色々と展開に悩んでいて投稿が遅れました。
新しい仮面ライダーガヴのメインビジュアル見ましたが、凄く好きなデザインです(作者は仮面ライダーであればどんなライダーも大好きですが)。
59話 最後の仲間と母娘の再開、そして新たな敵
「以外に、仮面ライダーは多いのね。しかも全員レジェンドライダーに分類されている戦士達ね。私達と同じで本来の変身者じゃないみたいだけど、油断はできないわね……そのライダー達の絶望に満ちた泣き顔を見るのが待ちきれないわ……」
銀縁のメガネの青年の言葉に、 妖艶な美女が呟く。
二人の言葉を聞いた黒髪の少年は、手の中にある19のライダーズクレストが記載されたカメラのような形状のドライバーを眺めながら、静かに口を開いた。
「……レジェンドと共に、ガッチャードというぽっと出のライダーに倒されたサイゲツ達のようなヘマはしない。この世界は、俺達の手で破壊されるのだ」
黒髪をした無表情の男は、そのドライバーを懐にしまい、男女を引き連れて歩きだした。
見渡す限りの青。
空は地平の彼方まで晴れ渡り、太陽の光は燦々と降り注ぐ。しかし、決して暑すぎるということはなく、気候は穏やかで過ごしやすい。時折、優しく吹くそよ風は何とも心地いい。ただ、周囲をどれだけ見渡しても、何一つ〝物〟がないのは少々寂しいところだ。
もっとも、それも仕方のないことだろう。なにせ、ここは大海原のど真ん中なのだから。
そんな大海のド真ん中の空で、新幹線のような形状の列車──デンライナーが、空中に線路を作りながら進む。
「あっ、イルマさん!見えてきましたよ!町ですぅ!」
「んみゅ!おうちが見えてきたの!!」
「ほんとに海のド真ん中にあるんだね……」
運転車両で、シアとミュウが瞳を輝かせながら指を指し【エリセン】の存在を伝える。視線を向けたイルマの眼にも、確かに海上に浮かぶ大きな町が見え始めた。
「……いや、待て。様子がおかしいぞ」
「……あれって、オーロラカーテン?」
アメリが町の異常に気付き、他の面々もよく目を凝らしてエリセンを見てみると、そこにはエリセンの上空に浮かぶ銀色のオーロラの光景があった。
「オーロラカーテンを操れるのは、門矢士以外にも何人かいるが……わざわざエリセンに来る理由がありそうなのは……」
「まさか……バダン!?」
「いいえ、今、エリセンと呼ばれる町に浮かぶオーロラカーテンを開いているのは、ハンドレッドと呼ばれる組織です」
「ハンドレッド……バダン以外にも面倒そうな事をする組織があるのじゃな……って、誰じゃ!?」
「侵入……者……」
以前、古代王オーズに襲撃を受けたけいけんから最悪の可能性を想定したミレディだが、直後に先頭車両と食堂車両を繋ぐ扉の前から聞こえてきた声に入間達が一斉に振り向いてその人物の姿を目にすると、全員目を見開いた。
「……わ、私…?」
「ユ、ユエにそっくり!?」
彼女が滅多に浮かべないような優しげな笑みを浮かべて仰々しく礼をする金髪紅眼のメイド服の少女に、全員が目を丸くしているなか、ユエそっくりの少女は入間に微笑みかけた。ユエが浮かべるものとは違う、人当たりの良さそうな優しげな笑みだ。
「お久し振りです。鈴木入間様」
「……え?」
「やはり、覚えていないようですね。改めまして、私はルナ。マイロード、鳳凰・カグヤ・クォーツにお仕えするメイドの一人です」
「ルナ?」
「鳳凰・カグヤ…クォーツ?」
その少女──ルナの口から出てきた言葉に、聞き覚えのある気がするイルマは考え込むように俯いた。
その時、轟音と共に、エリセンから黒煙が吹き上がった。
「今のは!?」
「どうやら、ハンドレッドの刺客が現れたようです。このままでは、エリセンが滅ぼされてしまいます!」
「よし、急ごう!」
イルマはデンバードのアクセルを吹かし、デンライナーを加速させた。
「たっ、助けてぇえええっ!!」
「きゃあぁあああっ!!」
「何なんだあの者達は……グハッ!!」
金と黒を基調とした鎧に三ツ又の槍を手にした兵士──とある世界で【カッシーン】と呼ばれる存在と瓜二つの鎧を着込んだ達が、エリセンに暮らす海人族やハイリヒ王国駐在部隊を蹂躙する。
駐在部隊は剣を手にして果敢にもカッシーン(仮)に挑むが、剣も魔法も彼等の身を守る鎧には何一つ通用せず、逆に彼等が手にする武器で一瞬で返り討ちにされてしまう。
そして、セルザと呼ばれる駐在部隊隊長を惨殺したカッシーンは次に近くで腰を抜かしていた海人族の親子に顔を向けた。海人族の母親は息子を守るように抱き締めるが、カッシーンは無情にも親子共々串刺しにしようとしたその時!
「とりゃ~~~っ!!」
『『『うわぁあああああっ!!?』』』
何処からか現れた大量の自販機が、親子を襲おうとしていたカッシーンだけでなく他のカッシーンにも投機され、不意打ちを受けたカッシーン達は自販機に押し潰されてしまった。
何事かとカッシーン達が自販機が飛んできた方向に目を向けると、そこには幼い少女がたっていた。
黄緑色の長い髪に、頭の上にヤギのような角を生やし、不思議なデザインのポケットに緑の蜥蜴のようなイラストのスリッパを履いている小柄な少女だ。
「ふっふ~ん!この町で悪い事はさせないよ!」
『何者だ、貴様は!?』
「私?私はね~~……」
そう言った少女──【ウァラク・クララ】は、スカートに着けられたポケットを叩くと、そこから白いベルト、【ジクウドライバー】が飛び出した。
カッシーン達がそれに驚いていると、クララはそれを腰に当てて装着すると、真っ白なライドウォッチを取り出し、ベゼルを回す。
そのウォッチ──“ツクヨミライドウォッチ”をジクウドライバーにセットすると、クララの背後に天文時計のエフェクトが出現し、クララはベルトを回転させる。
「変身!」
クララの体が白い光に包まれて金色の帯が巻き付くと、クララは大きく姿を変えた。
白のベースカラーに黒のアンダースーツ、金色のライン。中心部分にはジオウと同じく銀色のベルト状の部品があるが、ジオウ達とは異なりドライバーに届いていない。
複眼部分は三日月をあしらったデザインで『ライダー』という文字。
「さぁ、いっくよ~~!!」
【仮面ライダーツクヨミ】に変身したクララは、神秘的な容姿とは裏腹に明るく元気な声を出して走り出すと、何処からか信号機の様な意匠を持つ戦斧“シンゴウアックス”を出現させる。見たことあるものを自由に取り出しクララの家系能力“
ツクヨミはそれを振り回してカッシーン三体を切り伏せた。
更に2体のカッシーンが突撃するが、ツクヨミは大きくジャンプしてそれを回避すると、手にしていたシンゴウアックスを投げ飛ばしてぶち当てて撃破し、その爆発に怯んだもう一体のカッシーンにラリアットを喰らわせる。
他のカッシーン達も不意打ちや真っ向勝負を仕掛けようとツクヨミに突撃するが、ツクヨミは新たに召喚した“ドッガハンマー”を手にして、ドッガハンマーをぶん回すことで、何体ものカッシーンを吹き飛ばした。
その時、数体のカッシーンが、槍から光弾を放ってきた。前にいるカッシーンを吹っ飛ばすことに夢中だったツクヨミがハッとなって振り替えると、そこには目前まで光弾が迫ってきていた。
次の瞬間、真横から飛んできたマゼンタのエネルギー弾が、次々とカッシーン達の光弾を撃ち落とした。
その場にいたもの達は、何事かと仮面の下で目を見開き、そのエネルギー弾が飛んできた方に目を向けると、そこには仮面と鎧をつけた七人組が駆け寄ってくる光景だった。
そして、黒の鎧に顔に「ライダー」と書かれた戦士──仮面ライダージオウは、手にしていたジカンギレードを下ろしながらツクヨミに声をかけた。
「クララ!」
「イルマち~~!!」
「ぐふっ!?」
「おい、アホクララ!また貴様はイルマ様に飛び付きおって!」
ジオウの姿を見た瞬間、ツクヨミは感極まったようにジオウに飛び付いて抱き締め、ウォズはツクヨミを咎めながらジオウから引き離す。
『おい、貴様ら!何をふざけてるんだ!!』
「あっ、忘れてた……」
そこで、カッシーンの一体が放置されていることに怒っているように声を上げると、ジオウ達は本気で彼等の事を忘れていた事を思い出す。そして、ジオウはウォズとツクヨミに声をかけた。
「アズ君、クララ。久しぶりに、3人で一緒にやろう!」
「はい!喜んで!」
「オーッ!」
二人の答えを聞き、ジオウは大型のウォッチ──“ジオウトリニティライドウォッチ”を取りだし、ジクウドライバーにセットした。
その瞬間、トータスに存在しないはずの星『レグルス』が光輝いた。
トリニティウォッチのユナイトリューザーを動かし、ウォッチのプレートに隠れていたウォズとツクヨミの顔が露になると、ウォズは青、ツクヨミは白の、レグルスから降り注ぐ光に包まれる。
そして、ジオウはジクウドライバーを回転させた。
音声が鳴り響いたと思うとあら不思議、光に包まれていたウォズとツクヨミの体がみるみる変形していき、頭部と胴体のバンドだけの腕時計のような形状に変形したかと思うと、ツクヨミがジオウの右肩、ウォズが左肩に装着され、ジオウの仮面が胸元に移動すると専用の顔が現れて、ジオウの姿が変化した。
「が、合体しましたよ!?」
「最早何でもありだね……」
胸部にジオウ、両肩にゲイツとウォズのライダーフェイスが配置され、頭部はジオウの仮面に三色の「ライダー」の文字が装着され、インジケーションアイとアンテナを形成する。
側頭部にはツクヨミとウォズの胴体の時計のバンドがそのまま取りついており、そこから右半身にはゲイツの白、左半身にはウォズの緑が縁取られている。
本体は黒いアンダースーツとこれでもかと「ライダー」の文字が付いた金色のパーツで構成されており、顔面部は腕時計のベルトを象ったフレーム部分に直接インジケーションアイが取り付けられており、造形的には1号やZOに近い口周りはフレームそのままになっている。
姿を変えたジオウ──【仮面ライダージオウトリニティ】は、ゆっくりと歩み出したかと思うと、高らかに声を上げた。
「ひれ伏せ!我こそは仮面ライダージオウトリニティ!大魔王であらせられるイルマ様とその親友アスモデウス・アリス、ウァラク・クララ!三位一体となって、未来を創出する時の王者である!!」
「「「「「「………」」」」」」
アスモデウスの声で行われる台詞に、ウィザード達バビルの面々も、カッシーン達も、その場にいた誰もが黙り込んで、ポカーンとジオウトリニティの見ている。
「アズアズ、相変わらずおっかし~い」
「貴様も相変わらず分かっていないなアホクララ!これこそがイルマ様と私達の絆と、入間様の覇道の証!世に知らしめなければならんのだ!」
「いいからアズくんそう言うの!恥ずかしいから~」
漫才のように、一人の体の中でワチャワチャとじゃれているジオウトリニティ。
「……フフッ、相変わらずだな。あの三人は……」
「……あんなこといつもやってるの?」
「なんというかのぅ……」
「仲良しなんですね」
それを見て、以前からジオウトリニティの事を知るゲイツが仮面の下で苦笑し、クララと会ったばかりのウィザード達は呆然としていた。
すると、遂に数体のカッシーンが槍を手にして襲い掛かってきて、ウィザード達が武器を手にして迎撃しようとするが、それよりも早く言い合いをしていたジオウトリニティが動いた。
「“
『『『『グァアァアアアアッ!!!』』』』
ジオウトリニティの放った火球が爆発を起こし、何体かのカッシーンが破壊されると同時に、破壊されなかったカッシーンが吹き飛ばされて地面を転がると、ジオウトリニティは、新たに“音撃金棒・烈凍”を取り出すと走りだし、カッシーンの腹に叩き付ける。
金棒でぶっ飛ばされたカッシーンは他の仲間を巻き込みながら爆発する。しかし、まだカッシーンは大量に残っており、埒が明かないと判断したジオウトリニティはジオウサイキョウギレードを召喚し、必殺技を発動させる。
ジオウサイキョウギレードから『ジオウサイキョウ』の文字が書かれた光刃が伸び、ジオウトリニティはカッシーンを相手にしていたウィザード達がほぼ同時のタイミングでジャンプをした瞬間を見計らい、その剣を一気に振り抜く。
山を切り裂くことすら可能なその斬撃は、一瞬で残りのカッシーン達の体を切り裂き、跡形もなく爆発させた。
「……やった~、全員倒した!イルマち、アズアズ、グッジョブ!!」
「流石は入間様!カッシーン擬き等何百体来ようが一木一草尽く蹂躙するとは!」
「いやいや、アズくんのフォローのお陰だよ」
そんな風に話をしてながら、ジオウトリニティがベルトから2つのウォッチを取り外すと、ジオウトリニティは光と共に変身が解除され、入間、アスモデウス、クララの三人に分裂した。
その瞬間、ミュウと彼女の護衛を任されていたルナがやって来て、クララの姿を見たミュウが彼女に飛び付いた。
「お姉ちゃん!!」
「えっ!あっ!ミュウ!!」
「お姉ちゃん、ただいまなのっ!」
ミュウとクララは互いを力強く抱き締め合いながら再開を喜んでいる。そんな2人に、入間は頬を緩めながら歩み寄り、声をかけた。
「……やっぱり、ミュウの家に居候してたお姉ちゃんっていうのはクララだったんだね」
「イルマち!ミュウを連れてきてくれたんだね!」
「連れてきた……まぁ、貴様としては正しい理解の仕方だな」
以前ミュウから聞いた話に出てきた居候のお姉ちゃんの特徴から何となく思っていた予想が的中していたことに苦笑しながら声をかける入間にクララが答え、アスモデウスはマイペース過ぎる彼女にしては少しズレてるが要点は間違えてないと呟く。
「よかったね~ミュウ!これならレミーさん喜ぶよ!」
「ママ……パパ、パパ!お家に帰るの。ママが待ってるの!ママに会いたいの!」
「……パパ?」
「ク、クララ。これについては後でちゃんと説明するから、今はツッコまないで」
イルマの手を懸命に引っ張り、早く早く!と急かすミュウ。彼女にとっては、約二ヶ月ぶりの我が家と母親なのだ。無理もない。道中も入間達が構うので普段は笑っていたが、夜寝る時などに、やはり母親が恋しくなるようで、そういう時は特に甘えん坊になっていた。
一方で、お世話になっていた自分を家に住まわせてくれていた家主の娘が自分の親友をパパと呼んでいることにクララは頭の上に?マークを大量に作り、その気持ちは理解できる入間は今説明しても面倒だろうと宥めながらミュウについていく。道中、カッシーンの襲撃から逃れた海人族の面々が、ミュウを見て驚いたように、ミュウが向かう先に駆けていく。
すると、通りの先で騒ぎが聞こえだした。若い女の声と、数人の男女の声だ。
「レミア、落ち着くんだ!その足じゃ無理だ!」
「そうだよ、レミアちゃん。ミュウちゃんならちゃんと連れてくるから!」
「いやよ!ミュウが帰ってきたのでしょう!?なら、私が行かないと!迎えに行ってあげないと!」
どうやら、家を飛び出そうとしている女性を、数人の男女が抑えているようである。おそらく、知り合いがミュウの帰還を母親に伝えたのだろう。
そのレミアと呼ばれた女性の必死な声が響くと、ミュウが顔をパァア!と輝かせた。そして、玄関口で倒れ込んでいる二十代半ば程の女性に向かって、精一杯大きな声で呼びかけながら駆け出した。
「ママーー!!」
「ッ!?ミュウ!?ミュウ!」
ミュウはステテテテー!と勢いよく走り、玄関先で両足を揃えて投げ出し崩れ落ちている女性――母親であるレミアの胸元へ満面の笑顔で飛び込んだ。
もう二度と離れないというように固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。
レミアは、何度も何度もミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。それは、目を離してしまったことか、それとも迎えに行ってあげられなかったことか、あるいはその両方か
娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、ミュウは心配そうな眼差しを向けながら、その頭を優しく撫でた。
「大丈夫なの。ママ、ミュウはここにいるの。だから、大丈夫なの」
「ミュウ……」
まさか、まだ四歳の娘に慰められるとは思わず、レミアは涙で滲む瞳をまん丸に見開いて、ミュウを見つめた。
ミュウは真っ直ぐレミアを見つめており、その瞳には確かに、レミアを気遣う気持ちが宿っていた。攫われる前は、人一倍甘えん坊で寂しがり屋だった娘が、自分の方が遥かに辛い思いをしたはずなのに、再会して直ぐに自分のことより母親に心を砕いている。
驚いて思わずマジマジとミュウを見つめるレミアに、ミュウは、ニッコリと笑うと、今度は自分からレミアを抱きしめた。体に、あるいは心に酷い傷でも負っているのではないかと眠れぬ夜を過ごしながら、自分は心配の余り心を病みかけていたというのに、娘はむしろ成長して帰って来たように見える。
その事実に、レミアは、つい苦笑いをこぼした。肩の力が抜け、涙も止まり、その瞳には、ただただ娘への愛おしさが宿っている。
「レミーさん、良かったね。ミュウが無事で!」
「クララさん……」
ニパッと明るい笑顔で語りかけるクララの言葉を聞き、再び抱きしめ合ったミュウとレミアだったが、突如、ミュウが悲鳴じみた声を上げた。
「ママ!あし!どうしたの!けがしたの!?いたいの!?」
どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。
ミュウは、レミアとはぐれた際に攫われたと言っていたが、海人族側からすれば目撃者がいないなら誘拐とは断定できないはずであり、彼等がそう断言していたのは、レミアが実際に犯人と遭遇したからなのだ。
レミアは、はぐれたミュウを探している時に、海岸の近くで砂浜の足跡を消している怪しげな男達を発見した。嫌な予感がしたものの、取り敢えず娘を知らないか尋ねようと近付いたところ……男は「しまった」という表情をして、いきなり詠唱を始めたらしい。
レミアは、ミュウがいなくなったことに彼等が関与していると確信し、何とかミュウを取り返そうと、足跡の続いている方向へ走り出そうとした。
しかし、もう一人の男に殴りつけられ転倒し、そこへ追い打ちを掛けるように炎弾が放たれた。幸い、何とか上半身への直撃は避けたものの足に被弾し、そのまま衝撃で吹き飛ばされ海へと落ちた。レミアは、痛みと衝撃で気を失い、気が付けば帰りの遅いレミア達を捜索しに来た自警団の人達に助けられていたのだ。
一命は取り留めたものの、時間が経っていたこともあり、レミアの足は神経をやられていて、もう歩くことも今までのように泳ぐことも出来ない状態になってしまった。当然、娘を探しに行こうとしたレミアだが、そんな足では捜索など出来るはずもなく、結局、自警団と王国に任せるしかなかった。
そんな事情があり、レミアは現在、立っていることもままならない状態なのである。
レミアは、これ以上、娘に心配ばかりかけられないと笑顔を見せて、ミュウと同じように「大丈夫」と伝えようとした。しかし、それより早く、ミュウは、この世でもっとも頼りにしている“パパ”に助けを求めた。
「パパぁ!ママを助けて!ママの足が痛いの!」
「えっ!?ミ、ミュウ?いま、なんて……」
「パパ!はやくぅ!」
「あら?あらら?やっぱり、パパって言ったの?ミュウ、パパって?」
混乱し頭上に大量の『?』を浮かべるレミア。周囲の人々もザワザワと騒ぎ出した。あちこちから「レミアが……再婚?そんな……バカナ」「レミアちゃんにも、ようやく次の春が来たのね!おめでたいわ!」「ウソだろ? 誰か、嘘だと言ってくれ……俺のレミアさんが……」「パパ…だと!?俺のことか!?」「きっとクッ○ングパパみたいな芸名とかそんな感じのやつだよ、うん、そうに違いない」「おい、緊急集会だ! レミアさんとミュウちゃんとクララちゃんを温かく見守る会のメンバー全員に通達しろ! こりゃあ、荒れるぞ!」など、色々危ない発言が飛び交っている。
どうやら、レミアとミュウはかなり人気のある母娘のようだ。レミアは、まだ、二十代半ばと若く、今は、かなりやつれてしまっているが、ミュウによく似た整った顔立ちをしている。復調すれば、おっとり系の美人として人目を惹くだろうことは容易く想像できるので、人気があるのも頷ける。
刻一刻と大きくなる喧騒に、「行きたくない」と表情を引き攣らせる入間。ミュウが入間をパパと呼ぶようになった経緯を説明すれば、あくまでパパ“代わり(内心は別としても)”であって、決してレミアとの再婚を狙っているわけではないと分かってもらえるだろうと簡単に考えていたのだが、どうやら、誤解が物凄い勢いで加速しているようだ。
だが、ある意味僥倖かもしれないと考えた。ミュウは母親の元に残して、入間達は旅を続けなければならない。【メルジーネ海底遺跡】を攻略すれば、ミュウとはお別れなのだ。故郷から遠く離れた地で、母親から無理やり引き離されたミュウの寄る辺がバビル一行だったわけだが、母親の元に戻れば、最初は悲しむかもしれないが、時間が入間達への思いを薄れさせるだろうと考えていた。周囲の人々の、レミア達母娘への関心の強さは、きっとその助けとなるはずだ。
「パパぁ!はやくぅ!ママをたすけて!」
ミュウの視線が、がっちり入間を捉えているので、その視線をたどりレミアも周囲の人々も入間の存在に気がついたようだ。入間は観念して、レミア達母娘へと歩み寄った。
「パパ、ママが……」
「大丈夫、ミュウ……ちゃんと治る。だから、泣きそうな顔しやいで」
「はいなの……」
入間が泣きそうな表情で振り返るミュウの頭をくしゃくしゃと撫でながら、視線をレミアに向ける。レミアは、ポカンとした表情で入間を見つめていた。無理もないだろうと思いつつも、入間の登場で益々騒ぎが大きくなったので、入間は取り敢えず、治療のためにも家の中に入ることにした。
「申し訳ありませんが、ちょっと失礼します」
「え?ッ!?あらら?」
入間は、ヒョイと全く重さを感じさせずにレミアをお姫様抱っこすると、ミュウに先導してもらってレミアを家の中に運び入れた。レミアを抱き上げたことに、背後で悲鳴と怒号が上がっていたが、無視だ。当のレミアは、突然、抱き上げられたことに目を白黒させている。
家の中に入ると、リビングのソファーが目に入ったので、入間はそこへレミアをそっと下ろした。そして、ソファーに座り入間のことを目をぱちくりさせながら見つめるレミアの前にかしずき、診察を始めた。
「レミアさんでしたね?足に触れますね。痛かったら言って下さい」
「は、はい? えっと、どういう状況なのかしら?」
突然、攫われた娘が帰ってきたと思ったら、その娘がパパと慕う男が現れて、更に、見知らぬ美女・美少女が家の中に集まっているという状況に、レミアは、困ったように眉を八の字にしている。
そうこうしているうちに、入間の診察も終わり、レミアの足は神経を傷つけてはいるものの入間の回復魔法できちんと治癒できること分かるがデリケートな部分が傷付いている為時間が掛かることが分かると、ジオウⅡウォッチを起動させた。
同時に、レミアのまともに動かなかった足が光に包まれ、まともに力が入らなかった足に感覚が戻り、レミアは足を試すように動かした。
「ジオウⅡウォッチで、一年前の状態に体を戻しました。これでもう大丈夫ですよ」
「あらあら、まあまあ。もう、歩けないと思っていましたのに……何とお礼を言えばいいか……」
「イルマち~~本当にありがとう~~っ!!」
「良いんだよ。ミュウのお母さんなんだしね」
「えっと、そういえば、皆さんは、ミュウとはどのような……それに、その……どうして、ミュウは、貴方のことを“パパ”と……」
バビル一行は、事の経緯を説明することにした。フューレンでのミュウとの出会いと騒動、そしてパパと呼ぶようになった経緯など。全てを聞いたレミアは、その場で深々と頭を下げ、涙ながらに何度も何度もお礼を繰り返した。
「本当に、何とお礼を言えばいいか……娘とこうして再会できたのは、全て皆さんのおかげです。このご恩は一生かけてもお返しします。私に出来ることでしたら、どんなことでも……」
気にするなと入間達は伝えたが、レミアとしても娘の命の恩人に礼の一つもしないでは納得できない。今日の宿を探すからと暇を伝えると、レミアはこれ幸いと、自分の家を使って欲しいと訴えた。
「どうかせめて、これくらいはさせて下さい。幸い、家はゆとりがありますから、皆さんの分の部屋も空いています。エリセンに滞在中は、どうか遠慮なく。それに、その方がミュウも喜びます。ね?ミュウ?入間さん達が家にいてくれた方が嬉しいわよね?」
「?パパ、どこかに行くの?」
レミアの言葉に、レミアの膝枕でうとうとしていたミュウは目をぱちくりさせて目を覚まし、次いでキョトンとした。どうやら、ミュウの中で入間が自分の家に滞在することは物理法則より当たり前のことらしい。なぜ、レミアがそんな事を聞くのかわからないと言った表情だ。
「母親の元に送り届けたら、少しずつ距離を取ろうかと思っていたんですがね……」
「あらあら、うふふ。パパが、娘から距離を取るなんていけませんよ?」
「いや、それは説明したでしょう?僕達は……」
「いずれ、旅立たれることは承知しています。ですが、だからこそ、お別れの日まで〝パパ〟でいてあげて下さい。距離を取られた挙句、さようならでは……ね?」
「……まぁ、それもそうか……」
「うふふ、別に、お別れの日までと言わず、ずっと〝パパ〟でもいいのですよ?先程、〝一生かけて〟と言ってしまいましたし……」
そんな事を言って、少し赤く染まった頬に片手を当てながら「うふふ♡」と笑みをこぼすレミア。おっとりした微笑みは、普通なら和むものなのだろうが……入間の周囲にはブリザードが発生している。
「そういう冗談はよしてください……空気が冷たい……」
「あらあら、おモテになるのですね。ですが、私も夫を亡くしてそろそろ五年ですし……ミュウもパパ欲しいわよね?」
「ふぇ?パパはパパだよ?」
「うふふ、だそうですよ、パパ?」
ブリザードが激しさを増す。冷たい空気に気が付いているのかいないのか分からないが、おっとりした雰囲気で、冗談とも本気とも付かない事をいうレミア。「いい度胸だ、ゴラァ!」という視線を送るユエ達にも「あらあら、うふふ」と微笑むだけで、柳に風と受け流している。意外に大物なのかもしれない。
「「「「ッ!?」」」」
その時、家の外から爆発音が聞こえてきて、ミュウは反射的にレミアにしがみつき、入間達は爆発が聞こえてきた方に目を向ける。
「今のは…!?」
「おそらく、ハンドレッドの援軍かと思われます」
「ティオとミレディはこの辺りを守ってて。僕たちはハンドレッドを倒しにいく!」
「わかったのじゃ!」
「イルくん達も気をつけてね!」
ティオとミレディにレミアとミュウ、そしてこの付近にいる海人族を守る役目を任せると、入間・アスモデウス・クララ・アメリ・ユエ・シア、そしてルナはレミアの家から飛び出し、騒ぎが聞こえてくる方に駆けていく。
現場に駆けつけると、そこにはエリセンの町を破壊するカッシーン達の中に、悠然と歩く三人の影があった。
「お見事ですね、バビルの皆々様。先陣を切らせたカッシーン100体がこんな短時間に全て破壊されていたとは……」
「流石、レジェンドライダーの力を持つ者達。フフフッ、それでこそ殺しがいがあるわ」
「……」
現れたのは、2人の男性と1人の女性。二人とも黒い衣服に身を包まれて紅い布を巻き、顔に漆黒の刺繍が施されていた。
「貴方達は……!?」
「おおっ、申し遅れました。私はミカヅキ。ハンドレッドの一員を勤めております」
メガネを掛けた男が弾んだ声で名乗りを上げる。
「同じく、イザヨイ」
「……シンゲツだ」
続いて黒髪の女性と黒髪の男も名乗りを上げると、続いてシンゲツと名乗った男が入間達に話しかける。
「……我々ハンドレッドは、この世界を破壊することにした。その為には先ずジオウ、邪魔な仮面ライダーである貴様等を破壊する…!」
入間を指した指を握りしめながら殺害予告をするシンゲツ。それを聞いた入間は、鋭い目で彼らを見返しながら口を開く。
「……別に、この世界には何の思い入れもありませんが、この世界には
「……良い度胸だ。その度胸を称えて、俺達も本気で相手をして殺してやろう」
そう言ったシンゲツは、コートの内側から、カメラのような意匠をした漆黒のベルト──“ダークディケイドライバー”を取り出し、腰に巻く。出現した“ライドブッカー”を開き、中からディケイドのカードを引き抜くと、そのカードを構える。
「──変身」
シンゲツはそのカードを裏返してダークディケイドライバーに装填。サイドハンドルを押し込んだ。
彼の周囲に幾つもの暗黒の虚像が現れてシンゲツの体に重なると、ドライバーから飛び出したプレートが顔に突き刺さる。
シンゲツは、仮面ライダーディケイドと瓜二つの、しかし装甲は黒みがかったグレイで金色の縁取りで、青い複眼を持った戦士──仮面ライダーダークディケイドへと変身した。
「悲鳴を上げて、それを歌にしなさい…!」
それに続き、イザヨイは何処からかオレンジの装飾を持つ黒い刀身の剣──“無銘剣虚無”を取り出して腰に添えると、聖剣がベルトに納められて“覇剣ブレードライバー”に変化し、イザヨイは一つのワンダーライドブックを開いた。
その本──“アメイジングセイレーンワンダーライドブック”をドライバーにセットし、イザヨイは勢いよくその聖剣を引き抜いた。
「変身」
全身が白と黒で彩られ、鳥類を模したような鎧に、複眼は先端が青緑になっている剣士──仮面ライダーファルシオン・アメイジングセイレーンに変身したイザヨイは、スッと無銘剣の刀身を撫でた。
「さぁ、破滅の時間の始まりです!」
ミカヅキは“ビルドドライバー”を取り出して腰に巻き、“ハザードトリガー”を起動してビルドドライバーに接続する。
“グレートクローズドラゴン”に漆黒の“コブラロストボトル”を装填してビルドドライバーにセット、レバーを回す。
「変身!」
ミカヅキは、エボルとハザードフォームのビルドを混ぜたような姿で、複眼がコブラと龍が重なりあっているような造成をして、内側が青くなった黒いマントを羽織った戦士──仮面ライダーブラッドに変身した。
「仮面ライダーに、変身した…!?」
「……そう、俺達は各平行世界に存在する仮面ライダーの力をコピーしている。ある意味においては、お前達と同じだな」
驚愕するイルマ達に、ダークディケイドがライドブッカーをソードモードに展開しながら、ライドウォッチの力で変身能力を得たユエ達と同じこと出きるのだと言う。
「言ってくれますね……なら、私達とお前達の差を思い知らせてやりますぅ!」
「皆、行くよ!」
シアがその慢心を後悔させてやると宣言し、入間の掛け声で、彼等はベルトを腰に巻き、変身の構えをとると、最初から示し合わせていたかのように彼等はあの言葉を口にした。
「「「「「変身ッ!!」」」」」
音声と共に入間達の体が目映い光に包まれ、6人は仮面ライダーへと姿を変える。
同時に、ダークディケイド達の背後にオーロラカーテンが出現して無数のカッシーンが飛び出してくると、ジオウ達も走り出した。
激闘が、始まった。
・ライダー紹介
仮面ライダージオウトリニティ(イルマ軍Ver.)
ゲイツの代わりにツクヨミが右腕に取り付けられたジオウトリニティ。
既存のジオウトリニティと同様にジオウ・ウォズ・ツクヨミの力を扱える。クララの家系能力を応用し、多種多様なライダーの武器を装備することも可能。
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