不意に気配を感じて視線を向ける。そこには体長2m程の灰色の蜥蜴が壁に張り付いており、金色の瞳でジオウを睨んでいた。

 

 だが、“クロックブレードA*1”を備えているジオウには、既に蜥蜴の位置を把握されており、即座にジュウモードのジカンギレードを蜥蜴に向けた。

 

 

ゼロタイム!!スレスレ撃ち!

 

 

 引き金が引かれ、マゼンタのエネルギー弾が蜥蜴を跡形もなく消し飛ばす。

 実はこの蜥蜴の魔物は、睨んだ相手を石化させるというおっかない固有魔法を持っているのだが、それを発動させるよりも早くジオウに撃ち殺されてしまったのだ。

 

 その次の階層は、地面がどこもかしこもタールの様に粘着く泥沼の様な場所だった。普通に歩けば足を取られ凄まじく動きにくいだろう。

 何となく気になったジオウはアリクレッドに頼んでタールを調べてもらうと、アリクレッドは面倒そうに顔をしかめた。

 

「イル坊、このタールは可燃性だ。()()使ってみろ」

「OK」

 

 

フィニッシュタイム!

 

グリスブリザード!スレスレシューティング!

 

 

 アリクレッドの言葉に頷いたジオウは“グリスブリザードウォッチ”をジュウモードのジカンギレードに装填して必殺技を発動し、極寒の冷気によって部屋一面を氷付けにすると、まるでスケートのように凍り付いた沼を滑り、階層を突破した。

 このタールには、気配を消す固有魔法をもった鮫が泳いでいるのだが、その鮫も蜥蜴と同様に活躍する場面もなくタールと共に凍り付けにされてしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 タール鮫の階層から更に五十階層は進んだ。過去の記録を知らない為比べ様も無いが、驚異的な速度で進んできたのは間違いない。その間にも、当然ながらジオウは様々な魔物を仕留めてきた。

 

 例えば迷宮全体が薄い毒霧で覆われた階層では、毒の痰を吐き出す2mの虹色の蛙や、麻痺の鱗粉を撒き散らす蛾に襲われた。

 また、地下迷宮なのに密林の様な階層に出た事もあった。物凄く蒸し暑く鬱蒼としていて今までで一番不快な場所だった。この階層の魔物は巨大な百足と樹だ。

 密林を歩いていると、突然巨大な百足が木の上から降ってきた時は、流石のジオウも気持ち悪さの余り一瞬固まった。しかもこの百足、体の節ごとに分離して襲ってきたのだ。

 

 そして樹の魔物は、所謂トレントに酷似していた。木の根を地中に潜らせ突いてきたり、ポケ○ンのようにツルを鞭の様にしならせて襲ってきたり。

 しかし、このトレント擬きの最大の特徴はそんな些細な攻撃ではない。この魔物、ピンチなると頭部をわっさわっさと振り赤い果物を投げつけてくるのだ。これには全く攻撃力は無く、“これは食べられる”と判断した入間は変身を解いて食べてみると、スイカみたいな味がした。そのため、入間(食いしん坊)はトレント擬きの狩りに夢中になり、終わった頃には階層には全滅したトレント擬きと、何処からか取り出した風呂敷に果実をパンパンに積めた入間が残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 再びジオウに変身して迷宮攻略を再開した入間は、五十層でなんとも不気味な空間にたどり着いた。

 脇道の突き当りにある空けた場所には高さ3mの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれる様に鎮座していたのだ。

 それを見たジオウ(入間)は期待と嫌な予感を両方同時に感じていた。あの扉を開けば、確実になんらかの厄災と相対する事になる。だがしかし、同時に変り映えのしない迷宮攻略に新たな風が吹く様な気もしていた。

 

「…さながらパンドラの箱ってやつか。イル坊、どうする?」

「当然、進むだけだよ」

 

 アリクレッドを肩に乗せたジオウは、油断無く歩みを進め、特に何事も無く扉の前にまでやって来た。近くで見れば、ますます見事な装飾が施されている。そして、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのが分かった。

 

「こんな魔法陣、見たこと無いな…アリさんは?」

「いや?俺ちんにもわかんねぇな。相当古いもんなんだろう」

 

 王国に居た頃は、情報を集めるために書庫でアリクレッドと共にあらゆる本を網羅した。勿論、全てに目を通した訳でも、魔法の知識まで網羅ししていた訳ではないが、それでも魔法陣の式を全く読み取れないというのは些かおかしい。

 扉を調べるが特に何かが分かるという事もなかった。いかにも曰くありげなのでトラップを警戒して調べてみたが、トラップは無いという事が分かったのみだ

 扉は引いても押しても動かない。なら強行突破だと、ジオウは魔力を込める。

 

バチィ!

 

「!」

 

 その時、扉から赤い放電が走りジオウの手を弾き飛ばした。ダメージ等は無いが、手から煙が吹き上がっている。

 

 直後に異変が起きた。

 

 

オォオオオオオオオッ!!

 

 

 突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。

 ジオウはバックステップで扉から距離をとる。

 

「やっぱり、罠だよね…」

「まぁ、当然と言えば当然だな」

 

 呑気に会話する二人の前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。いつの間にか壁と同化していた灰色の肌は暗緑色に変色している。

 

 一つ目巨人の姿はまるっきりサイクロプスだ。手にはどこから出したのか4mはありそうな大剣を持っている。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し、侵入者を排除しようとジオウの方に視線を向けた。

 

「…よし、士さんから貰ったウォッチを試してみよう」

 

 だが、ジオウは目の前のサイクロプスを驚異に思わず、この世界に来た日に士から餞別として貰った“ゼロワンライドウォッチ”を起動し、ベルトに装填してジクウドライバーを回転させた。

 

 

ゼロワン!

 

 

アーマータイム!

 

プログライズ!ゼロワーン!

 

 

 音声と共に、令和の1号ライダー【仮面ライダーゼロワン】を模したアーマーがジオウに装置され、『ゼロワン』の文字が仮面にセットされる。

 【ゼロワンアーマー】へと変身したジオウは、ゼロワンの機動力とスピードを活かした戦法で、壁や天井を足場にしてサイクロプス達を四方八方から攻撃し、サイクロプス達はジオウのスピードに追い付けず、サンドバッグのように攻撃を受け続ける。

 頃合いを見計らったジオウは、ベルトに装填されたウォッチのライドオンスターターを押し、ベルトを回転させる。

 

 

フィニッシュタイム!ゼロワン!

 

ライジングタイムブレーク!

 

 

 音声と共にジオウの脚に力が溜まり、ジオウは黄色いサイバー線を描きながら駆け出し、サイクロプス二体を空中に蹴り飛ばしてから自身も空を跳び、空中でキックの体制を取り、サイクロプス二体に向けて必殺技を放った。

 

「ハァアアアアアアッ!!」

「「グォオオオオオオオオッ!!!?」」

 

 ジオウの必殺キック──“ライジングタイムブレーク”が炸裂し、サイクロプスの体を貫いたジオウは変身を解除し、チラリと扉を見て少し思案する。

 

 そして、そのままサイクロプスの体内から魔石を取り出した。血濡れを気にするでもなく二つの拳大の魔石を扉まで持って行き、それを窪みに合わせてみる。

 案の定ピッタリとはまり込んだ。直後、魔石から赤黒い魔力光が迸り魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れる様な音が響き光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

 

 中は聖教教会の大神殿で見た大理石の様に艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光を反射してツルリとした光沢を放っている。

 その立方体を注視していた入間とアリクレッドは、次いで立方体の前面の中央辺りから生えているものに目を向ける。

 

 その正体を探ろうと入間が近づこうとした瞬間、それは動いた。

 

「……誰?」

 

 掠れた、弱々しい少女の声だ。尚も入間が進み続けると、先程の生えている何かがユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 それを見て入間は驚いたように呟いた。

 

「女の子……?」

 

 

 

 

 

 

*1
長針センサー『バリオンハンドM』は主に時間に関する情報を捉え、敵が攻撃・回避のタイミング等を予測。短針センサー『メソンハンドH』は主に空間に関する情報を捉え、自身と敵の間合いや射撃攻撃の着弾点、ライダーアーマー装着時の適切な相対位置などを計算する。




トントン拍子で五十階層に辿り着きました。
次回、ありふれ正ヒロインのユエとの邂逅です。
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